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「CEATEC JAPAN 2018」レポート。NEXCO東日本が初出展、ICTを活用したメンテナンスを紹介

2018年10月16日~19日 開催

NEXCO東日本のブースではSMHへの取り組みを来場者に紹介していた

 10月16日から19日まで幕張メッセで開催しているCEATEC JAPAN 2018。物理世界から収集した情報をビッグデータ解析やディープラーニングによって分析し、得られたフィードバックを家庭生活の改善や社会問題の解決に役立てる取り組みである「CPS(Cyber Physical System)」や「IoT(Internet of Things)」を活用し、ビジネスの創出と技術や情報交流などをもって経済発展と社会的課題の解決を両立する「超スマート社会(Society 5.0)」の実現を目指す展示会だ。

 近年、インバウンドで成長を続ける観光に関連する企業もこちらの展示会に参加しているので、その様子をお伝えする。

NEXCO東日本はICTを活用したメンテナンスを紹介

 まずは今回が初出展となるNEXCO東日本(東日本高速道路)。第4回定例記者会見で代表取締役社長の小畠徹氏が話していたように(関連記事「NEXCO東日本、定例会見で『平成30年北海道胆振東部地震』の報告や『CEATEC JAPAN 2018』への初出展を発表」)、「スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)」の取り組みを紹介していた。SMHはICTの活用や機械化の導入により、高速道路の維持管理プロセスの生産性向上を目指すものだ。

 モバイルPCを活用した点検支援システムを紹介するコーナーでは、実際に使われている業務用PCを使って概要を説明。高速道路などでは日々の点検やメンテナンスが非常に重要なタスクになっている。その点検現場において従来までは記録書に手書きで記載し、撮影した画像とともに持ち帰って管理事務所でデータを登録していた。

 このシステムがインストールされたPCを使うと、Wi-Fi接続したカメラで撮影した画像を自動で取り込み、変状の形状や長さをタッチペンで記録、点検記録データと画像が関連付けられるので、現場で点検から記録までの作業が完結する仕組みだ。

 展開図などの点検データを登録することで印刷物の持参も不要になる。管理事務所ではその変状データを3Dモデル上に表示できるので、実物に近い状態で確認できるうえに、データサーバーに登録してある過去データと比較することで経年変化の確認も容易になっている。こちらのシステムは2年前から現場で使われているが、スタッフによって習熟度に差異があり、インターフェイスの改良などが今後の課題の一つだと説明員は語っていた。

モバイルPCを活用することで、点検業務の効率化による作業時間の低減、3Dモデルによる変状の正確な位置把握、点検データの比較による経年変化の参照などが容易になる
使われているモバイルPCはパナソニックの「TOUGHBOOK CF-20」

 人が多く集まっていたのは「PRETES」シリーズの紹介ブース。こちらは「Preservation Technical Support」の略で、MR技術(Mixed Reality:複合現実)を活用した保全技術高度化支援ツールになる。その第1弾として開発されたのが「PRETES-e」で、保全業務における専門技術力の強化や技術者の育成支援を目的としたツールだ。内容は既存構造物の2次元図面から仮想の3次元構造物を作り出して表示するもので、HoloLens(ホロレンズ)を着用することで眼前に3D画像が表示される。

 使用例としては橋梁などの可視化がある。一見、コンクリートの塊に見える橋梁もその内部は基礎であったり鉄筋であったり、複雑な構成で成り立っている。PRETES-eを使うと内部の構造を透視したかのように見えるので、構造の基本的な考え方や設計、施工上の特性などを学ぶうえでイメージしやすくなるというわけだ。

多くの人が集まっていたPRETESを紹介するコーナー。複合現実を活用することで、技術者の育成を支援する
頭部に着用するHoloLens。肉眼で見えている景色にレンズ部に投影された3D画像が重なる。展示コーナーではディスプレイ台の内部が浮き出て見えるように設定されていた
このような感じに見えるので、ブースで体験していた人は筆者も含めて驚きの声を上げていた
研修現場において、基礎などを可視化することで理解度を深めてもらう

 ステージでは「次世代RIMSの開発~橋梁編~」や「SMHを支える技術~インフラ管理力の高度化・効率化~」といったプレゼンテーションが行なわれていた。RIMS(Road Maintenance Information Management System:道路保全情報システム)は、点検管理システムや図面画像管理システム、橋梁マネジメントシステムなど、15のデータベースからなる情報システム。

