旅レポ

JR東海「いざいざ奈良」第1弾は東大寺・ならまちエリア。CMにも登場したスポットに行ってみた!

「いざいざ奈良」キャンペーン第1弾は「東大寺・ならまち」編

 JR東海(東海旅客鉄道)は、5月11日から「いざいざ奈良」キャンペーンを実施している。キャッチコピーで使われている“いざいざ”とは、「万葉集」や「古事記」のなかで人を誘(いざな)う意味に用いられた“いざ”を繰り返した言葉で、奈良への旅の誘いを表わしている。

 キャンペーン第1弾は、「東大寺・ならまち」エリアが舞台。テレビCMでは、世界遺産検定保持者でもある俳優の鈴木亮平さんが出演し、街を歩きながら奈良の魅力を伝えている。今回は、そのテレビCMにも登場した東大寺とならまち周辺のスポットを紹介する。

鹿にも会えるホテル「MIROKU」

 街を散策する前にまずは、奈良の宿泊事情を紹介しよう。観光素材の宝庫である奈良県は観光客こそ多いが、宿泊者数のランキングでは全国のなかで下位に位置するという残念な状況が続いている。それには「そもそも宿泊施設が少ない」「アクセスのよい大阪や京都に人が流れてしまう」といった理由が挙げられる。県ではこの問題を解決するためさまざまな施策を講じ、2025年度までに客室数を1万2000室にすることを目標にホテル・旅館の誘致活動を行なっている。

 そして、近年は魅力ある宿泊施設が次々と誕生しており、以前のマイナスイメージが徐々に薄まりつつある。今回紹介するホテル「MIROKU」もそんな魅力あふれる施設の1つだ。

「MIROKU」は、“SHARING WITH LOCAL”をコンセプトに地域との共生を目指すホテルブランドで、築31年のビルを改装して2021年にオープンした。館内は、吉野杉や飛鳥石、宇陀和紙など奈良県産の素材を使ったインテリアにアート、奈良を拠点とするメーカーの照明器具やスピーカーを使うといった地域の素敵なクラフトであふれている。また、環境にも配慮しており、再生可能エネルギーの使用、客室の断熱性向上による消費エネルギーの削減、アメニティバーによる消耗品の使用量削減、プラスチックを削減したアメニティを使用するなどの取り組みをしている。

 そしてなんといってもロケーションが素晴らしい。春日山に近い立地にあるので、間近に鹿が寄ってくることもしばしば。筆者も朝食の際に2頭の鹿が目の前に現われてくれた。いろいろな側面から奈良の魅力を実感できるホテルだ。

荒池のほとりにオープンしたホテル「MIROKU」。土手には鹿がよく現われるそうだ
もっとも広い和洋室「Junior Suite」。春日山の原始林が眼前に広がる
春日山と興福寺の五重塔が見える和洋室「Superior with Mt.KASUGA view」
ロフトタイプのベッドがある洋室「Moderate Loft」
「The Roots of Nara(Superior)」は地下にあるが、窓先には吉野の山肌を再現するなど個性的な造り
ロビーにあるアメニティバー
地下の宿泊客専用ラウンジ
開放的なテラスのあるカフェバー
早朝に現われた鹿2頭

大和牛や大和伝統野菜を味わえる「粟 ならまち店」

「MIROKU」から歩いて5分ほどの場所にあるのが「粟 ならまち店」。築約140年の町家を改装した食事処で、大和牛や大和伝統野菜などの地元食材を使った和食を提供している。

 大和牛は、最長飼養地が奈良県内となっている黒毛和牛で、あっさりした脂身と上質な赤身が特徴。また大和伝統野菜は、戦前から奈良で栽培されてきた野菜のなかでも地域の歴史や文化を受け継いだ方法で栽培され、独特の味や香り、形態を持つ奈良県認定のブランド野菜のこと。漬け菜やおひたしにすると美味しい「大和まな」や、ニンジンのように長細い形をした赤カブ「片平あかね」など、さまざまな品種がある。「粟 ならまち店」ではそんな地元食材の、素材本来の味を堪能することができる。

「粟 ならまち店」では奈良県産の新鮮な食材を活かした料理が楽しめる
大和牛や大和伝統野菜のこだわり料理と一緒に、地酒をいただくのもオススメ

ホルンで集まる飛火野の「鹿寄せ」

 春日大社境内にある飛火野は広大な芝生が広がる緑地で、奈良の鹿愛護会の方が吹くナチュラルホルンの音色で鹿が集まってくる「鹿寄せ」が有名だ。

 当日の会場である大楠の前、はじめはまったくいなかった鹿がひとたびホルンを吹くと、あら不思議。数分もすれば、あちこちから鹿がゆっくりと歩み寄ってきて驚きの光景が目の前に広がる。あっという間に100頭ほどが集合し、エサのどんぐりを求めて争奪戦を繰り広げる。しかしエサがなくなったと察知するや否や、元のねぐらにさっさと戻っていく様子がとてもおもしろい。

