旅レポ

チェコが誇る音楽家ベドジフ・スメタナ生誕200周年! スメタナの故郷リトミシュルを散策して、プラハ近郊の古城ホテルに泊まってきた

リトミシュルのスメタナ広場。ひときわ高い建物は旧市庁舎

 かつて鉄鋼業で栄えた都市オストラヴァからスタートして、西へ西へと移動するロードムービーのようなチェコ旅もいよいよ最終目的地のプラハに到着。最終回の本稿では、小さくて美しい街リトミシュル、スメタナが晩年を過ごしたヤプケニツェ、エレガントな古城ホテル、プラハでのお土産探しなどをたっぷりご紹介します。

リトミシュルの3つ星ホテル「ズラター・フヴィエズダ・ホテル」

 交響詩「我が祖国」で知られるチェコ出身の音楽家ベドジフ・スメタナの生まれ故郷リトミシュルは、人口1万人ほどの小さな街。もともとボヘミアとモラヴィアを結ぶ交易路で、ヨーロッパ全体でも重要な貿易ルートでした。クルマを降りたのは、そんなリトミシュルの街の中心に細長く広がる「スメタナ広場」です。

スメタナ広場の南端に建つズラター・フヴィエズダ・ホテル
アートカフェレストラン。壁の写真の4人は街の著名人
過去に何回も改装を重ねてきたというホテル。この階段はとても古いものだそう

 歴史ある建物に全32室を備える「ズラター・フヴィエズダ・ホテル」を内見してきました。1階のレストランでは伝統的なチェコ料理が楽しめ、屋上テラスからは街を見下ろす素晴らしい景色が自慢のこちらのホテル、文化人やスポーツ選手、政治家などのリピーターも多いそうです。

有名な彫刻家をテーマにしたアパートメントタイプの客室
2年ほど前に改装したというシングルルームはモダンな壁紙が印象的
こちらは落ち着けそうな屋根裏の客室。1週間くらい泊まりたい感じ
隠れ家のようなラウンジ。階段を上がったところが屋上テラス
屋上テラスからの眺め
見飽きない景色でした

今年はスメタナ生誕200周年、音楽祭「スメタナのリトミシュル」は盛り上がり必至!

広場の北端に立つスメタナ像。生家のあるリトミシュル城の方角を見ています

 川の形に沿ってのびるスメタナ広場を進んでいくと、スメタナ像に出会います。その銅像から小径を通り抜けた裏通りに建つ大きな建物が、市民ホール「スメタナの家」です。

カルチャーセンターの役割も持つ市民ホール
大ホールは懇親会やコンサートなどでレンタルできるそう
リトミシュルの散策風景

 ところで、リトミシュル観光の目玉といえば世界遺産「リトミシュル城」。なのですが! なんとまさかの大規模改修工事中で、今回は中に入ることができず(泣)。毎年6月末~7月初旬には、このリトミシュル城をメイン会場に、チェコで2番目に古い音楽祭「スメタナのリトミシュル」が開催されます(一番古いのはプラハの春音楽祭)。

本来はガイドツアーなどで内部見学ができるリトミシュル城。外壁にズグラッフィートという特殊な装飾が施されています

 スメタナ生誕200周年というアニバーサリーイヤーの今年は、スメタナの全オペラを一度に上演するなど、期間も規模も過去最大となるそう。盛り上がること間違いなしの音楽祭「スメタナのリトミシュル2024」の開催期間は6月8日~7月7日。音楽祭で沸くリトミシュルの街、見てみたいな~。

過去の音楽祭「スメタナのリトミシュル」の様子(提供:スメタナのリトミシュル)
お城の中庭にステージと観覧席が造られます(提供:スメタナのリトミシュル)
正面は聖十字架発見教会。右は地域博物館
コンテンポラリーな装飾が散りばめられていた聖十字架発見教会
教会の上部から見た世界遺産のリトミシュル城

リトミシュルで泊まったホテル「ホテル・アプラウス」

ホテル・アプラウス

 リトミシュルで泊まったのは歴史的地区の一角にたたずむ「ホテル・アプラウス」です。目立つ外観ではありませんが、なかはモダンでスタイリッシュ。3棟の歴史的建造物を再構築しているそうで、館内は“なぜここに段差が!?”と不思議に思う箇所が随所にある、ユニークな造りのホテルでした。

