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関係機関が一体となって「瀬戸内(せとうち)」ブランド確立を目指す「せとうちDMO」発足
瀬戸内を北海道や沖縄と肩を並べるブランドへ
(2016/3/25 07:23)
- 2016年3月23日 発表
一般社団法人せとうち観光推進機構は3月23日、瀬戸内ブランドコーポレーション等と連携し「せとうちDMO」を発足、今春からの事業開始を発表した。
せとうち観光推進機構は瀬戸内を共有する兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県による「瀬戸内ブランド推進連合」が発展改組した組織。今回、新たに発足したせとうちDMOでは従来の観光の枠組みを超えた新しい組織体として、複数の自治体による瀬戸内ブランドの確立により交流人口を拡大、地域経済の活性化に取り組んでいくとしている。
DMOとは「Destination Management/Marketing Organization」の略で、戦略策定、各種調査、マーケティング、商品造成、プロモーションなどを一体的に実施する組織体を表わす。
発表会の冒頭、せとうち観光推進機構 会長 佐々木隆之氏は「今日スタートいたしましたせとうち観光推進機構でございますが、単なる観光プロモーションに留まらず、広範な視点に立って多くの関係する方々と一致協力をして、瀬戸内の観光地域経営を行なう日本版DMOを目指しております。そして、瀬戸内を北海道や沖縄と肩を並べるブランドに育て上げたいと思っております」とコメント。
続けて「多くの国内外の皆さまから、一人ひとり、決してマスではなく一人ひとりが瀬戸内を経験してよい思いを持ってもらう、心に残るようなよい思いを持ってもらう、こういうことに全力を挙げたいと思います。そうすればその人がリピータになってくれるでしょうし、またSNS等を使って口コミの情報発信をしていただける。その結果として来訪者が増えてくる、そういうことを考えているところでございます」と、同機構の目標を掲げた。
続いて、せとうち観光推進機構 事業本部長 村橋克則氏が同機構と事業について「せとうち観光推進機構のミッションビジョン及び中長期の目標」「全体戦略」「重点施策」「推進体制およびコミュニケーション施策」「事業マネジメントにおける仮説検証サイクル」の5点を挙げ、説明を行なった。
同機構が目指すミッションは「せとうちブランドの確立による地方創生」であり、「地域再生と成長循環の実現」であると説明。「瀬戸内が一度ならず、二度、三度と訪れてみたい場所として定着し、国内外から人々が集まり、地域が潤い、輝かしい未来へ向けて住民の間に誇りと希望が満ちている」状態を目指すとした。到達すべき具体的な数字は「来訪意向度」「リピート率」「観光入込数」「延べ宿泊数」「観光消費額」「来訪者満足度」「住民満足度」の7項目とし、一旦のゴールと定める2020年に向けてモニタリングしていくとした。
こうした到達目標を元に全体戦略を決定。「誰に」「何を」「どうやって」というフレーズを元に、顧客と提供価値、商品、評価発揮すべき武器、組織能力を整備していくと説明。
具体的には「訪日経験が豊富」「もっと深い日本に触れたい」という意識を持った成熟した消費者を対象とし、「訪日経験3回以上」&「滞在日数10日以上」というセグメントに着目。こうした観光客の多い国や地域を優先し、瀬戸内の魅力を“AUTHENTIC JAPAN SETUCHI(真正なる日本、ありのままの日本がここにある)”というコンセプトに集約。し商品開発やプロモーションに反映していくとした。ターゲットに向けた訴求すべき中心的なテーマとして「クルーズ」「サイクリング」「アート」「食」「宿」「地域産品」の6項目を挙げ、こうした戦略を遂行するための組織能力として「集める力」「動かす力」「儲ける力」「繋げる力」「育てる力」の5つを定義して強化、発揮していくとした。
重点施策としては季節性に左右されない魅力をアピールする「通年観光地化戦略」をはじめとして、年間100万人以上の集客が見込めるスポットを作り上げる「スターづくり戦略」、アートやクルーズといったテーマで聖地としてのイメージを定着させる「聖地化・代名詞化戦略」、“せとうちファインダー”を使ってエリア情報などを発信する「プラットフォーム戦略」、住民の意識や知識を向上しておもてなしのレベルアップを図る「住民こぞっておもてなし戦略」に力を入れて取り組むとした。
推進体制については「域内の関係者と連携し事業を円滑に進め高い成果を上げ続けるために理念共有、意思決定、情報共有のためのコミュニケーション施策を構築する」と述べ、具体的なものとして「域内事業者と一体となって商品開発や業界の課題解決を図っていくテーマごとの部会の開催」「住民の意識や知識を上げていくための学習機会である“せとうちアカデミー”の創出」「各地域でさまざまな活動を展開している若者を組織化する“せとうちLOVERS”」などを計画していると説明した。
