旅レポ

1300年の歴史を体感する奈良へ。世界遺産・薬師寺で心の使い方と玄奘三蔵の教えを識る旅

JR東海「いざいざ奈良」第9弾

薬師寺 金堂と東塔

 2022年にスタートしたJR東海の観光キャンペーン「いざいざ奈良」。1300年以上もの歴史を紡いできた古都の魅力を再発見する本キャンペーンは、第1回の「東大寺編」を皮切りに、この4月からスタートする「薬師寺編」で9回目を迎えることになる。

 今回は「LIVEな歴史を体感する旅」をテーマとしており、CMでも俳優の鈴木亮平氏が薬師寺をはじめとしたスポットを訪れ歴史を体感していく。CM曲は奈良を拠点に活動する世界的ピアニスト、反田恭平氏が担当する。

 キャンペーン開始に先立ち、CMに登場するスポットなどをめぐるプレスツアーに参加してきた。映像では30秒に凝縮されている各所の魅力を少しでも補完できれば幸いだ。

「いざいざ奈良」薬師寺編 30秒

薬師寺(法相宗大本山 薬師寺)

 キャンペーンのメインとなるのが薬師寺だ。観光客が集中する近鉄奈良駅から少し離れた西ノ京町に位置しているが、近鉄橿原線の西ノ京駅から徒歩で数分というか、ホンの1分程度の距離感。現在の境内は駅の東側にあるが西側からも遺構が見つかっているそうで、駅の立地自体が当時の境内にあるようなイメージなのだ。

 近鉄奈良駅からは大和西大寺駅で乗り換えが必要ではあるものの、10分程度でアクセスできるのはなんともうれしいところ。ただ、駅から近いのは北側の與楽(ようらく)門だが、正門といえるのは逆側の南門。ちょっと回り道になるけれど、駅の西出口を出て一般道に迂回して南側からスタートしたいところ。

 そのほか、奈良交通の路線バスでのアクセスも可能だ。97または98系統なら薬師寺駐車場バス停で南側に、77系統なら西ノ京駅バス停で鉄道と同じ北側に降りることができる。奈良市内から薬師寺までカバーする「奈良公園・西ノ京世界遺産1-Day Pass」(600円)が用意されているから平城宮跡や春日大社、ならまちなども楽しみたいならバス利用もアリだろう。

 なお、伽藍には撮影不可の場所が数多くあるが、今回は許可をいただいて撮影して掲載している。

薬師寺

所在地: 奈良県奈良市西ノ京町457
拝観料(個人): 大人1000円、中高生600円、小学生200円
拝観時間: 9時~17時(最終受付16時30分)
拝観可能場所: 金堂、大講堂、東院堂
お写経体験(ご納経料): 1巻2000円~

近鉄 西ノ京駅
今回のツアーでは奈良交通の特別仕様車、四神シリーズの「玄武」で移動。観光客だけではなく地元の方からの注目度も高かった
駅周辺マップ
薬師寺伽藍配置
年間行事など。今回のツアーは薬師縁日で行なわれる大般若転読法要にあわせて実施された

 さて、まずは薬師寺の歴史を紐解いてみると、天武天皇9年(680年)に皇后、鵜野讃良姫巫女(後の持統天皇)の病気平癒を祈って発願されたのがはじまり。

 藤原京に造営されたのち平城京への遷都とともに現在の地に移った。天平時代には天下の四大寺の1つとされていたものの、多くの堂塔が火災や地震により消失。創建時からの姿を残すのは東塔(とうとう)のみとなっていたが、1976年に100万巻もの「お写経勧進」により金堂を落慶したのをはじまりに西塔(さいとう)、大講堂、食堂(じきどう)と主要な堂塔を復興。白鳳時代の伽藍を現在によみがえらせた、というのがおおまかな流れになる。

 なお、金堂内にある薬師三尊像をはじめとして彫刻や絵画、建築物など国宝や重要文化財が多数保存されているほか、1998年には世界遺産に登録されている。ちなみに法相宗は「西遊記」でおなじみの三蔵法師のモデルとなった玄奘三蔵を鼻祖として「唯識」を教えとしている。

