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ANA、2019年度第2四半期決算会見。連結売上高は年同期比増1兆559億円。首都圏発着枠拡大への投資などで通期予想は減益
2019年10月30日 10:40
- 2019年10月29日 発表
ANAHD(ANAホールディングス)は10月29日、2019年度(2020年3月期)第2四半期の決算を発表した。
国土交通省で開いた会見にはANAホールディングス 取締役 執行役員 グループ経理・財務室長 兼 財務企画・IR部長の福澤一郎氏、財務企画・IR部 会計チーム リーダーの築舘宏治氏、広報・コーポレートブランド推進部長の髙柳直明氏が出席し、説明を行なった。
冒頭では9月26日に伊丹空港において保安検査の不備によって欠航や遅れがでたことについて陳謝。台風15号、19号、10月25日の大雨による被災者へのお見舞いを述べた。また、ANAグループにおいては羽田~富山便、羽田~小松便の臨時便の設定や機材の大型化、義援金の寄付などを行なったことを報告した。
連結経営成績は、国内線旅客需要は堅調に推移したものの、国際線においては日本発の業務渡航需要に弱含みが見られ、前年並みの水準で推移。国際線貨物需要については、米中貿易摩擦を発端としたマーケットの低迷が継続していることから引き続き減収となった。そのようなマイナス材料が見られたものの、全セグメントにおいて増収を達成。連結売上高は前年同期比で1.7%・179億円増で、1兆559億円となった。
営業費用は生産年度費用や整備費用の増加に加え、2020年の首都圏発着枠の拡大における事業規模の拡大を見据え、航空機やオペレーション部門を中心に投資を計画通り進めた結果、前年同期比4.7%・442億円増の9771億円となった。これらの結果、営業利益は前年同期比25%・263億円減の788億円、経常利益は214億円減の815億円、親会社に帰属する当期純利益は169億円減の567億円となった。
国際線旅客事業は、6月から成田~ホノルル線にエアバス A380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」の2号機を投入。ハワイ路線独自のサービス強化に取り組み、需要獲得を図った。また、9月からは日本の航空会社としては初めて成田~パース線を就航させて路線の拡充を進めたほか、成田~ロンドン線のビジネスクラスにはドア付きの個室型である新シート「THE Room」を導入した。
一方、長距離線を中心としたビジネス用途に弱含みが見られれるのと、アジア方面ではおもに中国路線での総供給量増加に伴う競争激化が数字に表われ、国際線旅客収入は前年同期より2.3%・74億円増の3385億円となった。
ハワイ路線はエアバス A380型機以外の路線も好調に推移しており、有償・無償合わせた座席利用率は9割以上であるとのこと。直近では10月は9割強の利用率、11月も9割弱の予約状況であり、単価の値崩れもなく順調であることをアピールした。
一方、日本発の長距離路線は「6月までは堅調に推移してきたが、7月から変調が見られ、企業の業績を反映してか、ダウングレードが見られる」とのことで、今後も劇的な改善は見られないであろうとの認識を示した。中国路線は昨年より座席供給量を減らしてきてはいるが、第1四半期までは4%のマイナスであったものが、第2四半期では9%の減少になっていると説明した。
国内線旅客事業は、堅調に推移したビジネス需要と、訪日旅客需要などの旺盛な需要を取り込み、2018年度下期から導入した新たな運賃ラインアップ施策(「ANA FLEX」「ANA VALUE」「ANA SUPER VALUE」「ANA SUPER VALUE EARLY」)や夏期の深夜便「ギャラクシーフライト」の増便も奏功し、第2四半期を通じ好調に推移。国内線旅客収入は前年同期比4.7%・163億円増の3687億円となった。
貨物事業は、7月から成田~上海線に大型貨物機ボーイング 777F型機を導入し、半導体製造装置などの大型特殊貨物の需要を取り込んだが、米中貿易摩擦を発端とした経済の減速は各方面で続いており、輸送量は対前年比で2割の減少を見込んでいる。顕著な部分としては、北米路線の自動車、建機、航空部品関連、中国路線の電子部品や半導体関連の落ち込みが響いているとのこと。国際線貨物収入は前年同期比20.4%・130億円減収の511億円となった。
LCC事業は、ピーチ(Peach Aviation)が日韓関係の悪化を受けて7月以降の旅客需要が落ち込み、韓国路線苦戦を強いられる結果となった。一方、バニラエアとの統合に向けた路線移管などに伴い生産量を増加させたことから前年同期比57億円増の359億円に。バニラエアは統合に向けて路線を段階的に縮小したことから前年同期比78億円減の103億円になった。最終的に、LCC事業の旅客収入は4.6%・22億円減の461億円となった。
これらの結果、航空事業セグメントの売上高は1.6%・142億円増の9300億円となった。
航空関連事業セグメントでは、空港地上支援業務や、ケータリング業務などの受託が増加して37億円増、1490億円となった。旅行事業はゴールデンウイークや夏期需要、インターネット販売の商品が早期の需要取り込みに奏功したことから、26億円増の823億円となった。商社事業セグメントは食品部門での取り扱いが減少した一方、航空電子部門の高額商材の取り扱いが増えたことから8億円増の759億円となった。
連結の財政状態は、2020年の首都圏空港発着枠拡大に向けた航空機投資、4月から羽田地区で運用を開始した総合トレーニングセンター「ANA Blue Base」への投資を進めたことにより、総資産は前期末と比べて312億円増加の2兆7183億円となった。負債は新規借り入れに加え、日本国内の一般事業会社では初となる社会貢献債・ソーシャルボンドによる調達を行なったことなどから、485億円増加し1兆6263億円。純資産は当期純利益の計上、配当金の支払いなどを行なったことなどから、172億円減少し1兆920億円となった。
連結の財政状態は、2020年の首都圏空港発着枠拡大に向けた航空機投資、4月から羽田地区で運用を開始した総合トレーニングセンター「ANA Blue Base」への投資を進めたことにより、総資産は前期末と比べて309億円増加の2兆7180億円となった。負債は新規借り入れに加え、日本国内の一般事業会社では初となる社会貢献債・ソーシャルボンドによる調達を行なったことなどから、106億円増加し1兆5884億円。純資産は当期純利益の計上、評価分を加味した結果、202億円増加し1兆1295億円となった。
通期の連結業績予想については業績を下方修正した。世界経済の先行き不透明感から国際線旅客需要における日本発の業務渡航が弱含みで推移しており、下期も改善の傾向が見られないことと、国際線貨物需要が低調であること、日韓関係の悪化によるLCC需要の落ち込みから、通期の売上高は当初予想より600億円減の2兆900億円を見込む。また、事業規模の拡大による投資から営業利益は15.2%・250億円減の1400億円、経常利益は12.6%・230億円減の1370億円、当期純利益は15.1%・140億円減の940億円を予想している。なお、配当金については変更なく、1株当たり75円を予定している。