こうしたPDCAサイクル(Plan、Do、Check、Actの頭文字。計画を実行し評価、改善を繰り返すことにより事業活動を改善していく取り組み)をしっかりと回していくため、「単に重要指標を年に1回計測するのではなく、そこにつながる日々のアクションの結果を先行指標としてモニタリングし、週単位、月単位で修正をかけていく」と説明。前述した「集める力」「動かす力」「儲ける力」「繋げる力」「育てる力」の中に、それぞれいくつかの先行指標を定め、最終的な目標である「来訪意向度」など7項目の指標達成を目指すとした。
最後に「瀬戸内ブランドコーポレーションとともに手を携えて、瀬戸内の観光振興のために努力していく所存」と述べ、成長戦略説明を締めくくった。
国内最大規模かつ世界でも例を見ない体制であるせとうちDMOを、経営支援や資金支援といった面から支えるのが瀬戸内ブランドコーポレーション。瀬戸内地域の観光産業活性化を目的として事業会社27社、金融機関19社が共同で設立する新法人だ。
瀬戸内ブランドコーポレーション 代表取締役社長 水上圭氏は「瀬戸内ブランドコーポレーションは瀬戸内が国内外の多くの観光客から選ばれる地域、ブランドになるため、せとうち観光推進機構と一体となって、せとうちDMOつまり観光地の一体的なブランド作りを行なう組織を構築いたします」と前置き。「せとうち観光推進機構がプロモーションを通じて観光客の集客を行なう一方で、私共瀬戸内ブランドコーポレーションは瀬戸内の観光関連事業者がより魅力的なサービス、商品を提供できるように経営支援、資金支援を行なってまいります」と、それぞれの役割について説明した。また、同DMOがほかの地域のDMOと大きく異なる点について「瀬戸内地域の地銀7行が中心となって総額100億円規模の“せとうち観光活性化ファンド”を創生する」点を挙げ、このファンドを活用することでさまざまな支援を行なっていくとした。
同社の経営目標については「瀬戸内地域を一つの企業として成長と企業価値の最大化を目指す」とし、そのために「瀬戸内7県の観光関連事業者のさまざまなニーズに対して、各県の地銀と密接に連携を取りながら対応する」と説明。具体的には「増加するインバウンド観光客に対応するために事業の拡大や設備の増強が必要」「観光客に対して新たな観光サービスを行なうために投資が必要」「海外の事業者と提携して事業を始めるのに経営サポートが必要」など、資金ニーズがある場合は、せとうち観光活性化ファンドを活用して対応するとした。
瀬戸内の有望な観光テーマとして当初は「クルーズ」「サイクリング」「アート」「食」「宿」「地域産品」の6つを想定。その魅力を高めるために、せとうち観光推進機構や外部の優良企業、有識者と連携して支援を行なうほか、資金ニーズがある場合はファンドを活用。将来的には地域外の企業や外資系企業を、せとうちにどんどん誘致していきたいとした。
こうした取り組みにより「瀬戸内を地中海のような世界有数な観光地にしていきたいと思っております」と締めくくった。
続いて瀬戸内を共有する7県の中から愛媛、山口、岡山の各知事が代表してコメントした。
愛媛県知事 中村時広氏は「瀬戸内海は宝物、各県固有の財産であった。今回を境に共有財産として力を合わせ付加価値を生んでいくという新しい段階を迎える。複数の県が取り組みを一緒にやるのは難しいが、複数県での取り組みが少しずつ広がりつつあり、新しいものが生まれるのを実感。お互いがお互いのことをよく知り、お互いを認め合い、立てあうと3つがしっかりしていれば可能だということを痛感。DMOが橋渡し役としてそれぞれの瀬戸内海の魅力をふんだんに出し、情報発信し、活性化に結び付くことを期待する」とコメント。
山口県知事 村岡嗣政氏は「瀬戸内地域の素晴しい海、周辺地域の歴史や文化、スポーツや芸術など豊かなものがある。連携して一体となって協力に発信していくことが重要。地域全体が活性化し、多くの方が何度も訪れるような地域になるように、山口県としても一因として頑張っていきたい」と述べた。
岡山県知事 伊原木隆太氏は「これまでにないプロモーションができる。県のなかで閉じているとできなかったことが、沿岸7県が一緒に協力することによってできる。7県が協力して大きな成果が得られるように頑張っていきたい」と話した。
経済界を代表してコメントした中国経済連合会 会長 山下隆氏は「DMOは経営そのものの手法。各7県の関係者、事業者が力を合わせていけば、必ずや瀬戸内観光産業地帯として名を馳せるのではないかと思っております」と期待を込めてコメントした。
発起人を代表して閉会の挨拶を行なった広島銀行 代表取締役頭取 池田晃治氏は、瀬戸内ブランドコーポレーションについて「瀬戸内内外の46の民間業者が出資して設立した会社でございます。この46社は非常に業種も多岐にわたっておりまして、出資だけではなく各々の会社が今まで培ってまいりましたノウハウやネットワークを結集して、国内外のさまざまなニーズに対応してまいりたいと考えている」と説明。「ファンドの活用だけではなく、知恵を出して汗をかいて関与」することが、せとうちDMOの目指す“世界に誇れる観光地”につながるものと信じている」とした。最後に「今後は一般社団法人せとうち観光推進機構と連携いたしまして、せとうちDMOとしまして観光産業の発展に人事を尽くし、地域経済発展に取り組んでまいりたい」と締めくくり、閉会の挨拶とした。