中門前からの眺め
大谷徹奘副住職
お写経勧進により復元された金堂
お写経勧進による伽藍復興を目指した高田好胤和上による「發菩提心 荘厳國土」の文字が刻まれている
金堂に祀られている薬師三尊像。三尊像の位置は「天子南面」という思想に基づいており中央に薬師如来、太陽が昇る東側に日光菩薩、日が沈む西側に月光(がっこう)菩薩が並ぶという具合
毎月8日に行なわれる大般若経転読法要は一般の拝観者も参拝可能
大きな箱に収められている大般若経。1つの箱に50巻が収められており全部で600巻もある
一巻の経典を扇のように広げてその一部を読み上げる「転読」
一箱すべてを読み上げるのには30分ほど要するほどのボリュームがある

 最初に訪れたのは南門。そこから拝観受付を抜けるとすぐに中門があり、それをくぐると正面に金堂、東塔、西塔が姿を見せ、その奥には大講堂が位置する。写真でその空気感やスケール感を表わすのは難しいが、現代の建築物から受ける感覚とは違った歴史の重みが感じられる迫力は圧巻だ。

 そこで待っていてくれたのが大谷徹奘(てつじょう)副住職。年間ほとんどを法話のために全国行脚に充てている名物僧侶だ。大谷副住職はこうした奈良のお寺の特徴ともいえる伽藍配置について、お釈迦様を祀る東西の塔が過去を、薬師三尊像を祀る金堂は現在を、大講堂は未来の人づくりを、と境内で過去から未来までを勉強できるようになっているためだと説明。また「南向き」「(建物内)土足」「金属の仏様」といったところが奈良のお寺の特徴とも教えてくれた。今まで京都、奈良で「古都」とひとくくりにしてしまっていたが、時代背景などでこうした違いがあるのは興味深い。

 金堂の前に建つ灯篭には「發菩提心 荘厳國土」の文字が刻まれている。これは前述した白鳳伽藍の復興を目指した高田好胤和上が精神として残した言葉で「一人一人が清らかな心で生きたならば国全体が美しくなる」というもの。これを受けて大谷副住職は「心の使い方を徹底的に訓練するのが薬師寺というお寺で、その心の使い方をどうしても中国に伝えたかったのが三蔵法師です」と背景を説明。

 また、「薬師寺はお寺にお墓を持たず、お坊さんは一切葬儀に触れません。ご供養のお経はあげるけどお葬儀のお経はしません」「生きている人間がよりよく幸せに生きるためのことだけを勉強するのがこのお寺です」と教えてくれた。そのほかにも多くのお話をしていただいたのだけれども、ここでそれを書いているとそれだけで数回分になってしまうので割愛。より詳しく知りたい場合は、全国で法話会や講座が開かれているのでそちらに参加するといいだろう。スケジュールは公式サイトで確認することが可能だ。

 また、JR東海の「EXサービス」の「EX旅先予約」において、大谷副住職の法話に加え玄奘三蔵院伽藍「大唐西域壁画」を副住職の特別解説付きで見学できるプランが設定されているので、そちらの利用もオススメ。そのほかにも、多くのプランが用意されているので、興味ある向きはJR東海のサイトをチェックしていただきたい。