 鹿にもそれぞれ性格があり、気性の荒い鹿は噛みつくこともあるので要注意。人に慣れているとはいえ、あくまでも野生動物なのでマナーを守って見学したい。

どんぐり欲しさに集まってきた鹿たちは、夏毛に生え変わる換毛期のためボサボサの状態。エサを催促していたのか、愛護会の方がお尻を噛まれていた。聞けば「しょっちゅうある。青くなるほど力強いので気を付けて!」とのこと
ナチュラルホルンの音色に集まってくる鹿たち。冬は食べ物が少ないため集まるのも早いが、暖かくなってくるとのんびり気味になるらしい

美食・茶道・買い物が楽しめる「鹿猿狐ビルヂング」

 中川政七商店が2021年にオープンしたのが複合商業施設「鹿猿狐ビルヂング」。敷地内には、中川政七商店のショップや資料展示室、気軽に茶道が体験できる「茶論」、すき焼きをメインとしたレストラン「きつね」などが入居している。

300余年続く中川政七商店創業の地に新しく建てられた「鹿猿狐ビルヂング」

 麻の織物製品を取り扱う企業として中川政七商店の歴史は古く、創業はなんと江戸時代中期の1716年。かれこれ300年以上も続く老舗企業として伝統を守り、さらには時代に合わせた企業活動で今につなげている。

 ショップには魅力的な商品が豊富に並び、店内は地元の人や観光客で賑わっている。その中川政七商店が、茶道文化への新しい入り口を作るべく2018年にはじめたのが「茶論」。講師の教えのもとお茶を点て、気軽に茶道を体験できる。美しい中庭を眺めながら味わう一服は、心休まる瞬間だ。

店内には数多くの商品が並ぶ
スノーピークとコラボレーションした「野点セット」の第2弾
別棟の「布蔵」では麻織物の伝統的な作り方を紹介している
資料庫の「時蔵」では貴重な資料が展示されている
「茶論」では講師にレクチャーしてもらいながら自分で点てた抹茶を味わえる
キメ細かな泡を作るには手首のスナップを利かせて、円ではなく前後に振るのがポイントだという

「きつね」(“き”は3つの“七”で構成される“喜”の異体字)は、代々木上原にあるミシュラン1つ星の「sio」がプロデュースしたレストラン。本来はすき焼きがメインのお店だが、後述するように、現在はJR東海「EX 旅のコンテンツポータル」で販売するプランのなかで朝食を楽しむことができる。パリッと焼き上げた銀鮭、ひとくちすき焼きをメインに、こだわりの小鉢など全8皿で構成される豪華な朝食だ。

 そのほか、ビル内には猿田彦珈琲も入居している。もうお気付きかもしれないが、「鹿猿狐ビルヂング」の“鹿”は中川政七商店のコーポレートマーク、“猿”は猿田彦珈琲、“狐”はきつねを表わしている。

「きつね」の豪華な朝定食。銀鮭は皮だけを先に乾燥させてから焼くなど、料理にはシェフのこだわりが詰まっている

和を感じる隠れ家バー「Bar Savant」

 今回のキャンペーンの舞台となる「ならまち」は、奈良市の中心に残る古い町並みが魅力であるが、最近では年季の入った町屋をリノベーションして、風情ある飲食店が多く誕生している。そのうちの1つが「Bar Savant」だ。オーナーバーテンダーの田中達氏が「茶の湯の精神を取り入れています」と語るように、入り口には茶室のような“にじり口”があり、少し頭を下げて店内へ入ると非日常の世界観が広がる。

 奈良県ブランドのイチゴ「古都華(ことか)」「あすかルビー」を使った「朱恋」や、地元の日本酒やお茶を使った「かぎろひ」など、奈良をフィーチャーしたカクテルが楽しめる。14時からオープンしているので、昼下がりからお酒が楽しめるのもうれしいポイントだ。

築120年の町屋をリノベーションした隠れ家的な「Bar Savant」
奈良ご当地カクテルコンペティションで最優秀賞を受賞した「かぎろひ」
「かぎろひ」には日本酒やお茶、サイダーなどが使われており、スッキリとした飲み口と香りが秀逸

かき氷の名店として大人気の「ほうせき箱」

 もう1つ、奈良で今盛り上がっているのがかき氷。人気店では行列ができたり、事前予約制になっていたりと、奈良を代表するスイーツとして注目を集めている。その奈良のかき氷人気を牽引するのが「ほうせき箱」だ。

