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ANA、2018年度第3四半期決算会見。売上高1兆5684億円は、第3四半期「過去最高」
2019年1月30日 00:00
- 2019年1月29日 発表
ANAHD(ANAホールディングス)は1月29日に会見を開き、2018年度(2019年3月期)第3四半期の連結業績を発表した。
会見にはANAHDの執行役員 グループ経理・財務室長 兼 財務企画・IR部長の福澤一郎氏、財務企画・IR部 会計チーム リーダーの築舘宏治氏、広報・コーポレートブランド推進部長の高柳直明氏が出席し、連結経営成績について説明した。当期の連結対象会社は合計79社となる。
2018年度上期の度重なる自然災害や、ボーイング 787型機に搭載されているロールスロイス製エンジンの点検・整備に伴う欠航影響があったが、国内線・国際線の各旅客事業と国際線貨物事業において堅調な需要を確実に取り込んだことなどから、連結売上高は前年同期比で5.2%増の1兆5684億円となり、第3四半期として「過去最高の売上高」となった。
燃油市況の大幅な上昇により燃油費が328億円増加したことに加え、中期経営戦略における「安全・品質サービス」の総点検の年として、基本品質にかかわる支出を行なった結果、営業費用は前年同期比6.6%増の1兆4118億円となった。これらの結果、営業利益は前年同期比5.6%減の1566億円、経常利益は同5.9%減の1541億円となった。
特別損益は、前期にピーチ(Peach Aviation)を連結子会社化したことによる338億円を含む439億円を特別利益として計上した一方、当期はANA(全日本空輸)に対して提訴されていた米国の集団訴訟が和解に至り、特別損失を65億円計上した。以上により、親会社株主に帰属する四半期純利益は461億円減の1068億円となった。
航空事業においては、国内線旅客事業で2018年4月から機内Wi-Fiサービスの無料提供を開始、9月からは355日前から予約できる国内線割引運賃「ANA SUPER VALUE EARLY」を開始するなど、利便性・快適性の向上を図った。また、12月から羽田空港国内線の保安検査場通過締め切り時間を、出発時刻の15分前から20分前に変更するなど定時性の向上にも努めた。ネットワークはセントレア(中部国際空港)~宮古空港線、福岡空港~新石垣空港線を通年運航とし、需要の創出を図った。そして国内線旅客収入は、イールドマネジメント(需要に合わせて座席数や単価を管理すること)などによる単価向上・改善効果が現われたことなどから前年同期比0.4%増、21億円の増収に転じた。
国際線旅客事業では2018年6月から羽田空港~バンコク・スワンナプーム国際空港線を増便し、成田路線と合わせた首都圏~バンコク路線を1日5便とするなどネットワークのさらなる拡充を図った。日本発のビジネス需要が引き続き好調に推移したことに加え、中国・アジア路線を中心とした訪日需要が旺盛だったことから、旅客数が前年同期比5.6%増となり、燃油サーチャージの改定分も含めた単価も5.1%向上。この結果、国際線の旅客収入は前年同期比11%増、492億円の増収となった。
貨物事業は、国際線で北米・欧州向けの自動車関連部品をはじめとする旺盛な需要を背景に高単価貨物の取り込みに注力したことに加え、チャーター便を活用した輸送力強化を図るなど、需要の取り込みに努めた結果、国際線貨物収入も前年同期比12.1%増、106億円の増収となった。
LCC事業は、ピーチが那覇空港~高雄国際空港線、関西国際空港~釧路空港線、バニラエアが成田空港~石垣空港線、那覇空港~石垣空港線を新規開設するなど積極的に路線展開を進めた。また、イールドマネジメントによる旅客単価の向上が奏功しピーチが41億円、バニラエアは6億円の増収となった。
セグメントごとに見ていくと、航空事業については燃油費増加の収入連動費用の増加に加え、品質サービスの強化、安全・人への投資を進めたことから、営業費用は前年同期比で814億円増加した。なお、燃油費はヘッジを活用し、費用平準化に努めたものの、燃油市況が前年同期比約4割上昇したため、14%の増加となった。
また、LCC事業では旅客単価の向上を図った一方、燃油費や人件費が増加したことにより減益となった。以上の結果、航空事業の営業利益は前年同期比61億円減の1492億円となった。
航空関連事業では空港地上支援業務やケータリング業務などの受託が増加したことなどにより、55億円の増収。旅行事業では、ハワイ方面への商品力強化が奏功した一方で、国内パッケージ旅行の集客が伸び悩んだことなどから、66億円の減収となった。商社事業は、リテール部門の訪日需要による免税売上が引き続き好調に推移したことに加え、食品事業の需要回復も受け、76億円の増収となった。
連結財政状態は、航空機や羽田エリアに建設中の訓練施設の投資を積極的に進めたことにより、資産は前期末と比べて261億円増加し、総資産は2兆5886億円となった。負債は2018年10月にエアラインでは世界初のグリーンボンドによる100億円の資金調達を行なった一方、借入金の返済を進めたことなどから491億円減少。純資産は当期純利益の計上などにより前期末と比べて752億円増加し1兆758億円となった。この結果、被支配株主持ち分を差し引いた自己資本は1兆666億円、自己資本比率は「過去最高」の41.2%となった。
連結キャッシュフローの状況は、税金と調整前の当期純利益、減価償却費などを調整した結果、2065億円の収入となった。投資キャッシュフローは、事業拡大に向けて航空機や訓練施設への投資を中心に進めた結果、2077億円の支出となり、フリーキャッシュフローは11億円のアウトフローとなった。財務キャッシュフローは長期借り入れ、社債発行などの資金調達を行なった一方、配当金の支払い、ピーチへの株式の追加取得、借入金の返済などを行なったことから、535億円の支出となった。以上の結果、現金および現金同等物期末残高は期初より548億円減少し、2156億円となった。
なお、通期の連結業績予想の見直しは現地点では行なっていない。ロールスロイス製エンジンの点検・整備に伴う欠航影響に対する補償については、ロールスロイスとは2018年秋から交渉中であり、今年度中に何らかの決着、プラスアルファが予想されるが、これは反映していない。