旅レポ

MotoGPタイグランプリはどこで見る? チャーン・インターナショナル・サーキット観戦ポイントの穴場を探してみた

次回は2020年3月22日開催

チャーン・インターナショナル・サーキットでのMotoGP観戦の“穴場”とは

 タイ・ブリーラムのチャーン・インターナショナル・サーキットで10月6日に開催されたMotoGP世界選手権「PTT Thailand Grand Prix」(MotoGPタイグランプリ)。タイ国政府観光庁のプレスツアーで観戦したこのレースは、決勝当日の1日だけで9万5352人が訪れた。その2週間後に日本のツインリンクもてぎで行なわれた同じMotoGP世界選手権の観戦者数は5万1123人だったから、その2倍近くの人たちがタイのレースを楽しんだわけだ。

 これだけ人が多いと混雑でレースを見るのもままならないのでは……と思ってしまうかもしれない。確かに常設のグランドスタンドも、仮設のサイドスタンドもほとんどが満席。“いい席”をゲットするにはできるだけ早めに確保する必要がありそうだ。けれども、それほど競争率の高くない観戦ポイントの“穴場”も実は存在する。

 今回は、もしあなたが2020年3月22日開催のMotoGPタイグランプリに観戦に訪れたときに、知っておくとためになるかもしれない各観戦ポイントをご紹介! あまり混まないのに比較的間近で見られる“穴場”もこっそり教えたい。ただし、来年は状況が変わって同じように見られなくなる可能性もあるので、その場合はご容赦いただければ。

会場の見取り図。観戦場所は主にグランドスタンドと4つのサイドスタンドエリア

スタート、ゴールの興奮が味わえるグランドスタンド。実は“端っこ”がお勧め

チャーン・インターナショナル・サーキットのグランドスタンド
グランドスタンドへの入口。2019年は男女別に荷物検査をするようになり、さらにスムーズに入場できるようになった

 グランドスタンドチケットを持っているなら、スタート前のイベントやMotoGP、Moto2、Moto3すべてのクラスのスタートとゴールの瞬間が見られるグランドスタンドの、できれば最前列を確保したい。ただし、このグランドスタンドはMotoGPタイグランプリで最も混雑する場所。特に最前列付近はピットの様子も手に取るように分かる人気の席なので、激しい競争を覚悟しなければならない。

一番のお勧めはやはり(1)のグランドスタンドの前列だ

 チャーン・インターナショナル・サーキットはフラットな起伏の少ない地形で、高い建物がコース内に存在しないこともあり、グランドスタンドからはサーキットのほとんど全体を見渡すことができる。手前のホームストレートを猛スピードで駆け抜けるマシンから、遠くでつばぜり合いを繰り広げる様子まで、トラック上で今何が起きているのかをだいたい把握できるので、最前列でなくても、一番お勧めの観戦場所であることは間違いない。

グランドスタンドは遠くまで見渡すことができる
最前列ならピットレーンの様子もバッチリチェック可能
大型ビジョンでテレビ中継の映像も見られる。それほど見やすくはないが、グランドスタンドからは見えないところもカバーできる
MotoGPの決勝レース前のセレモニー。こうした特別なイベントを見られるのもグランドスタンドならでは
スタート前のライダーやチームの様子も分かる
レースのスタートの瞬間や……
サーキット左奥のヘアピンから戻ってくるところも
ちょっとした転倒シーンも
あるいはサーキット右奥のテクニカルセクションも
最終コーナーの攻防も
最終コーナーからの全力の立ち上がりも
もちろんホームストレートを駆け抜ける姿も
レースの大部分をしっかり見られるのがグランドスタンドのメリット

 ただ、やはり本命のMotoGPの決勝レースとなると、身動きが取れないほどの混雑になるし、席が取れなければ立ち見は避けられない。

 それはちょっと大変そうだな……という人には、“端っこ”に行くことをお勧めしたい。図でいうと(2)の地点、グランドスタンドの最終コーナー側だ。といっても、グランドスタンドの席があるところではなく、グランドスタンド裏の通路にいったん出たところになる。

MotoGPのレース中は大混雑する。座るのは難しい……
いったんグランドスタンド裏の通路に戻る。ドリンク・フード売り場もある場所だ
ここから最終コーナー方面のグランドスタンド端まで行くと……
最終コーナーが目の前に広がる

