旅レポ

鉄人クッキングスタジオで本場の味を! お弁当箱「ピント」でタイの美味しさ持ち歩き

伝統的なお弁当箱「ピント」。3段重ねが主流

 学校、職場、レジャーと日本ではさまざまな場面で活躍するお弁当箱。開くときのドキドキや大好物が入っていたときはどんな年齢になってもうれしいもの。日本同様にタイにもお弁当文化はあり、「ピント」と呼ばれるお弁当箱を使っている。

「ピント」は自分や家族のためのランチ用であるとともに、「タンブン」という功徳を積むためお寺へお参りにいくときに使われる。1970年代から90年代にかけてよく使われていたが、外食中心で持ち帰りの場合もビニール袋を使うようになりタイでは見かけることも少なくなったそうだ。

 そんななか、サステナブルな取り組みとしてピントがタイで見直され始めている。3段・大容量・ステンレス製が主流だったが、パステルカラーなどかわいらしいカラーリングに小ぶりなサイズも増えより使いやすく進化。観光客のお土産としても手に取られることが多くなっているとのこと。

 タイ国政府観光庁のプレスツアーで訪れたバンコク滞在3日目は、グルメデーとしてピントに詰めたい屋台の味から伝統料理、家庭の味までタイの美味しいを巡ることにした。

パステルカラーで2段重ねのキュートな1品も。フレッシュフルーツやチップスを入れてもOK

本場の味をピントに詰め詰め。クッキングクラスで食と文化を舌で覚えよう

 この日はピント文化を知るとともに本場の味を持ち帰るべく、クッキング教室に参加。帰国後もサクッと作れるメニューを中心に学ぶため、アイアンシェフ・タイで2012年に優勝経験を持つシェフのプリダ・スィラフォン氏の待つ「オールドタウン・タイ・クッキング・スタジオ」へ向かった。キュートなトラのイラストが目印の同スタジオ玄関では猫ちゃんがお出迎え、ほっこり気分に。マトゥームジュースのウェルカムドリンクで喉を潤したあとは2階で時間になるまでタイの昔ながらの台所用品を見学。幅広の包丁は使いやすくタマリンド製のまな板は硬く丈夫でお勧めとのことだ。

「オールドタウン・タイ・クッキング・スタジオ」はお料理するトラのイラストが目印
しましま猫ちゃんがお出迎え
ウェルカムドリンクは、甘くて体に染みる冷たさのマトゥームジュース
受付後、時間になるまでタイの昔ながらの台所用品の展示を見学

 受講したのは9時から13時まで約4時間のモーニングコース。火曜日に開講される「タイ・ストリートフード(セット2)」(1800バーツ、約6480円、1バーツ=約3.6円換算)だ。市場への買い出し後に専用キッチンで料理を学ぶコースとなっている。作るメニューは屋台で味わえる定番が中心。「ソムタム」「ガイサテー」「ガパオ」「空芯菜炒め」「カオニャオ・マムアン」の5品。帰国後も自宅で簡単に作れると旅行者に人気のコースだ。開始時間になり、シェフ・プリダにごあいさつ。早速市場への買出しへとトゥクトゥクへ乗り込み一緒に行くことになった。

シェフのプリダ・スィラフォン氏。とても気さくで笑顔が素敵
玄関にトゥクトゥク3台がスタンバイ
初トゥクトゥク。電飾が光る内装や車窓からの眺めを堪能

 トゥクトゥクで約10分ほど走り到着したのは地元民御用達の「センチャン市場」。食材の状態をチェックしながら、その特徴をシェフが解説してくれる。唐辛子のプリック・キーヌーは激辛なこと、カティヤムはタイのにんにくでサイズは小さいが香りが強めであること。そして新鮮なココナッツミルクを絞る様子を見学。1番絞りはクリーミィで美味しく「カオニャオ・マムアン」に最適。2番絞りは水の代わりにタイカレーやデザートに使用するとよいとタイ料理の基本を教えてくれ情報量も多い。

市場に到着し、早速食材を品定め
生の唐辛子はレッド、イエロー、グリーンといろいろ
小さいがとっても辛いプリック・キーヌー
タイのにんにくカティヤムは小さいが香りは強め
ココナッツは皮ごとダイナミックに粉砕
袋に入れたあと専用のマシンでギュギュッと絞り出す
絞りたてのココナッツジュースを2袋購入。昔ながらのカゴに入れる
味噌状の唐辛子であるナム・プリック・ケーンも種類豊富
30分ほどの買い物で空芯菜、長インゲン、ホーリー・バジル、トマト、ココナッツミルクを購入

