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中部国際空港、2018年3月期決算会見。売上高589.6億円は過去最高、各利益も「実質的には過去最高」

「FLIGHT OF DREAMS」や新LCCターミナルに期待と各務副社長

2018年5月15日 開催

2018年3月期(2017年度)第20期決算について説明を行なう、中部国際空港株式会社 代表取締役副社長 各務正人氏

 セントレア(中部国際空港)は5月15日に東京事務所で会見を開き、代表取締役副社長の各務正人氏が2018年3月期(2017年度)決算について説明を行なった。

 各務副社長はこの決算が第20期となり、1998年5月に会社を設立してから20周年を迎えたことに感謝を述べ、「地道に取り組んできたことにしっかりと成果も得られた1年だった」と振り返りつつ説明を始めた。

中部国際空港の2018年3月期決算の概要

 売上高については、空港事業は北朝鮮情勢、エアアジア・ジャパンの就航の遅れなどがあったものの、訪日外国人旅客数が引き続き拡大基調であり、新たに拡充した路線による需要の創出が見られ、国際線旅客数は過去最高を記録した2007年度とほぼ同じ、国内線旅客数も増加し、空港事業の引き上げにつながった。結果、空港事業は前期比1.9%増の275.3億円となった。

 商業事業は、一時期に落ち込んでいた免税店売り上げが訪日外国人によって押し上げられ、いわゆる爆買いで記録的な決算となった2015年度を上回り、14%増の288.2億円となった。

 免税店の売上高は32.5億円増収で過去最高を更新。訪日外国人旅客数が伸びたこと、2016年度に大きく落ち込んだ外国人旅客の購買意欲が回復、出発旅客あたりの購入額が前期を上回ったことなどが要因とのこと。化粧品を中心とした新ブランドの導入、中国人向けの決済手段の充実などもこの伸びに貢献しているのではと説明した。さらに非制限区域において新店舗の開設、フードコート、ラウンジのリニューアルなどを実施している。

 交通アクセス施設事業は、駐車場エリアを使いエプロン工事を大々的に行なっている関係で駐車場容量が縮小。しかし繁忙期以外でも需要が伸びており、利用台数などは前期を上回ったことなどから、3.9%増の26.1億円となった。

 以上を合計した売上高は7.6%増の589.6億円。営業利益は15.7%増の89.1億円、経常利益は24.2%増の80.2億円、純利益は30.2%増の54.4億円となり、売上高、経常利益、純利益がそれぞれ過去最高となる決算になった。

 営業利益の過去最高は開港直後の2005年度に90.3億円という数字があるが、このときは固定資産税などの税額が決まるタイミングが異なっており、開港前の課税の対象となる資産が限られて、2006年度以降と比較すると税負担が非常に限定的だった。それらの特殊要因があっての90.3億円という数字だったため、今回の営業利益の89.1億円も「実質的には過去最高を更新したと考えている」と述べた。

 営業費用は6.2%(29.4億円)増の500.5億円。これは好調な商業事業によって仕入れが増加して「大半を占めた」(22.1億円)ため。そのほか利用客に対応するスタッフの増強、手荷物用カートの更新、工事のため縮小した駐車場容量をカバーする代替駐車場の確保などに使われたとのこと。

中部国際空港の2018年3月期の利用実績

 利用実績については、国際線旅客数は6.3%増の556万人。これは増便が行なわれた東南アジアや香港路線などを中心に外国人旅客が13%増と引き続き高い伸びで、国際線の需要を牽引したためとのこと。556万人は、過去最高を記録した2007年度とほぼ同じ水準とのことだが、当時は米国~セントレア~フィリピンという路線でのセントレアに立ち寄るものの降機しない旅客、年間約47万人をカウントしていた数字であり、2018年3月期はセントレアを発着する路線において過去最高を実質的に更新しているものだと説明した。

 国内線旅客数は、就航が遅れていたエアアジア・ジャパンの新千歳(札幌)線がようやく就航(関連記事「セントレアと新千歳空港を結ぶLCC、エアアジア・ジャパンがついに初便就航」)、ANA(全日本空輸)の宮古線就航(関連記事「ANA、セントレア~宮古島の初便は満席に」)による需要創出もあり、4.3%増の597万人。航空旅客数全体では5.3%増の1153万人となった。

 航空機発着回数は、国際線が台湾路線の休止や減便、中国内陸との路線の減便などマイナスはあったが、エア・カナダのレジャー向けブランド「エア・カナダ ルージュ」によるバンクーバー線の復活(関連記事「エア・カナダ ルージュ、12年ぶり再就航の名古屋~バンクーバー線記念セレモニー」)、東南アジアや香港路線の増便がカバーして0.5%減の3.9万回となった。

 国内線の発着回数は、比較する前期に伊勢志摩サミットによる公用機の離着陸が多くあったため、新規就航により実質的な便数は上回っているものの、0.4%減の6.1万回。トータルでも0.4%減の10万回で、「ほぼ前年並み」になった。

 国際貨物取扱量については、「活況の物流市場から自動車部品を中心にしっかりと取り込みができ」8.7%増の17.9万トン。「地元の農水産品の輸出拡大の取り組みなど、地域産業の輸送運輸インフラとしての使命を果たすことができ、引き続きがんばっていきたい。医薬品専用の保管施設新設などもあり、セントレアの物流機能発展につながる」と述べた。

2019年3月期の連結業績予想

 2019年3月期予想は、国際線ではルフトハンザ ドイツ航空のフランクフルト線増便、スターフライヤーの台北線就航などを予定しており、過去最高となる620万人を目指すという。国内線は今春セントレアを拠点化したジェットスター・ジャパンがすでに3路線での増便を実現しており、スカイマークによる鹿児島線の就航、さらにエアアジア・ジャパンなどものさらなる拡充を見込んで680万人、合計旅客数は1300万人、発着回数は、2006年度の10.6万回を超えて最高となる11.0万回を想定している。

 これらネットワークの拡充、旅客数の増加、新しい施設の竣工による収入源の増加などを背景にした連結業績予想は、売上高が7%増の631億円、営業利益は5%増の94億円、経常利益は6%増の85億円、最終利益は3%増の56億円と、いずれも過去最高となる数字を挙げた。

2018年夏開業予定の複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」
2019年供用予定のLCC向け新ターミナル
セントレアの新しい施設の位置関係

 各務副社長は、2018年度を「将来の飛躍的な成長に向けてこれまで取り組んできたことを一つ一つ形にしていく重要な年」だと語り、2018年夏開業予定の複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」は、ボーイング 787型機の飛行試験初号機「ZA001」の展示をメインに、ボーイング社がある米シアトルにちなんだ店舗が入る予定であり(関連記事「ボーイング 787初号機『ZA001』を展示するセントレア『FLIGHT OF DREAMS』の商業エリア14店舗決定」、「大いにご期待いただきたいです」と述べた。

 2019年度上期供用予定のLCC向け新ターミナルビルは、5月16日に安全祈願祭と起工式を行なっており、「これからのセントレアが量的に質的に発展していくためには、LCCの果たす役割は大きいと思っており、中部国際空港を基地として使っていただけるLCCが伸びていただくことは非常に重要です。これまでエアアジア・ジャパンだけでしたが、ジェットスター・ジャパンも拠点化してくださり、お客さまにもLCCの各社の皆さまにも喜んでいただけるLCCターミナルビルを作り上げたい」と話した。