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星野リゾート、バリ島の空気を全身に感じられる「星のやバリ」開業。現地訪問レポート
「星のや」ブランド初の海外展開
2017年1月25日 00:00
- 2017年1月20日 開業
星野リゾートは1月20日、インドネシア・バリ島に「星のや」ブランド初の海外リゾートとなる「星のやバリ」をオープンした。開業を間近に控えた1月中旬に、同リゾートを視察した。
星のやバリは、バリ島中部のウブド地域にオープン。ウブド地域とはいっても中心部からは離れた閑静な一角だ。ウブド中心部(Puri Lukisan美術館前)と星のやバリの間で無料のシャトルサービスを運行しているほか、デンパサールのング・ラライ国際空港と星のやバリを結ぶ送迎サービスも実施している。
そのウブド東部にある星のやバリへの道程は、予備知識がないとその雰囲気にちょっと戸惑うかもしれない。山道と表現しても差し支えないであろう狭い道、そして犬やニワトリを放し飼いにしている地方感あふれるエリアを抜けていく。そして、その先に星のやバリはある。
星のやバリ
所在地:Br. Pengembungan, Desa Pejeng Kangin, Kecamatan Tampaksiring, Gianyar 80552 Bali, Indonesia
客室:全30室(ヴィラタイプ)
敷地面積:約3ヘクタール
チェックイン/チェックアウト:15時/12時
Webサイト:星のやバリ
バリの人の気持ちになれる星のやバリ
星のやバリは、世界遺産にも登録されているバリの灌漑システム「スバック」を用いた田園と、この土地に恵みをもたらしてきたプクリサン川にはさまれた場所に立地する。そして、さまざまな点でバリ、ウブド地域の文化、伝統を感じられるような工夫をし、当地に新しく生まれた一つの集落のようなイメージで過ごせるようにしている。
また、バリには「バンジャール」と呼ばれる地域コミュニティがある。地域コミュニティは、世界の至るところで見られるが、現地の担当者によれば、バンジャールは人や家族同士のつながりがより密接なものであるそうだ。
そして、一つの集落が生まれたようなイメージの星のやバリでは、宿泊者がバンジャールの一員になったかのようにもなれるようにしている。この点については、随時触れながら施設の紹介をしていく。
ヴィラに囲まれた運河プール
星のやバリの大きな特徴となっているのが、館内を流れる運河プールだ。運河プールは3つあり、それぞれの運河プールを囲むようにヴィラ(客室)を設置している。
それぞれのヴィラからは運河プールに直接アクセスできる。また、各プールにプールラウンジも備えており、プールサイドで休んでいるほかの宿泊客とプールから会話をしたり、といったコミュニケーションも簡単にできてしまう。
つまり、この運河プールは、ヴィラそれぞれが持っているプライベートプールのようでありながら、実はパブリックなプールなのである。このプライベートとパブリックの間にあるような距離感こそ、先述のバンジャールに通じるものがあるわけだ。
ちなみに、プールラウンジにはコンセントも備えており、運河プールを目の前にしてのんびりするのに絶好のスペースにもなっている。
また、昼間はエメラルドグリーンのプールと青々と茂る木々のコントラストが自然の恵みを感じさせるが、薄暮のなかで見せる情景も静けさのある美しいもので、時間帯によって変わる表情の変化も魅力だ。
谷に浮いたような不思議な感覚の「カフェ・ガゼボ」
星のやバリの東側、渓谷に面したエリアに並ぶのが「カフェ・ガゼボ」だ。「ガゼボ」は日本でいう“東屋”。星のやバリの東側は谷になっており、そこにせり出すようにガゼボを設置している。
このガゼボは四面が格子状になっているうえ、ガゼボのなかでもソファを一段底上げしている。同社資料で「宙に浮かぶ鳥かごのよう」と表現されているまさにそのままの印象で、自分の体が軽くなったかのような浮遊感を味わえる。
四方が格子なので、隣のガゼボが木々の隙間から見えるのだが、かといって“まる見え”というほどでもない。このあたりも先述の「バンジャール」による微妙な距離感なのだろう。
また、それぞれのガゼボでは、インドネシアの地ビールやパッションフルーツなどバリらしいフルーツを使用したスムージーなどを楽しめる。
ちなみに、このカフェ・ガゼボで過ごすうえでドリンクの注文は必須ではなく、あくまでパブリックなスペースなので自由に利用してよいそうだ。近くには24時間開いているライブラリや、その周辺に休息できるスペースもあるので、自然が奏でる心地よいBGMのなかでリラックスして過ごすことができるだろう。
