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「キュンちゃんも頑張る」。政財官界から約250名が集まって北海道復興を盛り上げるANA主催の「“でかけよう北海道”の集い」
2018年10月16日 13:00
- 2018年10月15日 開催
ANA(全日本空輸)は10月15日、9月6日に発生した北海道胆振東部地震からの復興に向けて、政界、財界、官界の関係者が一堂に会する「“でかけよう北海道”の集い」をホテルニューオータニ東京で開催。北海道知事をはじめとする北海道の自治体・団体や、農林水産大臣や観光庁長官をはじめとする政府関係者、旅行会社の代表者ら約250名が集まった。
ANAでは9月21日に 「でかけよう北海道」プロジェクトを立ち上げ、北海道の復興を支援するさまざまな施策を打ち出している。
冒頭であいさつしたANA 代表取締役社長の平子裕志氏は「パッケージツアー、スキーツアーなどの各種旅行商品の造成、ANAオープンゴルフトーナメントなど、北海道との深い関係は一朝一夕でできたものではない。今回の被災状況に鑑みて、一刻も早く貢献できることはないかと、いてもたってもいられない思いで、『でかけよう北海道』プロジェクトを立ち上げた」と説明。
さらに、9月13日に予定されていたANAオープンゴルフトーナメントについて触れ、「第46回ANAオープンゴルフトーナメントは中止という苦渋の決断をした。そこで、大会賞金の一部を義援金とする旨を発表させていただいたところ、31社の協賛企業が主旨にご賛同くださり、総額1億4000万円を寄付させていただくことになった」と発表し、来場者から拍手。
最後に「観光庁からの支援を活用しながら、ここにお集まりいただいた皆さまと一致団結して、北海道の観光復興に取り組んでいく」との決意を述べた。
この「でかけよう北海道」プロジェクトについては、会の中盤でANA 執行役員 北海道支社長の新川新一氏が詳細を説明。「地震の影響は甚大で、観光分野だけでなく、農林水産業、交通インフラなど大きな影響があった。ANAの9月の北海道の離発着実績は約25%の需要減となった。観光振興に関する影響は非常に大きなものがあった」と実情を紹介したうえで、プロジェクトでの取り組みを紹介した。
まず、9月28日には応援Webサイトとして、「でかけよう北海道」をオープン。
国内旅行者向けには、北海道発着路線における「ANA SUPER VALUE」運賃や、12~25歳向けの「スマートU25」運賃、60歳以上向けの「スマートシニア」運賃を値下げ。訪日旅行者向け運賃「ANA Discover JAPAN Fare」は最大で半額となる値下げを行なった。このほか、ダイナミックパッケージ「旅作」でも1万円引きクーポンを配布。こちらはすでに完売となっている。
11月1日からはANAマイレージクラブ会員向けに「Good day北海道」を実施する。北海道発着路線のANA便に2回搭乗することで、抽選で北海道各地のご当地お勧め品や航空券などが当たるキャンペーン。10月下旬に特設ページが開設される予定となっている。
Good day北海道キャンペーン
対象搭乗日:2018年11月1日~2019年1月31日(※12月27日~翌1月6日搭乗分は対象外)
対象路線:北海道発着全路線(コードシェア便含むANA/NH便名)
対象運賃:国内線フライトマイル積算対象運賃、個人包括旅行運賃、包括旅行運賃
対象旅客:期間中にANAマイレージクラブ会員で2回搭乗した旅客
賞品内容:北海道各地のご当地お勧め品や航空券など(抽選)
また、先に平子氏より発表があったとおり、協賛企業31社の賛同によりANAオープントーナメントゴルフの賞金の一部を寄付するほか、通販サイトのANAショッピング A-Styleの売り上げの一部を寄付。マイルによる寄付なども受け付ける。
新川氏は、「10月から12月の予約は回復基調にあるものの、本格的な戻りではないなか、旅行需要の協力の後押しが求められている。本日多くのお集まりの旅行会社の皆さまのお力をいただきたい」と協力を求め、「ANAグループは、集まった人の協力支援をいただきながら、被災地域の一刻も早い復興を心に願い、北海道の力につながるよう、全力で応援する」と述べた。
ANAからは、代表取締役副社長の志岐隆史氏が閉幕のあいさつを行なった。ANAオープントーナメントゴルフが行なわれる予定だった9月13日を含む2日間、平子氏とともに北海道を訪問したという同氏は、「確かに被災地については相当に厳しい状況になっていたが、それ以外のところはものすごく元気な状態だった。ましてや、ANAオープンを実施する輪厚コースは非常によいコンディションになっており、それ以外の地域も含めて元気なところがあると実感してきた。我々が行ったときには停電も相当なエリアが復旧しており、『北海道、本当に元気じゃないか』と痛感した」との感想を持ったという。
