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ホットな機内食とデザートに舌鼓。スターフライヤーの国際線、セントレア~台北・桃園線の初便に搭乗してみた

35インチ(約89cm)のシートピッチでゆったり過ごせる3時間強

2018年10月28日就航

スターフライヤーが運航を開始したセントレア(中部国際空港)~台北・桃園国際空港線の初便に搭乗した

 スターフライヤーは10月28日、国際線定期便となるセントレア(中部国際空港)~台北・桃園国際空港線、北九州空港~桃園線に就航した。ダイヤ上も“台北線就航初便”となるセントレア発便の初便に搭乗した。

 今回搭乗したセントレア~桃園線の運航ダイヤは下記のとおりで、セントレア発の発着時刻は曜日によって一部異なる。所要時間はセントレア発が3時間30分、桃園発が2時間40分で、桃園発が1時間ほど短い。

 セントレア路線のダイヤは、朝早めの時間帯にセントレアを出発し、台北にはお昼ごろ到着。帰りは夕方に台北を出発、セントレアに夜に着くものとなっている。到着日の午後は目一杯の時間を台北滞在に使うことができるので、週末旅行の1泊2日程度でも長く滞在できるし、旅の目的次第では日帰りも可能だ。

 ちなみに、名鉄 中部国際空港駅の名古屋方面からの始発到着が6時前後、終電出発は23時台。機内泊をせず、地上の公共交通機関との乗り継ぎも可能という、無理のない旅程を組める便であることもポイントに挙げてよいだろう。初便の搭乗口で行なわれたセレモニーで、スターフライヤー 常務取締役の柴田隆氏は、「台北ライフを一番ゆっくりたっぷり楽しめるフライト」と述べ、このダイヤの優位性をアピールしている(関連記事「ついに就航。スターフライヤーの国際定期便がセントレアから台北・桃園へ」)。

スターフライヤーのセントレア~台北・桃園線(2018年10月28日~2019年3月30日)

7G811便:セントレア(08時30分)発~桃園(11時00分)着、月・水・木・金・土曜運航
7G811便:セントレア(08時25分)発~桃園(10時55分)着、火曜運航
7G811便:セントレア(08時15分)発~桃園(10時45分)着、日曜運航
7G810便:桃園(18時30分)発~セントレア(22時10分)着、毎日運航

 スターフライヤーの国際線の特徴として、運賃が片道を基本としている点が挙げられる。「STAR UNIVERSE(スターユニバース)」「STAR PLANET(スタープラネット)」「STAR COMET(スターコメット)」という3種類の片道運賃を設定し、往復で異なる運賃を組み合わせた場合には、それぞれの運賃やルールが適用される(関連記事「スターフライヤー、セントレア/北九州~台北・桃園線は片道1万円から。機内食は季節ごとに献立の異なる和食」)。

 最も安価なセール運賃である「STAR COMET」でも7日前まで購入でき、発売時には片道1万円からのセールを実施。原稿執筆時点でチェックしてみても、繁忙期を除くと片道1万6000円台の期間が多い。

 一方、サービス面では、預け入れ荷物は30kgまで付き、機内では温かい機内食(ホットミール)も提供される。これらの付随サービスは、別料金で必要に応じて購入するスタイルをとるLCCとの違いになっている。

 ちなみに、スターフライヤーが7月に受領した新機材「JA25MC(登録記号)」は国際線での運航を想定したものとなっており、シートピッチを34インチ(約86.4cm)から35インチ(約89cm)に拡大したほか、各席にUSB電源(5V/2A)やユニバーサルAC電源(110V/60Hz)を装備。機内食を温めるためのオーブンも搭載した(関連記事「スターフライヤー、台湾線就航に備えた新機材『JA25MC』公開。シートピッチ拡大&全席にPC用AC電源装備など」)。

 この機材を、セントレアから桃園、桃園から北九州、北九州から桃園、桃園からセントレアのルートで毎日運航。基本的には1機で運航できる体制となっている。また、同仕様の2機目も仏トゥールーズのエアバス本社で受領済みで、日本へのフェリーフライトを行なっている。

 柴田氏は「国際線でもチャーターとは異なり、定期便では同じクオリティのサービスを継続することが重要。その点でも確実に提供できるサービスから慎重に提供を始めている」としている。機内サービスについては後述するが、限られた時間で機内食とドリンクの提供を実施するために議論が重ねられたという。また、同仕様の機材が2機となることにより、例えばJA25MCが整備に入った場合でも同様のサービスを継続できる体制が整うともいえる。また、既存の国内線機材の一部についてもオーブンを追加するなどの国際線対応を行なう予定だという。