“星のやバリニーズマッサージ”で心身を整えられるスパ
施設内にはスパも完備。3部屋を備え、1日に最大9組まで受け入れている。このスパでは、“バリニーズ・マッサージ”で知られるバリの人々が伝統的に受け継いできた癒やしの技を星のやオリジナルにアレンジした「星のやバリニーズマッサージ」を提供する。料金は140万ルピア(約1万4000円、100ルピア=約1円換算)から。
スパは星のやバリ東側の谷の深い場所に位置しており、スロープカーで下りて行くことになる。上階の待合所はカフェ・ガゼボ同様に眺めがよく、ゆっくりと自分の順番を待つことができるだろう。
そして、順番が来たらスロープカーでスパの部屋へと向かうことになるが、このスロープカーも見どころ。カフェ・ガゼボのような4面が格子となった見晴らしのよいスロープカーで斜めに谷を下っていく。リラクゼーションの前に気持ちを少し躍ることができる瞬間だ。
スパの部屋は、より深い森を感じさせ、木々の香りが漂う静かな空間。渓谷に向かって開けているのだが、まるでそこが自分だけの特別な空間に感じられる不思議な雰囲気だ。
そんな神秘的な場所で受けられる、バリ島らしいスパイスやハーブをブレンドしたスクラブやオイルなどを使ったマッサージ「星のやバリニーズマッサージ」は、体に心地よい刺激を与え、血行をよくする効果があるという。
そのマッサージのあとには、色鮮やかな花を浮かべたバスが待っている。バスも渓谷に面しており、マッサージによるヒーリングと、森林がもたらす癒やしは、言葉で表わせない心地よいものだろう。
インドネシア料理をコースで楽しむ「コンテンポラリー・バリニーズ」
ダイニングでは、夕食、朝食でインドネシアの料理を楽しむことができる。夕食は「コンテンポラリー・バリニーズ」をコンセプトにしたもので、一品料理が多いインドネシア料理を、あえてコースで提供するのが特徴。料金はメインコースが120万ルピア(約1万2000円)で、当日16時までの予約が必要。キッズ向けに別メニューも用意している。
インドネシアらしいレモングラスなどのスパイス、ハーブがふんだんに使われつつ、現地のスパイスであるサンバルを使ったカルパッチョのような洋風のアレンジも見られる独特の内容だ。この10種類の料理にバリの風味をちりばめ、一つのストーリーを紡いでいるという。
実際にいただいてみると、一つ一つの料理の風味、香りに強い個性があるものの、最初の料理から最後の料理までの“起承転結”が考えられた順序であるように感じられた。もう少し付け加えるならば、“転結”の“結”はメインの料理からデザートへと向かう流れであり、最後のデザートをいただくときには、小説におけるエピローグのような余韻が残るものだった。
種明かしをしてしまうようなので詳しいメニューを記載するのは控えるが、“ストーリー”を意識しながらいただくことをお勧めしたい。
朝食は、インドネシアン、アメリカン、和食の3種類を提供。料金はいずれも35万ルピア(約3500円)で、こちらもキッズ向けメニューも用意。前日の0時までに要予約。
旅先らしさを感じられるインドネシアンは、9種類のコンディメント(薬味)とともにいただけるおかゆ「ブブール」がメイン。これにソト・アヤムと呼ばれる鶏のスープがセットとなっている。
コンディメントはスパイスだけではなく、食感を変えてくれる炒りピーナッツなどもあって多彩。好みのコンディメントを加えるだけでなく、ソト・アヤムをかけていただくのもお勧め。コンディメントとソト・アヤムで舌に変化を付けながら、楽しい朝食の時間を過ごせる。
運河プールを囲むように建つ30室のヴィラ
客室は「ヴィラ」と呼ばれ、「ヴィラ・ジャラク」「ヴィラ・ソカ」「ヴィラ・ブラン」の3タイプを用意。料金は日によって設定が異なるが、1泊9万ルピア(約9万円)から。
各ヴィラの共通点としては、いずれもインドネシア伝統の技法を使った工夫がなされていること。ダイニングにもあったカービングは各部屋にも施されており、ヴィラによっては入った瞬間にその造形美に出会える。
運河プールのところでも少し触れたとおり、近隣のヴィラが少し見えたり、プールを挟んでお互いに声をかけられる距離だったりするのだが、これがまさに「バンジャール」。同じ集落でひとときをともに過ごす間柄の距離感で、プライバシーを重視する日本や欧米の宿泊施設とはひと味違う気分で過ごせるのだ。
ヴィラ・ジャラク
ヴィラ・ジャラクは、もっとも渓谷に近いところに5室を備える。定員は3名で、面積は198m2。
ダイニングやスパなど多くのパブリック施設は渓谷側にあるので、それらへのアクセスがよい。また、プールサイドのガゼボから寝室、バスまでが一つのフロアにまとまっているのも特徴の部屋となる。
