旅レポ
実は希少だったハワイ産カカオ豆! 農園ツアー&試食が楽しめるオアフ島“チョコレートのナパ・ヴァレー”へ行ってきた
2024年5月9日 06:00
ハワイ州観光局 日本支局(HTJ)は、ハワイ旅行の本格的な復活に向けた「ジャパンサミット2024」を開催。そのプログラムのひとつとして行なわれた、主要観光地オアフ島のディープスポットをめぐる視察ツアーに参加してきました。
今回記者が訪れたのは、オアフ島東部の山里にあるカカオ農園「21 Degrees Estate Farm(21ディグリーズエステートファーム)」。ホノルルの中心地ワイキキからは、無料の高速道路「H1フリーウェイ」に乗って北東へ約30km進んだところにあり、にぎやかなカラカウア通りとはまた景色がガラッと変わって豊かな大自然に広がる“超ローカル”なハワイらしさに触れることができます。
そして、街なかや空港では決して手に入れることのできない唯一無二のオアフメイドなお土産を見つけられるというのもおもしろいポイントです。
関連記事
ハワイの天気について
レポへ入る前に、ハワイの天気についておさらい。ハワイは主に、乾季の夏(5~10月)と雨季の冬(11~4月)の2つの季節があって、その境目となる4月・10月は、日本の四季でいう春・秋と同じようにより過ごしやすい気候です。
真冬の気温は22~23℃くらいで涼しく、雨季といっても降水量は少ないため旅行するのに不便はしません。真夏でも30℃超えない程度。乾季は風が強く、湿度も上がらないのでカラッとした爽やかな夏を楽しめます。
ハワイの街ではよく通り雨のような“シャワー”が降りますが、これは海の湿った空気が貿易風にのって島の中央にそびえる高い山々にぶつかり雨雲を作るため。北半球のハワイは赤道に向かって北東から西へ貿易風が吹くので、今回訪れたカカオ農園のある島の東は雨が降りやすい場所となり、風が強いときにはその山の雨がワイキキの方まで飛んでいくから“晴れているのにシャワーが降る”なんてシーンにしばしば遭遇するようです。
同じオアフ島内でも北と東、南と西で天気がまったく異なり、特に山側では突然の土砂降りに遭うことも少なくないため、大事なカメラやお気に入りの革製バッグ・小物を露出するのは注意しましょう。
ハワイ旅行のベストな時期は?と気になりますが、現地コーディネーター ZEST HAWAIIの瀬川慶さんによると実はハワイで“雲ひとつない日”というのは少なく、遠くの山の上にどんよりした雨雲がかかるのは日常茶飯事なんだそう。そのおかげで気温が上がらず涼しくて、もちろん晴れ間には虹が見えたり、青空と山の緑、青いビーチのコントラストを楽しめたり、日差しの強い夏らしい体感が得られたりもします。
ハワイの山里に広がる“チョコレートのナパ・ヴァレー”へ。希少なオアフ島産カカオ豆を見て、食べて、買って満喫!
さて、ワイキキ市街地からフリーウェイに乗って1時間弱、カカオ農園「21 Degrees Estate Farm」(47-546 D, Mapele Pl, Kaneohe, HI)にやってきました。
ここは、オアフ島東部クーラウポコ地区にあるカハルウと呼ばれる地域で、年間100インチ(2540mm)というかなりの降水量を持つ雨の森にあります。
10エーカーの土地(東京ドームでいうと約1.15個分)に約700本のカカオの木を栽培し、毎日カカオの実を収穫。ほかにも果物やミツバチを育てていて、田畑を散策しながら農業や自然環境について学べるガイド付きツアーでは試食も楽しめるという注目のアグリカルチャースポットです。
意外なことにハワイにおけるチョコレートの歴史はまだ浅く、カカオ栽培が始まってから25年しか経っていません(一方で名産地グアテマラは4000年の歴史!)。またハワイは、米国で唯一カカオが育ち、チョコレートが生産される地域でもあります。今でこそマカダミアナッツチョコレートなどが人気ですが、チョコ業界としてはまだジュニア。
25年前に植えたものがようやく育ってきて、それでも世界のカカオ生産率でみると0.001%しか採れないという希少価値の高いカカオ。にもかかわらず、全チョコレートの10%にハワイ産カカオが使用されているほど高品質で美味しいと認められているのだそうです。
ハワイ州オアフ島の北緯21度にちなんで「21ディグリーズ」と名付けられたその由来のとおり、カネオヘ湾の穏やかな海と壮大なコオラウ山脈に囲まれた肥沃なこの辺りは先住民にとって言わばオアフ島の穀倉地帯であり“チョコレートのナパ・ヴァレー”とも称されます。
そして先ほど触れた貿易風は、赤道を挟んで緯度が南北30度以下の地域で吹く風のことですが(偏西風は緯度が南北35〜65度の地域で西から吹く風)、これが農作に欠かせない恵みの雨をもたらしていたワケです。
