旅レポ
スカイマークの初便に乗ってサイパンに行ってみた。サイパンリピーターが見た日本発直行便の復活
2019年12月11日 08:00
スカイマークは、11月29日に成田~サイパン線定期便の運航を開始した。この初便に搭乗する機会を得たので、その様子をレポートする(関連記事「スカイマーク、初の国際定期便サイパン線を就航。佐山会長『来年はパラオ。いつかは欧米へ』」)。
日本から3時間半で行ける南国リゾート、サイパン。ある年代までの方々にはなじみのある旅行先だったが、それも今は昔。日系航空会社の撤退にとともに日本における存在感は低下傾向にあり、2018年5月、とうとう頼みの綱のデルタ航空までが撤退し、すっかり“近くて遠い島”になってしまっていた。LCCを含めて1日何便も飛ばし、来島者が大きく増加している中韓に対して(特に海のリゾートが国内にほとんどなく、ビザなしで渡航できるアメリカでもあることから中国人に超人気)、直行便のない日本のマーケットは厳しい局面を迎えていた。
サイパン直行便は以前にも計画が持ち上がりながらも消えてしまった(機体のリース契約直前までたどり着いていたこともあったのに!)こともあり、サイパンのファンやサイパン在住邦人をなにかとがっかりさせてきたのだが、具体的かつ未来の展望が明るいプランとして新規参入の名乗りを上げたのがスカイマークだった。
厳しい時期を乗り越えたスカイマークが、同じく(対日本的には)厳しい時期を過ごしてきたサイパンを初めての国際定期便の就航先として選んだことに、ある種の運命めいたものを感じる。
初の海外定期便となるサイパン便の機材は、スカイマーク国内便と同じ、ボーイング 737-800型機。シングルクラスの全177席構成で、最前列の6席が「フォワードシート」(+5000円/45米ドル)に設定されているのも国内線と同様だ。シートピッチは約79cm(フォワードシートはフットスペースが38cm分広い)で、シートごとの個人用モニターやオーディオといった機内エンタテイメント類はないが、全席にコンセントを備えている。
なお、サイパン便就航記念として発売された最大の目玉である超お買い得なチケット「サイパンスペシャル」(片道3800円、諸税など別)は12月6日現在ほとんど残りはないようだが、「いま得」「たす得」のチケットはまだ入手可能。もちろん日程にもよるが、かつての円高時期のデルタ航空(の深夜便)と比較してもお買い得な便もあるので、チェックしてみてほしい。
11月29日の初便に乗ってサイパンへ
初便出発の直前には、成田空港第1ターミナルの21番ゲート付近で記念式典を開催。その後、ウォーターキャノンで祝福を受けつつ、ほぼ定刻どおりにサイパンへ向け出発した。初便は満席で、スカイマーク 取締役会長の佐山展生氏、北マリアナ諸島自治連邦区知事のラルフ・トーレス氏、搭乗/降機時の曲(ボーディングミュージック)を手掛けたピアニストの川上ミネ氏ら関係者も搭乗した。
サイパン現地の新聞報道によると、ビジネス目的の乗客も多かったとのこと。ピーク時には40万人規模だった日本人来島者は、現在10分の1にまで縮小してしまっている。そのため、スカイマークの就航により、日本とのツーリズムビジネスの再拡大を期待する声は非常に大きく、到着後のあいさつのなかでトーレス知事は、「スカイマークの成功はサイパンの成功でもある」と述べ、積極的なサイパン側の協力と日本からの投資拡大を訴えていた。
離陸後、シートベルトサインが消えたあとはドリンクと機内食の提供がスタート。スカイマークにとって初めての国際線定期便なので、これまで2回のチャーター便を経て、今回から本格的な定期サービスのスタートということになる。
往路で提供された機内食は、「和」をテーマとした二段重。お寿司や黒毛和牛旨煮など、見た目にも楽しいメニューだ。機内であいさつを行なった佐山会長は、「初の国際線で初めて提供する昼食。試行錯誤を重ねて私も試食しているが、美味しいものになったと思う」と自信をうかがわせるコメント。機内で聞こえてくる感想も「美味しい」「キレイ」「かわいい」と上々のようだった。
なお、復路の機内食は現地の郷土食「チャモロ料理」がテーマ。メインとなるチキンのケラグエン(肉類と玉ねぎなどとを細かく刻み、レモン汁、塩、ココナッツ、唐辛子などで味付けしたもの)、ティティヤス(チャモロ風薄焼きパン)、パスタサラダで、ピリ辛の味付けが特徴的。郷土食と言っても、サイパンでチャモロ料理が食べられる機会は実はそれほど多くないので、機内食で体験できるのはよい試みかもしれない。
機内食がどうなるかは現地在住邦人の間でも話題だったらしく、現地の知人に「機内食どうだった?」と聞かれて写真を見せると、驚きの声を上げていた。この機会に日本に行ってみようという現地の方々もかなりいるらしいので、和テーマの機内食は旅の締めくくりのよい思い出になるのではないだろうか。
その後、直前に通過した台風28号の影響が若干心配もされたものの、フライトは順調に進行。ほぼ定刻どおり到着し、ウォーターキャノンに出迎えられたのちに降機となった。2018年10月末に直撃した超大型台風のときにサイパン国際空港はブリッジを喪失しており、降機はタラップで行なわれた。地上では多くのスタッフとミス・マリアナがお出迎え。現地の子供から到着時プレゼントが乗客に手渡された。
送迎バス運行などのキャンペーンを実施
さて、サイパン便就航記念ということで、現在スカイマークとサイパン現地では、2020年3月までの期間にさまざまなキャンペーンを行なっている。現地で便利なのが、スカイマーク便の利用者全員を対象に配布する「スカイマーク サイパンパスポート」という特典冊子。特典内容は大きく3つある。
空港送迎バスが毎日運行
サイパンは公共交通機関がなく、空港と宿泊地の距離も少し遠いため、空港からの足の確保が必須。このサイパンパスポートをがあれば、空港送迎バスが無料で利用できる。サイパン発着便の時間に合わせて空港と主要リゾートホテル間で毎日運行される。もちろん旅行バッグやダイビング機材などの運搬もOK。停車場所に指定されていないホテルに宿泊していない場合でも、最寄りの停車場所で降車/乗車できる。
乗り合いバスだが、南部ホテルルートと北部ホテルルートの2便が出ることもあってか、筆者が乗った際は比較的スムーズに運行していた印象だ(1便体制だと移動距離自体もかなり長くなるため時間がかかる)。タクシー利用だと、ガラパン地区からだと25ドル程度かかるので、これを使わない手はないだろう。
提携店でのスペシャルサービス
サイパン各所にある写真のステッカーが貼られたキャンペーン協力店で、スカイマーク サイパンパスポートを提示すると、飲食店ではドリンクサービス、土産物店やスーパーマーケットではプチプレゼントといったスペシャルサービスを受けられる。
提携店の業種はさまざまで、前述の飲食店や土産物店のほか、レンタカーや現地ツアー会社など多岐にわたる。サイパン滞在中に一度は訪れるであろうお店が数多く提携店になっているので、外出時にはサイパンパスポートの携帯と提示をお忘れなく。
スタンプラリーでさらなるプレゼント!
