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JAL、成田空港で自動手荷物預け入れ機運用開始。5~10分でチェックインと荷物預けを完了
2020年春には“顔パス”で搭乗できるOneID導入予定
2019年10月29日 16:17
- 2019年10月28日 サービス開始
JAL(日本航空)は10月28日、成田空港の国際線チェックインで自動手荷物預け機のサービスを開始した。10月29日、このチェックインスタイルを報道公開した。
JALでは自動手荷物預け機や顔認証などを活用することで空港での搭乗手続きをスムースにする「JAL SMART AIRPORT(JALスマートエアポート)」を展開することを発表しており、成田空港においてもその第一弾のサービスとして運用を開始した。JALではハワイ・ホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港で自動手荷物預け機を導入しているが、国内空港においては国内線、国際線含めて初めてのサービスとなる。
導入したのは、NAA(成田国際空港)が設置した自動手荷物預け機で、豪ICM Airport Technicsの「Series 7」(関連記事「成田空港、新規導入の自動手荷物預け入れ機を公開。国際線では国内空港初の本格導入。全ターミナルに展開」参照)。すでに第1ターミナルではANA(全日本空輸)が運用を開始しているが、JALではANAとはやや違った運用を行なう。
ANAではNAAが想定している2つの流れによるセルフチェックインに対応している。1つは空港の自動チェックイン機を利用して搭乗券と手荷物タグの発行を行ない、自動手荷物預け機に進む流れ。もう1つはWebチェックインを済ませている利用者が自動手荷物預け機へ直接向かう流れだ。
JALはこのうち前者の自動チェックイン機を利用して搭乗券と手荷物タグを発行し、そのうえで自動手荷物預け機へと進む搭乗プロセスのみを利用可能としている。同プロジェクトに携わるJAL 空港企画部 旅客・制度企画グループ 主任の日野原希氏は、「自動チェックイン機での搭乗手続きや手荷物タグの発行とそれを貼り付ける作業は時間がかかるので、作業を分割し、自動手荷物預け機はシンプルに『預けるだけ』とした」と説明。
さらに、自動チェックイン機と手荷物預け機の比率をおよそ2:1と、時間がかかる自動チェックイン機の台数を豊富に設置し、効率的な運用を可能にしているという。
もう1点の特徴は動線を分かりやすくしたことにある。「海外事例なども調査するなかで、自動手荷物預け機を効果的に運用するには、自動チェックイン機を含めた動線が重要な要素だと分かった」とし、自動チェックイン機から、すぐ目の前の自動手荷物預け機までの距離の最適化や、どこに進めばよいかを視覚的に分かりやすいレイアウトとした。
導入箇所は成田空港第2ターミナル南のOカウンター。その向かいのMカウンターにも2020年春までに導入予定となっており、O/Mカウンター合わせて、自動チェックイン機は現状で25台、2020年春に10台を追加導入。自動手荷物預け機は現在Oカウンターのみに7台を設置しており、2020年春に7台を追加導入する予定となっている。
すでに報道公開前日の10月28日から運用をスタートしており、1日のみの実績としては、有人カウンターの最大待ち時間は自動手荷物預け機設置前の約30~35分から約20分へと短縮。自動手荷物預け機の待ち時間は5~10分程度とのことで、有人カウンターの半分近くの時間で利用できることや、有人カウンターの待ち時間短縮への効果が現われている。
さらに今後は、NAAとともに、「周辺家具の設置や、LEDライトを活用して視認性を高める工夫」「セルフチェックインエリアとして確立して、お客さまの目に留まりやすく、ご利用しやすくなるよう、エリア全体のサイネージなどを工夫」といった取り組みを進める予定だという。
自動チェックイン機から自動手荷物預け機までの手続き
ここでは、自動チェックイン機と自動手荷物預け機を利用する手順を紹介しておきたい。
まず、自動チェックイン機では、パスポートスキャン、搭乗便名の入力、座席指定やマイレージ番号の登録、手荷物預けの有無/個数などの入力、搭乗券と手荷物タグの受け取り、が主な作業内容となる。
ここで注意したいのは、便名を利用者が入力する必要があることで、覚えておくなり、Eチケットを取り出しておくなりしておくとスムースだ。ちなみにこれは、パスポート番号から搭乗する航空便名の検索を内部処理する際、当該パスポート番号で同日に予約が入っている航空便名を検索するのに効率のよいデータ構造にはなっておらず、同日の航空便に対して総当たり式に当該パスポート番号を検索していく必要があるために時間がかかることが理由という。
続いて、自動手荷物預け機へと移動。
発行された手荷物タグも乗客自身で貼ることになるが、自動チェックイン機の前で貼ってもよいし、自動手荷物預け機の待ち行列があれば、列に並んでいる間に貼る方が時間の効率はよいだろう。色分けされた剥離紙を剥がして荷物の取っ手などに巻き付ける作業となる。剥離紙の側には乗客用の控えが残るので、これも受け取りまで保管する。
そして預け入れる手荷物を台の上に置く。システム的にはタグを上にするのが理想で、台の前に描かれたピクトグラムもそのようになっているが、搬送時に倒れる可能性が高いため、スーツケースであれば寝かせることをお勧めしている。タグは位置によっては読み取りエラーが出る場合はあるので、エラーが出たらタグの位置を少し変えてみるとよい。
画面での手続きは、搭乗券のスキャン、内容の確認程度、預かり控えの受け取り、となる。先述のように、ここでは「預けるだけ」のシンプルなプロセスとしているのが特徴だ。
2020年春には“顔パス”の「OneID」導入。Kカウンターに顔パス搭乗向けエリア
本サービスの開始にあたり、JAL 成田空港支店長の中野直人氏は「これがこのあと始まるスマートエアポートサービスの大事なパーツの一つであること。すなわち、顔認証による一気通貫のプロセスが始まるので、そのパーツの一つが登場したことになる」と導入の意義を説明。「チェックイン機は2018年9月に再配置した。ここで顔データを登録すれば、手荷物預け入れも後日搭載するカメラを使って顔認証で照合できる。保安検査場を入る際も顔認証、搭乗ゲートも顔パスで搭乗する」と紹介した。
JALでは2020年春に、NECのOneID技術を用いて搭乗手続き時に顔情報を登録することで、自動手荷物預け機、保安検査場、搭乗ゲートを顔認証のみで通過できるサービスを計画している。
このOneID導入にあたっては、現在設置している自動チェックイン機は非対応となっており、Mカウンターに追加設置する自動チェックイン機は対応機を導入する予定。自動手荷物預け入れ機については、カメラの追加とソフトウェアの更新で対応できる。
ただし、“セルフチェックインエリア”としての活用が始まったM/OカウンターについてはOneID導入直後も当面は今回導入した搭乗スタイルを継続し、顔認証についてはKカウンターに専用のチェックインエリアを設ける予定としている。
このほか、JALは手伝いが必要な利用者向けに成田空港のMカウンターに「JALスマイルサポート」を設置しているが、新たに団体南カウンター襟亜に「スペシャルアシスタンス」カウンターを新設。「JALスマイルサポート」から「スペシャルアシスタンス」へと名称も場所も変えてリニューアルする予定。
スペシャルアシスタンスカウンターは2020年1月のオープンが予定されており、このオープン後に現在のJALスマイルサポートカウンターを閉鎖し、自動手荷物預け入れ機の設置工事を行なう予定になっている。