カカオは樹木に実ります。チョコレートの原料になるのは、そのカカオ豆からとれるカカオニブ・カカオマス・ココアバターなど。カカオ豆といっても“ナッツ類”ではなく、木の幹や枝にぶら下がるように果実(カカオポッド)が育ち、その硬いガワのなかにある白い果肉(カカオパルプ)に包まれた種子(カカオビーン)が、いわゆるカカオ豆です。
熟れごろのカカオポッドを収穫し、豆を取り出し発酵、天日干しで乾燥、粉砕して薄皮などを除去すると豆の胚乳部“カカオニブ”が現われます。焙煎したカカオニブは近年、美容・健康によいスーパーフードとしても知られる自然食。この段階ではまだ苦いだけなのですが、香りはほんのりチョコレート。
焙煎したカカオニブをペースト状にするとカカオマスになり、これを圧搾して油脂分のココアバターを抽出、そこにケインシュガー(黒砂糖)を加えてなめらかさと甘さを出す。最終的にパキっとした割れ具合のよい食感になるよう、加熱と冷却を繰り返し、型に流し固めることで、ようやくみんな大好きなチョコレートが完成します。
実際にカカオを収穫する様子を見学しました。この農園を家族で営むマイケルさんいわく採り方も重要で、「大きなカッターナイフを使って1個1個すべて手作業で行ない、絶対に引っ張ってはいけません」。カカオポッドがなっている茎の根本から切り落としますが、けっこう太いので力が要るみたい。
また、熟れ具合はやわらかさではなく“色”が決め手。育ったカカオポッドはまず紫色、次に赤くなり、緑色に。10日~2週間で変化していき、最終的に黄色とオレンジになれば収穫の合図。農園で働く20人ほどのスタッフには「とにかく色を見ろ」と常に指導するそうです。
ところでこのラグビーボールみたいなカカオポッド1個からいったい何枚のチョコレートが作られるのかというと、答えはたったの1枚。収穫したカカオポッドを持ってみるとずっしり重く、男性が両手にのせて収まるくらいの大きさ。これを毎日1個ずつ手作業で収穫するとなると、いかに重労働かがうかがえます。カカオはほかの果物と異なり1年中育つ作物で、2023年には1万7000個も収穫できました。
チョコレートにとって品質の良し悪しは、原料のカカオで決まると言います。育つ環境、収穫のタイミング、発酵する際の温度や湿度。この農園では、乾燥まで行なったカカオ豆をハワイ3か所あるチョコレートメーカーの製造工場に渡し、加工の段階へ進めます。そこでもいくつかの厳しい審査をパスしてようやく美味しいチョコレートとなり、店頭で並ぶおなじみの姿に。
なかでも選りすぐりの豆で作られたカカオ70%以上のものだけが、チョコレート界の王様“ダークチョコレート”として認められるそうですが、「一番高品質と言われるダークチョコレートを作るためには収穫時期や発酵の工程が重要で、最も神経を使うところ。それを逃すとクオリティが落ちて品質のいいチョコレートを作ることができない。ハイクオリティなダークチョコレートを作れる豆を作ること、これがファーマーとしてベストなゴールです」とマイケルさん。細部まで徹底した管理の大切さとカカオ愛を語っていました。
ちなみにダークの基準を下回るカカオにはフレーバーやミルクを加えて製品化しますが、それはそれで最も市場で人気があるようです。
いよいよお待ちかねの試食タイム。「本日テイスティングするのはもちろんここで採れたカカオで作るベストクオリティのチョコレート。皆さんが人生で一度も食べたことのないくらい美味しいですよ」と配ってくれたのは、カカオニブと5種類のチョコレート。
まずはカカオニブ。まだチョコになる前の段階なので甘さはありませんが、カリッとした食感と香ばしさ、身体によさそうな濃い苦みがあって、参加者たちはみな悶絶の表情でした。
続いては、ここの豆を提供しているという有名ブランド「MANOA CHOCOLATE(マノアチョコレート)」のカカオ55%。リリコイ(パッションフルーツ)のフレーバーが加えられていて、苦みも少なくほんのりフルーティな食べやすいお味です。
2つ目は、農園オリジナル商品「21 Degrees Estate」のカカオ70%(昨冬収穫)。そもそも「苦みのないダークチョコレートというのがハワイで育てられる豆の特徴」という説明のとおり、カカオ・ココアバター・シュガーの3つの素材だけで作られているのにブルーベリーのようなすっきりとした甘みと酸味が感じられました。
3つ目は、同じく70%のダークチョコレートでも昨秋に収穫されたカカオを原料としたもの。先ほどの冬モノと比べてレーズンのような芳醇な甘さと華やかな味わい。
4つ目も70%のダークチョコレートですが、先般シアトルで行なわれたチョコレートの国際品評会でブロンズ賞を受賞したばかりという自信作とのこと。初の試みとして春・秋・冬に収穫された豆をブレンドして作ったチョコレートであり、「3つのシーズンを跨ぐことでいろんなフレーバーが交わって、独得の味わいが評価されたのでは」との解説を聞いて、一口かじってみると、記者には意外にも一番シンプルな味、素朴でやさしい味に感じられました。
