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ANAとフィリピン航空が業務・資本提携。高いポテンシャルを持つ両国間の航空需要創出に意欲示す
2019年2月8日 22:10
- 2019年1月29日 発表
- 2019年2月8日 調印式典実施
ANAHD(ANAホールディングス)とフィリピン航空の親会社であるPALホールディングス(PAL Holdings、以下PALHD)は1月29日、ANAHDがPALHDが発行する株式の9.5%を9500万ドル(約105億円相当)で取得する業務・資本提携を締結することを発表した。フィリピンよりPALHD、フィリピン航空関係者が来日し、2月8日にこの業務・資本提携の調印式を実施した。
ANA(全日本空輸)とフィリピン航空は、2014年10月からコードシェアの実施やマイレージ提携、空港業務の相互受委託など連携しており、今回の資本提携で協業体制を強化し、連携の拡大・強化を図る。
調印式の冒頭であいさつに立ったANAHD 代表取締役社長の片野坂真哉氏は、「フィリピン航空は1941年に設立された、アジアで最も長い歴史を持つ、フィリピンを代表するフルサービスの航空会社で、日本とフィリピンを結ぶ路線就航も日本の航空会社よりも歴史が長く、今年で70周年を迎えた。フィリピン航空を傘下に持つルシオタングループは、食品、飲料、航空、ホテル、金融など、フィリピンの産業界をリードする企業グループであり、このような歴史と実力のある素晴らしいパートナーと提携できてうれしく思う」と提携を喜ぶとともに、フィリピンについて「成長著しく、アジアのなかで高い経済成長率を維持し、日本とフィリピンの間の経済、人的交流もますます盛んになっている」と評価。
「フィリピンから日本各地を訪れる渡航者数の伸びは過去5年間で5倍となり、アジア地域のなかでも目を見張るものとなっている。フィリピンのポテンシャルは非常に高いものと確信している」と期待を示した。
また、同氏自身は2011年2月にANAが初めてのフィリピン路線、成田~マニラ線を開設した折にマニラを訪問し、調印式にも出席しているフィリピン航空社長のバウティスタ氏に初めて面会。「その後も関係が深まり、ルシオタングループのルシオ・タン会長やマイケル・タン社長とも交流を深め、昨年のマニラ訪問のときには、次は東京で会えればよいと話していたことが現実になった。最初にお会いしてから8年を経ているが、このようにさらに深い提携に結実できたことは感無量」との感想を述べた。
そして、あいさつの最後には、「今後、末永くルシオタングループ、フィリピン航空の皆さまと交流を深めて、ウィン・ウィンの関係を構築し、さまざまな分野においてともに取り組んでいきたい」とコメント。会見の質疑応答の際には、具体的な提携として、「航空分野以外では、ANAグループは全日空商事がマニラに農場を持ってバナナの輸入をしている。今後、フィリピンにおいては地下鉄工事、空港工事などのビジネスのチャンスがある。ANAHDとしては、航空会社は航空会社の実勢に任せる一方で、それ以外でもフィリピンでのビジネスの機会に期待している」と述べた。
ルシオタングループ 社長/PALHD 取締役のマイケル G.タン氏は、「(ルシオタングループ会長で同氏の父親でもある)ルシオ C.タン氏に代わってあいさつする」と断わりを入れたうえで、「両航空会社には寛大で心温まるおもてなしという豊かな伝統がある、そのような気持ちですべてのお客さまに対して接しているが、まさにそれは両国の文化の特徴であると思う」と今回の提携調印式を迎えたことに喜びを示した。
また、フィリピン航空が1949年にマニラ~東京線を開設して70周年を迎えたことや、現在フィリピンのマニラ、セブ、日本の東京、大阪、名古屋、福岡、札幌とを結ぶ便を週84便運航していることを紹介。
今回の提携を「双方の会社の豊かな歴史のうえに、新たな協力の時代を切り拓いていく」とし、「日本の賞賛すべき規律と勤勉さ、労働倫理、そしてANAを世界有数の素晴らしい航空会社に育てた力強い創造力から私どもは多くのことを学ぶことができる。一方、私どもからはアジアで最も歴史のある航空会社として、フィリピンおよびフィリピン国民のベストな部分を地上で空の上で、お客さまに提供してきた貴重な経験を提供する」と双方の強みを表現。
ANAに対しては、「フィリピン航空が成長していくための新たな時代の提携に発展させたいと思った。2年前から取り組み始めている変革の取り組み、特に5スターの航空会社になるという願いを持っているが、その面でも支援していただけると思っている」との希望も述べている。
