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ANAと豊田自動織機、セントレアで自動運転による荷物運搬の実証実験。トーイングトラクターが往復2.5km走行

2020年2月11日 公開

ANAと豊田自動織機が、セントレア(中部国際空港)で自動運転トーイングトラクターの実証実験を開始した

  ANA(全日本空輸)と豊田自動織機は、セントレア(中部国際空港)の制限区域内で、旅客の手荷物などが入ったコンテナを搬送するトーイングトラクターの自動走行実証実験を2月10日~14日に実施している。2月12日にその模様が報道公開された。

 この実証実験は、航空需要増や労働人口の減少、セキュリティに対する脅威に対応すべく国土交通省 航空局が取り組んでいる航空イノベーション推進の一環であり、2019年度は地上支援(グランドハンドリング)業務における「物の輸送」の省力化、自動化の実証実験を4空港で実施する計画。ANAと豊田自動織機も、トーイングトラクターの自動運転実証実験をすでに佐賀空港で2019年9月~10月に実施している。

 ANAと豊田自動織機の自動運転トーイングトラクターを使用した実証実験は、2019年3月にも実施しているが、いずれも佐賀空港(九州佐賀国際空港)でも行なわれている。今回のセントレアでの実証実験は、台数、種類ともに多くの車両が往来するなか、屋内外での長距離走行が必要となる条件下で安定した走行が可能かを検証するのが目的となる。

 具体的には、セントレアの第1ターミナルビルにある、旅客の手荷物などを振り分ける荷さばき場と、105番スポットとの間の往復約2.5kmを設定。構内道路を15km/h、荷さばき場内を5km/hの速度で走行している。

駐機場からターミナルビルにある荷さばき場への自動走行
荷さばき場から駐機場への自動走行

 国土交通省 航空ネットワーク部 空港技術課 課長補佐の山根勇氏は、自動運転の実証実験について「有識者委員会などで課題を抽出して、今後の自動化に向けた取り組みをしている。とりあえずはレベル3の自動化だが、将来的には完全に自動化された車両が空港内を走ることをイメージしながら進めている」と見据え、2020年内にもグランドハンドリング業務にレベル3自動運転の車両が導入されることを目指すとした。

国土交通省 航空ネットワーク部 空港技術課 課長補佐 山根勇氏

 ANA オペレーションサポートセンター 品質企画部 マネージャー 大野亮介氏は、同社の取り組みとして、「将来を見据えると、いかにより少ない人数で航空機を運航できるかが大きな課題」と述べ、労働集約型業務となっているグランドハンドリング業務に先進技術を取り入れることで業務の「シンプル&スマート化」を図っていることを紹介。

 先進技術を導入することで、「人が担っていた業務と技術が担っていた業務の役割分担を大胆に見直したい」とし、今回のトーイングトラクターの取り組みついては「ある地点から地点という単純な往復輸送を自動化することで人を解放することを考えたい」と話した。加えて、「ANAと豊田自動織機は2017年度から検討、議論を重ねているが、国交省 航空局や空港会社ともさらに連携を深めて、既存のルール見直しも必要。新しいルール作りにも積極的に参画したい」との姿勢を示した。

 ANAでは、この自動運転トーイングトラクター2020年度内にも2020年度内にも試験運用として導入する意向を示している。ただし導入空港などを含め、2020年度にどのような取り組みをするかは検討するとしたほか、「さらに大きな空港では、もっと長距離の走行が必要だったり、坂があったり、飛行機が横断するところ(車両が)横切る必要があったりする。運用のなかで課題を見つけて、それを克服していく」と、試験導入後も継続的に技術向上を図っていくとしている。

全日本空輸株式会社 オペレーションサポートセンター 品質企画部 マネージャー 大野亮介氏

 豊田自動織機 トヨタL&Fカンパニー R&Dセンター 製品企画部は鈴木航大氏、空港の荷さばき場や航空機での荷物の積み下ろし、荷さばき場と航空機間のいずれもが人の手による作業にある現状のうち、「積み下ろしを人、運転を自動化することで、シンプル&スマートに貢献したい」とコメント。

 今回の実証実験では、搬送指令や運行監視、バッテリなどの車両状態を表示できる運行管理システム「FLEET MANAGEMENT SYSTEM」も検証し、「効率的な運行で自動化、効率化を進めたい」と話した。

株式会社豊田自動織機 トヨタL&Fカンパニー R&Dセンター 製品企画部 鈴木航大氏

 トーイングトラクターは佐賀空港の実証実験で使用しているものと同じ。自己位置推定にGPS、ジャイロセンサーに加えて、路面のパターンを事前に取得したイメージと、走行中に取得したイメージを照らし合わせることで位置を判定する路面パターンマッチングを用いているのが特徴となる。

 また前方、後方、上部の3か所に搭載したLiDARで障害物検知も行なう。障害物については、その障害物がなにであるかまでは認識しておらず、車両の走行に影響を及ぼすものであるかどうかの判定を行なっている。

実証実験に用いる豊田自動織機のトーイングトラクター
3か所に障害物検知用のLiDARを装備
運転席
底部に搭載された路面パターンマッチング用のカメラ

 先述のとおりポイントとなるのは、佐賀空港に比べて車両の往来が多いなかでの走行となることや、GPSの電波が届きにくい屋内環境となる荷さばき場での走行が含まれること。また、荷さばき場は通路も狭いため走行に高い精度が求められるほか、荷さばき場から駐機場へ向かう際には車両通行帯を横断して右折する格好となるため、その判断も必要となる。

 FLEET MANAGEMENT SYSTEMでは、車両の走行位置がリアルタイムに表示され、走行位置から予測される目的到達時刻の適時表示する。ANA大野氏は、「手荷物をお返しするときに、何分で返却口のターンテーブルに届くかが分かるようになる」との旅客にとってもメリットも示している。

FLEET MANAGEMENT SYSTEM。現在位置や、目的地到達予想時刻が表示されている。到達予想時刻はリアルタイムに算出し直してる

 ANA大野氏は、2月10日からの2日間を踏まえ、「安全に、事故なく走行できており、屋内の狭いところも自動走行できているところに手応えを感じてる」とコメント。

 豊田自動織機の鈴木氏は、「(車両搭載の)センサーで検知できない死角となる柱や壁のような人が突然現われるなどの場合の安全担保として監視者を置くなど限界もある。技術課題と合わせて、外部にカメラやセンサーを配置して通信するなど、インフラ側の整備も詰めていき、実用化に向けて継続的に取り組みたい」と話した。

 また、セントレアでは小型機から大型機までさまざまな機種が運航されている。今回は実際に航空機の脇に車両を駐めているわけではないが、飛行機の機種に応じた駐車位置の調整については「今後の検討課題」とあるとし、「現在は設定した経路を決められたとおりに走行している。航空機が同じでも駐機位置がずれることもある。(トーイングトラクター以外の)地上支援車両の種類も合わせて、自車が止まるべき位置を決定する技術を今後開発していく」と説明した。