そのうえで、「そういう意味でも、なるべく早く『北海道がこんなに元気なんだ』と皆さんにお示しできるチャンスがあればと、今日の会もできるだけ早く開催したかった。いま現在も、被災されて厳しい状況があるのは重々存じているが、北海道全体を盛り上げながら、厳しい状況もクリアしていけるようになれば。北海道はシーズンの変わり目に入るが、冬も素晴らしい別の味のある観光地。こんなに元気な北海道があるんだというところを、全国にアピールしながら復興に向けて取り組んでまいりたい。今日は政界、財界、官界、ましてや我々のパートナーのいろいろな事業者の方々に来ていただいている。全体の力で必ずや北海道を盛り上げていきたい」との決意を述べて、会を締めた。
北海道知事をはじめ政財官からのアピール、応援が続々と
北海道からは知事の高橋はるみ氏が来場。北海道にとって経験のない震度の大地震に加えて、全道の停電で大変な思いをした一方、「九州でも威力があった『ふっこう割』をいち早く決めていただき、北海道観光機構がしっかり運用して、北海道の観光復興に向け、多くの方々の力を受けて、復旧・復興に向けて確実な歩みを進めているところ」と前進をアピール。
加えて、「今日のこのイベントをしっかり我々の心の元気に変え、さらに北海道は頑張るということで、ANAにビジネスの面でも喜んでいただけるよう、道内地域の観光地の魅力の磨き上げをしっかりやってまいりたい」とした。
また、スピーチ台に置かれたぬいぐるみについても言及。「北海道の観光キャラクターのキュンちゃんがANA機に乗っているレアなぬいぐるみ。私もかつていただいて、執務室で毎日眺めてニコッとしながら仕事させていただいている」と明かし、「キュンちゃんも頑張ります」とあいさつを締めた。
北海道選出議員で農林水産大臣の吉川貴盛氏は、2018年に北海道命名150周年を迎えたことに触れ、「150年を迎えて、これからさらに歴史を積み重ねていこうと決意を新たにしていた折の大きな地震。私も札幌市民だが、札幌市においても震度6といういままでに経験したことのない大きな地震だった。このような会を催していただいたことを道民の一人としても感謝とお礼を申し上げたい」とあいさつ。
農林水産大臣の立場としては、「農林水産関係も大きな打撃をこうむったが、さまざまな形で対策を打ち出している。夕方の閣議において、まずは次の補正予算で約970億円を計上して、応急的な復旧を仕上げようとなった。これを最大限利用しながら、北海道の農林水産業の力強さを取り戻していければ。北海道はこれからも力強く、食と観光で頑張っていかなければならない」と述べた。
そして、あいさつの最後には「でかけよう北海道! それもANAの便で」と笑いを誘った。
観光庁長官の田端浩氏は、震災による北海道観光分野の影響について、「宿泊のキャンセルが多数発生し、大きな影響があった。北海道は自然、文化、食、気候という観光振興の4条件を備えている日本有数の観光地域。インバウンドについても全国3位と、非常に重要な地域。北海道の観光需要を早期に回復することが、日本の経済にとっても大事なことと認識している」と、その重要さを強調。
ふっこう割などを含む官民共同キャンペーン「元気です 北海道/Welcome! HOKKAIDO, Japan.」を9月28日から行なっていることなどを紹介し、「いろいろな施策を総合的に皆さまと一緒に行なって、早急な、一刻も早い観光需要の復興を進めていきたい。北海道観光の回復がしっかりと実績をあげられるよう、今後ともしっかりと取り組んでいく」とし、参集者への協力を求めた。
乾杯の音頭をとった北海道観光振興機構 会長の堰八義博氏は、「地震のあと、札幌の街から、そして観光地から、あれほどたくさんいらしていただいた観光客の姿が激減した。先ほど来お話があるとおり、宿泊のキャンセル114万9000人泊、観光産業全体で356億円の影響が出るという推計が出ている」との現実を示したうえで、参集者への協力を求め、「一日も早く元気な北海道を取り戻したい」と切望。
そして、「いま改めてこんなことを言うとおかしいかもしれないが、たくさん来ていただいた国内外の観光客の皆さんのありがたみを本当に感じている」と話した。
会場には、ANAオープンゴルフトーナメントが中止となったことを受けて、日本ゴルフツアー機構 会長の青木功氏や、ジャパンゴルフツアー選手会 理事の池田勇太氏らも来場。そのほかにも、多くの北海道選出国会議員や、観光業界、旅行業界の代表などが集まった。
