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セントレア、「ボーイング 787」飛行試験1号機を展示する複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS」2017年度下期オープン予定
米国以外で初のボーイングストアも
2016年11月9日 20:45
- 2016年11月9日 発表
セントレア(中部国際空港)は11月9日に記者会見を開催し、ボーイング 787型機 ドリームライナー飛行試験機(ZA001号機)の室内展示を核とし、2017年度下半期(目標)に供用開始を予定している複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS」の概要を説明した。
ボーイング 787型機は機体の35%が中部地域で製造され、大型輸送機ドリームリフターによってボーイングの米国内最終組立工場に輸送されている。そのボーイング 787型機の飛行試験初号機であるZA001号機は、2015年6月の最終フライト終了後にセントレアに寄贈された。
今回整備が発表された複合商業施設では、このZA001号機を室内展示するとともに、教育的コンテンツも併設し、若年層の航空への興味の喚起や、次世代を担う人材の育成に資するなど、地域への貢献にもつなげていきたいとする。また、商業エリアはシアトルを中心とした米国の雰囲気を演出するとともに、飲食や物販の店舗展開も検討している。
記者会見冒頭、セントレアの代表取締役社長である友添雅直氏により、複合商業施設の概要が説明された。
友添氏は、「2015年7月から中部国際空港の社長となりまして、空港開設12年目を迎えた今年、さまざまな発展を期するために努力している最中」とし、そういったなかで開設されるのが、今回の複合商業施設と説明。複合商業施設の名称は「FLIGHT OF DREAMS」だと発表した。
FLIGHT OF DREAMSは、2019年度上半期に供用開始予定となっているLCC向けの新ターミナルビルと、愛知県が整備を行なっている大規模展示場の間に位置する場所に建設される。建物の外観は、左右側面でX型をイメージした直線的なものとなる。これは、ボーイング 787型機の曲線美を引き立てることを狙ってのものだという。建築面積が約5000m2、延床面積が約1万m2、高さが約24mで、地上3階の建造物となる。
3階建てのFLIGHT OF DREAMSは、1階がZA001号機を中心とした展示エリアとなる。この展示エリアには、足を踏み入れた来場者がZA001号機を見上げるような構造となり、アッと驚くような効果を狙っているという。そして、ZA001号機を囲むように、航空機の製造や組み立て、航空機が飛ぶ仕組みなど、航空産業の一連の流れを体験できるコンテンツが用意されることになる。このコンテンツは体験型のものとなっており、航空機エンジンのインタラクティブ展示、工場のスケールを体感できるようなボーイング 787型機組立工場のバーチャル展示などを用意。
また、VR技術を用いた飛行機体験や、シミュレータなども設置したいという。そして、コンテンツはウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」代表取締役社長の猪子寿之氏が監修した、インタラクティブ性を備える展示になるとのことで、「見る、読むだけではなく、動く、聞く、触るというインタラクティブな展示にすることで、子供から大人まで楽しんでもらえるようにしたい」と説明。そのうえで、「国内航空機産業に関わっている皆さまと協力し、コンテンツを楽しいものにして、地域や国の航空産業の発展にも寄与したい」と友添氏は述べた。
2階の商業エリアは、米国シアトルの街並みをイメージしたものにするとともに、シアトル発祥ブランドや、シアトルを代表する飲食店舗などを誘致する計画。シアトルをメインテーマとした商業施設は国内で初になるという。また、ZA001号機の翼の真下で食事が食べられるという、これまでにないフードコートも計画。こちらにはエンジンをモチーフにしたカップルシートも設置し、日常では味わえない楽しめる施設にしたいという。
