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高輪GW駅直結ツインタワー2025年開業、JWマリオット・ホテル東京も。JR東日本史上最大の開発に深澤社長「次の100年は暮らしづくり」

2025年3月 開業

JR東日本が開発を行なう高輪ゲートウェイシティ(仮称)。駅直結のツインタワーが2025年3月に開業する

 JR東日本は4月21日、「高輪ゲートウェイシティ(仮称)のまちづくり」に関する発表会を東京都内で実施した。

「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」は、JR東日本が行なう品川開発プロジェクト(第I期)として推進している事業で、高輪ゲートウェイ駅目の前の約9.5ヘクタールの土地に、全5棟(高層4棟・低層1棟)からなる新たな街が誕生する。2025年3月から順次開業を予定、総事業費は約5800億円。開業による営業収益は約560億円を見込んでいる。

 JR東日本史上最大規模の開発であり、都心最大の複合都市となる「高輪ゲートウェイシティ」には、駅直結の大規模コンベンションホールやオフィス、ホテル、商業施設を有するツインタワー「複合棟I」、同じくオフィスやクリニック・フィットネスを完備する「複合等II」。さらに街のシンボルとなる展示場やホールがメインの「文化創造棟」、高級高層賃貸住宅がメインの「住宅棟」から構成。今回の発表では、「文化創造棟」ならびに国史跡指定された「高輪築堤」の保存・活用についての説明もあった。

開業スケジュールは2025年3月に「複合棟I」。他の4棟は2025年度中に開業予定

「次の100年は鉄道文化を継承し、未来の暮らしづくりに挑戦」と深澤氏

 発表会ではJR東日本 代表取締役社長の深澤祐二氏が「この街が目指すGlobal Gatewayとは」と題してプロジェクトについて説明。江戸時代「高輪大木戸」として江戸の玄関口であったこと、そして150年前に鉄道が初めて走った土地であること、さらに空港へのアクセスも踏まえ、地域の歴史を継承し、世界につながる意味を持つ「Global Gateway」を開発コンセプトとしたと解説。

東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 深澤祐二氏がプロジェクトの概要を説明した
JR東日本が2025年3月より順次開業予定の「高輪ゲートウェイシティ」の俯瞰図
コンベンション施設やオフィスが中心となるツインタワー「複合棟I」(4街区)
オフィスや生活支援施設(医療施設・フィットネス)などが入る「複合等II」(3街区)
今回具体的な内容が明かされたアートや文化イベント実施する「文化創造棟」(2街区)
海外からのビジネスワーカー向けでインターナショナルスクールも入る「住宅棟」(1街区)

 氏は「JR東日本はこれまでの150年、鉄道事業を中心にお客さまの移動や地域の皆さまの生活を支えてきました。これからの100年はその鉄道文化を継承し、発展させながら未来の暮らしづくりへの挑戦を行ないます」と宣言。

 プロジェクトエリア内から出土した鉄道開通時に作られた「高輪築堤」については「価値を活かし、地域の歴史価値向上や地域社会への貢献に取り組みながら保存と活用とまちづくりの両立をしていきます」とした。

これまでのJR東日本のイノベーションの歩み
これからの100年は暮らしづくりへの挑戦へ

 また、“未来の地球をよりよくするまちづくり”として「SDGs、ダイバーシティ&インクルージョン、地域課題の解決、地球規模の取り組みに発展させ、豊かな暮らしのための中心となる舞台が高輪ゲートウエイシティ。分散型のまちづくりの拠点としてリアル、バーチャルのそれぞれの魅力を駆使し、さらに融合を通して新しい街づくりを進めていきます」と語った。

コロナ禍による働き方の変化や人口減少など転換期である現状を踏まえ「分散型のまちづくりを実現」する
ゼロからインフラ整備ができる利点を活かし、スマートシティへ
都市OSを整備し、運営の効率化に新サービスの導入への活用を検討

 エリアのポテンシャルについては、「まっさらで広大な土地にインフラやエネルギーなどさまざまな取り組みや開発ができ、空港にも近く、将来的にリニアも含めて国内外とつながることができる非常に便利な場所。さらに周辺との連携などバラエティに富んだネットワークが今回の開発で生み出せるのが強み」と深澤氏は強調。

 なお、2018年発表時の事業計画との大きな違いは2020年に出土した「高輪築堤」(明治初期に鉄道を敷設するため海上に作られた構造物)に関してだ。「複合棟II」エリアに第7橋梁部を含む約80mの現地保存を実施し、保存空間確保のために建物の位置を東側に移動することも発表会では言及。「文化創造棟」のプログラムでの活用をはじめ、次世代への継承と地域の歴史価値向上・地域社会への貢献を目指すという。なお、都市計画変更などにより約300億円の増額で総事業費は当初の5500億円から5800億円になっている。

 今回発表された概要をベースに順次工事を進め、品川駅に近い残りのエリアについては、駅改良工事やリニア導入、さらに公共事業や他社路線も関係する事業のため関係各所と連携し調整していくとした。

2024年度以降の開発スケジュールについて。2030年以降に第2期開業予定だ

実験場として3つの柱でまちづくり&国際都市としてさらなる発展へ

 同エリアでは、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」として、地域との共創でまちづくりを行なっていく。JR東日本の持つネットワークを駆使し、同エリアが日本中・世界中とつながるハブとなることを目指し、駅前のオープンスペースの活用や、街での実装を見据えた実験の促進・バックアップなども実施。会場には具体例として2021年に竹芝で実施されたフードデリバリー実証実験で使われたドローン「ACSL-PF2」が展示されていた。

