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旭川空港、国際線ターミナル開業式典実施。「きた北海道のゲートウェイ」目指す
2019年9月のグランドオープン後は約300万人を受け入れ可能な空港に
2018年11月22日 18:31
- 2018年11月22日 実施
旭川空港は11月22日、国際線ターミナルの開業式典を実施。空港関係者のほか、国土交通省、自治体首長、航空会社の代表ら、約300名が集まった。
旭川空港は国際線旅客50万人の受け入れが可能な施設として、2017年10月より既存ターミナルの南側に増築する格好で国際線ターミナルの整備を進めており、2018年10月29日に竣工、11月22日に供用開始の運びとなった。施設の内部については別記事「旭川空港、11月22日オープンの国際線ターミナルを公開。既存ターミナルの店舗は新棟に移転」でお伝えしているとおりで、総2階建て延べ床面積は6773m2。既存ターミナルにあった物販店舗も新棟へ移転し、リニューアルオープンしている。
式典の冒頭であいさつに立った旭川空港ビル 代表取締役社長・旭川市長の西川将人氏は、関係者への謝辞を述べたうえで、「旭川空港のターミナルビルは、もともと国際線の便を受け入れることを想定していないなかで設計、完成した経過がある。その後、平成18年(2006年)からアシアナ航空が定期便として就航するようになり、既存の国内線施設を改修して、そこに新たに国際線のエリアを増設する対応をした。国際線の便ができたときに間仕切りをして、緊急的に国際線を受け入れるという施設であり、本来、国際線定期便を受け入れる施設としては安全性も含めて問題のある施設だった。加えて、狭あい化の問題も発生しており、250名、300名乗りといった飛行機の場合には、席がなく、出発前に立っていなければならない状況も発生し、航空会社や利用者の方々に迷惑と不便をかけていた。旭川市と旭川空港ビルとしてこれらの課題を解決しなければならないと、この新ターミナル整備を計画し、整備を進め、本日にいたった」と、旭川空港ターミナルビルの歴史と、国際線ターミナル建設の背景を紹介。
さらに取り組みが進むターミナルビルの改修については、「この国際線ターミナルビルが新たに完成したことで、国際線として1年間に約50万人までのお客さまを受け入れられるようになる。このあと既存施設部分の改修にも入る。完了するのが2019年9月を予定し、そのときにグランドオープンを迎える。それ以降、国内線についても、今の倍以上の200万人以上、あるいは250万人ぐらいは受け入れられるのではないかと想定しており、合わせると年間300万人ぐらいのお客さまを受け入れられる施設が完成する。現在の旭川空港の年間乗降客数が110万人から120万人なので、少なくとも今の倍以上のお客さまを受け入れられるようになる」と、旅客受け入れ能力の拡大について数字を挙げて説明した。
そして、「旭川の魅力、道北の魅力、きた北海道の魅力、旭川空港の魅力、これらを全国に、そして世界に発信して、より多くの航空会社に旭川空港を利用していただいて、そして広く、きた北海道を多くの皆さんが周遊していただける拠点となる空港を目指す。私どもも一生懸命、空港を活性化して、そのことで道北全体が活性化、あるいは北海道全体が活性化するよう、一生懸命頑張っていく」と決意を示した。
来賓として壇上にあがった国土交通省 航空局 空港経営改革推進室長の山﨑雅生氏は、国土交通省が進めている北海道7空港の一括民営委託について、「新千歳、道央圏に観光客や航空路線が集中しているが、北海道全域で受け入れ、北海道全体の航空需要、観光需要を底上げしようという計画」と紹介。
そのうえで、「この際、旭川空港は一番ポテンシャルの高い空港だと考えている。多くの企業や海外エアラインからも、旭川空港、旭川地域、道北の魅力を聞くし、民間委託後の路線就航の希望も耳にしている」と、一括民営化後の旭川空港の可能性に言及し、「民間委託に先んじて新しいターミナルができるということは、委託開始後すぐにでも、さまざまな航空会社が就航できる素地ができていると考える。民間委託のときには、空港そのものの魅力も高めて、飛行機に乗らないお客さまも楽しんでもらえる空港も目指している」と、民営化前の先行投資となる今回のリニューアル事業を評価した。