薬師寺・大谷副住職の法話『玄奘三蔵と般若心経』~玄奘三蔵院伽藍「大唐西域壁画」の特別解説付き~

設定日: 2026年5月2日~6日
料金: 3500円(三大壁画特別公開、白鳳伽藍の拝観券付き)
Webサイト: プラン詳細

国宝に指定されている東塔。奈良時代の730年に創建され数度の修理を経つつも今もその姿を残している平城京最古の建造物。裳階(もこし)と呼ばれる小さな屋根があるため六重に見えるが実際は三重塔
東塔の相輪上部にある水煙にはさまざまな天人がデザインされている。この写真で分かりやすいのは下部中央寄りの「笛を吹きながら踊る奏楽天人」
塔の下部にある内陣にはお釈迦様の生涯を描いた「釈迦八相像」が祀られていた。現在の像は令和5年に安置されたもので東塔には前半生の「入胎」「受生」「受楽」「苦行」の4場面が祀られている。写真は苦行
1981年に再建された西塔は創建当初を思わせる鮮やかな色彩を放つ
西塔の相輪
西塔には「成道」「転法輪」「涅槃」「分舎利」の4場面。写真は成道
もっとも東側に位置する東院堂は1285年に再建され日本最古の禅堂として国宝に指定されている
内部には聖観世音菩薩像を中心に四天王立像が祀られている
2003年に再建された大講堂には弥勒三尊像が祀られている
大講堂にはお釈迦様の足跡を描いた仏足石(国宝)も。753年に作られたこの石は現存する最古の仏足石になる
與楽門の手前、食堂横にはお土産を購入できる「なむなむ」がある
オリジナルの「仏足」シリーズが人気だという
與楽門から道路を隔てた北側には玄奘三蔵院伽藍がある
玄奘塔は玄奘三蔵の遺徳を後世に伝えるべく1991年に建立されたもの
玄奘塔に掲げられている「不東」の文字は玄奘三蔵の「経典を手に入れるまでは東に帰らない」という決意を表わしている
玄奘塔には玄奘三蔵の頂骨(頭部遺骨)のほか大川逞一作「玄奘三蔵訳経像」、後ろの建物には平山郁夫筆「大唐西域壁画」が安置されている
玄奘塔の手前にお写経道場がある
筆や墨などを完備しており、お手本をなぞるだけなので気軽にできる。お写経勧進は令和元年には850万巻を超えているそうだ

街かど公民カフェ ホトケノネドコ

 薬師寺から唐招提寺方面に向かって数分歩いたところにあるのが、古民家を活用したカフェ「ホトケノネドコ」。築百年の古民家はもともと僧房だったそうで、雰囲気を今に残した店内は親類の家を尋ねたような心温まる空間。そこで提供されるのは奈良の伝統ある郷土料理「茶粥」。

 店舗が位置する西ノ京エリアの家庭で親しまれてきたレシピをもとに、店主の親族が育てた奈良県産のお米「ヒノヒカリ」を、吉野の山里で育て伝統的な製法で作り上げる「嘉兵衛本舗」のほうじ茶で炊きあげた逸品だ。決して華美ではないものの、優しく滋味あふれる味わいはまさに本物。5種の付け合わせは手作りのお惣菜や香の物といった「おばんざい」だ。こちらも、和食らしくカドがなく優しい口当たりが茶粥にピッタリだった。

所在地: 奈良県奈良市五条町18-8
営業時間: 10時30分~16時30分
定休日: 不定休

街かど公民カフェ ホトケノネドコ
茶粥定食には茶粥と5種類のおばんざいがセットになっている
茶粥はほうじ茶とご飯の旨みをストレートに味わえる
セットにするとほうじ茶とほうじ茶羊羹が付く
廊下などに僧房の面影が残る
床の間にはお茶のセットがディスプレイされていた
飲食スペース以外ではお土産の販売も
本場の三輪そうめんや嘉兵衛本舗のお茶などのお土産が並ぶ
なかでも吉野産の葛湯や葛菓子が人気だという

樫舎(かしや)

 ならまちのメインストリートとなるならまち大通りに居を構える和菓子店。奈良の古社寺御用達の同店ではぜんざいや抹茶などのメニューを店内で楽しむことができるほか、干菓子や生菓子などはテイクアウトもOK。

 さらに、注目したいのがEX旅先予約に用意されている「つくりたて和菓子の特別コース」。このコースでは「触れば汚れる」と語り、なによりも素材のよさを重視する店主の喜多誠一郎氏がカウンターに立ち、目の前で作りあげていく菓子を味わうことができるのだ。材料に水を吸わせ、砂糖を加え、練り上げる。解説はもちろん時にはトリビアを交えつつ、最低限の仕事で美しく美味しい和菓子を作り上げていく、そんな様子を目前で見るのはまさにライブ。

 目の前で完成した和菓子は瑞々しく、ほどよい甘さと素材の風味が口の中に広がっていく。このコースでは通常のコースでは味わえない特別なメニューを堪能できる。至福の時間を過ごせること間違いなしだ。

所在地: 奈良県奈良市中院町22-3
営業時間: 9時~18時

職人の技を特等席で。樫舎・つくりたて和菓子の特別コース

設定日: 2026年4月28日、5月16日・26日、6月6日・20日・30日
料金: 4400円
Webサイト: プラン詳細
※最新の空き状況はWebサイトで確認を