提携店を利用するとパスポートの所定のページにスタンプを押してもらえる。スタンプを3つ集めたら、ガラパン地区にある免税店「Tギャラリア」のカスタマーカウンターで実施しているガラガラくじにチャレンジできる。
大当たりのA賞は主要ホテルの無料宿泊券またはサイパン便の無料チケット、B賞はディナークーポンやサイパン資金の離島リゾート、マニャガハ島ツアーチケット、各種記念品などだ。一度行くとまた行きたくなるのがこの素敵リゾートの特徴。この機会にぜひA賞を引き当てて再訪してみていただきたい。
なお、スカイマークパスポートがあるかどうか丁寧に聞いてくれるお店がある一方で、スカイマーク パスポートのことやスタンプ押印のことを店員さんが忘れていることもたまにある。そんなゆる~い応対も南国気質かもしれないので、気付いてなさそうだったら一声かけてみよう。
サイパンって何があるの?
最後に、スカイマークのサイパン便就航でサイパンに興味を持った方に向けて、サイパンの魅力をリピーターの筆者からお伝えしたい。
サイパンは簡単に言ってしまうと「田舎味が存分に残った南国リゾート」だ。島の規模はグアムよりも小さく、大手ホテルが集まる観光の中心地のガラパン地区であっても、ハワイやグアムで見るような“都会”という雰囲気はない。ほとんどの大型リゾートホテルが海沿いにあり、ホテルの目の前にはマリアナブルーの青い海が広がっている。島の中央~東側には森林も広がる丘陵とちょっとした山があり、小さい島ながら起伏に富んだ地形になっている。日本との時差は+1時間。
そんな南国特有の自然に恵まれたサイパンのレジャーは、やはりアウトドアのアクティビティが中心だ。特に海の素晴らしさは絶品で、同じマリンリゾートのハワイやグアムをしのぐものがある(人口が少なく、海に流れ込む大きな川がない点も有利なのだとか)。年間を通じて半そでで過ごせる常夏の気候で、1年中海で遊ぶことができ、雨季と乾季がある気候帯だが台風の遭遇するほどのことがない限り1日中雨で寒いということもない安定した天候なのもポイントだ。
日本との歴史的な結びつきの長さと強さから、現地人は総じて日本人に対して友好的。日本人コミュニティもしっかり根付いているため、ひところよりも少なくなったというが日本人経営のお店もあるし、それ以外のお店や各種サービスでも日本語が通じる現地の人がまだまだ多い。治安も比較的良好なので、初の海外旅行先としても安心できる島と言える。
スキューバーダイビングの愛好家にとっては天国のような島で、島の周囲はダイビングポイントだらけ。マリアナブルーの海は、潜っても絶品の高い透明度を誇り、地形が見事なポイントあり、生物豊富なポイントあり、歴史の遺物が残るポイントありと、見どころは豊富だ。
マリンスポットとしては、島内有数のホテルであるハイアット リージェンシー サイパンの前に広がるマイクロビーチの沖合いに見える小さな離島、マニャガハ島が人気。ガラパン地区のホテルの前のビーチからモーターボートで簡単にアクセスでき、本島よりもさらに白い砂浜とマリンアクティビティを半日~1日でのんびり過ごせる。さらに、数こそ多くはないがフルサイズのゴルフ場も点在し、ゴルフ目当ての来訪者も少なくない。バギーでの島内観光など、陸上のアクティビティも楽しめる。
気候もよく人々も陽気なサイパンだが、日本との歴史の前半には太平洋戦争という悲しい記憶も残るのは忘れてはならない。島内には、風化は進みつつあるが戦跡や日本統治時代の名残が現在も点在するほか、大小さまざまな慰霊の場所が設けられている。島内観光の際にはバンザイクリフやラストコマンドポストをはじめとする戦跡をめぐることも少なくないので、その際には過去と現在、そして未来の日本とサイパン、さらにはアメリカや世界のことに想いを馳せてみるのもよいだろう。