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ANA、約8000名のCAから「おもてなしナンバーワン」を決める「第6回“OMOTENASHIの達人”コンテスト」開催

2018年11月8日 実施

ANAのCA(客室乗務員)が接客サービスを競う「第6回“OMOTENASHIの達人”コンテスト」に出場したファイナリスト

 取材の仕事ではなにかと利用する機会が多い飛行機。ターミナル、そして連絡橋での人の渋滞を抜けて機内へ入ると、真っ先に目に入るのが航空会社のCA(客室乗務員)さんたちの笑顔とあいさつ。そして降りるときも同様に笑顔やあいさつで見送りしてくれる。飛行機に乗り慣れた人には当たり前に感じる光景だが、乗る、降りるということに対してあのようなサービスが受けられるのは、おそらく飛行機だけではないだろうか。

 もちろん機内でのサービスも十分なものという印象だが、筆者は機内という特殊な空間に少しプレッシャーを感じたりするので、毎回、印象に残るのは乗り降りの際に笑顔で対応してくれることだったりする。そんなCAさんたちによる接客の気持ちとスタイル(あえて技術とは言いたくない)を競い合うのが、ANA(全日本空輸)の「第6回“OMOTENASHIの達人”コンテスト」だ。

 この「“OMOTENASHIの達人”コンテスト」はANAが毎年行なっているもので、6回目となる2018年は11月8日にANA訓練センターで実施した。

第6回を迎えたANAのCAの接客サービスコンテスト「“OMOTENASHIの達人”コンテスト」

 コンテストでは、ANAのCAが日ごろの業務で行なっている「ANAらしい“OMOTENASHI”のサービスや接客技術」を競い合うが、ただ順位を決めるだけでなく、コンテストに参加しているCAの姿から、組織全体でサービス品質の向上への意識を今以上に高めることや、会社の仲間に対して関心を持ってお互いの強みを認め合う文化を創り出すことを目的としたものとなっている。

「“OMOTENASHIの達人”コンテスト」にはチーム部門と個人部門を設けており、チーム部門は32チームのエントリーのなかから10チームが予選会へ出場。予選会では10チーム中、2チーム(4名×2チーム)が選出され、この日の決勝へ進んだ。

 個人部門はANAに在籍する約8000名のCAのなかから、社員の投票によって選出された上位8名によって競われる。

チーム部門と個人部門では審査内容が変わるので、会場もそれに合わせて2つ用意している。こちらはチーム部門審査用。ふだんCAの研修などに使用している場所で、旅客が満席の状況での機内サービス内容を審査する
こちらは個人部門用の会場。ANA社員が扮する特徴ある乗客とのやりとりを審査する

 開会式ではANA代表取締役社長の平子裕志氏が審査員を代表してあいさつを行なった。平子氏は冒頭「実は昨日(11月7日)すごいニュースが飛び込んできました。2018年度日本版顧客満足度指数(JCSI)の国際線部門におきまして、当社が6指標すべてトップとなりました。こういうタイミングで今日この“OMOTENASHIの達人”コンテストが開催されるということについてうれしく思います。“OMOTENASHIの達人”コンテストの『おもてなし』とは、東京オリンピック・パラリンピック招致の際、滝川クリステルさんが英語による『おもてなし』の説明を行なったことで国際的に知られることになったものですが、この第6回“OMOTENASHIの達人”コンテストの『おもてなし』がローマ字表記になっているのはそういうことを意識しているのかな、と思いました。このおもてなしは、お客さまによい時間を過ごしていただくイメージだと考えます。遠からず、近すぎずの適切な距離感を保ち、お客さまがストレスを感じない時間を過ごしていただく。そういったものではないでしょうか。

 さて、この場にはファイナリストとして16名の方が来ていらっしゃいます。チーム部門からは2チーム8名、個人部門はフレッシャーズが4名、そしてエキスパティーズが4名のなかでグランプリを争うというものになりました。16名の皆さまには敬意を表したいと思いますし、今日に限っては先輩と後輩の関係はなしにして、思い切りご自身のおもてなし力を発揮していただきたいと思ってます」と語った。

開会式であいさつする全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏

 最初の審査はチーム部門から。審査にはANA訓練センターにある機内セットを使用。設定は国際線の羽田~ニューヨーク(NH110便)に搭乗したビジネスクラスの乗客役に対して食事やドリンクのサービスを行なうというもの。ここでは乗客への接遇、会話力、チーム力を見るほか、ANAブランドが目指しているブランドイメージに沿った対応ができているかを審査する。審査はANA代表取締役社長の平子裕志氏ほか7名の取締役執行役員による招待審査員によって行なわれる。

