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「CEATEC 2019」レポート。ANAが初出展でアバター技術を披露

JTB、NEXCO東日本、JapanTaxiなども出展

2019年10月15日~18日 開催

千葉の幕張メッセで10月18日までCEATEC 2019を開催中

 10月15日から18日まで千葉の幕張メッセで開催しているCEATEC 2019。「つながる社会、共創する未来」をテーマに、「CPS(Cyber Physical System)」や「IoT(Internet of Things)」を活用した「超スマート社会(Society 5.0)」の実現を目指す展示会だ。

 ビジネスの創出や情報交流などを目的に、今年も多くの企業が参加した。なかでも企画展示として用意されている「Society 5.0 TOWN」は、2018年まで主催者企画として行なわれていた「IoTタウン」をアップグレードしたもので、2030年の未来の街をイメージした交通やインフラ、都市サービスを各企業が展示。初めてANAHD(ANAホールディングス)が出展していることも話題になっている。本稿では、そのSociety 5.0 TOWNを中心にレポートする。

CEATEC 2019では、未来の街「Society 5.0 TOWN」を企画展示

初出展のANAホールディングスはアバターを使った未来を展示

 ANAHDはアバター事業を進めているが(関連記事「ANA、超スマート社会実現に向けたアバター事業『ANA AVATAR VISION』発表会。遠隔地をつないで釣りや美術館巡りを体験」)、今回の展示内容もアバターを活用するものだ。

 遠隔地にいる人との会話やさまざまな体験が新しいライフスタイルの提案になり、観光や教育、医療活動など、多種多様な業態の発展にも貢献するとANAHDは説明している。ブース内では、リビングにいながらの世界中のミュージアム鑑賞やショッピングの体験、アバターを使ったフィッシング体験、二人羽織のようなウェアラブルアバターを装着したスキルシェア、遠隔地からの授業、アバターを使った料理体験、未来のアバターロボットの紹介などが展示されている。

 特に目立っているのがコミュニケーション型アバター「newme(ニューミー)」で、ブース内のいたるところに展示され、操作体験もできるようになっている。このnewmeはスタンド型スピーカーのようにスマートなボディが特徴で、顔にあたる部分には10.1インチのディスプレイやカメラなどを備えており、対峙した人とコミュニケーションが取れるようになっている。

 モーターを搭載しているので2.9km/hで移動することも可能だ。操作はタブレットなどにインストールしたソフト「avatar-in」を使う。ANAHDではnewmeを普及アバターに位置付けており、2020年には国内外に1000台を配置する予定だ。

 ANAHD 代表取締役社長の片野坂真哉氏は、「スリムでサボテンのようなnewmeは、多くのカラーバリエーションもあり、愛着の持てるデザインになっています。私ども航空会社は“世界中をつなげていく”というのが経営理念にありますが、飛行機以外で瞬間移動してつなぐことのできる世界をもっともっと広げていきたいと思っております。ワールドカップラグビーで日本が活躍しているように、日本のエネルギーや素晴らしい文化や芸術、技術などを世界中に広めていきたいと思っています」と話した。

今回、CEATECに初めて出展したANAHD
newmeを使った授業風景。ここでは、離れた場所にいる客室乗務員(CA)がおもてなし講座を行なう
ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏
ハプティクス(触覚)も伝わるグローブをはめて、マニピュレータを遠隔操作するクッキングの実演
二足歩行が可能で両腕を備えた未来のロボット型アバター「AGILITY」の展示
大分県の釣り堀に設置された釣りアバターを使ったフィッシング体験

交流創造事業「デスティネーション・エコシステム」に取り組むJTB

「第三の創業」として2018年に経営改革を宣言したJTBは、旅行事業を中心にしつつも、新たに交流創造事業も推し進めている。CPS(Cyber Physical System)と表現される最先端デジタル技術と、JTBの強みであるヒューマンタッチを融合することで交流を創造し、地域の社会課題を解決するもので、「デスティネーション・エコシステム」と名前を付けて展開。

 ブース内は、取り組みを紹介する展示やプレゼン用のスペース、実際に製品を体験してもらうエリアで構成されている。体験可能な製品として、VRゴーグルで沖縄の古宇利島の景色を360度楽しめるサービスや、やんばるの森を探検するツアーに持参するAR(拡張現実)を使ったタブレット、スマホやタブレットなどにイラストマップを使って現在地を表示できる「Stroly」などが展示されている。

JTBのブースではツーリズム産業の成長に能動的に取り組む「デスティネーション・エコシステム」を紹介
デスティネーション・エコシステムを解説したパネル
JTBがソリューションコンテンツとして提供しているサービス
感動をつなげるサービスとして用意されたVRによるコンテンツ。朝昼夜と移り変わる古宇利島の美しい景色を360度で体感できる
タブレットに表示されるARを使ったサービス
デザインマップと位置情報の組み合わせで観光地の魅力を伝えるStroly

出展2回目のNEXCO東日本はSMHの新しい取り組みを展示

 2回目の出展となるNEXCO東日本(東日本高速道路)では、2018年に続いて「スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)」の取り組みを紹介していた。SMHはICTの活用や機械化の導入により、高速道路の維持管理プロセスの生産性向上を目指すもの。