 さすがにスタート・ゴールの瞬間を見ることはできないけれど、最大の抜きどころにもなっている最終コーナーへの突っ込みと、そこからのフル加速を見られるのがこの観戦ポイントの醍醐味。最終コーナーは実はアクシデントが一番起こりやすく、つまり接触・転倒シーンの瞬間を目にすることができる可能性が高い。あまり期待してもいけないが、ライダーたちがバチバチやりあう、まさに一触即発のバトルを見届けたいならここがお勧めだ。

ホームストレートの様子までは分からないが……
トラック中盤の戦いも遠目に見られる
もちろん最終コーナー前後の争いは間近で
Moto3クラスで活躍する今最もホットな日本人選手、鈴木竜生選手の走り
しかしタイグランプリでは転倒し、残念ながらリタイアしてしまった
最終コーナーはこういったアクシデントが発生しやすいところでもある
すぐ近くのピットロードを戻ってくる選手の姿もくっきり
MotoGP公式アプリの動画配信で補足情報を得るのもアリ

時速330kmの猛スピードを体感するならロングストレート沿いのサイドスタンド

サイドスタンドチケットがあるなら(3)~(7)へ

 サイドスタンドチケットを持っているなら、個人的には先ほどの地図の(3)~(7)辺りのエリアがお勧め。特にチャーン・インターナショナル・サーキットで最も長いストレート沿いにある(3)~(5)付近は、MotoGPのスピードを体感するにはもってこいの場所だ。

近くまでは巡回バスで行けるが、降りたあとも少し歩く
ここは(3)の仮設スタンド。3階建てか4階建てのビルくらいはありそうな高さ

(3)は第1コーナーからアクセル全開で立ち上がり、トップスピードに向けて加速していくところを見ることができる。(4)や(5)は、最高時速330kmに達するところから一気にハードブレーキングでヘアピンコーナーに飛び込んでいく、MotoGPの迫力を最も感じられるポイントだ。

(3)だとアクセル全開で加速していくところが見られる
低い段は視界が金網フェンスに遮られるので高い段がお勧め
(4)は土手の上から見ることができるが、あまり眺めはよくない
(5)のスタンド。こちらも低い段はやや見にくい
(5)のスタンドの高い段から
最高速から急減速してヘアピンコーナーにアプローチし、立ち上がっていく一連の流れを見られる

(7)のサイドスタンドは、ロングストレートを走るシーンと、ヘアピンから立ち上がってきたマシンが、次の高速コーナーに向かって走り去っていく様子を眺められる。ただし、スタンドのない(4)や、スタンドでも低い段からは、トラックに近づけるとはいえ金網フェンスがあるので視界が遮られ、走るマシンがあまりよく見えない。できるだけ中段以上から観戦したいところ。

ヘアピン奥は目隠しがされていてほとんど見えない
隙間からほんの少しだけ覗き見ることはできる
(7)のサイドスタンド
こちらも低い段だとフェンス越しになる

 この付近の一番の穴場は(6)。スタンドがなく、代わりに小高い土手のようになっていて、ヘアピンでのライダー達の攻防をバッチリ見通すことができる。予選・練習走行時はほとんど人がおらず、決勝レース時もスタンドよりは人が少ないので、ちょっとだけ早めに来て場所取りすればかなり快適に観戦できるはずだ。

 なお、日差しを遮るものが何もないから日傘や帽子は必須。サーキットの奥まった場所でもあり、バスを降りたあとかなり歩くことになるので、水分補給をいつでもできるようにしておきたい。

ヘアピン横の(6)は土手になっていて、観客は少ない
目隠しもあるが、視界自体はあまり遮られないので、よい眺めを確保できる
ヘアピンで最大のバンク角で走るところを完璧にとらえることができた
若干フェンスに遮られるところもあるけれど……
スタンド以外で観戦してみたいときには絶好のポイントかも
ちなみにすぐ後ろに民家があったりする。こういう緩い感じもタイのおおらかでよいところ

玄人ならテクニカルセクションのサイドスタンド。最終コーナーも気軽に観戦可

右上のややテクニカルなセクションの観戦ポイントは?