3階は、LCCターミナルや大規模展示場とをつなぐ通路になるが、こちらにも店舗を用意し、シアトルのお土産などを並べて販売する。これにより、ただ歩くだけでなく楽しめる空間にしたいという。
続いて、ボーイング ジャパンの社長であるブレット・ゲリー氏が登壇し、次のように祝辞を述べた。
「我々ボーイングではZA001号機と呼んでいる、ボーイング 787型機初号機は、我々にとっても特別な飛行機です。2009年12月の雨の日に、ボーイングチームの高い志を乗せ、また日本を含めた世界中のパートナーの高い志も乗せて、ZA001号機が飛び立ちました。
日本の航空産業は、ボーイング 787型機の構造体の35%を製造しています。また、日本では世界のどの国よりも多くのボーイング 787型機が飛行しています。ボーイングと日本の航空機産業は一緒に成長し、協調的なパートナーシップを強めてきました。日本は、ボーイングにとって米国以外で最大の供給国となっています。その日本に、そして特にボーイング 787型機の設計製造に尽力いただいた中部地域に、ZA001号機が里帰りするのは理にかなっていると思っていますし、受け入れてくださったのが中部国際空港というのも理にかなっていると思います。
ZA001号機は、新世代の空の旅の飛行試験機としての役割を終え、次の役目は新しい世代の航空産業のパイオニアを鼓舞することになると考えています。そしてこのFLIGHT OF DREAMSは、子供も大人も、ZA001号機について、また航空業界について学べる場所になるでしょう」。
またゲリー氏は、FLIGHT OF DREAMSに、ボーイングがさまざまなコンテンツを提供すると説明。現在は、ボーイング 787型機の最終組立ラインのバーチャルツアーをどのように作るか相談しているところとのことで、工場でどのように製造しているのか間近で体験できるものにしたいとのこと。さらに、米国以外で初となる常設のボーイングストアも設置されるという。
続いて、チームラボ代表取締役社長の猪子寿之氏が登壇し、FLIGHT OF DREAMSに設置されるコンテンツについて説明した。
チームラボでは、デジタルアートのなかに身体ごと入っていくようなイメージで作品を作っている。そういった経験を活かしながら、体感型デジタルアートや、エデュケーションの要素を盛り込んだコンテンツを用意したいという。
そして「中部国際空港という場所が、世界の人からすると日本の玄関となるので、訪れた外国の方が、日本の技術やクリエイション、未来的な体験をしてもらえる場所にしたい」と述べた。また、「日本の子供達に飛行機を楽しく学んでもらったり、世界へ飛び立つことにポジティブになったり、技術的な側面に楽しく興味をもつような場所にしたい。日本の人、世界の人、どちらにとっても素晴らしい場所になるようにお手伝いしたい」と抱負を述べた。
具体的なコンテンツの内容については、本物の飛行機が展示してあるので、それを利用して本物の飛行機がデジタルのアート空間のなかにあるような、そしてそれが空を飛んでいるように感じられるものを想定しているという。また、子供達が体験して、空への想いや技術への興味を高められるようにもしたいとのこと。そして、「楽しいだけじゃなくて、色々なものが学べる場所になればいいと思っている」と猪子氏は締めくくった。
最後に、友添氏によって今後のスケジュールが紹介された。まず2017年上半期の予定としては、2017年初めにテナントや事業者に対する説明会を開催し、4月頃に建物を着工する計画。そしてオリジナルWebサイトを用意して、そちらで各種情報を発信していくという。
2017年下半期には、チームラボとともにプロモーションイベントを実施。そして、冬頃に建物内へZA001号機を移動させるという。このZA001号機の搬入については、ドラマチックなイベントになるように詰めていきたいとした。
そして、施設のオープンは2018年夏を予定している。友添氏は、できるだけ早い時期、できれば2018年夏休み前にオープンできるように努力したいと述べた。
施設完成後の展示スペースについては、入場料を取る形になる予定。また、展示されるZA001号機をどこまで見たり触ったりできるかという点については、現時点では未定とのこと。機密部分もあるため、どこまで見せられるか、現在ボーイングと相談中とのことで、このあたりも決まり次第発表するとのことだ。