クラシック ダブルルーム
撮影用のストロボ照明がお部屋のライトに。斬新!
バスルームはバスタブ付き。ビデもありました

 実は、リトミシュルに滞在したこの日は、小澤征爾さんの訃報が世界中を駆け巡った日。部屋のテレビをつけると「日本の指揮者、小澤征爾さんが死去」と、チェコでもトップニュースとして取り上げられていました。チェコの偉大な音楽家スメタナの故郷リトミシュルで、日本が世界に誇るマエストロの訃報を聞くという音楽つながりに、何か不思議なものを感じた夜でした。

美食を堪能したディナー。めずらしく肉ではなく魚をチョイス
朝食はホテルを抜け出して街のアーケード商店街にあるベーカリーへ。ローカル気分でパンとコーヒーを

スメタナ博物館での特別オペラ鑑賞で感極まって涙する

ヤプケニツェにあるスメタナ博物館

 次に向かったのは、ヤプケニツェという小さな街。ここにはスメタナが晩年の8年間を過ごした家が残されていて「スメタナ博物館」として保存・公開されています。ちなみにプラハにはヴルタヴァ川に面した場所に「ベドジフ・スメタナ博物館」がありますが、そことは別の施設です。

スメタナがヤプケニツェで過ごした晩年の作品に焦点を当てた展示がいろいろ

 リトミシュルで生まれ育ち、その後、生涯の大部分をプラハで過ごしたスメタナ。亡くなる8年ほど前に経済的な理由で娘さんを頼って、ここヤプケニツェに移ってきたのだそう。今回はこのスメタナ博物館で、地元の音楽家さんによるオペラのミニコンサートを鑑賞することができました。

スメタナは晩年、聴覚を失っていたことをご存じですか? それでもこの地でいくつかの作品を作曲しているってすごい!

 小さな会場でふたりの女性によるミニコンサート。スメタナが作曲したオペラのタイトルすら知らない私は、歌詞も内容も分からないまま、ただ高音の歌声に聴き入っていたのですが、ふと気づいたら涙があふれてきてびっくり! 音楽は言葉ではないんだな~ってことを実感した忘れられないコンサートになりました。

ミニコンサート
歌手とピアノ伴奏のお2人。素晴らしかったです

古城ホテル「シャトー・ムツェリ」でロマンティックな滞在を

チェコ旅の最後の宿泊は、プラハからクルマで45分ほどの古城ホテル

 チェコ旅の最後のお宿は、まわりを森に囲まれた丘の上の古城ホテル「シャトー・ムツェリ」。ここに泊まるためだけにチェコを訪れてもいいんじゃないかと思うくらい素敵なホテルでした。記念日旅行やハネムーンなどで滞在するのにもオススメ!

エントランス前にはボードにうれしいはからいが

 客室はわずか24室。それぞれ異なるスタイルで、1室ごとに名前が付いているのが特徴です。今回は12室あるスーペリアルームを利用しました。

リトミシュルに続いてまたまた屋根裏部屋
ドーマー窓からはエントランス側の庭が見えました
バスタブ付きのバスルームにはオリジナルのバスオイル
電話機みたいに置くクラシカルなシャワー
レジェンドスイート
アガペプレジデンシャルスイート
ガーデンの景色を望むベラヴィスタ パティオ
世界中の260種類のワインが1000本以上保管されているワインセラーも

「PIANO NOBILE」は、"チェコのベスト・レストラン"に何度もランクインしているというシャトー・ムツェリ自慢のレストラン。料理長率いる料理チームは、可能な限り地元の食材を使い、ハーブを自家栽培し、シャトー内にあるスモークハウスで肉や魚を燻製するなどしてゲストをもてなしています。この日いただいた夕食も、エレガントなレストランの雰囲気と相まって極上のグルメ体験でした。

美しさにうっとりのレストラン「PIANO NOBILE」
この日のディナーコース。スターターの牛肉のカルパッチョとメインのポルチーニリゾットが絶品

 ウェルネスエリアも人気だというシャトー・ムツェリ。サウナにジャグジー、ハーブスチームバス、夏の時期にはプールもあって、ヨガクラスやハーブのワークショップなども。もちろんこんな素敵なシャトーホテルなので、ウェディングもできちゃいます。プラハから小一時間の距離なので、週末を利用して癒やされにくるチェコ人も多いそうです。