 地図の右上辺り一帯は、チャーン・インターナショナル・サーキットのなかではややテクニカルなセクション。ここを観戦するのに最適なのは、やはり(10)のサイドスタンドだ。トラックまで少し距離は感じられるけれど、勝負所の最終コーナーに向けてライダー一人一人が前車との差をできるだけ詰めておきたい部分でもあり、ここをいかに華麗にクリアできるかが勝敗を分ける。そういう意味では玄人向けの観戦ポイントと言えるかもしれない。

(8)から(9)にかけては、実際にはプレハブ造りのVIPテラス席がトラック沿いに並んでいる場所で、ほとんど見通すことができない。(8)ではマシンが自分の方に向かってくる姿をピンポイントでとらえることはできるが観戦には向かず、(9)はS字で切り返していくところを後ろ側から見る形になるが、やはりピンポイントでの観戦になるし、アングル的におもしろみはあっても迫力が感じられない。

(8)はVIPなテラス席などがあり、見えるのは隙間からちょっとだけ
(8)と(9)の間はプレハブが建っていて完全に視界は遮られる
(9)はS字をクリアしていく姿を後ろから眺められる。これはこれでおもしろいアングル

(10)のサイドスタンドは通常のサイドスタンドチケットで入れるところもあれば、専用チケットが必要なライダー応援席になっているところもある。満席必至のスタンドとなっていて混雑が予想されるので、それがイヤなら最終コーナーを見られる南側のポイントに移動するのもアリ。

(10)のサイドスタンドはライダー応援席が多い
ヤマハ、ホンダ、ドゥカティの応援席が並ぶ
入場に専用のチケットが必要なところも
トラックまではやや距離があるが……
戦略上重要なセクションを終始チェックできる玄人向けの観戦ポイントと言える
サイドスタンドの南端はトラックまでかなり近づく
ライダー応援席ではないサイドスタンド南端からの見た目
スタンドの少し高い段からだとフェンスに遮られない

(11)もしくは(12)がそれだが、どちらかというと(12)がお勧め。(12)ではテクニカルなセクションから立ち上がってきて、最終コーナーに突っ込み、再び全力で加速していく様をしっかり見ることが可能だ。金網フェンス越しになるので、視界は完璧とは言えないけれど、フェンスに張り付くようにして見れば気にならないし、人も意外と少ない。グランドスタンドやメインブースエリアからもそれほど離れていないので、予選や練習走行のときに少し違うアングルから見てみようかな、というときに気軽に行けるのもよい。

(11)からグランドスタンド側を眺めたところ
最終コーナーが見えそうで見えない。ホームストレートを立ち上がっていくのが見えるだけ
(12)の最終コーナー南側からの視界
テクニカルセクションを立ち上がって手前の最終コーナーに飛び込んでくるライダーたち
グランドスタンドから見たメインブースエリア。最終コーナー付近からのアクセスはどちらもよい

サーキットをあちこち動き回って100%楽しもう

 通常、観戦にあたってはグランドスタンドやサイドスタンドのチケットを購入することが多いわけで、そこでよい席が確保できればベストだし、VIPエリアに入れればもちろん最高だけど、ずっと1か所にとどまって観戦するだけだと味気ないもの。

 MotoGPタイグランプリを100%楽しむなら、合間にブースエリアでイベントや買い物、食事を楽しみつつ、場内を巡回しているバス代わりのトラックであちこち移動して、タイ最大のレースの雰囲気を肌で感じたい。2020年3月22日に予定されている次回のMotoGPタイグランプリのときには、今回の“穴場”が少しでもそれを体感するのに役立てば幸いだ。

MotoGPタイグランプリはマルク・マルケス選手が優勝し、同時に2019年の総合チャンピオン獲得も決めた
MotoGP参戦初年度ながらマルケス選手と互角の戦いを見せた、ゼッケン20のファビオ・クアルタラロ選手。2020年は要注目のライダーだ
日沼諭史

1977年北海道生まれ。Web媒体記者、モバイルサイト・アプリ運営、IT系広告代理店などを経て、執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、二輪・四輪分野などさまざまなジャンルで活動中。どちらかというと癒やしではなく体力を消耗する旅行(仕事)が好み。Footprint Technologies株式会社代表。著書に「できるGoPro スタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)などがある。