最後はカカオ80%のダークチョコレート。苦いかな?と思いきや、深みのなかに爽やかな甘さがあって、ゆっくり口のなかで広がっていくような美味しさ。とにかく香りがいいんです。仕事の合間にコーヒーと味わったら最高でしょう!と、個人的にはこれが一番好みでした。
これらオリジナル商品はいずれも3つの素材(カカオ・ココアバター・シュガー)以外何も加えられていないはずなのにフルーツような香りがあって、収穫された時期によってもまったく異なる味に完成する。「すべてカカオ由来の自然のもの」というから驚きです。
農園に建つログハウスのショッピングコーナーでは、試食で気に入った味わいや濃さのチョコレートを購入することができます。
価格の例として、看板商品「カカオ70% 21ディグリーズエステート ダーク シーズナルハーベスト プレミアムチョコレートバー」は12ドル、マノアブランドでフレーバー入りの「60%カカオ マノア(リルコル、バナナ、グアバ、海塩、コーヒー、ココナッツを含む)」は11ドル、洋酒が入った「マノア ウィスキーとラム スペシャルティインクルージョン」は12ドル、お手頃な「60% マノア スモール スクエア」は4ドル、素材そのままを味わえる「100%カカオニブ(8オンス袋)」は14ドル、など。
板チョコ1枚1860円(1ドル=約155円換算)はかなりお高めですが、もしハワイ旅行でこだわり土産を探すならば一見の価値アリです。
美味しいチョコレートを1人でも多くの人に食べてほしい。それでも「カカオが生まれるこの場所で売りたい」という想いから、オリジナル商品は農園でしか販売していません。「カカオファームツアー&チョコレートテイスティング」の体験料金は、大人が62ドル、13~18歳が40ドル、3~12歳が20ドル、2歳以下は無料。所要時間は2時間~2時間30分で、公式Webサイトやツアーデスクを通じて要予約となります。
おしゃれなショップやカフェが立ち並ぶ「カイルアタウン」でひと休み。セレブ御用達アサイーボウルは意外にも高コスパでした
カカオ農園の帰りは、お昼休憩を兼ねて「KAILUA TOWN(カイルアタウン)」に立ち寄り。オアフ島の自然豊かな高級住宅エリアにあるショッピングモールのような場所で、レストランにカフェ、オーガニックの食品スーパーをはじめ、雑貨・アクセサリー店、ガーデニングショップ、洋服店にネイルサロン、美容院、ペット用品店、バイクショップ、アートギャラリー、古書店と、とにかくなんでも揃っている地元民御用達スポットです。
カカオ農園からはクルマで南東へ約30分、ワイキキ中心地からはクルマで北東へ約30分ほどでアクセスできます。
記者がランチに選んだ店は「ALOHA SALADS(アロハサラダ)」。地元産の新鮮なフルーツや野菜、魚、チーズ、お肉などの食材をふんだんに使ったボウルサラダなどのヘルシー料理が味わえるカジュアルレストランです。今回は、ハワイに行ったら一度は食べたい「アサイーボウル」を目当てに訪れました。
サイズは12オンスの大きなカップで価格9.95ドルと意外にもお手頃。濃厚で甘酸っぱいアサイージェラートの上に、ザクザク食感のグラノーラがごろごろ入り、バナナ、いちご、ブルーベリーと蜂蜜たっぷりのトッピング。冷たいスイーツ感覚で注文していざ食べてみるとずっしり重く、1人では食べきるのがやっとなほどボリューミー。
ちなみにワイキキビーチ沿いにある行列店「Kai Coffee(カイコーヒー)」のアサイーボウルはこの3分1ほどのサイズで1つ13ドル。アラモアナセンターにあるショップ&カフェ「BLUE HAWAII LifeStyle(ブルーハワイ ライフスタイル)」のアサイーボウルは小サイズ13.3ドル、ノーマルサイズ16.35ドル。やはり割高な街なかの人気店に比べても、アロハサラダのアサイーボウルは味もボリュームも価格も大満足でした。暑いハワイでさっぱり、かつしっかりパワーチャージしたいときのお昼や朝食、ブランチにぴったりですよ。
ほかのショップも覗いてみると、ハワイのスローライフ気分を自宅でも味わえそうなお洒落アイテムばかり! カイルア店限定エコバッグやロゴ入りトート(20~30ドル)がお土産に人気のオーガニックスーパー「WHOLE FOODS MARKET(ホールフーズマーケット)」、メイドインハワイのハイセンスなインテリア雑貨を販売する「Coco's Trading Post(ココズトレーディングポスト)」や「SOHA LIVING(ソーハ・リビング)」、ハワイ産フルーツや植物などの天然素材で作るいい香りのバス・ボディケア製品を扱う「Lanikai Bath and Body(ラニカイバスアンドボディ)」など、お手頃で家族や友人にも配りやすい品揃えが印象的でした。
大型スーパーから小さなブティックまで、ワイキキのショップやコンビニ、空港には売っていないようなローカル土産を発掘できるのがカイルアタウンの魅力。散策しながらウィンドウショッピングするのも楽しいです。