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ボーイング、日本含む北東アジアの航空機市場予測発表、2035年までに1440機の需要

2016年10月11日 発表

 ボーイング(Boeing)は10月11日に都内で説明会を開き、Boeing本社から来日した民間航空機部門 マーケティング担当 バイス・プレジデントのランディ・ティンゼス(Randy Tinseth)氏により、日本を含む北東アジア地域の航空機市場予測を発表した。

 ティンゼス氏は説明会の冒頭で、ボーイングが創立100周年を迎えたことと、世界最大の航空機会社に成長するうえでの日本とのパートナーシップについて触れた。「日本とのパートナーシップは1953年からスタートし、いまでは日本の20カ所以上にボーイングの社員がいる。日本のサプライヤー60社以上と、50億ドル以上の取引をし、それにより何万もの雇用も創出している。そして、350機以上の航空機が使われている」と、航空会社、サプライメーカーほかの日本のパートナーへの感謝を示した。

Boeing 民間航空機部門 マーケティング担当 バイス・プレジデントのランディ・ティンゼス氏
ボーイングと日本のパートナーシップ

 航空機市場については、まず現在の北東アジアの航空市場について説明。ここでいう“北東アジア”とは日本、韓国、台湾の市場を指す。

 世界全体の市場動向については、2016年7月に行なわれたファンボロー国際航空ショーでのレポートでも記したとおり、2010年~2015年にかけて、航空旅客数は6%の成長、貨物は1.6%増、960億ドルの航空会社の利益へと高まり、2016年には旅客数6%増、貨物2~3%増、400億ドルの利益増を挙げている。

 これを踏まえたうえで北東アジアの市場については、「市場の大部分をLCCが牽引」「ネットワークキャリアの買い換え需要活性化」「大型ワイドボディ(双通路機)から小型化へ移行」の3点をトレンドとして挙げる。

 1点目のLCCについては、2010年から2015年にかけての運航頻度の伸びがフルサービスキャリアでは1.9%に留まるのに対し、LCCは21.5%増と増加。国別に日本を見ても、LCCが18.6%と大きく伸長した。

 2点目の買い換え需要については、世界の平均機齢が10.8年であるのに対して、北東アジア地域の機齢は9.3年とやや若いものの、この先20年間では何百という機体の買い換えが需要が発生するとした。

 3点目のボディサイズについては、1990年代からの変遷を紹介。1990年はボーイング 747型機のような大型のワイドボディ機か、ボーイング 767型機やエアバス A300/A310型機のような小型のワイドボディ機という2つの選択肢しかなかったが、いまでは中型ワイドボディ機の市場が生まれ、小型&中型ワイドボディ機が市場の中心であると指摘。

北東アジア市場の3つのトレンド
北東アジア市場におけるLCCの運航頻度。写真左はエリア全体、写真右は国別のデータ
北東アジア市場における機齢。この先20年で買い換え需要が高まる見込み
現在は中型ワイドボディ機の台頭し、ボーイング 747型機などの大型ワイドボディ機は縮小傾向に

、その典型として成田空港の事例を紹介。ティンセス氏は1990年にシアトルから成田へボーイング 747-200型機で訪れた際に、窓の外にはたくさんのボーイング 747型機が駐機していたのに対して、いまではボーイング 777型機や787型機ばかりが目に入ったという。実際、1990年には30路線以上でボーイング 747型機が使用されていたが、2016年には8路線にまで減少している。

 この結果、1機(1便)あたりの座席数は減少したものの、一方で就航地は増加。ティンセス氏は、「ハブがどこであろうと(中型機を含む)小型機が中心になった。平均サイズが小さくなる一方で就航都市が増えている」と、現在の航空機とネットワークのトレンドをまとめた。

成田空港でボーイング 747型機を用いたネットワーク。1990年には30以上あった路線が、2016年には8路線に縮小
中型/小型ワイドボディ機の増加で1機あたりの客席数は減少したが、就航都市は増加していることを示したチャート