 エスプーマを使ったかき氷はまさに“宝石”のような美しさで、1口目のスプーンを入れるときはちょっと罪悪感を感じてしまう。こちらもJR東海「EX 旅のコンテンツポータル」にて、9月30日まで旅プランが用意されているのでチェックしてもらいたい。

色鮮やかな「パステルフルーツ氷」(1400円)。ヨーグルトエスプーマをたっぷりかけ、グレープフルーツ、MIXラズベリーシロップ、すだちシロップ、バタフライピーシロップ、マンゴーシロップなどに加えて、幻の柑橘「大和橘」も使われている
スタッフが鮮やかな手つきでかき氷を仕上げていく
大和抹茶シロップを使った「大人の抹茶DX」(1320円)も人気

東大寺は「大仏殿」と「二月堂」の景観が素晴らしい

 そして奈良といえば東大寺。世界最大級の木造建造物である国宝「大仏殿」と像高が14.98mある大仏は、訪れたことがない人でも教科書などで見たことがあるはずだ。

 東大寺の大仏は、正しくは「盧舎那(るしゃな)仏」、または「毘盧遮那(びるしゃな、ヴァイローチャナ)仏」といい、749年に仏身が鋳造され、752年に開眼供養会が行なわれた国宝。一方の「大仏殿」も奈良時代の751年に創建されたが、二度の兵火で焼け落ちてしまったため、現在の建物は江戸時代に再建されたものになる。当初は現在よりも東西に約30m大きく、横幅は約88mあったそうだが、財政難が足かせとなり、現在の57.012mに規模が縮小された歴史がある。それでも世界最大級の木造建造物であることに変わりはなく、誰もがそのスケール感に驚きと感動を覚える。

 今回のキャンペーンCMにも登場した「二月堂」も紹介しよう。「大仏殿」からさらに東の斜面に建つ国宝「二月堂」は、非常に眺望のよいお堂として知られている。有名なのは3月に行なわれる修二会(しゅにえ)、別名「お水取り」。夜になると大きな松明(たいまつ)で煌々と照らされる境内を見るために例年多くの人が訪れる。それ以外の時期でも高台から臨む景色は素晴らしく、24時間参拝できるので朝の日の出や日没の夕焼けをここから眺めるのもよいだろう。

高さ約15mの大仏。聖武天皇が人々の無病息災を祈って造立した
高さ48.742mの「大仏殿」も木造とは思えない大きさを誇る
「大仏殿」よりも山側に位置する「二月堂」
高台から眺める景色は格別
ここにものんびりと草をはむ鹿たちがいる

「EXサービス」で体験できるいざいざ奈良のプラン

 JR東海の東海道・山陽新幹線のネット予約とチケットレス乗車ができる、「EXサービス」利用者向けサイト「EX 旅のコンテンツポータル」では、キャンペーンに合わせてさまざまなコンテンツを用意している。自身で予約を取るには手間がかかるような体験や食事がセットになっていたり、JR東海とのコラボで特別なメニューが用意されていたりと、魅力あるプランが目白押しだ。「いざいざ奈良」キャンペーンでは以下のプランが用意されているので、興味ある方はチェックしておこう。

鹿寄せと中川政七商店 茶論で学ぶ、抹茶のおもてなし

 春日大社境内での「鹿寄せ」、中川政七商店「茶論」での朝抹茶がセットになったプラン(中川政七商店 奈良本店のかや織ふきん付き)
設定日 :2022年6月5日、6月12日
料金 :4000円

鹿寄せと「きつね」の特別な一日の朝ごはん

 春日大社境内での「鹿寄せ」、鹿猿狐ビルヂングのレストラン「きつね」での朝定食がセットになったプラン(中川政七商店 奈良本店のかや織ふきん付き)
設定日 :2022年6月5日、6月12日
料金 :4000円

【落慶記念】唐招提寺御影堂×東大寺 戒壇堂と大仏殿

 唐招提寺御影堂落慶を記念して、御影堂へお寺の方の案内付で入堂できる特別参拝プラン(特別御朱印・記念品・図録付き)
設定日 :2022年6月18日、6月25日
料金 :1万2000円

奈良の人気かき氷店「ほうせき箱」記念品付 お席確約

 予約制の人気店「ほうせき箱」の席を確約して、好みのかき氷1杯を楽しめるプラン
設定日 :2022年4月1日~9月30日(一部の日を除く)
料金 :1400円

野村シンヤ

IT系出版社で雑誌や書籍編集に携わった後、現在はフリーのライター・エディターとして活動中。PCやスマートフォン、デジタルカメラを中心に雑誌やWeb媒体での執筆や編集を行なっている。気ままにバイク旅をしたいなと思う今日この頃。