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三菱航空機、ワシントン州知事らも招き、シアトル・エンジニアリング・センターのオープニング式典を実施

盛大な鏡開きでお祝い

2015年8月3日(米国時間)実施

 三菱航空機は8月3日(米国時間)、国産リージョナルジェット「MRJ」のアメリカにおける開発拠点となる「シアトル・エンジニアリング・センター」を開設し、本格的な業務を開始する。これにあたり、地元ワシントン州の州知事や、在シアトル日本国総領事らを招いてオープニング記念式典を実施した。

 記念式典は、シアトル市内の航空博物館「Museum of Flight」で実施。ANA、JALといったエアライン関係者や、部品メーカーなどの航空機産業関係者ら、約200名が列席した。

MRJのアメリカの開発拠点となるシアトル・エンジニアリング・センターのオープニングセレモニーが、シアトルの「Museum of Flight」で開かれた

 冒頭で挨拶した三菱航空機 代表取締役社長 森本浩通氏は、2008年にMRJプログラムを開始してからのストーリーと、初飛行という大きなマイルストンにさしかかっていること紹介。そのために立ち上げたのがシアトル・エンジニアリング・センターであり、「航空機産業のグローバルハブであるシアトルの航空エンジニアが持つリソースとスキルセットを最大限活用する」と述べた。

 また、現在、オプションを含めて400機以上の受注があるが、その主流はアメリカのエアラインであること。そして、多くの部品メーカーがアメリカ企業であることにも触れ、「MRJはワシントン州、アメリカとともに製造、開発された飛行機である」ともアピール。エンジニアリング・センターへの協力を求めた。

 アメリカでの飛行試験のパートナーとなるAeroTEC Presidentのリー・ヒューマン氏は、「この7カ月間はたいへん忙しかった。1月からオープニングに向けて迅速に議論を交わしてきた」と冒頭で述べ、クリスマス休暇明けに届いた三菱航空機スタッフからのE-Mailなどを紹介。ビジョンの策定や場所の選定、契約についての交渉などを重ねたという。

 AeroTECは2003年に立ち上げた航空機のエンジニアリング集団であり、同社にとっても三菱航空機との協業は大きなチャンスであると説明。最大限のサポートを約束するとともに、ワシントン州インスリー知事に対して財政支援を受けたことへの感謝も表わした。

 シアトルがあるワシントン州のジェイ・ロバート・インスリー知事は、航空機産業のリーダーシップを担ってきた同地の歴史にとっても大きなマイルストンであるとともに、1931年にミス・ビートル号が太平洋無着陸横断飛行によりワシントン州に着陸してから始まり、ボーイング 787では製造の35%を日本企業が担うなど、文化・経済で1世紀以上も続いている日本とワシントン州との文化、経済におけるパートナーシップにおいて新たなチャプターの始まりであると述べた。

 また、「世界の航空機産業のリーダーシップをほかに譲る気はない」とも強調。MRJについても、客室装備を提供するZodiac、コックピットコントロールパネルを提供するKorry、インターフォンを提供するAvtech Tyeeといったワシントン州内の部品メーカーを紹介した。

 ワシントン州では、“クイーン・オブ・スカイ”のボーイング 747、“世界でもっとも売れた”ボーイング 737など伝説的な飛行機がここでテストフライトを行なってきたことに触れながら、MRJもそのサクセスストーリーに載ることに期待し、航空機産業の未来に向けて三菱とパートナーシップを組めることに喜びを表明。最後に「Good Luck! ガンバレ!」と応援の言葉で挨拶を締めくくった。

 在シアトル日本国総領事の大村昌弘氏は、「航空機産業は、日本とアメリカの良好なパートナーシップを示すよい例であると思う。特にボーイング 787では、ANAがローンチカスタマーとなり、製造開発にも三菱重工業を含む日本企業が参加した。MRJも半分以上の部品がアメリカで作られ、80%の受注はアメリカのエアラインである。とりわけ、ワシントン州にはシアトル・エンジニアリング・センターが作られたほか、モーゼルレイクの空港でテストが行なわれる。そしてFAA(連邦航空局)はJCAB(国土交通省 航空局)に対して全般的なサポートを行なう」と航空機産業やMRJにおける日米関係を紹介。列席者に対して、MRJという夢の実現に向けて、引き続きのサポートと支援を呼びかけた。

三菱航空機株式会社 代表取締役社長 森本浩通氏
AeroTEC, L.C.C. Presidentのリー・ヒューマン氏
ワシントン州知事のジェイ・ロバート・インスリー氏
在シアトル日本国総領事の大村昌弘氏

 続いて、日本式の「鏡開き」でシアトル・エンジニアリング・センターのオープンをお祝い。勢いよく飛び出したお酒が森本社長の目に入るというちょっとしたハプニングもあったものの、現地の人達に鏡開きは新鮮に映ったようで、会場は大いに盛り上がった。

 このあと、シアトル州選出の下院議員のスーザン・デルベン氏、シアトル市長のエドワード・B・ミュレイ氏、米連邦航空局 Transport Airplane Directorate Managerのジェフリー・E・デュバン氏、米上院議員のパッティー・マレー氏によるビデオメッセージ、Community Liaison for Business, Trade & Environmentのペイト・ミルズ氏らが祝辞を述べた。

インスリー知事も鏡開きに興味を示す
いよいよ鏡開き
勢いよくお酒が飛び出す。この鏡開きには、(左から)大村在シアトル総領事、インスリー知事、森本社長、FAAのデュバン氏が参加
飛び散ったお酒が森本社長の目に入るハプニングにも場は盛り上がった
日米のエンジニア部隊を束ねるAeroTECのリー・ヒューマン氏(左)と、三菱航空機の岸信夫副社長(右)
下院議員のスーザン・デルベン氏
シアトル市長のエドワード・B・ミュレイ氏
米連邦航空局 Transport Airplane Directorate Managerのジェフリー・E・デュバン氏
ビデオメッセージを寄せた米上院議員のパッティー・マレー氏
Community Liaison for Business, Trade & Environmentのペイト・ミルズ氏
セレモニーの閉会の辞を述べた、米国三菱航空機株式会社 シアトル・エンジニアリング・センター長 本田健一郎氏

 セレモニー後に行なわれた森本社長の囲み取材では、「MRJの開発は試験のステージに移る。2500時間以上やるということで重要なプロセスであり、この結果が型式証明に繋がる。この試験をいかに成功裏に収めるかが重要。特に時間的なスケジュール、つまりお客様にお渡しする時期が決まっているので、時間を効率的に使い、かつ試験結果を文書に落とし込んでいくことが大事。ここにすべての知見をある方を集約し、一緒に取り組んでいく」と同所の開設意義を説明。シアトル・エンジニアリング・センターやモーゼルレイクの拠点を「我々を乗せて型式証明まで運んでくれる“駿馬”である」と例えた。

 受注については、「まだ受注を取れていない地域、特にヨーロッパやアジアのお客様を開拓したい。そのためにも、まずは飛ばすことが、営業するうえでの説得力に繋がると思っている。また商談のなかで、現実的なプログラムとしてリージョナルジェットを導入したいお客様もいるので、まずは秋の初飛行を成功裏に収め、受注に繋げたい」とした。

(編集部:多和田新也)