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MRJが飛行試験を行なう予定の米ワシントン州モーゼスレイクの「グラント・カウンティ国際空港」を見学
(2015/8/5 13:35)
リージョナルジェット「MRJ」の開発拠点として、三菱航空機がアメリカ・ワシントン州・シアトルに、シアトル・エンジニアリング・センターを開設したのは既報のとおり。併せて三菱航空機では、MRJのアメリカにおける開発拠点として、同じワシントン州のモーゼスレイクにある「Grant County International Airport」(グラント・カウンティ国際空港)を飛行試験の拠点として使用することを発表している。8月3日(米国時間)に行なわれた記念式典の翌日となる8月4日(同)、このグラント・カウンティ国際空港や建設中のハンガーの見学会が実施された。
グラント・カウンティ国際空港があるモーゼスレイクまでは、シアトルから車で3時間ほど。別記事で同空港に触れた際に“シアトル郊外”と形容したのだが、実際に訪れてみると“郊外”と表現するには少々遠かったかも知れないと思っている。とはいえ、インターステイト90号線をひたすら走るだけなので、時間がそれなりにかかるだけで複雑なルートというわけではない。
このグラント・カウンティ国際空港は日本との関わりも深く、JAL(日本航空)がボーイング 747の操縦訓練プログラムを1968年から2009年までの約40年間に渡って実施していた。
さらに今回、米国パートナーのAeroTECを介して三菱航空機が本空港を拠点として使用するわけだが、空港周辺にはシートベルトなどの自動車用安全システムメーカーとして知られるタカタ(TAKATA)や、多摩化学工業や富士化学工業、日本ケミコンといったケミカルメーカーの現地法人が立地している。
また、同空港の脇にある学校「ビッグ・ベンド・コミュニティー・カレッジ」では、日本人の農業研修留学プログラムを実施するなど、経済、文化の両面で日本との関わりが非常に深い空港といえる。
グラント・カウンティ国際空港の一角に建設中のハンガー
三菱航空機のアメリカのパートナーであるAeroTECが、このグラント・カウンティ国際空港に建設中のハンガー(格納庫)は、6万5000平方フィートの敷地面積を持つ。
ここに、3機のMRJを格納できる。中央の奥に1機、左右手前に2機で計3機という格納方法になるという。ちなみに、格納庫の入り口中央が、飛行機の垂直尾翼の高さに合わせて高く取られているのが分かる。これは将来的にAeroTECが、別の機体のメンテナンスなどを受託することを見据えて、大型機にも対応させているとのことだ。
内部では複数の重機が作業を行なっていた。MRJのアメリカでの飛行試験は2016年第2四半期の開始を予定しているが、このハンガーは今秋には完成の予定。それに向けて作業が進められていることになる。
滑走路は5本、最大4113mとアメリカ最大級を誇る空港で高頻度テストを実施
三菱航空機がグラント・カウンティ国際空港を飛行試験のベースとして選んだ理由に、短期間で型式証明に必要な飛行時間を達成するために、高頻度のテストを行なえる空港であることが挙げられている。
グラント・カウンティ国際空港は、全部で5本の滑走路を持つが、そのメインとなるのがアメリカでも最大級という約4113m(1万3053フィート)の長さを持つ14L/32R滑走路である。次いで長い滑走路は、14L/32Rに交差して設けられている04/22滑走路で、1万フィート(約3048m)の長さを持つ。
メインの滑走路はILS(計器着陸システム)のカテゴリIに対応。三菱航空機のプレゼンテーションでは、天候の条件がよいことも同空港選定の理由に挙げていたが、モーゼスレーク港湾局の担当者も同様に、視界が極端に悪化することがないため高精度なカテゴリIIやIIIといったILSでなくとも十分に対応できると話していた。
また、同空港のトラフィック(離発着)は、2013年実績で7万8253回。24時間運用可能で、全体のトラフィックが10万回未満、そして、すべてのトラフィックがメインの滑走路を使用しているわけではないことを考えると、混雑していない空港で、柔軟に飛行試験を実施できるということもメリットになる。