そして、「友情の精神で前進する。成功は機上、空にある」と述べ、あいさつを締めた。
ANA 代表取締役社長の平子裕志氏は、「日本~フィリピン間の旅客需要は毎年10%を超える高い成長率を誇り、フィリピンからの訪日旅客も多く、今後もポテンシャルの高い市場であると考えているので、提供強化による需要創出効果に期待している」と提携による航空事業への効果についてコメント。質疑応答の場では、現在の日本~フィリピン間旅客は8割が観光需要であることから、ビザ緩和などの施策によって生まれる新たな需要が生まれることにも期待を示した。
ANAとフィリピン航空の共通性についてもコメント。「日本とフィリピンは四方を海に囲まれた美しい島国であること以外にも、おもてなしが好きという国民性が共通している。おもてなしの精神をフィリピーノ・ホスピタリティと呼ぶそう。このたびの提携により、ANAもフィリピーノ・ホスピタリティをしっかり学び、日本のおもてなし精神に磨きをかけて、フィリピン唯一のフルサービスキャリアであるフィリピン航空とANAが一致協力してより高いレベルの、いや最高のレベルの品質・サービスを提供できるよう努めたい」とし、「このたびの提携が日本とフィリピン両国間の、経済、文化、人的交流の促進のための架け橋となることを願いたい」と締めた。
航空事業面での提携内容については、2014年10月からコードシェアを実施しており、現在はフィリピン航空の国内線、国際線計19路線にANA便名を付けて運航。マイレージプログラムでの連携や、羽田空港ではグランドハンドリング業務(空港での地上支援業務)を委託するなどしている。
今回の資本・業務提携後の取り組みついては、「羽田以外の空港へもグランドハンドリング業務を、できればケータリングビジネスも羽田・成田を中心に、フィリピン航空に提携していただけないかと思っている」と期待。
また、「今回のフィリピン航空、PALHDとの提携で、この地区への我々の戦略は固まった」と話し、「アジア・太平洋地域は我々にとって未開拓のエリア。ここに対して(オーストラリア・パース線就航を例に)自社便の新規路線に加えて、提携という形で双方の戦略をうまく融合させて、充実させていく」との方針を示した。
フィリピン風のあいさつで「健康で長生きを」を意味する「マブハイ!」と切り出したフィリピン航空 取締役社長 兼 COO(最高執行責任者)のハメイ J.バウティスタ氏は今回の提携について、「日本とフィリピンの関係の飛躍的躍進を示すもの」と表現。「航空、航空、観光、ビジネス機会、文化交流などに広がる、両国の友好関係がさらに強化され、両国民をさらに近付ける知識を共有できることは両国民に多いに役立つもの」とした。
そして、コミューターサービスから長距離路線までを運航するフィリピン航空の事業を紹介したうえで、「グローバルキャリアとして4スターを獲得したことを歓迎すると同時に、世界でもっとも改善が見られた航空会社に選ばれたことをうれしく思う。このような受賞はお客さまや関係者の期待を高めるもので、取り組むべき課題もはっきりしてくる。継続的に商品やサービスを向上させ、世界の舞台でより力強い競争相手になろうという私たちの確固たる信念を改めて確認させられる」との言葉に続き、「ANAはSKYTRAXの5スターを6年連続で獲得しており、賞賛している。ANAはまさに『Inspiration of Japan』、世界に向けた手本だと思う」と、ANAからの出資、業務提携拡大に喜びを示した。
「航空サービスにおいて実りある協力を続けられることを楽しみにしている。私たちには達成すべき目標がある。果たすべき任務がある。そして、勝ち取るべき将来がある。『マブハイ!』」とあいさつを締めた。
なお、フィリピン航空は先のマイケル G.タン氏が触れたとおり日本~フィリピン間を週84便で結んでいるが、今後の路線展開についてバウティスタ氏は、成田~クラーク線、成田~パングラオ線、成田~ワオ線を候補に挙げ、その採算性を検討していることを明かした。
調印式では、フィリピン共和国大使館 公使 兼 総領事のロベスピエール L.ボリバール氏も来賓として臨席。「この提携によりアジア最大の航空会社2社間の業務提携がさらに強化されていく。加えて両国間の友好の絆もさらに豊かになる。いまフィリピンと日本の関係は黄金時代であり、フィリピン航空とANAの提携は両国の人的交流をさらに活性化するうえで、重要の役割を果たすだろう」とコメント。
「両国の持つ比類なき美しさへの展望を開いてくれる。見事な富士山、壮大なマヨン火山、札幌の雪、ボラカイ島の砂浜、フィリピン航空とANAはこのような素晴らしい両国を探求する機会を与えてくれる」と話した。