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ANA、2019年度第3四半期は増収減益。2月の中国発旅客数は半減、運休や路線計画は「推移を冷静に見極める」
2020年1月30日 19:03
- 2020年1月30日 発表
ANAHD(ANAホールディングス)は1月30日、2019年度(2020年3月期)第3四半期の連結決算を発表した。国土交通省で開かれた会見には、ANAホールディングス 取締役 執行役員 グループ経理・財務室長 兼 財務企画・IR部長の福澤一郎氏、財務企画・IR部 会計チーム リーダーの築舘宏治氏、広報・コーポレートブランド推進部長の髙柳直明氏が出席した。
第3四半期の連結経営成績は、売上高が前年同期比137億円/0.9%増の1兆5821億円で増収となったが、羽田拡張を控えたネットワーク拡大に対応するためのコストが増したことなどで営業費用が前年同期比506億円/3.6%増の1兆4625億円となり、営業損益は前年同期比369億円/23.6%減の1196億円、経常損益は前年同期比316億円/20.5%減の1225億円、親会社に帰属する四半期純利益は前年同期比203億円/19.1%減の864億円と、増収減益となった。
国際線旅客事業は、旅客収入が前年比114億円/2.3%増の5080億円、旅客数が9万1000人/1.2%増の773万3000人、利用率は前年比0.3pt減の76.8%となった。日本発のビジネス渡航の落ち込みや、中国系航空会社のネットワーク強化で日中間の座席供給量が約4割増加し競争が激化。中国路線は単価が前年より2%以上落ち込んだのをはじめ、全体的に単価が前年を下まわった。
一方で、アジア~北米間のいわゆる三国間流動が増加。日本発着よりも単価は低いものの旅客数は増加。福澤氏は前年との方向性の違いを「面を取っていく。単価は多少犠牲になっても、旅客数を確保している」と表現した。
ちなみに香港デモ、日韓関係悪化による第3四半期の影響は、ANAのみで約20億円。後述のLCC事業を合わせて35億円ほど。また、第3四半期に発生した台風19号を含む天候イレギュラーによる影響は国際線、国内線合わせ60億円ほどになったという。
国内線旅客事業は堅調に推移しており、事前購入型運賃を活用した需要の早期取り込みなどでイールドマネジメントを強化したことで、旅客収入が前年比186億円/3.5%増の5535億円、旅客数が前年比96万7000人/2.9%増の3472万4000人、利用率は前年比0.8pt増の71.1%。第3四半期単独では旅客数が前年比1.8%増、座席利用率が前年比1.4pt増の72.5%と高い水準になったという。
単価については国際線同様にやや下がっており、前年比で0.6%減。ただし、前年はボーイング 787型機のエンジン整備に伴う計画欠航があった影響で単価が上がっていたこともあり、2019年度はその影響がなく、プロモーション運賃などで旅客数増に努めた結果としている。
10月にピーチ(Peach Aviation)に運航を一元化したLCC事業は、統合に伴う一時的な運航便数の減少があったほか、主力の台湾路線での海外LCCとの競争激化や、香港デモや日韓関係など地政学リスクの影響を受けたことで、旅客収入は前年比48億円/7.1%減の643億円、旅客数は前年比463万人/5.9%減の733万4000人、利用率は前年比0.7pt減の85.3%となった。
このほか、旅行事業は店頭販売中心の国内パンフレット商品は取り扱い高が減少したが、高需要時期を中心に国内外の旅行需要を取り込み、前年比39億円増収/5億円増益となった。
通期決算の見通しについては変更がないが、新型コロナウィルス(新型肺炎)の影響については注視し、精査をしていくとのことで、「今後の影響いかんではネガティブに働く可能性を否定できない」(福澤氏)とコメント。
ANAは今週から集団帰国のチャーター便を運航しているが、CA(客室乗務員)は今後2週間乗務せず、厚生労働省の指示に基づく健康管理や産業医による社内サポート体制を敷くなどするほか、パイロットも3日間は休暇をとるという。
武漢路線は2月内の欠航が決まっており全体で約6000名に影響。2月の中国発旅客数は5割減、日本発旅客は約4割減と、武漢線以外でも旅客数減少が発生しているというが、「中国路線は国際線収入の1割強」と全体への影響は軽微であることを強調。今後の中国路線運休や路線計画については、「現状では考えていないが、事態の推移を冷静に見極める必要があると考えている。適切な対応をとっていきたい」と話した。