朝食タイムもお姫様になった気分でした
優雅なピアノの音色が流れているなと思ったら、なんと生演奏!
丘の上というロケーションも最高

プラハでは前回感動したお気に入りのビュースポットに上ってみた

雨のカレル橋

 プラハでは4時間ほどフリータイムがあったので、カメラ片手に街をぶらぶら散策してみました。1年9か月ぶりのプラハの街は、アジア人観光客が増えたな~という印象でした。

チェコの人気アニメキャラクター「もぐらのクルテク」グッズを売るお店
雨のなか、歴史あるハヴェルスカー市場もにぎわっていました
マヌファクトゥラのビールシャンプーはお土産にお勧め
人気スイーツ「トルデルニーク」のお店からは甘くていい匂いが♪

 傘を差しながらたどり着いたのは、カレル橋のたもとに建つ旧市街橋塔。前回感動しまくった“これぞプラハ!”な絶景を再び見るべく、展望階まで螺旋階段をのぼり、前回とほぼ同じアングルで狙ってきました。雨のプラハもまた美しいということがお分かりいただけるでしょうか?

2022年5月。晴れ
2024年2月。雨
2022年5月。晴れ
2024年2月。雨

 チェコでの最後の食事がプラハのレストラン「マロストランスカー・ベセダ」でのランチ。ここで食べたグラーシュやジャガイモのスープは、1週間食べ続けてきたチェコ料理でも正統派中の正統派なのですが、これがめちゃくちゃ美味しくて感動! 雰囲気もよくて手頃なお値段なので、プラハにまた行く機会があったら絶対に訪れたいお店です。メモメモ。

レストラン「マロストランスカー・ベセダ」はプラハ城まで徒歩10分ほどの距離
もちろん最後もピルスナー・ウルケルで〆
ニンニクが効いていて美味しかったジャガイモのスープ(右上)など

 自分のお土産は、チェコの伝統工芸マリオネット(操り人形)に決定! 「U Mostu」というお店で迷いに迷って選んだのは、ナゾのコンビ「王様」と「ブタ」です。作っているのはプラハ近郊に住む85歳のおじいちゃん職人さんだそう。それを聞いたらますます愛着が湧いてしまうというもの。快く店内撮影の許可をくださった店員さんも好印象でした。

「U Mostu」というチェコハンドメイド雑貨店
たくさんのマリオネットがぶら下がる楽しい店内
連れて帰ってきた王様とブタ。気が向いたら人形劇考えようかな

再びLOTポーランド航空でプラハからワルシャワ、そして成田へ

ヴァーツラフ・ハヴェル・プラハ空港

 復路はプラハからポーランドのワルシャワへ飛び、ワルシャワから成田へという行程です。LOTポーランド航空利用の場合、ワルシャワでの乗り継ぎは2時間弱と長過ぎず短過ぎないのがうれしいところ。空港内の移動距離も短く、分かりやすい導線なので迷うことはありませんでした。

LOTポーランド航空のLO526便でワルシャワへ。所要時間は1時間15分
ワルシャワ到着時は左の「ALL PASSPORTS」側へ
成田行きのLO79便はポーランド独立100周年を祝う特別塗装機
運航機材はボーイング 787-9型機
復路では「ピエロギ」が登場! お肉や野菜が入った餃子みたいなポーランドの伝統料理です
復路は南回りで12時間20分のフライト
成田到着の2時間ほど前に2回目の機内食

大人の好奇心を刺激する奥深いコンテンツがいっぱいのチェコ

ジグソーパズルのような街並みのリトミシュルは大好きな街になりました

 今回の旅で感じたのは、“プラハだけでなく、チェコにはほかにも訪れるべき街がまだまだたくさんある!”ということ。オストラヴァ、オロモウツ、リトミシュルと、今回訪れた土地それぞれに興味深い歴史や民俗的な文化があって、もっと掘り下げてみたくなる魅力にあふれていました。北海道ほどの広さのチェコは鉄道網も整備されているので、列車に揺られながらの旅もよさそうですよね! 機会があればまた、知的好奇心を刺激しにチェコに行きたいです。

リトミシュルのスーパーでお土産に買ってきたのは、チェコの代表的な絵本作家ヨゼフ・ラダ作「黒ねこミケシュのぼうけん」が描かれたチョコレート
空室・料金チェック
ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。