 食材の購入後、再びトゥクトゥクに乗り込みスタジオへ。美しく整えられたキッチンには、エプロンが掛けられ、調味料やスパイスなどが並んでいる。テーブルの上には調理器具やレシピが人数分配置。準備を整えて、いよいよ料理開始だ。

キッチンエリアの入り口にエプロンが並ぶ
メインで調理を行なうエリア
棚にはスパイスや調理器具が揃えられている
レシピは英語表記。帰国後も気軽に作ることができる

 まずはシェフのデモンストレーションからスタート。屋台の定番串焼きチキンである「ガイサテー」だ。ターメリックやコリアンダーのスパイスなどをチキンにマリネし、ささっとソースも仕上げていく。作り方を目視後に自分のテーブルに戻り復習しながら作業。その間にデモ用のサテーができあがり試食会に。目指すべき味と焼き加減を確認できるのはありがたい。

スライスしたチキンをスパイスでマリネしていく
20分ほど置き、味を染み込ませる
その間に添えるためのソースを手早く作る
「ガイサテー」のできあがり! ソースは2種類

「ガイサテー」の仕込みと同時に下準備&炊いていたもち米もいい塩梅に。先ほどの1番絞りのココナッツミルクを温め、砂糖を入れて透明になったらパンダンリーフを結び入れて香り付け。美味しさの秘密はタイ産の最高級もち米と新鮮なココナッツミルクを使うこと。カバーをかけて粗熱を取りつつ、20分ほど寝かす間にココナッツミルクでソース作り。マンゴーも添えて「カオニャオ・マムアン」の完成だ。

かごで蒸していたもち米をチェック
ココナッツミルクにパンダンリーフを入れて香り付け
蒸しあがったもち米に一気に入れていく
しばらくボウルで寝かせたあとお皿に盛り付け
1人前に取り分けマンゴーとココナッツソースなどを添えて完成

 続いては「ソムタム」。グリーンパパイヤを根気よく細断していくが、想像以上に硬い。包丁を縦に入れてシュレッドする昔ながらの方法に挑戦してみたが時間がかかるので最終的にピーラーを使用。そして細切りを唐辛子やタマリンドウォーター、長インゲンと一緒にクロックと呼ばれる鉢に入れ棒で一気に叩き混ぜていく。

グリーンパパイヤを細切りし、クロックで調味料と一緒に叩き混ぜる
想像以上に気合いと根気が必要だった「ソムタム」

 メインディッシュの「ガパオ」にも挑戦。ホーリー・バジルと呼ばれるタイ料理に欠かせないバジルを使用。見た目は日本でよく見かけるものとは異なっている。下準備はとにかく、ホーリー・バジルの葉をむしり取り、量をしっかり用意すること。そしてひき肉をスパイスと一緒に炒めたら最後に一気にホーリー・バジルを投入。ほどよく炒めたら至福の一品の完成だ。

「ガパオ」で使う調味料一式。ホーリー・バジルは形も茎の色も日本で見るものと違う
肉はしっかり炒めて、調味料とも絡ませる。ホーリー・バジルは最後に投入
あえて唐辛子1つの辛さ控えめの「ガパオ」を作ってみた

 時間との戦いである「空芯菜炒め」はラストに。タイでは空芯菜の上に具材などを乗せて一気に仕上げるスタイル。1分30秒から2分以内で炒めあっという間に完成。余った時間で辛さ調整用に「ナンプラープリック」を唐辛子、カティアム、ナンプラーで作り完了。自作のタイランチがテーブルに揃った。

空芯菜の茎をプチプチちぎり食べやすい大きさに。調味料に味噌も使う
空芯菜に全部乗せし、一気に鍋へ投入
2分ほどで仕上げるのが美味しさの秘訣
ナンプラープリックも忘れずに作っておこう
テーブルセッティングをして、待ちに待ったランチタイムに

 今回、タイの本場のメニューのレクチャーとともにシェフ・プリダにピント文化についても話を伺うことをができた。同氏は「ピントは日本のお弁当文化にとても似ています。どの家庭にも1つはありますし、特に重要なのはお寺でお坊さんに供える“タンブン”という文化に関係しているところです。実際にお供えし、余った食事はみなでシェアして持ち帰ります。各家庭の味が楽しめるうえコミュニケーションツールとしての役割もあるのです。私も小さいころ“タンブン”から帰ってきた祖母が誰のどのメニューを持って帰ってくるのか楽しみでした。ピントの使い方はご飯、具材、スープを1段ずつ分けていれます。デザートも含めれば1つのピントでフルコースを楽しめるともいえますね。ぜひ教室に参加して日本でもタイの味をお弁当にプラスしてみてください」と話してくれた。

ピントを使った盛り付けを見せてくれた
混ざらないように1コンテナ1メニューが基本
3段つなげると持ち歩きやすい。スープを入れるときは半分くらいで
お寺にて「タンブン」に向かう人々の手にはピントが握られていた