2035年までに北東アジアで1440機の新造機需要

 続いて、ボーイングが出している長期予測「CMO(Current Market Outlook)」に基づく、この先20年間(2035年まで)の予測について説明があった。

 年間有償旅客キロは1980年から6倍に成長。この先20年間の世界経済成長を2.9%を予測したうえで、そのとおりに成長した場合には、旅客数は4%、有償旅客キロは5%近い伸びを見せると予測している。結果、2015年の航空旅客数約37億人に対し、20年後は75億~80億人程度に伸びるとし、その旅客を運ぶための航空機が必要になるとした。

 その結果の需要として、世界の航空会社は3万9620機の新たな旅客機を導入し、その投資額は5兆9300億ドル規模になるとしている。

 このなかで、北東アジア市場は経済成長率を1.2%、有償旅客キロの増加率を2.6%とし、現在北東アジアを結ぶネットワークでもっとも大きな市場である北米だが、それを上まわるペースで成長する東南アジアが今後の最大市場になるだろうと予測した。

 航空機需要については、機数ベースで1440機、金額ベースで3200億ドルと予測。このうち日本は45~50%ほどを占める見込みで、機数ベースで単通路のナローボディ機が大半を占める世界全体のトレンドに比べて、ワイドボディ機の比率が高い。また、1440機のうち65%が買い換え、35%が新規導入の機材となり、北東アジア全体では2015年時点の運用されている1050機から、2035年には約50%増となる1560機の航空機が運用される見込みであるとした。

今後20年間に発生する世界市場における航空機の需要
北東アジアの航空市場は東南アジアが大きく伸びると予測
北東アジアにおける2035年までの航空機需要予測。台数ベースで1440機の新造機需要を予測し、その65%が買い換え需要、35%が新規導入機需要になるとした

 このほか、説明会では製品ラインアップについても説明が行なわれた。2035年のボーイングのラインアップは、中型ワイドボディのボーイング 777Xシリーズ、小型ワイドボディのボーイング 787シリーズが多様化し、そのニーズを満たす範囲を広げる。今後のラインアップとしては、ボーイング 737型機の最新型となるボーイング 737 MAXシリーズ、ボーイング 787シリーズの胴体延長型モデルとなるボーイング 787-10型機、ボーイング 777-300/300ER型機の後継モデルとなるボーイング 777Xシリーズの開発を進めている。

 このうち、2016年1月に初飛行したボーイング 737 MAXについては、スケジュールが前倒しで進んでいるとし、10月末から11月上旬にはフライトテストを終え、2018年に型式証明を取得後、同年中盤にはローンチカスタマーのサウスウェスト航空に納入の見込みとした。

 ボーイング 787シリーズについては、その2割ほどを日本の航空会社が運用し、大成功を収めているプログラムであるとし、全世界ですでに1億2000万人以上の顧客を輸送。さらに、約5年間で120以上の新規就航都市を開拓した航空機であるとアピール。その最長胴モデルであるボーイング 787-10型機は、スケジュールどおりにプログラムが進行し、最初の機体の組み立てに入っている。スケジュールどおり、2018年には納入の見込みであるとした。

現在(左)と今後(右)のボーイングの航空機ラインアップ
ボーイングの受注残。金額ベースではナローボディ、ワイドボディが半々程度となっている
ボーイング 737 MAXシリーズの特徴
ボーイング 737 MAXは70社以上から3000機以上を受注。大成功のプログラムとしている
2018年の中盤には初号機をサウスウェスト航空に納入する予定で進行している
ボーイング 787シリーズの2割程度は日本の航空会社が運用している
ボーイング 787シリーズに関する9月29日時点のデータ
初号機の組み立てがスタートしたボーイング 787-10型機。スケジュールどおり2018年からの納入を予定している
ボーイング 777Xは、ボーイング 777-300ERより一回り大きいサイズとして設計が進められている