 現在は個別になっているが、次世代RIMSではそのうちの9つのデータベースを1つに統合し、共通APIにすることで一元的に処理することが可能になる。データベースを集約することや様式が統一されることで、必要なデータを迅速かつ容易に取り出すことが可能になる。

ステージでは次世代RIMSの開発やSMHの技術に関するプレゼンテーションが行なわれていた

JTBはさまざまなデジタル技術の活用を紹介

 大手旅行代理店であるJTBでは、展示ブースを3つのコーナーに分けて紹介していた。Living zoneでは、「MY TRAVEL Living」とAmazonのスマートスピーカー「Alexa」による決済サービスをデモンストレーションし、自宅のリビングにいながら旅行予約ができるというものを提案していた。

 MY TRAVEL Livingは、常駐スタッフのいない無人店舗にてTV電話でオペレーターと旅行相談ができるもので、すでにイオンモールいわき小名浜店で6月からサービスを開始している。ブースではノートPCとスピーカーを使い、リビングからコールセンターとやり取りする様子を展示。Alexaを使ったデモンストレーションでは、「JTBおでかけチケット」スキルを話しかけて起動させ、レジャー施設の検索から予約、Amazon Payによる決済までを紹介していた。

JTBのブースでは3つのエリアに分けてデジタル技術を観光業に活用している事例を紹介
MY TRAVEL Livingの説明。イオンモールいわき小名浜店において、すでに無人化店舗が稼働している
自宅リビングを想定してノートPCを使ってデモンストレーションしている様子
Alexaを使ってAmazonでチケットを予約できる

 デジタルマーケティングエリアでは、「エリア アナライザー」を活用したヘルスツーリズムについて紹介していた。エリア アナライザーは、データを活用した地域観光マーケティングを支援するクラウドサービスで、自治体や日本版DMOに導入してもらうことを目的としている。

 地域の顧客(来訪者・見込み来訪者・居住者)に関するさまざまなデータを取得・集計し、分析するための可視化を行ない、具体的な観光商品の開発や改善、プロモーションなどを実施するのに役立つサービスであることを紹介。こちらを使って、健康増進につながる旅行の企画を提案していた。

10月9日に発表されたエリア アナライザーを使って、「医療費削減」「新たな市場創出」「雇用の拡大」による経済成長の一石三鳥の効果ができる分野として期待されているヘルスツーリズムの企画・開発を提案。現在、岡山県玉野市において進んでいるプロジェクトが紹介されていた

 Forest zoneでは、旅の体験価値にフォーカスを当てた展示になっていた。遠隔地操作ロボットによる体験を紹介するコーナーでは、竹芝にいながら小笠原諸島の父島に設置したロボットのセンサを通じて現地体験ができる様子をビデオで紹介。テレイグジスタンス技術を使うことで、視覚と聴覚に加え、触覚を感じとれるようになっており、よりリアルな体験ができるというものだ。

 そのほか、ツーリズムEXPOジャパン2018でも展示されていたスマートフォンにイラストマップを使って現在地を表示できる「Stroly」、VRによる大曲の花火大会の体験会も用意されていた。

テレイグジスタンス技術を活用した遠隔体験の模様をビデオで紹介
Strolyはデザインマップ上に位置情報を表示できるスマホアプリ
大曲の花火大会が体験できるVRコーナーには多くの人が集まっていた

KDDIでは5Gによる高精細なVR体験を紹介

 KDDIでは5G(第5世代移動通信システム)に関するコーナーが数多く用意されていた。5Gでは、高速・大容量に加え、多接続、低遅延(リアルタイム)も実現されることから、さまざまな分野において活用が見込まれている。そのなかの一つが観光業であり、「バーチャル観光案内所」では、12K 360度画像によるVR観光が体験できるようになっていた。従来のモバイル型VR端末では難しかった12KのVR画像を複数人に同時配信するもので、会場では6人分ほどの席が準備されていた。

 映像は日本各地の観光スポットを用意し、取材時は金沢市だった。駅から始まり、眺めのよい山頂から広範囲に景色を楽しめるなど、高精細な360度画像を堪能できた。観光案内のほか、不動産業界における物件案内や施設見学、企業の研修にも活用していきたいとのことだ。

KDDIでは5Gを前面に押し出した展示を行なっていた
12K 360度画像が視聴できるバーチャル観光案内所
世界初であることもうたわれていた
金沢市は金沢駅から始まり、兼六園や市内を一望できる卯辰山までリアルな映像を体験できる