「100年先の心豊かなくらしのための実験場」としてさまざまな実験を実施予定
実験例としてドローンを使ったフードデリバリーが紹介されていた
実験場として機能するための3本柱

 まちづくりをともに行なう連携パートナー企業も発表。「複合棟I」の22~30階・全9フロア約200室で展開する「JWマリオット・ホテル東京」。国際会議誘致・施設運営パートナーとしてコングレ、エリアMICEについてはDMO連携パートナーとして八芳園、プリンスホテル。「住宅棟」でインターナショナルスクールを運営する学校法人の東京インターナショナルスクールが名を連ねた。

まちづくりをともに行なっていく連携パートナー企業を発表
マリオット最高峰ホテルブランド「JWマリオット・ホテル」が開業する
国際会議誘致・施設運営パートナーに株式会社コングレ、エリアMICEについては、株式会社八芳園、株式会社プリンスホテル
インターナショナルスクールを運営する学校法人 東京インターナショナルスクール

 マリオット・インターナショナル 日本・グアム担当エリアヴァイスプレジデント カール・ハドソン氏も発表会にオンライン参加。日本では2軒目、東京初進出となる「JWマリオット・ホテル東京」について「JR東日本と2025年開業のプロジェクトデパートナーシップを組むことができ非常に光栄です。東京で初めてのJWマリオット・ホテルをデビューさせるにあたり、末長くサクセスフルな協力関係をJR東日本と築いていきたい」と喜びを表わした。

オンラインで参加したマリオット・インターナショナル 日本・グアム担当エリアヴァイスプレジデント カール・ハドソン氏
「Spa by JW」や25mプールなどのフィットネス施設、クロワッサンバーからオールデイダイニングまで揃う

建築家・隈研吾氏が解説。「文化創造棟」は大地と一体化したデザインが特徴

 発表会では、オンラインで建築家・隈研吾氏が「文化創造棟」のデザイン説明を実施。高輪ゲートウェイ駅の外装デザインを手がけた隈氏によると、「駅とともに街づくりのシンボル的な意味を担う」のが同棟とのこと。

「大地がそのまま螺旋を描き、屋上まで続く、そして大きなテラス(外部)と室内(内部)の連続性のある一体化したデザインは“つなぐ”というテーマを表現しています。理念・環境・SDGsなどへの意識がそのまま建築物の形となっています。建物は自然木と緑で覆われており、遊歩道も含め季節で異なる花々が咲き、四季を感じ心に安らぎを与えてくれます」と話してくれた。

建築家・隈研吾氏がデザインを担当した「文化創造棟」
大地と一体化し、螺旋を描いて屋上庭園までつながる
自然木と緑が建物を覆い、安らぎを四季の花々で与えてくれる
線路側から見た様子。シンボリックな形であることが見てとれる

 発表会では、「文化創造棟」の具体的な概要とプログラムについても発表。JR東日本文化創造財団 文化創造棟 準備室長の内田まほろ氏が「100年先へ文化をつなぐ」をテーマに「未来には文化が必要、文化だったら日本は強い」「日本をつなぐJR東日本が新しい日本の文化を創造し、未来に貢献する」と同棟の意義を解説。

一般財団法人JR東日本文化創造財団 文化創造棟 準備室長 内田まほろ氏
高輪はもともと文化と技術のイノベーションが根付いている場所と紹介
100年先へ文化を運ぶための3つの柱
高輪から文化を日本・世界各地へ発信、そして未来へと運ぶ

 地上6階・地下3階の「文化創造棟」には、大小の展示施設「BOX 1500」「BOX 300」や最大1200席のホール「BOX 1000」、約100畳の畳を備える多目的スペース「TATAM I200」を併設し、イベントともに次世代への文化育成・交流・発信の場として運営していく。屋上庭園には足湯もあり、月見や花見イベントも開催予定だ。

 館内では、JR東日本のSuicaやロボット技術を活用し、受付、チケッティングに清掃・警備までさまざまな文化施設のイノベーションにも挑戦。同時にメタバースやデジタル中継を大前提とした情報インフラを整えるとのこと。

「文化創造棟」には大小4つの空間が新たに誕生する
開放感ある施設が特徴。館内にはSuicaやロボットなどJR東日本の技術を活用しながら運営

 なお、一括して自主企画ができる強みを活かし、同一テーマでイベントが連動するフェスティバル方式での企画運営を実施。文化コンテンツになじみのあるユーザーだけでなく、子供やファミリー、地域を巻き込み、幅広い層の知的・美的好奇心を満たしていく。内田氏は「全国とつながるJR東日本のネットワークを最大限に活用し、文化を運ぶメディアとして高輪から発信、全国、全世界への活動展開を目指す」と話す。また、「発信する場所として機能することで、アイデアの交流を生み、人を育て、地域活性化のエンジンに」と意気込んだ。

 さらに発表会では初公開の200分の1模型も展示。立体化した模型でより「高輪ゲートウェイシティ」の全貌が把握できるようになっていた。また、「HoloLens2 MR」を使いMR空間でJR東日本が目指すビジョンを紹介するアクティビティも用意されていた。

「高輪ゲートウェイシティ」の全景模型(200分の1)
すべての起点となる「高輪ゲートシティ駅」
2025年3月に先行して開業する「複合棟I」
2025年度中に開業予定の「複合棟II」
屋上庭園があり、緑に包まれた「文化創造棟」
螺旋状で大地とつながる様子がより見て分かるはず
海外から訪れるビジネスマン向けの「住宅棟」
「高輪ゲートウェイシティ」の各棟を解説するボード
「住宅棟」側から見た全景
「HoloLens2 MR」を使ったアクティビティも用意