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「瀬戸内」のブランド化を加速させる「せとうち観光推進機構」を2016年4月発足

会長はJR西日本 取締役会長 佐々木氏。日本版DMO構築に向け、瀬戸内ブランド推進体制発表会

2015年12月17日 発表

発表会に参加した瀬戸内ブランド推進連合の関係者。前列中央左は来賓の内閣府大臣補佐官 伊藤達也氏。前列中央右が観光庁長官 田村明比古氏

 瀬戸内ブランド推進連合は、2016年4月に「一般社団法人せとうち観光推進機構」への発展、改組を予定している。12月17日に記者会見を開き、その具体的な体制の発表、全体像の説明が行なわれた

 瀬戸内ブランド推進連合は、2015年4月に設立され、瀬戸内を共有する兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県の7県が、瀬戸内ブランドを確立し、地域経済活性化や豊かな地域社会実現を目的とする団体。

 今後さらに瀬戸内のブランド化を加速させるため、日本版DMOの構築に向けて具体的に動き出す。DMOとは、Destination Management/Marketing Organizationの略で、地域資源を組み合わせた観光地のブランド作り、情報発信、プロモーション、マーケティング、戦略の策定を、地域が主体となって一体的に進めていく推進団体のことを指す。閣議決定された地方創生に向けた基本方針「まち・ひと・しごと創生基本方針 2015」内で、地域内の官民協働や広域的な地域連携によって観光地域作りを推進する主体として期待されている。今回の瀬戸内のDMOは、国内初となり最大規模となる。

せとうち観光推進機構会長、せとうち観光推進機構事業本部長、各県の代表者
事業化支援組織(仮称)の金融機関、日本政策投資銀行、経済界からの出席者
瀬戸内ブランド推進体制の模式図。事業化支援組織(仮称)が民間企業を支援する
瀬戸内ブランド推進連合会長、広島県知事 湯崎英彦氏

 冒頭、瀬戸内ブランド推進連合会長で広島県知事の湯崎英彦氏が、「瀬戸内ブランド推進連合は、瀬戸内の7県が力を合わせ、国内外の多くの方々から幾度となく訪れてみたい場所として選んで頂けるエリアとなる、ブランド化を目指した任意団体です。より戦略的な取り組みを行なっていくため、来年春に『せとうち観光推進機構』に改組することとしました。昨日(12月16日)、金融機関8行による事業化支援組織(仮称)設立合意が発表され、体制が具体化しました。せとうち観光推進機構が全体の牽引役となって観光需要を高めていきます。民間の観光事業者はプロダクト(食や宿泊、クルーズなどのオプション)を開発。事業化支援組織(仮称)が資金面を中心にサポートしていきます。瀬戸内がブランドとなるよう、民間事業者、行政が一体となって、観光関連産業の振興と交流人口拡大による地域経済の活性化と豊かな地域社会を実現していきます。また2020年に向け、増加する訪日外国人旅行者向けの広域観光周遊ルート形成に、この瀬戸内が認定されました。国内最大の観光地、北海道や沖縄に並んだブランドを目指して行きたいと思っています。2020年の外国人観光客ののべ宿泊者数を現在の3倍の360万人泊まで増加させることを目指していきます。今後より具体的な戦略を決めていきます」と、これまでの進捗状況などを説明した。

せとうち観光推進機構 会長に就任した、西日本旅客鉄道株式会社 取締役会長 佐々木隆之氏
せとうち観光推進機構 事業本部長に就任した、株式会社オブリージュ 代表取締役 村橋克則氏

 続けて、新組織のせとうち観光推進機構の会長(CEO)に就任した、西日本旅客鉄道 取締役会長 佐々木隆之氏と、同事業本部長(COO)に就任した、リクルートで「じゃらんnet」などを手がけ、現在は観光関連事業者向けコンサルティングを行なうオブリージュ 代表取締役 村橋克則氏が挨拶に立った。

 佐々木氏は、「私は広島の生まれでして、子供の頃釣りに出かけ、小高い場所から瀬戸内海を見渡した際にに七色に輝いていたことを強く覚えています。瀬戸内海は人、もの、文化の回廊であり、おそらく遣唐使も通ったのではないでしょうか。歴史的な面でも魅力的です。単なる観光キャンペーンに留まらず、もっと大きな日本版DMOを作っていくんだというつもりでいます」と挨拶。

 村橋氏は、「私はリクルートで『じゃらん』という国内旅行のメディア事業に長く携わってきました。リクルート退職後もこの領域になんとか恩返しをしたいということで、観光による地域活性をテーマに地域のアドバイザーのような仕事をしてきました。しかしどうしても外野から余所者が物申している感がぬぐえなかったのですが、せとうち観光推進機構は、まさに私が望んでいる仕事だと感じ手を挙げました。今回は地域にドップリと入らせて頂き、地域の皆様と一緒に観光振興、地域活性に力を尽くせるということで、うれしく思います。瀬戸内を日本の代表となる観光地にしていきたいと思います」と、自己紹介を兼ねて挨拶した。

