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JR東日本、高輪ゲートウェイ駅でロボットの実証実験。コロナ禍での消毒・運搬など課題に取り組む

2020年7月27日 公開

開業と同時に、案内ロボット、清掃ロボット、警備用ロボットがすでに実証実験を始めている

 JR東日本(東日本旅客鉄道)は7月27日、田町駅~品川駅間に3月14日に開業した高輪ゲートウェイ駅で行なっているるロボットによる実証実験を報道公開した。

 現在、駅周辺で行なわれている「品川開発プロジェクト(第I期)」(2024年開業予定)における導入を目指して、実証実験が進められている。

この実証実験では、消毒作業ロボットや軽食・飲料搬送ロボット、手荷物搬送ロボットやパーソナルモビリティを使用している

 高輪ゲートウェイ駅では、JR東日本グループが検討している最新の駅サービス設備の導入に向けた実証実験が各所で行なわれている。車いすの利用者でもタッチしやすい最新改札機や、天井に取り付けられた50台のカメラで人の動きを感知して会計処理を行なう無人コンビニもその一つだ。

 今回公開したロボットの実証実験では、消毒作業ロボット3台、手荷物搬送ロボット1台、軽食・飲料搬送ロボット3台、パーソナルモビリティ2台が使われている。

 消毒作業ロボットは、マッピングした情報をもとに人が歩く程度のスピードで自律移動し、手すりやベンチなどに霧状にした消毒剤を噴霧する。消毒作業は人通りがなくなる終電後の夜間を想定しているが、複数のセンサーを搭載し、人や障害物を自動的に避ける機能も搭載されている。

消毒剤を噴霧する消毒作業ロボット。今回は手すりを消毒作業する様子が公開された
マッピング情報をもとに各種センサーで現在地や目標物を認識し、消毒剤を噴霧していく。通路が90度曲がっている部分もスムーズに向きを変えて移動する
CLINABOCL02(クリナボシーエルゼロ2)。開発元は日本信号とCYBERDYNE。吸塵型清掃ロボットの上部に消毒剤噴霧機能を搭載したもので、駅での運用に必要な点字ブロックやエクスパンションの乗り越えも可能
Whiz(ウィズ)。開発元はソフトバンクロボティクス。こちらも吸塵型清掃ロボットの上部に消毒剤噴霧機能を搭載したもので、床と同時に壁やドアノブなどの消毒作業を行なえる
PATORO(パトロ)。開発元はZMP。パトロールと消毒作業を行なう自律移動型ロボット。複数のカメラを搭載するほか、コミュニケーション用として表情を変えられる大型ディスプレイを前面に搭載している

 手荷物搬送ロボット、軽食・飲料搬送ロボット、パーソナルモビリティは、まちづくり共創パートナー向けに実証実験が行なわれているものだ。まちづくり共創パートナーとは、品川開発プロジェクト(第I期)においてJR東日本と協業するパートナー企業であり、通常非公開エリアとなっている高輪ゲートウェイ駅の改札外2階および3階に設けられた「Partner Base Takanawa Gateway Station」において、意見交換や実証実験を行ないながら再開発を進めている。そのパートナー向けに、おもてなしと未来を体感してもらうために用意されたのが前記した3台だ。

 手荷物搬送ロボットは、利用者の手荷物を目的地まで運搬するもので、将来的にはインバウンド需要も想定しつつ、開発エリア内の物流への活用を目指している。軽食・飲料搬送ロボットは、お菓子などの軽食やコーヒーなどの飲料を非接触でオフィスや執務スペースなど屋内の利用者に届けるものだが、将来的には公園などの屋外空間での活用も見込んでいる。パーソナルモビリティは、Partner Base Takanawa Gateway Stationでの移動に際して快適性と新しい移動体験を提供するものだ。

手荷物搬送ロボット。開発元はオムロン ソーシアルソリューションズ。手荷物を荷台に乗せ、利用者を目的地まで案内する。前面の大型ディスプレイには広告などを表示することもできる
Lifter付きSEED-Mover。開発元はTHK。軽食や飲料の運搬を想定したパーソナルサイズの小型配膳ロボット。この日は2階の通路から3階のミーティングスペースの前までホットコーヒーを運搬。フロア移動に使うエレベータは自動で乗り降りする(エレベータの操作は手動)
DANDY AUTO-PILOT。開発元は花岡車輌。山手線をイメージした小型搬送ロボットで、軽食や飲料を目的地まで運ぶ。3階の通路からミーティングスペースの前までアイスコーヒーを運搬した
FRUTERA(フルテラ)。開発元はアンドロボティクス。軽食や飲料を目的地まで運ぶ搬送ロボットで、通信障害に強いWi-SUN無線通信を採用しているのが特徴。ミーティングスペースに準備された操作ボタンを押すと、通路に待機していた本機がスペース内のテーブル近くまでお菓子を運搬。終了操作をすると自動的に転回して元の位置まで戻った
歩行領域EV(立ち乗りタイプ)。開発元はトヨタ自動車。2~10km/hで移動できる3輪車型のパーソナルモビリティ。駅や空港、工場など大規模施設での巡回や警備、手荷物を持った移動を目的としている
WHILL NEXT。開発元はパナソニック。車体はWHILLの「Model A」で、パナソニックの衝突防止機能を搭載したモデル。車いすタイプのパーソナルモビリティで、先頭車両を自動で追従する機能を持つ

 取材に対応したJR東日本 技術イノベーション推進本部 データストラテジー部門部長の佐藤勲氏は、「高輪ゲートウェイ駅は新しいイノベーションの発信拠点として位置付けておりまして、今までもいろいろなタイプのロボットの実証実験であったり、無人店舗の導入などを進めてきました。現在新たにご利用者がより安心して利用できるように新しいタイプのロボットの実証実験を始めています」と、今回公開された実証実験の目的を説明。

 今回の実証実験に使われたロボットについては、「開業後は社会状況の変化により、パブリックシーンにおける消毒作業、非接触でお客さまに物を届けるというのが重要になってきています。そのような理由から今回は消毒作業のロボット、搬送ロボットの実証実験に取り組んでいます。また、2024年に完成が予定されている品川開発プロジェクト(第I期)のオープンに合わせて、お客さまが自由にスムーズに移動していただくためのパーソナルモビリティの導入に向けてテストしています」と答えた。

東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 データストラテジー部門部長 佐藤勲氏