旅レポ
鉄人クッキングスタジオで本場の味を! お弁当箱「ピント」でタイの美味しさ持ち歩き
2019年12月11日 07:00
学校、職場、レジャーと日本ではさまざまな場面で活躍するお弁当箱。開くときのドキドキや大好物が入っていたときはどんな年齢になってもうれしいもの。日本同様にタイにもお弁当文化はあり、「ピント」と呼ばれるお弁当箱を使っている。
「ピント」は自分や家族のためのランチ用であるとともに、「タンブン」という功徳を積むためお寺へお参りにいくときに使われる。1970年代から90年代にかけてよく使われていたが、外食中心で持ち帰りの場合もビニール袋を使うようになりタイでは見かけることも少なくなったそうだ。
そんななか、サステナブルな取り組みとしてピントがタイで見直され始めている。3段・大容量・ステンレス製が主流だったが、パステルカラーなどかわいらしいカラーリングに小ぶりなサイズも増えより使いやすく進化。観光客のお土産としても手に取られることが多くなっているとのこと。
タイ国政府観光庁のプレスツアーで訪れたバンコク滞在3日目は、グルメデーとしてピントに詰めたい屋台の味から伝統料理、家庭の味までタイの美味しいを巡ることにした。
本場の味をピントに詰め詰め。クッキングクラスで食と文化を舌で覚えよう
この日はピント文化を知るとともに本場の味を持ち帰るべく、クッキング教室に参加。帰国後もサクッと作れるメニューを中心に学ぶため、アイアンシェフ・タイで2012年に優勝経験を持つシェフのプリダ・スィラフォン氏の待つ「オールドタウン・タイ・クッキング・スタジオ」へ向かった。キュートなトラのイラストが目印の同スタジオ玄関では猫ちゃんがお出迎え、ほっこり気分に。マトゥームジュースのウェルカムドリンクで喉を潤したあとは2階で時間になるまでタイの昔ながらの台所用品を見学。幅広の包丁は使いやすくタマリンド製のまな板は硬く丈夫でお勧めとのことだ。
受講したのは9時から13時まで約4時間のモーニングコース。火曜日に開講される「タイ・ストリートフード(セット2)」(1800バーツ、約6480円、1バーツ=約3.6円換算)だ。市場への買い出し後に専用キッチンで料理を学ぶコースとなっている。作るメニューは屋台で味わえる定番が中心。「ソムタム」「ガイサテー」「ガパオ」「空芯菜炒め」「カオニャオ・マムアン」の5品。帰国後も自宅で簡単に作れると旅行者に人気のコースだ。開始時間になり、シェフ・プリダにごあいさつ。早速市場への買出しへとトゥクトゥクへ乗り込み一緒に行くことになった。
トゥクトゥクで約10分ほど走り到着したのは地元民御用達の「センチャン市場」。食材の状態をチェックしながら、その特徴をシェフが解説してくれる。唐辛子のプリック・キーヌーは激辛なこと、カティヤムはタイのにんにくでサイズは小さいが香りが強めであること。そして新鮮なココナッツミルクを絞る様子を見学。1番絞りはクリーミィで美味しく「カオニャオ・マムアン」に最適。2番絞りは水の代わりにタイカレーやデザートに使用するとよいとタイ料理の基本を教えてくれ情報量も多い。
食材の購入後、再びトゥクトゥクに乗り込みスタジオへ。美しく整えられたキッチンには、エプロンが掛けられ、調味料やスパイスなどが並んでいる。テーブルの上には調理器具やレシピが人数分配置。準備を整えて、いよいよ料理開始だ。
まずはシェフのデモンストレーションからスタート。屋台の定番串焼きチキンである「ガイサテー」だ。ターメリックやコリアンダーのスパイスなどをチキンにマリネし、ささっとソースも仕上げていく。作り方を目視後に自分のテーブルに戻り復習しながら作業。その間にデモ用のサテーができあがり試食会に。目指すべき味と焼き加減を確認できるのはありがたい。
「ガイサテー」の仕込みと同時に下準備&炊いていたもち米もいい塩梅に。先ほどの1番絞りのココナッツミルクを温め、砂糖を入れて透明になったらパンダンリーフを結び入れて香り付け。美味しさの秘密はタイ産の最高級もち米と新鮮なココナッツミルクを使うこと。カバーをかけて粗熱を取りつつ、20分ほど寝かす間にココナッツミルクでソース作り。マンゴーも添えて「カオニャオ・マムアン」の完成だ。
続いては「ソムタム」。グリーンパパイヤを根気よく細断していくが、想像以上に硬い。包丁を縦に入れてシュレッドする昔ながらの方法に挑戦してみたが時間がかかるので最終的にピーラーを使用。そして細切りを唐辛子やタマリンドウォーター、長インゲンと一緒にクロックと呼ばれる鉢に入れ棒で一気に叩き混ぜていく。
