旅レポ

ウズベキスタンでシルクロードのオアシスとして栄えた都市「ブハラ」を訪れる

ブハラの街を「アルク城」から見た景色。高い塔は「カラーン・ミナレット」。周辺はモスクがある

 ウズベキスタン芸術文化開発財団主催で行なわれた「ウズベキスタン共和国」ツアーに参加した様子をお届けしている。

 前回までで首都タシケントを紹介したが、今回は少し南側に離れた地方にありシルクロードのオアシスとして栄えた歴史を持つ都市「ブハラ」を訪れてみる。

 今回の国内移動は、首都タシケントを起点に飛行機を使っているが、電車やバスを使いサマルカンドを経由し西方面をぐるりと巡るツアーも多く設定されているとのこと。この場合、雄大な砂漠地帯を進んでいく景色を楽しめるはずだ。実際のツアー日程はヒヴァ→ブハラの順に回ったのだが、タシケントに近いブハラから紹介していこう。

 タシケントからブハラへの国内便は「シルク・アビア(Silk Avia)」という、タシケント国際空港を起点とするウズベキスタン航空パートナーのLCCに搭乗した。2023年に運航を開始した、まだ新しいLCCだ。ちょっとめずらしいと思われるので紹介しておこう。搭乗したのはATR 72-600というターボプロップ双発機。シルクが流れるようなハデなデザインが機体全体に描かれていて美しい。

タシケントとブハラの移動で搭乗したシルク・アビアのATR 72-600型機。写真はブハラ国際空港到着時のもの
タシケント国際空港の国内線待合ロビー
尾翼に描かれたシルクを意識したデザイン
シルクのデザインは胴体にも続いている。こちらは復路での撮影。往路と同一機体
シルク・アビアのATR 72-600型機のシート
ATR 72-600の機内
途中でナシ味のアメのサービスがあった
ブハラ近郊上空。砂漠のなかのオアシスが発展した都市
到着したブハラ国際空港

 ブハラで最も古い建造物として知られるのが、「カラーン・ミナレット(Kalyan Minaret)」。この巨大なミナレットは、1127年に建設されたままの状態を保っていて、48mの高さがある。

 1220年にチンギス・ハン率いるモンゴル帝国がブハラを占領した際に周囲のモスクは破壊されたが、このミナレットだけは残された。その高さに驚いたチンギス・ハンが破壊しないように命令したと伝承されている。ミナレットは礼拝の呼びかけに使われるのだが、権力者の象徴でもあったため高さや装飾を誇る傾向があり、占領によって破壊の憂き目にもあいやすい。訪れたのは日中だったが、夜はライトアップされていてそちらの様子も美しい。

 隣接する巨大な「カラーン・モスク」は1514年に建てられたもので、現在もモスクとして使われている。

「カラーン・ミナレット」と右は「カラーン・モスク」の入口
「カラーン・モスク」を遠くから見たところ
「カラーン・ミナレット」に近寄ってみた
幾何学模様のパターンが描かれている
「カラーン・モスク」の入口
青い装飾が美しい
横側にはシンプルなパターン
柱に描かれたパターン
周辺には美しい絨毯を扱う店も多い

 カラーン・ミナレットの近くには、古代のブハラ発祥の地とされ、城壁で囲まれた「アルク城(The Ark Fortress)」がある。2000年前からあるといわれているが、正確なところは分からないようだ。

 城壁は何度も作り替えられ、その度にかさ増しされているため、城壁内が周囲より高く台地のようになっている。1220年にはチンギス・ハーンのモンゴル軍により破壊されている。現存するのは18世紀に建造された城で、1920年にソ連に加盟するまで、ブハラ・ハン国支配者の居城だった。現在内部は博物館となっている。

高い城壁で囲まれた「アルク城」
入口はスロープになっている。前面はレギスタン広場という公開処刑場
城壁の高さはなかなかのもの
入口上に付けられた見張り用の塔
入口を入るとさらにスロープが続く
スロープの勾配はなかなかキツい。なにやら窓があるが……
のぞくと、囚人の牢屋が再現されていた
通路はとても狭い
ジュマ(金曜)・モスク
王と謁見する玉座の間
中央高く王座がある
出入口には王に背を向けずに退室する壁がある
通路は迷路のようだ
女性たちが待機していたレジデンス
城の内部はかなり高さがある。右下は塞がれているが階段
荷馬車が再現されていた。眺めがいい
通路は複雑でどこにいるのか分からなくなる
一部崩れていて、ブハラの街並みを見渡せる丘となっている

 また、近くには「タキ」という丸い大屋根に覆われたバザールがあり、ここでは2025年9月5日~11月20日にウズベキスタン芸術文化開発財団主導で第1回「ブハラ・ビエンナーレ」が開催される。これは中央アジアで初めての国際的な芸術祭となるそうだ。

