地元誌編集長の「ハワイ現地発」

【ハワイ現地発】知っておきたい、メイド・イン・ハワイ「生産者の顔が見えるお土産」

 過去最高の参加者数を記録したホノルルマラソン関連イベントから年末にかけての今、ワイキキでは日本人観光客の姿を見かける機会がぐっと増えた。一方でハワイ在住の日本人たちは、冬休みを利用して子供を連れ、日本へ一時帰国する時期でもある。いずれにしても悩ましいのが、日本へのお土産選び。私はいつもその背景や物語を語れる「生産者の顔が見えるお土産」を選ぶようにしている。

今年は入場に数時間待ちとなったメイド・イン・ハワイ・フェスティバルに出店した「スイート・ブラウン・ハワイ・キャラメル」。スティーブさんとルイコさん夫妻

「スイート・ブラウン・ハワイ・キャラメル」と出会ったのは、数年前にお寺で開催された小さなポップアップマーケットだった。ハワイではホノルルやカイルア、ハレイワなど各地で、実店舗を持たない生産者たちが集うポップアップ型のメイド・イン・ハワイマーケットが盛んに開かれている。

ポップアップマーケットでに並ぶキャラメル
ボックスは6個入り8ドル、1袋は9ドル

 彼らのブースの前を通りかかり、「キャラメルって懐かしい」と思いながら試食をさせてもらうと、やさしい甘さが口の中で溶けていった。「ああ、いい出会いをしてしまった!」とうれしくなったのを覚えている。

 話を聞くと、キャラメル作りから包装、販売までをすべて夫婦二人だけで行なっているという。それ以来、ホノルルを中心としたマーケットに足を運ぶたび、彼らの前に人だかりができていくのを目にするようになった。来年2月で創業10年。キャラメルを通じた輪は、着実に広がっている。

会話好きのスティーブさんと優しくて親切なルイコさん夫妻に会いに来るお客さんも多い

 そんな二人のキッチンを訪ねて話を伺った。

 スティーブさんとルイコさん夫妻。二人とキャラメルとの出会いは2015年にさかのぼる。スティーブさんの家族と訪れたサンフランシスコのファーマーズマーケットで手作りキャラメルを食べ、その美味しさに思わず笑顔になったのがきっかけだという。

100%コナコーヒー・マカダミアナッツ・キャラメル(9ドル)

 もともとお菓子作りが趣味だったスティーブさんは、ペイストリーシェフである弟とレシピを交換しながらキャラメル作りを開始。友人たちにお裾分けすると評判となり、「販売してほしい」「パッケージデザインをするよ!」と声が上がった。そうして「一歩踏み出してみよう」と決意し、2016年に「スイート・ブラウン・ハワイ・キャラメル」を立ち上げた。

キャラメル作りから一つずつのラッピングまですべてを二人で手作業のため大量生産は難しい

 夫婦で決めたことは、安心して食べられるように保存料などは使わず無添加であること、できる限りオーガニック素材を使用すること、そしてハワイ産のコーヒーやマカダミアナッツを使い、ハワイの恵みを感じられるキャラメルにすること。

 最初に出店したのは、ワイキキのハイアットリージェンシーのファーマーズマーケット。キャラメル自体のめずらしさに加え、ローカルアーティストによるオリジナルパッケージ、そして手頃なサイズと価格が支持され、「自分用にも、ばらまき土産にも最適!」と反響を呼んだ。日本の雑誌にも紹介され、瞬く間に観光客に人気のお土産となり、今ではハワイを訪れるたびに買い求める人も少なくない。

ハワイの味わいと手頃な料金とサイズも人気に火がついた理由の一つ

 このキャラメルが作られているキッチンはカリヒエリアにある。ドアを開けると、真っ白な壁にグリーンの窓枠が映える、清潔感あふれる空間が広がっていた。

 この日は100%コナコーヒー・マカダミアナッツ・キャラメルを作るという。大きな寸胴鍋からは、すでに甘い香りが立ちのぼっていた。

キッチンでキャラメルを作るスティーブさん
大きな寸胴鍋にタイミングを見計らって具材を加える

 一定のリズムで攪拌される鍋に、スティーブさんが絶妙なタイミングでオーガニッククリームを加え、ハワイ島産の100%コナコーヒー、さらにハワイ島のマカダミアナッツをゴロゴロと投入する。

高級なコーヒーとして知られるコナコーヒー100%を使用
さらにマカダミアナッツを投入するスティーブさん

 慎重に温度を管理し、完璧な瞬間を見きわめて攪拌を止める。かつて温度を誤り、キャラメルを焦がしてしまった苦い経験もあるという。いつもにこやかで明るいスティーブさんが、このときばかりは真剣な表情を浮かべていたのが印象的だった。

温度を確認してタイミングをチェック

 熱々のキャラメルをバットに流し込み、表面を平らに整えたあと、さらにマカダミアナッツを丁寧に散らしていく。

手早くキャラメルを寸胴鍋からバットへ移す

「どの一粒にも、ちゃんとナッツが入っていないとね」。その言葉どおり、完成したキャラメルはどれを口にしてもナッツの存在感とコナコーヒーの風味が広がる。

マカダミアナッツをさらに加えるスティーブさん。ルイコさんは手を添えたり、後片付けをしたりと動き回る

 冷えて固まったキャラメルは一粒ずつ丁寧にカットされ、セロファンに包まれて、フレーバーごとに異なるデザインのパッケージに詰められていく。本当にすべてが手作業だった。

固まったキャラメルをカットする作業
これらを一粒ずつラッピングしていく

 フレーバーは、定番のコナコーヒーをはじめ、グラハムクラッカーが敷き詰められ、一粒でアップルパイの味と食感を満喫できる「アップルパイキャラメル with グラハムクラッカークラスト」「バニラマカダミアナッツ」「ココナツ(ビーガン)」「シーソルト」「パイナップル」「ピーナツバター」など多彩。迷ったら、6種類のフレーバーが楽しめるアソートボックス(8ドル)を選ぼう。

迷ったらこれ! 6種類のフレーバーが詰まったアソートボックス(8ドル)

 定番に加え、新作フレーバーも次々と登場している。今年のホリデーシーズンには抹茶フレーバーも仲間入りした。

「作業はすべて二人なので大量生産は難しいのですが、どんなに忙しくても一つ一つのプロセスで手を抜くことは絶対にしません。そして何よりも大切にしているのは、楽しんで作ることです。これらは必ず味に反映されるんです」とルイコさん。

 二人にとってキャラメルは我が子のような存在だという。「何よりも大切で、これからもどう育てていくかを話し合いながら、愛情を注いでいきたいですね」と話してくれた。

ハワイのフレーバーを楽しめる唯一無二の手作りキャラメル
口の中でほどよく甘くとろける独特の食感と味がキャラメルの醍醐味

 こうした背景を知ってから味わうと、さらに美味しく、幸せな気持ちになる。生産者の顔が見えるメイド・イン・ハワイのお土産は、選ぶ時間も、渡す瞬間も、ワクワクするはず。ポップアップマーケットはワイキキやアラモアナセンターなどで開催されるので、ぜひ覗いて「出会い」を楽しんでみてほしい。

 彼らが出店するポップアップマーケットは、インスタグラムやWebサイトで確認できる。

おしどり夫婦のスティーブさんとルイコさん。筆者も一緒に記念撮影
大澤陽子

ハワイで発行している生活情報誌「ライトハウスハワイ」編集長。日本ではラジオアナウンサー、ライターとエディターとして活動。2012年にハワイへ移住。新聞やハワイのガイド本などの編集に携わる。ハワイのビーチとビールをこよなく愛している。