決勝に臨むファイナリストが開会式で並ぶ
同じ職場の仲間も応援に駆けつけている。おそろいのウエアや応援グッズなども用意する気合いの入れよう
コンテストの模様は羽田空港と伊丹空港にあるANAの客室センターに中継されていた
チーム部門は2チームが決勝で競う。こちらはチーム「La Mahana」“暖かい太陽”の皆さん。右から吉村美希さん、加藤みおさん、古川実季さん、小澤彩佳さん
こちらはチーム「ANA DREAM HEART」“想って成すはOMOTENASHI” の皆さん。右から伊藤亜矢子さん、濱野美智子さん、鈴木伶佳さん、柴田響子さん
審査にはANA客室訓練部からインストラクター2名も参加。乗客に扮する特別審査員とは違う視点から審査を行なう
審査の様子を写真で紹介する。シートを順番にまわり、自己紹介、食事やドリンクの内容の説明などを行なう
ギャレーでの動きも客室側にあるモニターに表示。ギャレーと客室のチームワークも審査のポイント
メニューの種類だけでなく食事の特徴に関しても説明を行なう。お手製のお品書きも用意。メニューに迷う乗客はそういった情報があると選びやすくなるようだ
ニューヨークに着いてからどこへ行くのがいいか?などの質問に受け答えする。CA手書きのお勧めお土産リストも渡していた
インストラクターは会場を歩きながらCAの接客を細かくチェック
特別審査員は自身が受けたサービスについての評価を行なう
応援に駆けつけている同僚も真剣に審査を見つめる
審査会というと張り詰めた印象もあるが、とにかく笑顔が多く、終始明るい雰囲気だった

 会場を移動して、次は個人部門の審査に入る。個人部門はANAに在籍する約8000名のCAが、コンテストにふさわしいと思うCAへ投票し出場者を決める。個人部門では2015年以降に入社をした“フレッシャーズ”と、2014年以前に入社をした“エキスパティーズ”の2つのクラスに分けて審査を行なう。なお、両クラスとも4名が選出されている。

 個人部門の審査内容は、乗客に与える印象面、スキル面、ホスピタリティ面、そしてANAブランドが目指すブランドイメージなどを見る。審査はビジネスクラスを想定した4席の客室セットで行なわれ、4席すべてに特徴ある乗客役(ANAのスタッフ)が順番に搭乗。座席への案内から審査がスタートしてそれぞれの乗客役に対応していくというもの。なお、審査員はチーム部門同様にANAの役員が務める。

 個人部門フレッシャーズに出場するCAは大西桃以さん、金井春奈さん、家弓真樹さん、川畑成美さんの4名。そして個人部門エキスパティーズに出場するのは大濱佳子さん、フアヴァシュ・ピントー・ディルシオさん、堀毛麻衣さん、河合淳子さんの4名となる。

フレッシャーズの大西桃以さん
フレッシャーズの金井春奈さん
フレッシャーズの家弓真樹さん
フレッシャーズの川畑成美さん
エキスパティーズの大濱佳子さん
エキスパティーズのフアヴァシュ・ピントー・ディルシオさん
エキスパティーズの堀毛麻衣さん
エキスパティーズの河合淳子さん
個人部門はCA同士の投票によって選出されており、それだけに職場の代表という印象がとくにあるもの。だからこそ審査の前にはそれぞれの応援団による応援パフォーマンスも盛り上がる

 個人部門での審査は1名で4人の乗客役を相手にする。審査時間は7分となっているが、4人の乗客を相手にするとなると少し短い印象。そのなかで会話を弾ませつつ要望に応え、よいところで切り上げて次の乗客の相手をしなければならない。この時間配分がかなり難しく、さらに乗客役も引き延ばすかように切り上げにくい会話をしてくるケースもあり、エキスパティーズでも時間切れのようなカタチで審査時間が終わることになるCAもいた。

 また、審査時の行き先や状況の設定はそれぞれで違っており、もちろん事前に設定は知らされない。そんななか乗客役から行き先の見どころについての質問が出たら、それに対して簡潔に分かりやすく答えられなければならないなど、頭の回転のよさも求められるものだった。