観光振興の観点からは、「旭川を中心とした、道北、きた北海道地域は観光客から見て、素晴らしい魅力が詰まった地域。旭山動物園は北海道観光の定番。稚内や利尻、礼文なども、北海道らしさのある素晴らしい地域。まだまだ世界で知られていないこともあり、それが路線が就航していない大きな要因になっていると思う。国交省としても、この地域の観光振興、航空需要を盛り上げたい」とPRに協力していく姿勢を見せた。
来賓あいさつとして、北海道副知事 阿部啓二氏も登壇。「旭川空港はご承知のとおり、北海道のちょうど真ん中ほど位置する、地理的に素晴らしい立地の空港。旭川市、その周辺自治体はもとより、道北地域あるいはオホーツク圏も含めて、地域の方々の利便性向上に資する素晴らしいターミナルのオープンではないかと思っている。多くの航空会社をはじめ、航空関係者にも大いなる期待を持って見られているのではないか」と期待。
続けて、「旭山動物園、大雪山国立公園、富良野、美瑛といった北海道を代表する観光資源がある。他方、インバウンドが順調に伸びてきているなか、海外からのお客さまは、そういった施設のみならず、新しい北海道の魅力や、これまで行ったことのない地域を訪れるということで、道北地域やオホーツク方面を含めてまわっていただけるのではないかと思っている。地域の人と一緒に道北周遊、道東周遊ルートの開発に取り組んでいるところ」と、地域の広域的な観光振興について言及。
そういう状況のなか、旭川空港に対して、「きた北海道のゲートウェイ」としての期待を示し、「北海道庁としても、海外とのネットワークをさらに強化したい。人、モノも含めて往来をもっと活発化していくために、さまざまな機会を通じて新たに生まれ変わった旭川空港をしっかりPRして、新しい国際線が就航できるよう取り組んでいきたい」との意欲を述べた。
その後、主催者、来賓計10名によるテープカットが行なわれ、旭川空港の新たなキャッチコピー「就航率99%の安心。」と、呼称(愛称)の「北海道のまん中・旭川空港」を発表(詳しくは関連記事「旭川空港、愛称を『北海道のまん中・旭川空港』に。国際線ターミナル開業式典で市長が発表」参照)。式典の幕を閉じた。
式典後の囲み取材で、旭川空港ビル社長・旭川市長の西川氏は、「いよいよ、このビルがこれから稼働を始める。旭川空港のよさ、道北の魅力をぜひ多くの皆さんにPRして、旭川空港を利用していただけるように一生懸命PRに励みたい」と改めて意欲を示し、「旭川空港は非常に欠航の少ない空港で、就航率が99%を超えている。位置的に北海道に真ん中に位置している」との強みを活かし、「稚内、オホーツク、日本海、あるいは広く道東を含め、多くの本当の北海道に触れていただける場所にある。ぜひ多くの皆さんにこの空港を利用いただいて、きた北海道、そして広く北海道に行っていただきたい」との期待を述べた。
そして、新路線誘致に向けたPRについては、「まずは新しい国際線ターミナルが完成したことをしっかりと航空会社の皆さんに伝え、多くの便を受け入れる施設が完成したことをしっかりとPRしたい。新たな航空会社にアプローチをかけながら、広く地域の魅力をお伝えすることで、1便でも多く定期便、あるいは最初はチャーター便からかもしれないが、路線誘致を図っていきたい」との意欲を示した。
ちなみに、旭川空港の現在の国際線定期便は季節運航が多く、冬期も運航しているのはタイガーエア台湾の旭川~台北・桃園線のみ週2便となっている。この状況について西川氏は、「新千歳空港が先般(2017年の夏期スケジュールで)発着枠を拡大した関係で、旭川に就航していた便が新千歳に移ってしまった」と、その影響を述べる。
一方で、新千歳空港が将来、再び混雑する状況になることを見据え、「その際にはまた、旭川空港という選択肢を皆さんに持っていただけると思うが、そのときに受け入れる準備ができていなければいけない。北海道全体のインバウンドが今後増えるなかで、新千歳空港に次いで旭川空港という選択肢となる空港を目指していきたいと当面は思っている」とした。
他方、国際線定期便就航に向けて、アウトバウンド需要創出の取り組みについて尋ねると、「私どもの地域の大きな課題。人口が旭川圏を含めても50万人程度なので、なかなかその人口で航空機の半分を埋めるのは難しいと思うが、路線のPRをしっかり進める。例えばタイガーエア台湾のポスターを掲示して、台湾へ行くなら旭川空港を利用していただけるということをPRしている。そうした路線も含めてPRすることで、安定して定期便が運航できるようにしなければならないと考えている」と、日本発需要に関する課題と取り組みについて述べた。