事業化支援組織推進室参加金融機関の代表として挨拶する、広島銀行 執行役員東京支店長 小尻泰史氏
事業化支援組織(仮称)代表予定者 水上圭氏

 事業化支援組織(仮称)設立合意に関する報告として、参加する金融機関を代表し、広島銀行 執行役員東京支店長 小尻泰史氏から、「本日参加している瀬戸内地域の7金融機関と日本政策投資銀行は昨日、地域内の観光事業者を支援する会社を来年(2016年)の4月1日に設立することで合意しました。新会社は、瀬戸内ブランド推進体制の一翼を担っています。我々金融機関が長年培ってきたノウハウを活用して、瀬戸内観光産業の発展に貢献したいと考えています。平素競合している金融機関同士ではありますが、お互い協力して、観光事業者の方々がどのようなニーズを持ち、どのようなサービスを望んでいるか、行政とどのように連携を図るかなど、1年以上の期間検討を重ねてきました。具体的には、新会社は観光事業者が活用するプラットホームの運営、せとうち観光推進機構と一体となった各種部会の運営、そして総額100億円規模の観光ファンドなどの事業を展開していきます。それにより、日本版DMOが目指す民間投資の拡大を、瀬戸内というフィールドで実現したいと考えています。民間投資の実績のある人材を日本人材機構からご紹介頂き、新会社のトップとして招聘することで、体制だけでなく魂の入った組織となることができると考えています。私たち地域金融機関はこれからも、地方創生の担い手として、新会社と連携して、観光産業に永続的に関与して、瀬戸内を世界有数のブランドに育てていきたいと考えています」との報告があった。

 事業化支援組織(仮称)の代表予定者となる水上圭氏からは、「私は長年外資系の投資ファンドの日本代表を務めており、そのなかでいろいろな事業会社への投資を行なってきました。今もっとも成長が期待される事業は、地方の観光だと思っています。なかでもこの瀬戸内は、地域の複数自治体、金融機関、事業会社が一体となって取り組む意義のある画期的なプロジェクトだと思っています。これまでの投資の経験とネットワークを活かし、瀬戸内の観光事業発展に貢献していきたいと思っています。また、そのためには、せとうち観光推進機構と事業化支援組織、本日ご出席頂いている皆様との密接な連携が必要だと思っています」と、挨拶があった。

内閣府大臣補佐官 伊藤達也氏
観光庁長官 田村明比古氏

 さらに来賓として、内閣府大臣補佐官 伊藤達也氏が「地方創生を加速していくために日本版DMOの構想が発表されましたが、これはたいへん意義深いものと思っています。観光は21世紀の成長産業です。しかし、この力を活かし切ることができませんでした。魅力ある観光町づくりを推進していくための、専門的な人材、組織がなかったからです。世界の観光立国や地域では、その役割をDMOが担い、マーケティングに基づくプロモーション、マネージメント、地域での合意形成、財源確保の主体としての機能を発揮して、地域経済が好循環する起点となっています。今回瀬戸内の7県が協力して、広域的な連携で、金融機関や民間も参加して、DMOを形成していくということに、大きな期待を寄せています。地方創生の事業を進めていくにあたって、プロの人材を地域に還流していきます。そのために『株式会社日本人材機構』を設立しました。その第1号のCEOとして水上氏が事業化支援組織(仮称)代表になるということは喜ばしいことです。こういった人材支援も含め、これから日本版DMOを進めていくにあたって、さらに補正予算を活用して、基本的なマネジメントを推進していくためのツールをクラウドから提供できる支援を考えていきたいと思います。人材育成のプログラムも提供していきます。新型交付金の対象にもして、情報面、人材面、財政面から支援をし、地域創生を進めていく観光分野の司令塔として機能を発揮してもらいたいと思います。瀬戸内は世界の宝石と言われます。観光を通じて、世界に地域の姿を示してもらいたいと期待します」と挨拶した。

 続けて、観光庁長官 田村明比古氏は、「瀬戸内は世界有数の素晴らしい景色の静かな内海で、豊かな観光資源があります。12月1日時点でインバウンド観光客も1800万人に到達しました。さらに高みを目指し、いろいろな施策をとっていかないといけないと考え、総理が先頭に新しいビジョンを作る会議も起ち上げています。今回のような動きは、とても歓迎したいと思います。どうしてもDMOという言葉が一人歩きをしがちですが、これまでの観光振興の取り組みは狭い観光業界と限られた地域の行政で行なわれていたことの反省として、作ろうという動きです。観光地をデータに基づき科学的にマーケティングし、コンテンツを経営して作り上げていく、ということです。そのためにも人材が必要です。われわれ『まち・ひと・しごと創生』本部と連携して日本版DMOの育成を支援していきます。支援チームを起ち上げました。そして、全国7つある広域観光周遊ルートの1つとして、瀬戸内が選ばれています。受け入れ環境の整備、滞在プログラム、プロモーションなど全面的に協力いたします。省庁をあげて集中投下していきたいと思います」と挨拶した。

瀬戸内ブランド推進連合 副会長 香川県知事 浜田恵造氏

 最後に、瀬戸内ブランド推進連合 副会長で香川県知事の浜田恵造氏から、「瀬戸内7県が望む、この瀬戸内海。自然景観だけでなく、歴史、文化、アート、美味しい食などに恵まれた、世界に誇れる観光資源です。各エリアの魅力ある地域資源を瀬戸内ブランドとして一体的に発信することによって、それぞれの魅力がさらに向上し、瀬戸内の価値がより高まると考えています。地元金融機関を中止とした事業化支援組織も設立されることも、瀬戸内のブランド化に向けた取り組みに大きな弾みをつけるものです。7県は今後とも活性化に向けて全力で取り組んでいきます」と閉会の挨拶で締めくくられた。

 今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、瀬戸内という観光地をどのように盛り上げ、内外にアピールしていくのか、大きな期待とともに注視していきたい。

向かって左側が瀬戸内ブランドとしてメインで使われるロゴ。瀬戸内海の島々がデザインされている。右は主にSNSなどを通して使用されるロゴ。発見、発信するといったイメージが込められている

(村上俊一)