渡し船で行く隠れ家ホテルへ。午後はゆったり伝統的なアフタヌーンティーを満喫

 自分たちで作ったランチを完食後、5つ星ホテル「プラヤパラッツォ」のアフタヌーンティーを目指して出発。専用船に乗り込みチャオプラヤー川を渡り対岸のホテルへ。ラーマ5世の時代のタイの貴族の邸宅が目印だ。ホテルは当時と同じ材料を使って改装し、サイアム国時代のクラシックな装飾が施された館内に足を踏み入れた瞬間タイムトリップ。ウェルカムドリンクのパンダンジュースを飲み終え、ボールルームへと進むときらびやかな衣装が。「タイ王室御座船パレード」実施に合わせ衣装を着ての記念撮影も宿泊者にサービスしているとのことだ。

細い路地を抜け、渡し船の乗り場へ
ホテルのロゴが屋根についている船に乗り込む
1分ほどで対岸に到着
プールサイドも静かでバケーションにぴったり
パンダンジュースでクールダウン
ボールルームを見学
「タイ王室御座船パレード」実施に合わせ衣装が着れるサービスも行なっていた

 お目当ての「タイ・アフタヌーンティー・セット」(590バーツ、約2124円)の内容は日替わり。伝統的なタイ料理とデザートを中心に構成されている。提供時間は13時から16時、「プラヤダイニング」で。宿泊者以外でも味わえるのはありがたい。クラシカルな雰囲気の店内は、すべてが美しく写真映え確実。エレガントな午後を過ごすのにぴったりだ。訪れた日のメニューはパイナップルを使った「マーホー」に揚げそばのカリカリ感がクセになる「ミー・クロップ」、グリーンタピオカとココナッツミルクの「カノム・インタニン」など。

「プラヤダイニング」はクラシカルな雰囲気
伝統料理が味わえる「タイ・アフタヌーンティー・セット」

 15室のみの客室も見学。「ジュニアスイート」(約35m 2 )はバスタブ付きでバスルームのカラーリングが印象的。暗めの照明のベッドルームにはキングサイズのベッド。「スーペリアルーム」(約25m 2 )はシャワーのみ。

「ジュニアスイート」
バスルームのカラーリングが秀逸
「スーペリアルーム」
こちらはシャワーのみ

ディナーはタイ・ミシュラン認定の「スパンニガー・イーティング・ルーム」で決まり!

 自分で作る定番タイメニューから伝統的な料理とバンコクの美味しい巡ったグルメデー。締めのディナーはタイ版ミシュラン認定の「スパンニガー・イーティング・ルーム」。オーナーの祖母のレシピをもとに家庭の味に現代のエッセンスを組み合わせたメニューを提供する人気店だ。

常に人気で満席状態の「スパンニガー・イーティング・ルーム」
予約をしておくと2階に案内。ソファ席でのんびり食事も
街のネオンを眺められる窓席もお勧め

 まずは「スパンニガー・ホーム・パッション」(180バーツ、約648円)と「バージン・ウォーターメロン・モヒート」(140バーツ、約504円)で乾杯。テンダービーフのスライスをバジルと唐辛子で仕上げた「カプローヌエライ」(190バーツ、約684円)は柔らかな食感のビーフとバジルのハーモニーが絶品。タイの東北・イサーン地方スタイルで仕上げた「イサーン・ステーキ(ビーフ)」(320バーツ、約1152円)は柔らかでジューシーなホーンヤンカムビーフと甘いもち米の相性抜群だ。

「スパンニガー・ホーム・パッション」「バージン・ウォーターメロン・モヒート」
「カプローヌエライ」
「イサーン・ステーキ(ビーフ)」

 そして同店を訪れたなら必ず味わってほしいのが「ゲーン・クラブミート・バイ・シャップー」(650バーツ、約2340円)。スラーターニー産の大きなカニとカニの卵をふんだんに使ったレッドカレーで、激しい辛さの奥に甘さと旨味が隠れており、食べれば食べるほどハマる究極の一品。あまりの美味しさに追加オーダーをしたほど。一緒にキャベツをトラット地方から取り寄せたプレミアムナンプラーで仕上げた「カラムトッドナンプラ」(170バーツ、約612円)を。優しい甘みと塩気で食欲をさらに増進させてくれる。デザートは芋とかぼちゃを使った「プアローイ」(70バーツ、約252円)で締め。食べ終わるころには辛さへの耐性が付き、タイ料理の辛さの魅力に目覚めることができた。

「ゲーン・クラブミート・バイ・シャップー」はご飯か米麺で味わう
「カラムトッドナンプラ」と交互に食べるのがお勧め
「プアローイ」

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。