ニュース

NEXCO東日本、「Microsoft HoloLens」などを活用するスマートメンテナンスハイウェイ説明

2018年11月27日 実施

NEXCO東日本がMR技術などを活用したスマートメンテナンスハイウェイの取り組みなどを報告

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は11月27日、東京・霞が関の本社で「平成30年度第6回定例記者会見」を開いた。会見には代表取締役社長の小畠徹氏、取締役兼常務執行役員 管理事業本部長の遠藤元一氏、取締役兼常務執行役員 事業開発本部長の萩原隆一氏が出席し、2020年の本格実用を目指して取り組みを進めている「SMH(スマートメンテナンスハイウェイ)」に関するシステム・ツール開発の状況などについて報告した。

 また、2018年~2019年の年末年始における高速道路の渋滞予測、2018年10月の売上等実績についても発表し、渋滞については2019年1月2日~3日がピークになると見込んでおり、この2日間を避けた高速道路の利用を促している(関連記事「高速道路各社、年末年始(2018年~2019年)の渋滞予測。上り、下りともに1月2日~3日が渋滞のピーク」)。

東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 小畠徹氏(中央)、取締役兼常務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏(左)、取締役兼常務執行役員 事業開発本部長 萩原隆一氏(右)

オープンイノベーションで次世代RIMSの技術発展を目指す

東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 小畠 徹氏

 NEXCO東日本が進めるSMHは、AI、ロボティクスをはじめとするICT(Information and Communications Technology:情報通信技術)を活用することで、高速道路の構造物における「点検・調査」「分析・評価」「補修計画策定」といった維持管理業務プロセスの変革を目指すもの。テクノロジーの活用を通じて意志決定プロセスを標準化することで、業務の品質向上を図るとしている。

SMHのなかで開発が進められている技術、デバイスなど

 具体的には、「点検・調査」のプロセスでは、現地にモバイルPCを持ち込んでデータ参照やその場でのデータ入力を行ない、ウェアラブルカメラで目視できない箇所も含め映像で記録を残す。「分析・評価」においては、点検・調査で得られたデータをもとに、AIによる画像解析で修復すべき箇所を判定するほか、次世代RIMS(Road Infrastructure Monitoring System)によって必要に応じて瞬時にデータ検索する機能や、データの可視化と分析を可能にするBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを実現する。

「点検・調査」のプロセスで用いるモバイルPCとウェアラブルカメラ
収集したデータの検索、可視化、分析などを可能にするBIツール

 そのほかにも、複数の360度カメラを搭載する車両で高速道路の特定区間を撮影して得られた「全周囲道路映像」と、その地形に関する座標データを組み合わせて、現地の状況を映像から容易に把握できるようにする。別途用意した3次元モデルを映像内に自然な見え方で配置し、規制時などにおけるシミュレーションを精度高く行なう仕組みも検討している。

「全周囲道路映像」と座標データを組み合わせた情報をもとに、さまざまな機能を実現可能にする
高速道路付近の構造物などにタグを付加して情報の関連付けができる
構造物の特定箇所の長さ・面積を簡単に確認できる
高速道路上に3Dオブジェクトを自然な見た目で配置し、規制実施時のシミュレーションなどができる

 また、「Microsoft HoloLens」を利用したMR(複合現実)技術を導入し、現実空間に設計データの情報を重ね合わせて表示することで、構造物の内部を可視化するなどして点検・工事作業の支援や技術者の育成につなげる手法も開発を進めているとのこと。

 なお、開発中の次世代RIMSに用いられている基幹技術については、内閣府が進めるSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のもと「橋梁メンテナンス統合データベースシステム」として、すでに山形県、宮城県、仙台市で実用化済み。小畠氏は、この技術を広く活用するべく「オープンイノベーションで発展させることを目的としたコンソーシアムを年度内に設立する準備を進めている」と説明した。

MR技術にはヘッドセットとして「Microsoft HoloLens」を採用
会見場では、デモ用の20分の1サイズの橋梁に対してCADデータを重ねて見られるようになっていた
実際の現場における表示イメージ

渋滞回数は昨年度と同程度。10月売上はガソリン販売が大幅増

 2018年~2019年の年末年始における高速道路の渋滞予測についても発表した。2019年1月2日~3日にかけて渋滞がピークになるため、クルマ移動の際は1月4日~6日などピークを避けた利用を推奨している。20kmを超えると予測される渋滞箇所は、12月30日の関越自動車道(E17)高坂SA(サービスエリア)付近で約20km、1月2日の京葉道路(E14)貝塚IC(インターチェンジ)付近で約20km、同じく1月2日の東北自動車道(E4)久喜IC付近で約40km。12月28日~1月6日の10km以上の予測渋滞発生回数は、2017年度と同程度の46回を見込んでいる。

 2018年10月の同社営業概要も報告。通行台数は約307万台で前年同月比6.2%増、料金収入は約764億円で同6.3%となった。これは、前年の10月に連続で台風が襲来したことによる減少の反動と、2018年6月に開通した外環道(東京外かく環状道路)の千葉区間・三郷南IC~高谷JCT(ジャンクション)間の開通が影響したもの。

 SA/PA(パーキングエリア)における売上高は、飲食・商品販売部門が同2.2%と伸び幅が小さかったものの、ガソリンスタンドが同29%増で売上を押し上げ、約139億6300万円で同10.5%増となった。各油種とも単価が24円ほど上昇し、軽油の販売数量が増加したことが主な要因としている。

 冬季期間のチェーン規制の議論が進められていることについては現在関係機関と協議中。高速道路の規制の実施区間などが確定してから具体的な対応、対策の検討を行なうとし、まだ詳しく話ができる段階にないとした。2025年に開催が決定した大阪万博に関しては、NEXCO東日本管内ではないため直接の影響はないとしながらも、インバウンドの増加による日本全国への波及効果は考えられることから、「どの程度我々のエリアに入るか想定したうえで、(通常の)インバウンドの増加対応として考える」と述べるにとどまった。