旅レポ

ウズベキスタンの首都タシケント、青い壮麗なイスラム建築と近代的な街並みが共存する美しい街

ウズベキスタンの首都タシケントの見どころの1つ。歴史的な宗教建造物が集まるハスト・イマーム広場

 ウズベキスタン芸術文化開発財団主催で行なわれた「ウズベキスタン共和国」ツアー。前回は、首都タシケントのホテルに到着したところで、続けてこのタシケントでの様子をお伝えしていこう。

 タシケントは現在の首都となっているが、1930年までは首都はサマルカンドであった。今回のツアーではサマルカンドは訪れなかったが、どちらもウズベキスタン観光には欠かせない大きな都市なので、機会があればぜひどちらも訪れてみてほしい。

首都タシケントは近代的なクルマ移動中心の街

上空から眺めた首都タシケント。アパートの並びが独特のパターンでおもしろい
到着早々に車窓から「I love Tashkent」を見つけた
ミナレットと呼ばれる高い塔が、あちこちで見える

 タシケントに降り立つと、整然と整備された太い道路にそびえ立つ高層ビル、時には渋滞するほど行き来するクルマ、そしてけたたましいクラクションに圧倒される。砂漠のなかにあることを忘れるほどの大都市だ。

 クルマ移動がとても発達しているので、一応中央アジア唯一の地下鉄が整備されているが、移動は基本的にタクシーやバスなどクルマを活用した方がスムーズ。移動にかかる費用は日本に比べ安価なので、タクシーを観光で1日借り切ったり、市内観光ツアーに申し込んでもいいだろう。

 今回実際に利用する機会はなかったが、タクシー配車アプリ「Yandex Go」が利用できるとのことで、同社の電動キックボードも繁華街で頻繁に見かけた。「Yandex(ヤンデックス)」はロシアでは最大手の検索ポータルサービスで、タクシー配車サービスも手がけている。なお空港の出口では、ものすごいタクシー呼び込み攻勢の洗礼を受ける。ここは無視した方が無難だろう。配車サービスをうまく使うといい。

なんと桜が満開!?かと思ったが、サクランボの木とのこと。各所で見かけた
おそらく機上から見たアパート群。広い道路が整備されている
ラウンドアバウトも広い。巨大モニター広告も各所で見かける
時には激しい渋滞もおきる。不思議と二輪はほとんどいない
たまに旧ソ連時代の古いクルマを見かけることがある
砂漠地帯ということもあり、風が強くなると砂ぼこりが舞う
軽ワゴンのようなクルマをよく見かける。ここは地元のスーパー近辺
タシケントには地下鉄が整備されている。こちらはまた後ほど紹介する
電動キックボードで移動しているのを頻繁に見かける
配車アプリ「Yandex Go」で利用できるようだ
歩行者用の信号のデザインがカワイイ
アミール・ティムールの像を見かけた。ティムール朝を建国した英雄。周囲は広い公園になっている
市街地を少し離れた住宅地に入ると、このような雰囲気になる

日本人が建設したナヴォイ劇場

 実はタシケントは、第二次世界大戦後に満州にいた日本人が旧ソ連軍に抑留された地でもあることは、伝えておかねばならないだろう。前回宿泊先として紹介した「LOTTE City Hotel Tashkent Palace」の目前にある、「ナヴォイ劇場」(Moustafa Kamoul Ataturk, Bukhara Street 28, Tashkent)は、日本の軍人たちが強制労働で1945年から2年をかけて建設した建物だ。

 しかし、ただ悲しみだけが残ったのではない。日本人が作った完成度が高く緻密な装飾が施されたこの劇場は、1966年に直下型の大地震にも耐え、避難所としても活用されたという。また、ウズベキスタンが独立した際に当時の大統領は、石碑に日本語で書かれた「日本人の捕虜が~」という表記を、敬意を込めて「日本国民が~完成に貢献した」と変更したという逸話もあるという。日本とウズベキスタンの架け橋ともなった歴史的建築物でもある。現在でもメンテナンスを受けながら、オペラやバレエの公演に使われている。

「ナヴォイ劇場」抑留された日本人か強制労働で建設した
ナヴォイ劇場の内部。現在も公演に使われている
劇場上部の丸い照明。緻密な模様が施されている
ホワイエにあったスペース。石膏彫刻の紋様がすごい作り込み
外壁の回廊。シャンデリアが並ぶ
外壁に刻まれた日本人が建設したことを伝える石碑

歴史的な宗教建造物が集まるハスト・イマーム広場

「ハスト(ハズラティ)・イマーム広場」(Karasaray Street, Tashkent)は、ウズベキスタンに入りまず最初に目にする歴史的なイスラム建築物になるはずだ。とにかくその巨大で美しい青い装飾に圧倒される。

「バラク・ハン・メドレセ」ほか、モスクなどいくつかの建物から構成されていて、7世紀に書かれた世界最古といわれるコーランが展示される建物もある。こちらの室内は撮影不可だった。なおメドレセは神学校で、モスクはイスラム教徒が礼拝をする寺院のことだ。ミナレットと呼ぶ高い塔が脇に備えられていて、ここから礼拝時間を知らせる。

