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「SUBARUテックツアー ボーイング787『中央翼』体感フライト」実施、JAL運航の787-8型機で旭川~成田に乗ってみた
スバルが中央翼製造を担当
2017年11月6日 15:15
- 2017年10月20日 実施
スバルは10月20日、報道向けにスバルの技術紹介などを行なう「SUBARUテックツアー」を開催。スバル研究実験センター美深試験場(北海道中川郡美深町)の公開や、JAL(日本航空)のボーイング 787-8型機を使った「SUBARUテックツアー ボーイング787『中央翼』体感フライト」を実施した。
スバルは自動車メーカーである一方、1917年創業の飛行機研究所をルーツとする航空機メーカーの面も持つ。日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)や、米ボーイング、仏エアバスといった世界的な企業と協業しており、ボーイングへは787-8/-9/-10型機の「中央翼」を2007年から合計650機以上製造・納品している。
「SUBARUテックツアー ボーイング787『中央翼』体感フライト」では、成田空港~旭川空港間の往復において、スバルの中央翼を採用したボーイング 787-8型機を使ったチャーターフライトを実施。スバルのユーザーコミュニティ「SUBARU Web コミュニティ」から選ばれた参加者や報道陣を乗せた機内では、スバルやJALの技術者らによるプレゼンテーション、記念品の配布、JALの自動車輸送サービス「J SOLUTIONS WHEEL」を使い空輸したスバル「BRZ」の積み下ろしデモンストレーションなどを行なった。
当日は国際線仕様の787-8型機をチャーターフライトに使用し、成田からの往路はJL4901便、旭川からの復路はJL4902便として運航された。記者は復路に搭乗したのでその様子をレポートする。
機内でのプレゼンテーション前には、このチャーターフライトのために用意された紙コップを使ってドリンクを提供。手書きのメッセージカードやクッキーなども配られた。また、「千社札シール」に続く第2弾「JAL TODOFUKEN SEAL」も配布された。JALの国内線に乗務するCA(客室乗務員)は、自身に縁のある都道府県にちなんだ「JAL TODOFUKEN SEAL」を10月3日~2019年3月31日の期間配布しており、「お客さまとのコミュニケーションのきっかけを作る」ことが目的でもあるので、搭乗した際には声をかけてみるとよいだろう。続いてシートモニターでは、スバル 代表取締役社長の吉永泰之氏から参加者へのビデオレターが流れ、7回目となった「SUBARUテックツアー」の参加者やJALへの感謝が述べられた。
プレゼンテーションではまず、スバル 航空宇宙カンパニー 技術開発センター 研究部長の齋藤義弘氏がマイクを握り、同社や中央翼についての説明がなされた。
スバルはJAXA、防衛省、米ボーイング、仏エアバスなどと協業しており、航空宇宙カンパニーでは、陸上自衛隊の回転翼機、JAXAや防衛省などが使用する無人航空機、旅客機の主翼・中央翼の開発などを行なっている。ボーイングは1916年設立だが、スバルも1917年の飛行機研究所設立以来100年の節目を迎えた。
ボーイング 787型機の開発、製造には多くの日本企業が参画しており、構造の50%に相当する部分にはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics、炭素繊維強化プラスチック)を使い機体の軽量化を図り、CFRPによりなめらかな形状の翼を作れるようになったという。それにより空気抵抗を抑えられ、軽量化などもあり、低燃費で長距離を飛行できる旅客機になっているとのこと。
またCFRPを採用したメリットはほかにもあり、客室の窓を一般的なものより大きく設けることができ、日中の機内は明るく、構造強度が高いため一般的には「富士山の5合目ぐらい」の与圧を行なうところ、「3合目程度」の与圧で済むため、乗客への負担が少ないそうだ。確かに記者も耳の違和感が少なかったように思えた。
中央翼は左右の主翼と胴体を結合するパーツで、内部は燃料タンクになっており、客室の床下に位置している。スバルは787型機の中央翼の製造と、主脚収納部との結合を担当している。組み立てられた中央翼は愛知県半田市にあるSUBARUの工場からセントレア(中部国際空港)に船で運ばれ、ボーイングの工場へ向けて空輸される。
飛行時に主翼端は最大3m上にたわんだ状態になり、500tの負荷がかかることもあるというが、中央翼は想定される最大の負荷から4倍の力が加わっても壊れないようになっているとのこと。万一落雷があっても安全が確保されており、燃料が漏れないようになっているそうだ。
スバルでは製造工程ごとに記録、検査、確認を行ない、誰が、いつ、何を使って、どのように作ったか、検査したか追跡できるようになっており、「航空機メーカーとしてのDNA」として万全の品質保証ができる状況を維持していると紹介した。
続いてJALエンジニアリング 技術部 システム技術室 機体技術グループ グループ長の盛崎秀明氏がプレゼンテーションを行なった。JALエンジニアリングはJALグループが運航するすべての便と、J-AIR(ジェイエア)、JAC(日本エアコミューター)、JTA(日本トランスオーシャン航空)が運航するリージョナル機の整備を担っている。JALではボーイング 787-8型機を25機、787-9型機を10機保有し、成田、羽田、セントレア、関西国際空港から26都市へ、1日64便運航している。
盛崎氏は米シアトルにあるボーイングのエバレット工場に2011年から約3年間駐在していた経験があるそうで、2011年当時はボストン、サンディエゴ、ヘルシンキといった新規路線を787型機でという社運をかけたプロジェクトだったと振り返った。
787-8型機は組み立て、機体塗装、飛行試験を経て路線投入までおよそ90日間かかるそうだが、参画するパートナー企業それぞれが担当するパーツのなかでも、スバルが担当する工程における問題の少なさは突出していたと紹介した。
JAL 運航乗員部 機長 靍谷(つるや)忠久氏は、操縦する立場から見た787型機の特徴について解説した。
操縦者は動翼を操縦桿で操作して姿勢を制御しているが、以前の航空機では、操縦桿を通じたパイロットからの入力を、動翼へ(増幅は行なうが)ダイレクトに伝えていたという。それが787型機ではパイロットのアナログ入力をデジタルを変換する「ACE(Actuator Control Electronics)」を介することで「PFC(Primary Flight Computers)」で処理され、「CSA(Control Surface Actuators)」から航空機の姿勢がコントロールされるようになった。
このPFCにより航空機のオートメーション化がさらに進み、巡航時の乗り心地、パイロットの疲労軽減に寄与しているという。天候のわるい状態、混雑した空港での離着陸を確実に行なうためにもこれらのシステムが役立っているとのことだ。
プレゼンテーションの最後には、JAL CAの目黒誠子氏、杉原久乃氏が「レヴォーグ」に試乗した様子を収めた動画が流れ、運転支援技術「アイサイト・ツーリングアシスト」を体験する様子が紹介された。