ベッドルームは、朝を心地よく迎えられそうな東向きで、壁面に施されたカービングが印象的だ。
ヴィラ・ソカ
ヴィラ・ソカはメゾネットタイプのヴィラで、11室を用意。定員は2名だが、リビング部分のソファをベッドとして利用することでて4名の滞在にも対応してもらえる(別途料金が必要)。面積は187m2。
部屋に入ると、いきなりカービングの壁に圧倒されるリビングルームが待っている。このリビングがある場所が1階部分となり、バスルームなどやプールサイドのガゼボもこのフロアにある。2階は360度を窓に囲まれた寝室となる。
バリの文化・伝統に触れられるアクティビティ
星のやバリでは、施設やサービスでバリらしさを感じられる工夫を施しているが、アクティビティメニューでもそうした面を重視している。
まず、朝と夕方には渓谷に向かうヨガ・ガゼボで、「朝日のヨガ」「夕陽のヨガ」を提供。朝は体を目覚めさせ、夕方は1日の疲れを癒やすものとなる。いずれも無料で参加できる。
そして、毎朝10時からはバリのお供え物「チャナン」作り体験を用意している。これも無料で参加可能だ。緑の葉で作る器に、色とりどりの花やお菓子を乗せてチャナンを完成させたあとは、星のやバリ内に設けられた寺院へ向かい、バリ人のお祈りにも参加できる。
このチャナン作りも行なわれるレセプションには、伝統の打楽器「ガムラン」が置かれている。今後、このガムランを使った演奏会なども予定しているそうだ。
このほか、星のやバリの外へ出かけるオプショナルツアーも2種類提供している。一つは「世界遺産の景色と寺院をめぐる ウブド・バリ北部満喫ツアー」。「ティルタ・ウンプル寺院」での沐浴やコーヒーのプランテーション、テガラランのライステラス(棚田)、キンタマーニ高原やバトゥール湖などの景勝地を巡るツアーで、大人1名で40万ルピア(約4000円)。朝から夕方まで、ほぼ1日をかけて巡る内容の濃いツアーだ。
もう一つは、「バリの哲学『トリ・ヒタ・カラナ』と 世界遺産『スバック』触れる文化トレッキング」。先述した「スバック」を間近に見られるスバリ村を訪れたり、360度の田園風景などを楽しんだりするツアーで、大人1名で30万ルピア(約3000円)。午前中のみで巡れる手軽なコースになっている。
このほか、先述のとおりウブド中心部とのシャトルバスも運行している。
最後に、オプショナルツアーで巡る景勝地の一つである、テガラランのライステラスを訪ねてみたので、その様子をお伝えしておきたい。
クルマで30分ほどの「テガララン・ライステラス」をちょっと散策
テガラランは、ウブド中心部から北へ進んだところで、星のやバリからはクルマで30分ほど。道を進むと、途中で入村料の1万ルピア(約100円)を求められて、同地に着いたことを知らされる。
世界遺産登録されたこともあってか、インドネシア外からの訪問者も多く、人気のスポット「ライステラス・カフェ」はすぐに見つかる。ここの看板の奥が見晴台のようになっており、眼下に広がる美しい棚田を見渡すことができる。
もちろん「カフェ」となっているとおり、その脇の階段を下りると休憩もできる。席はそれぞれがガゼボ風。お茶などをせずにお店を散策する外国人も多かったが、さすがに無粋な感じがしたのでレモンベースのカクテルドリンク(ノンアルコール)とスイーツを注文して、しばしの涼をとった。
また、ライステラス・カフェから少しウブド寄りに歩くと、棚田へ向かうトレッキングコースの入り口がある。非常に急峻な階段を下りきってから上るという、高低差が激しいコースだが、田んぼのあぜ道を抜けていった先に広がる風景は疲れを忘れさせてくれる。ちなみに、その棚田エリアの入り口では寄付金を求められる。決まった額はないそうだが、1万ルピア札が多く入っていた。
ちなみに、記者は記述のとおり、先にライステラス・カフェに寄ってから、このトレッキングコースの一部を歩いたのだが、たぶんこれは失敗例。トレッキングで疲れた体を、ライステラス・カフェで美味しいものをいただきながら癒やすのが正解だったように思う。
また、テガラランへは星のやバリのオプショナルツアーで訪れるのも一つの方法なのだが、タクシーの車窓からは、小物や彫刻品などを売っているお店やお寺、まるでお寺のような警察署など、気になる建物が続々と目に飛び込んでくる。結果、もっと長時間チャーターをしておけば気兼ねなくまわれたのに……と悔やむ羽目になった。星のやバリでは自由に見てまわりたい人に対して時間単位のチャーターも、言語の心配をすることなくアレンジしてくれるので、ぜひ余裕をもった時間を確保して、いろいろなところを散策してみてほしい。