大西さんの審査時の様子。大西さんにとっての“OMOTENASHI”とは、大切と思う人に対して相手が望むことをするというもの。最初は社員旅行の出発に遅刻し、追いかける便にもギリギリに搭乗したという乗客役への対応。次は海外の乗客役とケガをしている乗客役への対応
金井さんの審査時の様子。金井さんのとっての“OMOTENASHI”とは、乗客の見えない気持ちや声に出ない声に気がつき、寄り添うこと。舞台は大西さんと同様に機内でミールサービスが終わったあとの対応。腕を骨折している乗客役へは食事が不便ならおむすびを握ると声を掛けた
家弓さんの審査時の様子。家弓さんにとっての“OMOTENASHI”とは相手を大切に思い、真摯に向き合って寄り添うことという。羽田発~沖縄行きの搭乗中が舞台。妊婦さんへの気遣いや沖縄のオススメスポットの案内を行なった。また、日本以外からの搭乗者や関西弁で矢継ぎ早に話す乗客役に対応した
川畑さんの審査時の様子。川畑さんのとっての“OMOTENASHI”とは、乗客と真摯に向き合い心から接することとのこと。審査は羽田発~沖縄行きのミールサービス後の設定。関西弁を話す乗客役の会話を切らさない話術のペースに乗せられることなく、3組の乗客役に対して時間内に対応していた
続いてはエキスパティーズの審査。最初の登場は大濱佳子さん。大濱さんにとっての“OMOTENASHI”とは乗客が心地よいと感じる距離感をキープしながらサービスすること。乗客にとってよいと思うことは積極的にアプローチしていくこと。乗客の反応を見ておもてなしを修正していくことの3つ。機内食や11月だけ飲めるワインなども案内していた
ファイナリスト唯一の男性CAとなるフアヴァシュ・ピントー・ディルシオさんの審査。日本人客役への対応は日本語での対応。機内で赤ちゃんのオムツを替えたいという要望に対しての案内から、ロンドンでの食事の案内やロンドンから行けるヨーロッパの観光案内なども行なった。また、自称ラーメン好きという乗客役から機内食に設定されていたラーメンの話題を振られたが、雑学の知識も豊富なようでこれにも詰まることなくしっかり返していた
堀毛さんの審査。堀毛さんにとっての“OMOTENASHI”とは相手を大切に思う気持ちや感謝の気持ちを言葉や行動で表わすことという。設定は羽田発~ニューヨーク行き。審査は久しぶりの夫婦旅行への対応。手芸の趣味について呼び名が分からないと言うシーンには名称を的確に答えたりと、こちらも知識が豊富なところを見せた。海外の乗客役には日本のお勧めの祭りとして徳島の阿波踊りを紹介。自ら踊ってみせた
最後の登場は河合さん。河合さんにとっての“OMOTENASHI”とは見えなくても感じ取ってもらえる喜び。サービスが終ればそれでおしまいではなく乗客の元に“OMOTENASHI”を置いていけるようにしたいとのこと。審査では羽田発~ニューヨーク行きのミールサービス後。雑誌のリクエストから趣味の話を盛り上げたり、お勧めスポットの案内なども行なう。前の対応で出た阿波踊りをもう一度見たいという海外客役からの無茶ぶり(?)にも対応

 すべての競技が終了後、結果発表となった。緊張した顔で並ぶファイナリスト、まずはチーム部門の優勝者が読み上げられた。選ばれたのはチーム「ANA DREAM HEART」“想って成すはOMOTENASHI” となった。チーム代表の伊藤亜矢子さんは「私たちは毎日、出社して退社するまでたくさんの仲間からおもてなしの気持ちをもらっています。だからこそ自然にお客さまに対して“優しくしたい”や“喜んでもらいたい”という気持ちになれていると思ってます。ANAの仲間に囲まれて仕事ができていることを本当に幸せに感じます。そしてANAに乗るために旅行へ行こうと言っていただけるお客さまが増えるよう頑張っていきます」とあいさつした。

チーム部門優勝はチーム「ANA DREAM HEART」“想って成すはOMOTENASHI”

 続いては個人部門フレッシャーズの優勝者発表。選ばれたのは大西桃以さん。大西さんは「手が震えているのですが、本当にありがとうございます。日々、フライトを通じて先輩方から技術を継承していくなかでいろいろと学ぶことがあります。皆さまがいてくださるからこそ、後輩の私たちが成長していけています。お客さまにも教わった技術を活かしたサービスを今後もしていけるように頑張っていきたいと思います」とあいさつした。

個人部門フレッシャーズの優勝者の大西桃以さん

 最後は個人部門エキスパティーズの優勝者発表。選ばれたのは大濱佳子さん。大濱さんは「国際線が就航して乗務を始めましたが、以降も国際線、国内線とたくさん乗務してきました。そして今日この日、ずっと一緒に仕事をしてきた仲間にサポートしてもらったことが本当にうれしく思います。いつまで乗務していくかは分かりませんが、これからも多くのお客さまにANAを選んでいただけるように、そして多くの仲間とたくさんの笑顔で仕事ができるように、これからも頑張っていきたいと思います」とあいさつをした。

個人部門エキスパティーズの優勝者の大濱佳子さん

 以上で第6回“OMOTENASHIの達人”コンテストは終了。各部門の優勝者はもちろん、ファイナリストは“OMOTENASHIの達人”コンテストのピンバッジを胸に乗務する。ANAを利用した際このバッジを付けたCAを見かけたら、その“OMOTENASHI”をぜひ体験してほしい。

決勝に残ったファイナリストは全員特製のピンバッジが与えられ、業務時はこれを胸に付けている。ANAを利用するときはCAの胸のバッジに注目
各部門優勝者の記念撮影