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三菱航空機、MRJ開発を加速する「シアトル・エンジニアリング・センター」公開
(2015/8/4 14:50)
- 2015年8月3日(米国時間)公開
三菱航空機は8月3日(米国時間)、国産リージョナルジェット「MRJ」のアメリカにおける開発拠点となる「シアトル・エンジニアリング・センター」を報道関係者に公開した。開所したばかりとあってエンジニアの姿もまだ少ないが、日本からのスタッフ50名、現地のスタッフ100名ほどが勤務し、アメリカで行なわれるフライト試験と併せてMRJの開発を加速させるべく活動を行なう。
公開に合わせて実施された記者会見では、三菱航空機 取締役 副社長 執行役員の岸信夫氏、シアトル・エンジニアリング・センター長を務める本田健一郎氏がMRJの特徴やアメリカでの試験の概要などを紹介した。MRJの特徴については、従来から説明されているとおりの内容なので、関連記事を参照されたい。
シアトル・エンジニアリング・センターについては、4万平方フィートの敷地面積を持ち、150名ほどのエンジニアが在籍。前述のとおり、日本の三菱航空機のエンジニアが約50名、アメリカのパートナーであるAeroTECのメンバーを含めて現地スタッフが約100名という構成で臨む。併せて、シアトル近郊のモーゼスレイクにあるGrant County International Airportに6万5000平方フィートのハンガーを建設中で、飛行試験の拠点とする。モーゼスレイクには約200名が従事する。
飛行試験のスケジュールについてはすでに発表されているとおり、2015年9月~10月に国内で初飛行を実施。その後、2016年第2四半期にはアメリカで飛行試験を開始し、型式証明に必要な飛行試験をクリアしていく予定だ。
飛行試験機は5機で、そのうち飛行試験1号機~4号機をアメリカでの飛行試験に用いる。現在の各飛行試験機の進捗は、エンジンテストや地上走行テストを行なっている1号機は各種試験およびフィードバックを実施中。
2号機は全機能の試験、3号機、4号機は艤装作業中で、3号機は1部の機能試験を始めている。5号機はこちらもアナウンスがあったとおりANAカラーがペイントされた状態となっており、現在は翼と胴体の結合作業を行なっている。この5号機が国内での試験のみとなる。
アメリカのエンジニアリング拠点をシアトルに置いた理由として、同地にはボーイングの本社があることでも知られるように、航空機関連のエンジニアも多く、ナレッジとスキルが集まっていること。そして、天候などの条件が、高頻度な飛行試験を行なううえで適していることを挙げた。さらにモーゼスレイクのGrant County International Airportはトラフィックも少なく、これも高頻度の飛行試験を行なううえで適している条件として挙げている。
また、日本では自衛隊などとも空域を共用する必要があるが、空域の面でもアメリカには柔軟性があるほか、24時間使えるなどのメリットも挙げ、型式証明に向けた飛行試験の約7割をアメリカで実施することを表明。岸氏は「我々(日本の)エンジニアが飛行機がある程度の成熟度まで持っていったうえで、アメリカへ持ってきて試験を加速する。そういう飛行試験の拠点として、そして解析などに活用していきたい。日米の力を結集して、MRJ開発のキーとなるエンジニアリングをここでやっていく」と説明した。
アメリカではこのほか、離着陸時のエマージェンシーも想定した特別な滑走路でのテストを行なうRoswell International Air Center(ニューメキシコ州)、過酷な環境や電磁環境(HIRF:High Intensity Radiated Fields)における耐用性などを検証するなどを行なうMcKinley Climatic Laboratory(フロリダ州)、高地における離着陸テストを行なうGunnison-Crested Butte Regional Airport(コロラド州)もテスト空港として使用する。
センター長の本田健一郎氏は、「初代のヘッドとして、事前準備という形で6月から関わっているが、名古屋では自分たちの頭の中ですべて考えなければならなかったことが、こちらではエキスパティズム(高度な専門性)を持った方々の、その知識を思う存分受けられる。“こういう時はどうしたらいいんだろう”という時に即答が返ってくる。そういった環境に置かれることがモチベーションになっているし、興奮しながら仕事をしている。MRJの型式証明に向けて、非常に厳しいスケジュールが待っているが、シアトルという地で、皆さんのナレッジ、スキルを受けながら、スケジュールを守ってお客様にMRJをお渡しできるよう尽くしていきたい」と意欲を示した。また、同所をロッキード・マーティンの開発部隊である「スカンクワークス」になぞらえて「少数精鋭のエキスペダイト部隊」であると評した。
このほか、同日には、シアトルのあるワシントン州知事なども来賓として招かれ、シアトル・エンジニアリング・センターのオープニング記念式典が行なわれた。その模様については追ってお伝えする。
以下、参考までに、ここまでに紹介していないプレスブリーフィングで提示されたスライドを掲載しておく。