そして、北海道の自治体からも、ANA便が就航している空港のある8自治体から代表者が来場。それぞれの地域のPRを行なったので、以下に、観光アピールのコメントを要約して紹介する。
札幌市 市長 秋元克広氏
「今は一部の地域を除いて、観光地、市民生活が元に戻っている状況。多くの方々に北海道・札幌にお越しいただいて、十分におもてなしができる状況になっている。
10月5日に夜景サミットがあり、3年に1度、日本の三大夜景都市を選出している。札幌が再び三大夜景都市に選出された。これから夜景観光、11月にはさっぽろホワイトイルミネーション(11月22日から)、ミュンヘン・クリスマス市(11月25日~12月24日)、年が明けるとさっぽろ雪まつりが始まる。今年度は70回目の記念の年を迎えるので、これから冬に向けて多くのお客さまに北海道・札幌にお越しいただければと思っている」。
稚内市 副市長 青山滋氏
「これからどんどん寒くなるが、寒くなると海産物がどんどん美味しくなってくる。宗谷はミズダコの生産が日本一。腕のように太いミズダコをスライスして、タコしゃぶで食べると非常に美味しいと観光客の皆さんによく言っていただける。鱈(タラ)もこれからどんどん油が乗ってきて美味しい。ぜひ稚内に足を運んでいただいて、美味しいものをたくさん食べていただきたい」。
紋別市 市長 宮川良一氏
「紋別といえばホタテ、カニが名産。カニは今年ちょっと毛ガニが獲れなかったが、これからずわい蟹が解禁となり、どんどん揚げていくので、美味しいカニを食べに紋別に来ていただければ。
そして冬は流氷観光が始まる。紋別というよりは、ガリンコ号の方が有名になっている。ドリルで氷を砕いて進むという、国内にはないガリンコ号もお待ちしている。平成32年度(2020年度)内には新ガリンコ号を新造したいと思っている」。
旭川市 地域振興部 部長 菅野直行氏
「そろそろ初雪が降る季節になったが、旭山動物園のペンギンは雪が積もると行進をするが、たくさんのギャラリーがいると張り切って行進するので、多くの方に来ていただきたい。これから冬の季節になると、旭川近郊のスキー場は圧倒的な雪の軽い、素晴らしい雪質のスキー場がある。旭川の中心から30分でスキーを楽しめる。
また旭川はJR北海道で全道つながっており、すべての空港から必ず旭川に来ることができるので、JR北海道を使ってお越しいただければ」。
中標津町 町長 西村穣氏
「中標津町は地震があったところから直線距離で300km離れており、地震では揺れたものの、観光的な被害はまったくない。これからの寒い季節、魚介類が美味しくなるし、流氷もただの流氷ではなく、オオワシ、オジロワシが乗っている。タンチョウヅルもおり、バードウォッチングの季節にもなるので、ぜひ中標津町、道東に来ていただければ」。
釧路市 副市長 岩隈敏彦氏
「釧路市は一時的な停電のみだったが、実は阿寒湖畔では1万人のキャンセルがあり、風評被害があったと思っている。釧路市においては、観光庁の観光立国ショーケースに選定されて、現在、訪日観光客に観光地作りを勧めている。その一環として、今年度、PR動画を制作し、現在、YouTubeで730万再生されている。北海道、釧路への集客をしていただけるようお力添えいただきたい」。
帯広市 副市長 田中敬二氏
「帯広には世界で唯一、馬がそりを引くばんえい競馬がある。春夏秋冬、休みがなく、毎週土・日・月曜にやっている。サラブレッドの倍、平均1100kgの馬がそりを引く。売り上げを伸ばすのは冬。馬は夏に弱く、冬に元気に出てくる。1月の帯広記念、3月のばんえい記念と重賞が続く。ぜひともご覧いただければと思う。
もう1つ、NHKの朝の連続テレビ小説で、来年の4月から「なつぞら」という100作目の記念すべきドラマが始まるが、その舞台が十勝に決まった。すでにロケも始まっている。来春は十勝のときがくる。ぜひ十勝に熱い視線を送っていただければ」。
函館市 観光部 部長 大泉潤氏
「地震直後は函館もキャンセルに見舞われた。しかしながら政府の迅速な対応、北海道、北海道観光振興機構の支えで、確実に観光客が戻ってきている。
これから函館は紅葉の時期を迎え、ライトアップのイベント、そして12月にははこだてクリスマスファンタジーというイベントもある。本日発表になったが、(ブランド総合研究所が実施する第13回『地域ブランド調査2018』で)もっとも魅力的な市町村に函館市が1位に選ばれた。ますます観光に磨きをかけていきたい」。
会場に用意されたビュッフェ形式のディナーには、北海道の食材を用いたものが並んだほか、北海道産の日本酒やワインが提供された。今回並んだ日本酒は、かつて「Tastes of JAPAN by ANA」において、國酒としてラウンジで提供されたことがあるものだ。