 新しい取り組みとして紹介されていたのは、「回転式打音診断支援システム(S-SJ)」。従来はトンネルや橋梁などに使われているコンクリート壁の点検に柄の長いハンマーを使って打音をチェックしていたが、動作の手間や騒音の中で音を聞き漏らさないように点検するのは非常にストレスのかかる作業になっていた。これをハンマーから多面体の金属を転がして音をチェックする「コロコロeye」に変更し、ヘルメットに取り付けたステレオマイクで打音を集音してAIで判定するようにシステムを変更。これにより、壁面を棒でなぞるだけで打音を集めることができ、さらに騒音で聞き取りに神経を使う部分をAIが判定してくれることで、格段に作業のストレスは軽減できるとしている。そのほかでは、未来の点検用ヘルメットや壁昇降点検ロボットのコンセプトデザインが展示されていた。

NEXCO東日本では、新しい取り組みとして「回転式打音診断支援システム(S-SJ)」を展示
金属棒の先端に取り付けた金属性の多面体を転がすことにより、ハンマーと同程度の精度で打音チェックできる。ここでは中空になっている部分と正常な部分の音を聞くことができる
ヘルメットに取り付けたマイクで集音してAIが判定。結果はランプの色で分かるようになっている
SMHの未来を表したコンセプトデザイン
ヘルメットにはデジタルコンテンツを表示するホロレンズ、電磁波レーダー、マイクロホンやイヤホンが備わっており、装着した際は空気圧で固定する。各動作に必要な電力はソーラーパネルとバッテリーでまかなう
壁昇降点検ロボットは吸着しながら走行する脚を装備し、回転式打音点検器と高解像度カメラ、電磁波レーダーを使ってコンクリートの状態をチェックする

JapanTaxiはタクシーを使ったデータ収集サービスと活用方法を提案

 タクシー配車アプリの提供や、タブレットによるタクシーのキャッシュレス化、広告配信などを手がけるJapanTaxiは、タクシーの新しい活用方法を提案していた。「JapanTaxi Data Platform」の名称で手がけるのは、タクシーに各種センサーを搭載して、道沿いのデータを収集して活用するものだ。

 公共交通として24時間365日走り回るタクシーは膨大なデータを蓄積することができ、利用客のニーズに合わせて走るタクシーは都内の9割の道を1週間に1度は通る網羅性も兼ね備えているとのこと。ドライブレコーダーで撮影された映像をAIが解析して、通行人の数や服装、周囲の状態を知ることができるほか、ワイパーの状態によるピンポイントな降雨情報、GPSを使った速度や加速度による渋滞状況、環境センサーによる花粉の飛散量など、多種多様なデータを収集できる。収集したデータは、事故や工事情報、空き地や空きテナントの有無、ガソリンスタンドの料金チェック、地図情報の更新、屋外広告データの収集、自動運転用の検証データに活用することが期待されている。

 そのほかでは、タブレットを使ったサービスにもリアルタイム翻訳機能が新しく加わる予定だ。利用客がタブレットに向かって話した言葉がリアルタイムに翻訳されて運転手に伝わるもので、言語が違っても意思の疎通が容易になる。現在は京都市内で実証実験が行なわれているが、2020年の初頭からは本格導入の予定であり、4カ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)に対応する。

JapanTaxiでは、各種センサーを搭載したタクシーを使ったデータ活用サービスを展示
多種多様なセンサーを搭載することで、道沿いの多くのデータを収集できる
ドライブレコーダーで撮影された映像やセンサーの情報をAIで解析しているところ
データの活用例を解説したパネル
タブレットの翻訳機能。マイクに向かって話した言葉がリアルタイム翻訳される
翻訳された内容は運転席の脇に取り付けたタブレットに送信される

生体認証システムや5G関連の展示も多い

 そのほかのブースでは、NECがラグビーワールドカップ2019 日本大会で活用されている顔認証システムや未来の搭乗型ドローンを展示し、注目を集めていた。2020年から導入が開始される5G関連では、KDDI、NTTグループが高速なデータ転送を使ったコンテンツの体験エリアなどを用意。KDDIでは、5G対応スマートフォンの試作機とVRゴーグルより一回りコンパクトにしたスマートグラスによるAR体験、試作機を使った転送テストのデモなどが行なわれていた。NTTグループでは、5G回線を使った新しいライブの楽しみ方を紹介していたり、可搬型の5G基地局を展示していた。

NECのブースに展示されていた顔認証システム。成田空港に2020年春に導入が予定されている新しい搭乗手続き「OneID」にもNECの顔認証システムが採用されている
空飛ぶクルマの試作機として展示されていた搭乗型ドローン
KDDIのブースに用意されていた5G試作機とスマートグラスを使ったAR体験。触れることのできない国宝の硯箱の外観や内部をいろいろな角度から見ることができる
5G試作機を使ったデータ転送テストのデモ。すぐ近くに基地局を設置していたことから理論値の2.2Gbpsに近い速度が出ていた
NTTグループのブースでは、5Gを使った新しいライブの楽しみ方を提案。デュアル画面のスマホを使い、マルチアングルで楽しんだり、視聴者同士がコメントを共有することができる
NTTドコモの可搬型5G基地局。運搬や設置が比較的容易なことから、イベントに合わせてスタジアムやテーマパークなどに5G回線を用意することができる