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三菱航空機、10月末に予定する「MRJ」の初飛行に向けて記者会見

2016年春には量産組立を開始

2015年9月2日 開催

 三菱航空機は9月2日、10月後半に予定している国産リージョナルジェット旅客機「MRJ」飛行試験機初号機の初飛行実施に関して記者会見を実施した。

 会見には、三菱航空機 代表取締役社長の森本浩通氏と副社長執行役員兼チーフエンジニアの岸信夫氏が出席して、MRJに関するこれまでの報告と初飛行に向けた意気込みを示すとともに、記者団からの質問に応えた。

三菱航空機 代表取締役社長の森本浩通氏

 会見の冒頭、森本社長は「8月31日にMRJの初飛行を10月後半に実施する発表しましたが、初飛行は言うまでもなく“飛ぶ”ということで、飛行機が本来の機能を具体的に示すというもので、開発のプロセスにおいても重要なマイルストーンとなり、私共の開発が予定通り順調に進んできたものを示すもの。これまで多くのの方から"いつ飛ぶんですか?”と声を頂き、ようやくそのご期待に応えられることになって、私共も嬉しく思っている」と挨拶した。

三菱航空機 副社長執行役員兼チーフエンジニアの岸信夫氏

 続いて、開発を担当する岸氏からは、初飛行に向けて現在の機体の状況が報告された。初飛行するMRJは、静強度試験において主翼上曲げ、胴体与圧等の試験を完了し、構造強度上、初飛行が安全に行えることを確認済みとした。

 実施予定の初飛行の際には、基本特性(上昇、下降、左右への旋回)の確認を主目的として、可動部のうち、脚とフラップは固定、逆推力装置は作動させないとし、初飛行以降、飛行領域拡大のために試験のフィードバック改修を計画的に実施予定という。

 初飛行に向けて、岸氏は「関係各機関との連携を含めて、安全を確認した上で、万全の体制で飛行試験を実施いたします」と述べ、また量産へ向けた最終組立格納庫の建設も計画通りに推進中として、岸氏は「来年春には量産の初号機の組み立てを開始できる」との見通しを示した。

 質疑応答で、改めて感想を聞かれた森本社長は「MRJがようやく空に舞い上がる喜びを皆さんと分かち合いたい」と語り、森本社長は「お客様の中には、飛んでから初めて"検討を始める”というお客様がたくさんいました。初飛行を終えることで、販売にはずみがつくことに期待している」と感想を話した。

 記者団から、開発における達成度について聞かれた岸氏は「納入までを考えると、私としては6割ぐらい。今後飛行試験を行なうことで予想していない改修事項が出てくると思うが、私にとっては6合目に登った気分」と応えた。

 初飛行について、岸氏は「おおむね1時間程度のフライト、飛行空域は今後調整が必要で、北側に行くと日本海、南側は遠州灘となるが、最終的には改めてみなさんにお知らせしたい」とした。

 また、開発における軽量化への取り組みについて聞かれた岸氏は「強度試験によって、余裕の有り過ぎる部分、足りない部分が出てくると思う。最終的には150%の荷重をかけて、どこの構造を軽くできるのか継続して検討していく。重量軽減は量産に入っても継続して実施していくので、こういった地道な努力は日本人の得意な部分。ゼロ戦の頃から1グラム単位でやっていましたし、MRJも10万分の1(グラム)単位でおこなうよう皆に言っている」との考えを示した

 それに続き、日本の航空機産業として零戦やYS-11に引き継ぐ精神があるのかとする質問に、岸氏は「零戦は、目的に見合うようにギリギリまで自分をおいこんで、飛行機もギリギリまで肉厚を削ることを行っていましたし、日本人の特性として一つのことに一生懸命最後まで諦めずやっていた。MRJに関しても、三菱航空機だけでなく日本の各社から応援を頂いている。会社を超えて飛行試験の前の地上試験のチームとして参加してもらい、いろんな設計を担当して頂いている。日本としてきっちりやっていくという心を引き継いでいる」との考えを示した。

 MRJの初飛行は、9月末を目途に初飛行を実施する週を公表、初飛行実施の1日前に翌日実施の旨を公表する。初飛行は県営名古屋空港(愛知県豊山町)および周辺空域にて、所要時間約1時間のフライトを予定している。

会見で示されたプレゼンテーション資料
MRJのモックアップなど
塗装工程を行なう建物を建設予定
建設中の最終組立格納庫

(編集部:椿山和雄)