ハスト・イマーム広場の「バラク・ハン・メドレセ」
広場はかなりの広さがある
凝ったタイルの装飾
幾何学模様のパターン
世界最古といわれるコーランが展示される建物
バラク・ハン・メドレセの向かいには「ハズラティ・イマーム・モスク」がある
青いタイルの装飾が美しい
脇にそびえ立つミナレット
生搾りのジュース売りがいた
モスクのなかに入れるようだ。ラマダン中であることが書かれている
この幾何学模様は男女の融和と家庭を表現している
モスクの中庭は緑が多い
モスクのなか。天井の装飾が見応えがある
天井の幾何学模様
こちらがメッカの方向を示している

モダンな円形ドーム市場「チョルスー・バザール」

 旅行先では必ず地元の市場をチェックする、としている人も多いのではないだろうか。タシケントの「チョルスー・バザール」(Tafakkur ko'chasi 57, Toshkent)もぜひ訪れてみてほしい。市場はいくつかあるが、一番古くからある市場とのことだ。香辛料やナッツ類、ドライフルーツ、穀物、肉、野菜などが整然と販売されている。地下鉄チョルスー駅の近くにある。

 なかをうろついていると、かなり強めに試食を勧められるのだが、試食をしたら必ず購入する必要はなく、遠慮なくいただいてもいいそうで、試食と購入は別というのがここのスタイルとのこと。せっかくなので試してみてほしい。ナッツやドライフルーツを試食したが、強い日差しで育ったためか、とても美味しかった。

 この市場は、特徴的な紋様が描かれた円形のドーム型をしている。タシケント周辺には1960年代から建てられたモダニズム様式の建築が多くあり、その1つとなっている。このモダニズム建築群に関しては、後ほどまとめて紹介しよう。

「チョルスー・バザール」は大きなドーム内にある屋内市場
青く独特なデザインのドーム
天井のデザインも独特
試食を強めに勧めてくる。せっかくなので試してみた。どれも美味しい!
香辛料のお店が多い
肉なども売られている

アパートのデザインがすごくエモい

 タシケントの市街地を散策していると、アパートのデザインや装飾がとてもおもしろいことに気づく。日本や欧米にあるアパートやマンションとは、まったく異なっていて遊び心も感じられる。街の様子を少し並べてみよう。

繁華街の高層アパート。窓の形がカワイイ
旧ソ連時代のアパートだそう。いろいろなパターン
形は一般的だが色使いがおもしろい
所々に穴あきブロックが使われている
通りに面する壁面に青い紋様が描かれている
壁面に変わったデザインのパターン
妙にかわいいデザインの壁面パターン
このような幾何学模様のパターンがあちこちで見かける
ウクライナの詩人タラス・シェフチェンコ像と作品をオマージュした壁画
大通りには夜間に独特な光の装飾が出現する

手縫い刺繍が美しいスザニ

 ウズベキスタンに関わらず中央アジア諸国では、さまざまなパターンの模様が刺繍されたスザニが生活に入り込んでいる。地域の伝統として、手刺繍で受け継いできた技術だ。

「Suzani by Kasimbaeva(カシムバエワのスザニ)」(Suzuk Ota 35, Tashkent)という工房兼ショップで手刺繍のスザニが作られている工程を見学した。室内の仕切りや壁掛けに使われることが多いとのこと。また、古くは結婚時の持参金としての役割もあった。現在では、服やクッション、アクセサリーなどに刺繍も行なわれているが、天然染料を使った手縫いという伝統は引き継いでいる。お土産にもぴったりだ。

美しいパターン模様の手刺繍のスザニ
「Suzani by Kasimbaeva」の工房兼ショップ。近辺には職人が多く住んでいる
中庭にはキッチンがあった。ウズベキスタンの典型的な生活スタイルだという
女性たちが手縫いの刺繍で仕上げている
宇宙や動物、植物などがモチーフとなっている
地域に根ざしたパターンがあるとのこと
ショップで購入することができる

伝統ショーと食事が楽しめる「Obi Hayot Tashkent」

 ディナーを食べながら、伝統舞踊などが楽しめる「Obi Hayot」(4 Jarqo'rg'on ko'chasi, Obi Hayot, Tashkent)というレストランを訪れた。市街からは離れていて、タシケント空港の近くになるので、訪れるにはクルマ(もしくはタクシー)が必要になるが、ディナー時間は終始、ウズベキスタンの伝統音楽や舞踊のショーが行なわれているので、これを見に行く価値は十分にある。もちろん食事も、ウズベキスタンの代表的なメニューを楽しむことができた。見てもらうと分かるが、豚肉以外で肉多めの料理が多い。

エントランスに大きなポットの噴水があって楽しませてくれる
店内はステージがあり、ちょっと妖艶なライティング
食事中にウズベキスタンの伝統音楽や舞踊のショーが行なわれる
ナリンという細切れ麺と馬肉ソーセージの炒め物
大きな焼いたカボチャが運ばれてきた
店の人がナイフで割ってくれる。ディムラマという肉じゃが風のスパイシーな煮物
牛肉とレーズンタップリのプロフ(ピラフ)
ザクロのジュースとデザート。ザクロには抗酸化作用があり、よく飲まれるそう

 ウズベキスタンの首都タシケントは、近代的で緑の多い公園が広く、散策してて居心地がとてもよい。そして、壮麗なイスラム建築、活気のある市場、めずらしいデザインの建築物など、観光するポイントも多い。あまり感じたことのない中央アジアの独特の雰囲気を、存分に味わうことができる。特に北米やヨーロッパ、南の島など、よくある観光先に飽きた人にはオススメしたい観光先だ。

 次回は、大阪・関西万博に出展中のウズベキスタンパビリオンについて紹介をしていく。続けて、さらに地方都市を見ていこう。

村上俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、Web媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。