この日のセレモニーでは、「JA25MC」のモデルプレーンが飾られていた

まずはチェックインして搭乗口へ。早朝ならではの待ち時間も

セントレアの国際線では朝一番の出発となる7G811便

 では、実際に搭乗した模様を流れを追って紹介していく。まずはチェックインだ。スターフライヤーはセントレアのチェックインカウンター「I」を使用。5時45分にチェックインカウンターをオープンした。ボーディングパス(搭乗券)はスターフライヤーの機体が描かれた台紙を使っている。

 少し気になったのはこのあと。保安検査場が6時30分まで開かないことだ。早朝ということもあって営業している店舗は極めて少なく(コンビニエンスストアがある程度)、少し時間を持てあましてしまうことになる。

 その意味では、チェックインカウンターのオープン時刻より、保安検査場のオープン時刻を意識して空港を訪れるのもよいかも知れない。スターフライヤーの機材は150席ということもあってか、6時台はチェックインカウンターも大きな混雑は見られなかった。また、保安検査場、出国審査場を通過したあとの免税店などのショップも6時45分に一部ショップが開き、営業するお店が増えて活気が出てくるのは7時ごろから。このぐらいの時間に合わせて訪問するのがベターだろう。

スターフライヤーはチェックインカウンター「I」を使用
7G811便の預け入れ荷物のタグ
ボーディングパスはスターフライヤーの機体デザイン入り
搭乗口では初便を祝う数々の装飾
オープンスポットから搭乗口へと移動する「JA25MC」

 搭乗口では横断幕を持ったスタッフや、記念撮影用のフォトプロップスが用意されるなど、初便ならではのお祝いムード。スタッフは2018年10月28日の日付が入った就航記念Tシャツを着用している。

 オープンスポットに駐機していた機材も、7時少し前にスポットへの移動を開始。関係者や利用者も集まった7時30分ごろからセレモニーが行なわれた。その内容は先述した関連記事でお伝えしているとおりである。

 搭乗時には初便の記念品を乗客に配布。ミニトートバッグに、スーツケースベルト、モデルプレーン、オリジナル風呂敷をセットにした、わりと豪華な印象のプレゼントだ。風呂敷は日本らしさも伝わるアイテムでもある。

搭乗口では株式会社スターフライヤー 常務取締役 柴田隆氏と中部国際空港株式会社 代表取締役社長 友添雅直氏が臨席して就航セレモニーを実施
搭乗開始
忍者姿の「なぞの旅人 フー」もお見送り
全乗客に初便搭乗の記念品を配布
初便搭乗記念品は、スーツケースベルト、モデルプレーン、オリジナル風呂敷のセットをミニトートバッグに入れてプレゼント

 さて、ブロックアウトは8時25分で10分ほどの遅れで出発。従来の機材より1インチ広がったというシートだが、元々シートピッチに余裕があるスターフライヤーの機材だが、それがさらに広がったのは、ただただうれしい。フットレストもあるので、足のむくみなども抑えつつ快適に過ごすことができる。

 また、電力を強化したUSB電源も試してみた。記者が使用しているスマホでは、足下に新設されたUSBポート(5V/2A)を使うと「急速充電中」、従来からあるシートモニター下のUSBポート(5V/0.5A)を使うと「低速充電中」となることを確認。しっかりと電力が強化されていることが分かる。

機内の様子
35インチ(約89cm)のシートピッチは身長約177cmの記者にも、膝と前席の間に拳一つ分以上の余裕を生んでくれる。フットレストもあるので3~4時間のフライトではもったいないぐらい
足下にあるUSB電源とユニバーサルAC電源。前方席側にあるので着脱もしやすい
足下のUSBポートにスマホをつないだ状態。「急速充電中」の表示
従来機と同じ、シートモニター下にあるUSBポートにつなぐと「低速充電中」の表示に
「JA25MC」に搭載された安全のしおり。客室中央部の脱出扉が左右1つずつになっていることや、前後の脱出シュートを2人並列に使っている点などが同機の特徴となっている
離着陸時に、CAがラバトリーの扉に内蔵されたジャンプシートに着席。エアバスの「スペースフレックス」により後方スペースを有効活用したデザインになっている

和食のよさを存分に感じられる機内食とデザート

 離陸後に機長から「定期国際線、再参入の記念すべき日に皆さま方とともに、台湾・台北に飛行できることを光栄に思っている。役職員一同、国際線を成功させるために日々、奮励努力していく」とあいさつがあり、軽い揺れが続いていることのアナウンス。離陸から20分ほどしてシートベルトサインが消え、まずは機内食の提供が始まった。