 バザールを中心とした広いエリアで、さまざまなアート作品の展示やインスタレーション、シンポジウム、パフォーマンスが行なわれるほか、料理も振る舞われるとのことだ。入場は無料で、誰でも参加可能。開催前の予定地を巡ることができた。

「タキ」バザールにある丸い大屋根
バザールの四つ角にある屋根になっている
屋根のあるバザールから外に続く道を見たところ
「ブハラ・ビエンナーレ」予定地を案内してくれたキュレーターのティムールさん
「アヨスジョン(Ayozzhon)」キャラバンサライという旅商人宿の遺跡でも予定している
宿の遺跡なので、内部が小部屋に分割されている
向かいの広い史跡
「ホジャ・ガウクション(Khoja Gaukushon)」モスクやマドラサ周辺も使われる
修復中の「ラシッド(Rashid)」マドラサまでのエリアで開催する

 このほか、「ウストズ・ショガード 応用芸術センター(Ustoz Shogird Center for Applied Arts)」という、細密画家「ダヴラト・トシェフ(Davlat Toshev)」氏の工房を見学した。ペルシャ細密画の技法を使い、古い物語などをテーマにした細密画を描いている。先に紹介した「ブハラ・ビエンナーレ」にも参加する。建物は「ジュラベク」キャラバンサライを修復したもの。「ウストズ・ショガード」はウズベク語で「弟子」という意味で、子供たちが絵を習う学校にもなっている。

「ウストズ・ショガード 応用芸術センター」の建物。「ジュラベク」キャラバンサライを修復している
建物内は大きな吹き抜けになっていて、とても明るい雰囲気
細密画家のダヴラト・トシェフ氏
自身の作品を前に解説するトシェフ氏
細密画のアート作品が並ぶ
小物入れに描かれた細密画のアート
子供たちの教育に力を入れていて、それぞれ作品作りを行なっている
子供たちが描いた作品も展示している

 ブハラの街は、タシケントに比べてのどかな感じが残っている。少し散策する時間もあったので、歴史的建造物以外の異国情緒あふれる街並みをアトランダムにお見せしてみよう。

モスクや神学校などがある大きめの通り
神学校の壁面には装飾がある
通りの奥にホテルが見える
道路沿いの街並み。ショップもある
脇道をのぞくと、こんな感じの風景
礼拝に集まっている人々
人工池のある公園。外で食事するのがお好みのようだ
公園にあった公衆トイレ。とてもきれい
ATMもちゃんとある
路地を入ると小さなホテルがたくさんあった。こういうところに宿泊してみたい
路地を奥へ進んでみた
防犯のため窓が二階のみにあるのが古くから一般的な民家の作り
玄関は古く趣がある。おそらく人は住んでいない家
民家の立派な玄関と壁の装飾
玄関ドアに付けられた金具は、ノックする用途にも使われる
改修中の壁を見つけた。構造がよく分かっておもしろい
1階の窓には防犯用に金網があるが装飾がきれい
地元の小さな金曜モスク。こういうモスクがいたるところにある
民家は壁に囲まれていて中庭がある作りが一般的
めずらしく1階に窓がある民家
ここもホテルが多い一角
道ばたにクルマを停めて売る地元市場も見かけた
小さなショップ。ちょっと入りづらいけど、美しい模様の服
美しい細工のハサミ
同行の女性が、かなり気に入ったもよう
お土産購入時の値段交渉はいずこも同じ。だいぶ下がった。お勧め品もあった
お土産屋で大小よく見かけた「ウズベクおじさん」人形

 ブハラで昼食に訪れたのは、「オールド・ブハラ(Old Bukhara)」レストラン(QCF9+JV4, Samarkand Str., Buxoro, Buxoro Viloyati)。どの料理も家庭的で美味しい。ウズベキスタンでは、どこの店もかなり盛りが多めに感じたが、ここは普通の量なので食べきれるはず。地元民も多く見かけ、終始とても混雑していた。団体観光客も多めだ。

 英語が通じるので、可能なら予約をしてから行くのがお勧め。素揚げしてクミンなどで味付けされたブハラ伝統の骨付きラム肉「バグリ」は、シンプルながらとても美味しかったので、羊肉が好きならぜひ試してみてほしい。地元の伝統料理の味が楽しめる。

「オールド・ブハラ」レストラン。店はけっこうデカい
中庭の席。2階にもテラス席がある
お皿の模様がとても美しい
前菜のナスのトマトかけ
トマトのサラダ
「マスタバ」というトマトスープ
具としてお米が入っている
素揚げした骨付きラム肉「バグリ」。クミンがきいていて食べやすい
パンは多層でサクサク感がある。サモサの生地に似ている
デザートの「バクラバ」。パイ生地間にナッツが入っている。ものすごく甘い
村上俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、Web媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。