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ANAと愛媛県、桜のようなデルフィニウム「さくらひめ」を活用した取り組みで協力
ラウンジや機内でさくらひめを活用、CAの意見を取り入れた化粧品などの展開も
(2015/12/22 19:34)
- 2015年12月22日 発表
ANA(全日本空輸)と愛媛県は12月22日、愛媛県が開発した新種のデルフィニウム「さくらひめ」を活用した取り組みを共に進めることを発表した。今後、CA(客室乗務員)がさくらひめのコサージュを着用するなど、ANAの機内やラウンジでさくらひめを露出する。
この取り組みについては、愛媛県からANAに提案があったものだが、元々ANA側でも社員の自発的な事業提案制度である「ANAバーチャルハリウッド」で、「花を通じて地方と都会、その先に人のつながりを築く」というテーマが進められていたことで両者が合致。協力して、さくらひめを活用した取り組みをスタートさせることになった。
ANAバーチャルハリウッドとは、ANA総合研究所が事務局となって取り組んでいる、大観衆を感動させ、新たな価値を届けるような社員の自発的提案を推進する同社の制度。本来の業務とは無関係に自由に活動できることからバーチャル、大観衆を感動させることから連想したハリウッドという言葉を組み合わせている。
2004年からスタートし、今年は20テーマが進められている。このなかで、普段はANAラインメンテナンステクニクスで整備士を務めている田中洸史郎氏の提案で、「花を通じて地方と都会、その先に人のつながりを築く」というテーマが採択されており、賛同者との8名のメンバーで活動をしている。また、ANAバーチャルハリウッドでは各テーマに役員がオーナーとして就くことになっており、同テーマのオーナーは客室センター長の山本ひとみ執行役員が担った。
デルフィニウムの新種として2013年の6月に品種登録された「さくらひめ」は、青色系が一般的なデルフィニウムを、ピンク色の花を咲かせるよう品種改良したもの。2014年には「2014日本フラワー&ガーデンショウ」の一般来場者人気投票グランプリをはじめ、さまざまな賞を受賞した。
愛媛県では「さくらひめ」をキーワードにした地域ブランディングの展開を進めていくことにしている。幸せを呼ぶ花のイメージで、20~40代の働く女性をターゲットに据える。働く女性の憧れの存在として、CAに認知され、PRすることは愛媛県にとって価値があるという。
また、今回、CAがさくらひめのコサージュを着けて乗務する取り組みを行なうが、この最初のフライトが2016年1月1日に実施する「初日の出フライト」となる。幸せを呼ぶ花として、1月や4月などの区切りの季節の花として、愛媛県とANAの双方が持つ機能のなかで提案していくことを計画している。
こうした具体的な取り組みとしては、CAによるコサージュの着用を初日の出フライトに続き、2016年1月4日~11日の羽田~松山線と羽田~伊丹線の一部フライト、2月5日~8日にさっぽろ雪まつりが行なわれる2月4日~11日の羽田~新千歳(札幌)線の一部フライトで実施する。さくらひめは香りが少ないことから、機内で生花を着用しても気にならない点も、この取り組みに繋がっているという。
成田空港第4サテライトならびに第5サテライトのラウンジ、羽田空港の国際線ターミナルのラウンジの受付カウンターにもさくらひめを飾る。
このほか、ANAのCAと愛媛県が協力して、さくらひめ関連商品の開発も進める。すでに12月17日に意見交換を実施したり、CAからアンケートをとったりし、化粧品の開発が検討されている。さくらひめは香りが弱いのが特徴でもあるが、この点はイメージから香りを作っていくという。
化粧品開発にあたっては宇和島の真珠などの活用も検討されているほか、CAとの取り組みを通じて、女子旅や、しまなみ海道サイクリングに絡めたスポーツ女子にフォーカスした商品など、10品目ぐらいを作っていきたいという。
12月22日にはANA本社で、愛媛県知事 中村時広氏と、ANA代表取締役社長 篠辺修氏が会談。
中村知事は「愛媛県はいろいろなものを開発しているが、今回は花のセールス。10年間かけて開発した、デルフィニウムのピンク色の花。白やブルーは出まわっているが、ピンク色に染め上げるのは高度な問題があって10年かかった。桜と見間違うような仕上がりで、桜は1年のなかで一瞬しか楽しめないが、さくらひめは1年に3回から4回楽しめる、かなり長い期間にわたって桜のイメージを堪能できる品種として送り出した。昨年の全国的なフラワー賞で金賞を受賞し、これから注目度が高い品種に育つのでは」とさくらひめを紹介。
ANAには「一部の路線でCAの皆さんに着用して頂いたり、国際線のラウンジでさくらひめを展示したりする計画をしてもらっている。愛媛県が日本一の生産量の真珠、今治タオルといった既存のものとの組み合わせでブラッシュアップした商品展開をしたいので、お力添えをたまわりたい」とリクエストした。
篠辺社長は「昨年(2014年)の春に『Tastes of JAPAN by ANA』で愛媛県を取り上げた。1年ちょっと経過して、愛媛県となにか新しい取り組みをできないかと思っていたら、今回ご縁があった」と述べたあと、ANAバーチャルハリウッドの取り組みを説明。花をテーマにした取り組みについて「彼らは実は“こことなにかやろう”ということが提案の時点では分からなかったが、愛媛県とのご縁など、うまく話が繋がって今回の形になったと聞いている。花を使って地方と都会を結ぶってどうやるの? ということもあったが、県の方で花を飛行機に乗せて、お客様含めてさくらひめを知ってもらえないか、ということだったので、具体的な形の展開ができるようになった」と経緯を紹介した。
篠辺氏は先に紹介したような具体的な取り組みを紹介したうえで、「この先どうするかは県とも相談しならが、あるいは(乗客らの)反応を見ながら、できればポイントごとで賑やかしになるようなことができればいい」と、次の取り組みの実施についても前向きな姿勢を見せた。
このほか、中村知事が「(華道家の)假屋崎省吾さんからお城を生け花で包み込みたいという提案があって、1カ月ぐらい松山城のなかに假屋崎さんの作品が並んでいる。そこにさくらひめもふんだんに使っている。“まさに桜だ”と興味を持ってもらっている」と現在の同県での活用を紹介。
さらに羽田~新千歳線でCAがコサージュを着用することについて、中村知事が「供給時期を延ばすために、気候がまったく異なる北海道で、我々の技術を提供して、栽培して、愛媛の気候でできない時期は北海道で生産する体制を進めている。札幌(新千歳)線はその意味で縁がある」と紹介すると、篠辺社長は「反応が楽しみ。雪まつりの時に桜というのは、CAにも質問が出るのでは」と応えた。