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武漢からの邦人退避チャーター運航で外務大臣からANAに感謝状
2020年6月23日 20:34
- 2020年6月23日 実施
ANA(全日本空輸)は6月23日、新型コロナウイルス感染症が拡大した中国湖北省武漢からの邦人帰国チャーター便を運航したことについて、茂木敏充外務大臣から感謝状が授与されたことを発表した。
中国湖北省での新型コロナウイルス感染が拡大するなか、武漢市が空港閉鎖を決定。ANAは1月24日武漢発便をもって定期便を運休した。そのなかで現地に在留する日本人が帰国するための政府チャーターを、5便運航。ボーイング 767-300型機(270席)を用い、下記の5便を運航し、日本人とその家族計828名が帰国した。
1月29日 (武漢04時57分発~羽田08時41分着):206名
1月30日 (武漢04時56分発~羽田08時48分着):210名
1月31日 (武漢06時45分発~羽田010時20分着):149名
2月7日 (武漢06時42分発~羽田010時12分着):198名
2月17日 (武漢03時19分発~羽田06時50分着):65名
23日にANA 代表取締役社長 平子裕志氏やチャーター便運航に携わった5名のスタッフが外務省を訪れ、「中国湖北省からの邦人退避に際する5回にわたるチャーター便の運航や支援業務等」に関する感謝状を、茂木敏充外相が授与。外務大臣が航空会社に感謝状を授与するのは初の事例だという。
茂木敏充外務大臣のコメント
全日本空輸株式会社の御協力により、日本は他国に先駆けて、中国・武漢に5機のチャーター機を運航し、湖北省に在留し帰国を希望する全ての日本人とその御家族828名の早期帰国を実施できた。
全日本空輸株式会社から、多くのスタッフが新型コロナウイルス感染の不安や危険に顧みず、この退避オペレーションに従事され、その勇気と多大なる貢献に心からの謝意を表したい。
また、世界各地で邦人の出国・帰国が困難となる中、全日本空輸株式会社には、臨時便の運航や定期便の維持により、多くの邦人の出国・帰国の手助けをしていただき、これまでに、世界各国から約1万700名の邦人の帰国が実現した。
海外に渡航・滞在する邦人の保護は、外務省の最も重要な責務の一つであり、今回の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、その重要性は一層高まっており、引き続き御協力願いたい。
全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏のコメント
茂木外務大臣より直接感謝状を授与いただきまして、誠にありがとうございます。ANAグループを代表いたしまして、改めて御礼申し上げます。
ここにおります5名をはじめとした多くの社員が、チャーター便業務に献身的に従事したことで、ANAグループとして日本人とその御家族の皆様のご帰国に貢献できましたことは大変光栄なことであり、このような機会を与えていただきました茂木大臣と外務省の皆様に、深く感謝申し上げます。
日本国内の移動制限も解除されまして、経済活動の再開にも弾みがつきました。今後、ビジネスや観光需要が更に回復していくことを期待しつつ、引き続き、常に清潔で衛生的な環境をご提供することで感染防止に万全を期し、公共交通機関として日本経済の再生に貢献してまいる所存です。
チャーター便での帰国者は「緊張されていたが、冷静に、整然とされていた」
同日、ANA本社で運航に携わった5名のスタッフが報道関係者の取材に応えた。初便の機長を務めた支倉暢彦氏は、感染症対策について「1月末は、なにがリスクでなにが防止方法なのかの方法付けができていなかった。100%の正解が分からないなか、法的なところで少しでも示唆されていること、例えばマスク着用や消毒用ペーパーを持っていくということを行なった。そのときに考えられる最前の策をとった」と、当時の対策の難しさをコメント。
初便のフライトは出発日時が当日に決まるという慌ただしい状況のなか、武漢発便の出発も管制上の理由で遅延。一方、武漢を飛び立ってからの飛行時間については「かなり長く待ってらっしゃる方がいると認識していた。出発がかなり遅れたので、力の及ぶ範囲内で、フライトタイムを短くする努力をした」と話した。
同じ初便のチーフパーサーを務め、機内で乗客に接したCA(客室乗務員)の石黒麻里子氏は、「(空港のエアコンが止められ)寒いなか長時間待っていたとうかがっていたが、搭乗して安堵した様子で、すぐにお休みになられる状況だった。安全に日本にお連れするのが使命だったので、ゆっくり休んでいただけるように。静かな環境作りに務めた」と機内の様子を紹介。
到着後は検疫や入国手続きなどに時間がかかる状況だったが、「整然とお待ちいただいて、アナウンスどおりに降機されていた」と話す。また、飛行中も化粧室待ちの乗客から「ありがとう」「長時間お疲れさま」といった声をもらうこともあったという。
現地で対応にあたった武漢支店空港所 所長の鶴川昌宏氏は、閉鎖された武漢空港に立ち入るうえで、最初のチャーター便の運航日時が不透明だったことなどでの苦労を語るとともに、家族の反対を押し切って対応したスタッフや、「げっそりしていたと思う」という鶴川氏を慮って駆けつけた社員がいたことなどを紹介。
初便出発前は「お客さまは緊張されている方が多いように見受けられた。当時はエアコンの風で感染する可能性があると言われていたので止められており、寒いなか長時間待たれていたが、他国の方と比べて非常に冷静で、整然としていた」と印象を語り、「私たちが緊張しているお客さまに伝わるので普段どおりにしていたが、『絶対感染するなよ』『応援している』などの声をいただき、お客さまに勇気をいただいた」と話し、こうした声が5便を運航する力になったという。
また、海外採用で中国語、日本語で対応ができる、空港センター 品質管理部の王申元氏も、5便中3便で日本から帯同。「今回は検疫などの書類の書き方など難しい部分もあり、出国時に検疫で止められた方も数名いたが、通訳して対応した。今後もこのようなことがあれば、海外にいらっしゃるお客さまの言葉の問題や気持ち、不安を解消できるよう努めたい」とコメントした。
受け入れ側の羽田空港は、第2ターミナルのサテライト(別棟)を封鎖し、チャーター便の到着客受け入れの専用施設として活用。そのハンドリングを発案したANAエアポートサービスの汲田茉莉子氏は、国内線専用施設のサテライトに国際線を受け入れ、入国手続きの設備を作る点で苦慮そうで、「いかにスムースに、快適にお過ごしいただけるかに重きをおいた。初回は化粧室や喫煙所に課題が残ったので、2便目以降でこれを改善した」と話した。