メインディッシュの「ガパオ」にも挑戦。ホーリー・バジルと呼ばれるタイ料理に欠かせないバジルを使用。見た目は日本でよく見かけるものとは異なっている。下準備はとにかく、ホーリー・バジルの葉をむしり取り、量をしっかり用意すること。そしてひき肉をスパイスと一緒に炒めたら最後に一気にホーリー・バジルを投入。ほどよく炒めたら至福の一品の完成だ。
時間との戦いである「空芯菜炒め」はラストに。タイでは空芯菜の上に具材などを乗せて一気に仕上げるスタイル。1分30秒から2分以内で炒めあっという間に完成。余った時間で辛さ調整用に「ナンプラープリック」を唐辛子、カティアム、ナンプラーで作り完了。自作のタイランチがテーブルに揃った。
今回、タイの本場のメニューのレクチャーとともにシェフ・プリダにピント文化についても話を伺うことをができた。同氏は「ピントは日本のお弁当文化にとても似ています。どの家庭にも1つはありますし、特に重要なのはお寺でお坊さんに供える“タンブン”という文化に関係しているところです。実際にお供えし、余った食事はみなでシェアして持ち帰ります。各家庭の味が楽しめるうえコミュニケーションツールとしての役割もあるのです。私も小さいころ“タンブン”から帰ってきた祖母が誰のどのメニューを持って帰ってくるのか楽しみでした。ピントの使い方はご飯、具材、スープを1段ずつ分けていれます。デザートも含めれば1つのピントでフルコースを楽しめるともいえますね。ぜひ教室に参加して日本でもタイの味をお弁当にプラスしてみてください」と話してくれた。
渡し船で行く隠れ家ホテルへ。午後はゆったり伝統的なアフタヌーンティーを満喫
自分たちで作ったランチを完食後、5つ星ホテル「プラヤパラッツォ」のアフタヌーンティーを目指して出発。専用船に乗り込みチャオプラヤー川を渡り対岸のホテルへ。ラーマ5世の時代のタイの貴族の邸宅が目印だ。ホテルは当時と同じ材料を使って改装し、サイアム国時代のクラシックな装飾が施された館内に足を踏み入れた瞬間タイムトリップ。ウェルカムドリンクのパンダンジュースを飲み終え、ボールルームへと進むときらびやかな衣装が。「タイ王室御座船パレード」実施に合わせ衣装を着ての記念撮影も宿泊者にサービスしているとのことだ。
お目当ての「タイ・アフタヌーンティー・セット」(590バーツ、約2124円)の内容は日替わり。伝統的なタイ料理とデザートを中心に構成されている。提供時間は13時から16時、「プラヤダイニング」で。宿泊者以外でも味わえるのはありがたい。クラシカルな雰囲気の店内は、すべてが美しく写真映え確実。エレガントな午後を過ごすのにぴったりだ。訪れた日のメニューはパイナップルを使った「マーホー」に揚げそばのカリカリ感がクセになる「ミー・クロップ」、グリーンタピオカとココナッツミルクの「カノム・インタニン」など。
15室のみの客室も見学。「ジュニアスイート」(約35m 2 )はバスタブ付きでバスルームのカラーリングが印象的。暗めの照明のベッドルームにはキングサイズのベッド。「スーペリアルーム」(約25m 2 )はシャワーのみ。
ディナーはタイ・ミシュラン認定の「スパンニガー・イーティング・ルーム」で決まり!
自分で作る定番タイメニューから伝統的な料理とバンコクの美味しい巡ったグルメデー。締めのディナーはタイ版ミシュラン認定の「スパンニガー・イーティング・ルーム」。オーナーの祖母のレシピをもとに家庭の味に現代のエッセンスを組み合わせたメニューを提供する人気店だ。
まずは「スパンニガー・ホーム・パッション」(180バーツ、約648円)と「バージン・ウォーターメロン・モヒート」(140バーツ、約504円)で乾杯。テンダービーフのスライスをバジルと唐辛子で仕上げた「カプローヌエライ」(190バーツ、約684円)は柔らかな食感のビーフとバジルのハーモニーが絶品。タイの東北・イサーン地方スタイルで仕上げた「イサーン・ステーキ(ビーフ)」(320バーツ、約1152円)は柔らかでジューシーなホーンヤンカムビーフと甘いもち米の相性抜群だ。
そして同店を訪れたなら必ず味わってほしいのが「ゲーン・クラブミート・バイ・シャップー」(650バーツ、約2340円)。スラーターニー産の大きなカニとカニの卵をふんだんに使ったレッドカレーで、激しい辛さの奥に甘さと旨味が隠れており、食べれば食べるほどハマる究極の一品。あまりの美味しさに追加オーダーをしたほど。一緒にキャベツをトラット地方から取り寄せたプレミアムナンプラーで仕上げた「カラムトッドナンプラ」(170バーツ、約612円)を。優しい甘みと塩気で食欲をさらに増進させてくれる。デザートは芋とかぼちゃを使った「プアローイ」(70バーツ、約252円)で締め。食べ終わるころには辛さへの耐性が付き、タイ料理の辛さの魅力に目覚めることができた。