樫舎
味わい深い看板
喜多誠一郎氏
最初は落雁。浅煎りしたきな粉に砂糖を混ぜ木の型で押し固める
よぶんな粉をヘラで取り除く
型を外して完成。今回は「鹿」の型を使用している
陰影が美しい
口に入れるとサッと溶けて香ばしさを残して消えていく。初めての体験だった
二品目はきんとん。桜の練り切は備中の白小豆に青森のつくね芋を加えている
馬毛のこしきを使い3色のそぼろ餡をつくっていく。馬毛を使うことできめ細かなそぼろが作れるという
餡玉にそぼろをまとわせていく
できあがり
喜多氏のリクエストで自然光&上から撮影。きんとんの陰影と螺鈿細工のお盆の組み合わせが美しい
3品目はわらび餅。わらび粉に水を吸わせ砂糖を加え加熱しつつ練り上げていく。この給水加糖加熱のなかで一番大事なのが給水のため、注射器を使って慎重に水を吸わせていく
練りあがったわらび餅は透明でつやつや
こし餡をわらび餅で包んでいく
きな粉を上からまとわせる
できあがり。今まで食べたことのない食感と味わいに驚かされた
最後の最中は粒あんを焼きたての皮でサンド。パリパリの皮と粒あんならではの食感が楽しくも美味しい

茶の湯

 ならまちの南側、聖光寺のすぐそばの路地裏にたたずむリラクゼーションサロン&足湯カフェ。足湯と聞くと細長く浅い湯舟を想像するけれど、ここでは吉野杉の桶に入ったお湯がひとりずつに用意される。お湯はお肌しっとりな「米ぬか」とさっぱり&消臭の「宇治茶」を選択することができる。今回のツアーでは時間が限られていたこともあって足湯とドリンクのみだったけれど、ランチやリラクゼーションサロンも楽しめる。

所在地: 奈良県奈良市元興寺町20-3
営業時間: 11時~日没

奈良町の路地裏にひっそりとたたずむ茶の湯
専用の桶で提供される足湯。こちらは米ぬか
こちらは宇治茶
足湯だけでなくお茶やランチも楽しめる

登大路ホテル

 近鉄奈良駅から西へ向かって3分ほど。興福寺の目の前に位置するのが登大路ホテル。スイートやデラックスなどわずか13室のみの限られた空間になる。歴史をたどれば興福寺の敷地内という立地もあって窓からは中金堂を望むことができ、特に夕闇に沈んでいく甍や鴟尾の美しさは必見。1階には宿泊者以外でも利用が可能なレストラン「LE BOIS(ル・ボワ)」。店内にはスタインウェイ&サンズのグランドピアノが置かれており、毎月第3土曜にはサロンコンサート付きランチ、ディナーを楽しむことができる。

 今回はディナーのル・ボワコースから一部を抜粋した料理をいただきつつ、サロンコンサートを楽しむことができた。クラシックな技法と和風の素材を組み合わせたフランス料理は、重厚さとなじみ深さが絶妙にマッチした素晴らしい味わいだった。なお、料理写真はすべてホテル提供のものになる。

所在地: 奈良県奈良市登大路町40-1
※宿泊およびレストランの利用は13歳以上から

ピアノの生演奏と美食に酔いしれる。登大路ホテル「レストラン ル・ボワ」フレンチディナーコース

設定日: 2026年4月18日、5月16日、6月13日
料金: 2万7000円~
Webサイト: プラン詳細

登大路ホテル
エントランス。入って左手にレストラン ル・ボワがある
ビーフコンソメ。牛テールをダブルコンソメでさらに濃厚に
紅ズワイ蟹と胡瓜のタルタル
筍の炭火焼き アマゴのリエット
はまぐりと緑野菜のカクテル
マナガツオのグリル
小鳩とフォアグラ シューファルシ
苺のクレープフランベ
翌朝は近鉄奈良駅から東に徒歩10分ほどの飛火野へ。春日大社の境内地となるここには鹿がたくさん。眺めているだけで時間を忘れてしまう
安田 剛