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ANA、定例社長会見。2020年3月の羽田増便後も成田とのデュアルハブ戦略は維持。「ANA、ピーチで航空もデュアルでやっていく」

2019年12月13日 実施

ANAが定例社長会見実施。登壇者は左から全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏、ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏、ANAホールディングス株式会社 広報・コーポレートブランド推進部長 髙柳直明氏

 ANAHD(ANAホールディングス)とANA(全日本空輸)は12月13日、定例社長会見を実施した。

 ANAHD 代表取締役社長 片野坂真哉氏、ANA 代表取締役社長 平子裕志氏はともに、アルコール問題や伊丹空港における保安検査に関わる事案での欠航、遅延の発生について謝罪。さらなる対策強化を行なう方針を示した。

 会見ではまずANAHD 片野坂氏が、グループ全体の事業について説明。世界経済の先行き不透明感などから国際線旅客需要、特に日本発の業務渡航需要が弱含みになっていることや米中貿易摩擦などに伴う貨物需要低迷、日韓関係や香港のデモなどのLCC事業への影響が続く見込みであることから、第2四半期の決算において通期の業績予想を下方修正していることを説明(関連記事「ANA、2019年度第2四半期決算会見。連結売上高は年同期比増1兆559億円。首都圏発着枠拡大への投資などで通期予想は減益」)。

 片野坂氏は「中長期的には世界の航空需要はアジアを中心に伸びると見込まれるが、取り巻く環境は厳しく、今後の航空需要動向をしっかり注視していく」とした。そして、経営変化を踏まえ、現行の中期経営戦略の方向性を基本としつつ、2020年度以降のグループの持続的な利益成長を支える中期経営戦略ローリング版を現在策定しており、これを2020年2月に発表するとした。

 このほか、LCC事業におけるピーチ(Peach Aviation)とバニラエアの統合が11月に完了したことについても触れ、「年間輸送旅客数で国内第3位の航空会社、国内ナンバーワンのLCCが誕生した。今後ピーチはエアバス A321LR型機を導入し中距離国際線に進出するとともに、これまでの関空(関西国際空港)、沖縄(那覇)、仙台、札幌(新千歳)に加え、成田を中心に首都圏をカバーした路線拡大を図っていく」との方針を改めて示した。

ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏

第3滑走路建設が決まった成田空港への発着能力拡大への期待

全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏

 ANA 平子氏は、10月19日に発表した、2020年度の国際線路線計画の一部について説明(関連記事「ANA、羽田発着枠拡大で12路線を新規開設。シアトル/ワシントン/ロサンゼルス線など。2020年3月29日から」)。現在、2020年度の事業計画を策定中で、2020年1月に発表する予定であるとした。

 2020年度の国際線路線計画で発表されている内容のとおり、羽田空港については、「新たに乗り入れる5都市を含む12路線を新規開設する。首都圏ネットワークをさらに拡大し、欧米長距離路線がより便利になる。また、豊富な国内線ネットワークとの接続を強化することで、日本と海外を移動するお客さまの利便性もさらに高める」と新たに開設される路線の利便性について説明。

 一方で成田空港についても、「2019年度は9月に豪パース、10月にチェンナイ、2020年3月に開設予定のウラジオストクを含め、2015年以降、9路線を新規開設して、積極的にネットワークを拡大してきた。今後も日本発着お客さまのみならず、成長著しいアジアと北米を往来する人の乗り継ぎ拠点として、また、当社の国際線事業の成長の柱として引き続きネットワークを拡充していく」と、今後も首都圏の羽田空港、成田空港の2空港の特性を活かして利用していくデュアルハブ戦略を維持する方針を示した。

ANAが10月に発表した2020年度の国際線路線計画

 羽田増枠後のデュアルハブ戦略について片野坂氏は、成田空港で3本目の滑走路建設が合意され、財政投融資でも4000億円が付いたことで、東京オリンピック・パラリンピック後に成田空港の発着能力拡大が見込まれることや、バニラエアを統合したピーチが成田を大きな拠点として首都圏マーケット拡大を目指すことから、「ANAとピーチで航空もデュアルでやっていく」とした。

 平子氏は質疑応答のなかで、国内線ネットワークとの接続利便性の高い羽田空港、国際線接続の拠点としての成田空港という従来のスタンスを説明したうえで、「成田と羽田では発着が集中する時間帯が異なっている。その接続時間帯の違いをうまく活かした形のハブ・アンド・スポークネットワークをより確実に実行していくためにも、羽田、成田の活用の余地は大きい。これから先、需要の大きい路線は羽田と成田の両方から飛ばす戦略がよいが、そうではない路線はマーケティングを最大活用して、羽田からの路線、成田からの路線を使い分けていきたい」との方針を示した。

 新規開設路線については、「サンノゼやシアトルといったセカンダリ市場と日本の各地を結ぶことに意味があり、日米間の需要、日本の地方都市を含めた日米間の需要像に大きく貢献するものと考えている」としたほか、欧州やオーストラリアからの訪日客の消費額が大きいことが、先日のラグビーワールドカップ2019の際にも実感できたし、日本での消費拡大に期待できる市場であると述べた。

 このほか、羽田、成田の両空港をともに活用するという観点では、都市間競争についても言及があった。2020年3月末以降の首都圏空港の発着能力拡大後の発着回数は年間約83万回となる一方で、ニューヨークやロンドンは100万回を数えることや、空港乗降客数にも開きがあるとし、平子氏は「都市の規模からしてもまだまだ伸びる余地はある。成田空港の第3滑走路の建設に期待したい」と話した。