機内食の準備。オーブンで温めていた機内食を取り出してプレートへ
機内食サービス。
機内食
「お弁当箱」をイメージした容器。黒にスターフライヤーのロゴが入った同社らしいデザイン
お品書き。裏面に北九州路線のメニューが書かれている
機内食提供時にビールも注文可能(無料)
プレートには紙パックの八女茶も乗っている

 スターフライヤーの機内食は、「和」へのこだわりと「お弁当箱」をイメージしたスターフライヤーロゴ入り容器が特徴としてアナウンスされていたもの。日本の和紙と台湾風の赤地を融合したようなお品書きを見ると、セントレア発、北九州発、台北発2路線ですべて異なるメニューとなっていた。

 セントレア発のメニューは以下のようなもの。

・豚肉の唐揚げ黒酢餡かけ
・紫蘇ご飯
・若鶏葱塩焼き
・秋刀魚の蒲焼き
・ういろモナカ
・八女茶

 もちろんオーブンを使って温められている。味わいは機内食らしく濃いめになっているものの、クドさはなくさっぱり食べられる和食のよさを感じられるものだ。特に紫蘇のご飯が、おかずの濃厚な味をうまく中和してくれているように思う。

 さらに印象に残ったのが名古屋の銘菓、大須ういろの「ういろモナカ(桜)」だ。モナカ(最中)とあんこ、ういろが独立してパッケージされていて、それを食べるときに自分で作る。このおかげで、外はモナカのサクサク感、中はあんこのしっとり感、そして、真空パックされたういろの桜風味のすべての調和がとれた一品になっている。

ホットミールの機内食
豚肉の唐揚げ黒酢餡かけ
秋刀魚の蒲焼き
若鶏葱塩焼き
紫蘇ご飯
ういろモナカ
材料が個別にパックされている
ういろモナカの作り方
モナカにあんことういろを乗せ、最後に2枚のモナカで挟んでいただく

 ところで、多くの国際線機内サービスでは、まずドリンクサービス、次いで機内食の提供という流れの航空会社が多いが、スターフライヤーはまず機内食を提供する流れとなっている。これは、(事前予約のベジタリアンメニューを除くと)機内食は選択肢を用意していないことからすぐに全乗客に配布しやすいことが理由にあるという。選択肢の多いドリンクの注文から行なうと、揺れる時間が長くなってしまった場合などに機内食を配布できずにフライトが終わる可能性も高くなってしまうが、機内食をまず提供し、その機内食のプレートに「八女茶」を提供することにしている。ただし、ビールについては機内食と同時にリクエストに応じて提供している。

 そして、機内食のプレートを回収しつつドリンクサービスを実施。ちなみに「お弁当箱」は持ち帰りたくなるデザインではあるのだが、回収されるものなので、(うっかり)カバンなどに入れてしまわないよう注意したい。

 ドリンクはコーヒーや、青森県産アップルジュース「希望の雫」、日本茶、ミネラルウォーターなど。国内線ではタリーズのスターフライヤーオリジナルブレンドを提供しているが、国際線では異なるコーヒーを提供している。

国際線のコーヒーは、国内線のタリーズオリジナルブレンドとは異なるもの。チョコレートを提供する点は変わらず
国内線でも提供している青森県産アップルジュース「希望の雫」

 出発から1時間半もするとドリンクの時間もおおむね終了した。台北までは1時間以上の余裕があり、ここから機内プログラムや読書など、乗客それぞれの時間を過ごすことができる。短いフライトタイムのなかで効率よくサービスが行なわれた印象だ。

「初便ということで乗務させていただいて、かなり光栄な気持ちでフライトに臨んだ」というCA(客室乗務員)の関谷さんは、「思っていた以上にスムーズに提供できた。回収しながらドリンクサービスという点について、客室のなかほどのお客さまに少しお待ちいただいてしまったのが反省点としてあるが、経験を積んでよりスムーズなサービスを目指したい」との感想。「慣れない初就航なので、皆さまに満足いただけたか不安が残るが、これからもスターフライヤーを選んでいただけるように尽力していきたい」と話した。

 ちなみに、スターフライヤーの国際線に乗務するCAは、安全に関わるものや、基本的なサービスの言葉については中国語の勉強をしているという。

「スターフライヤーマン」の機内安全ビデオ。中文字幕はなし
機内安全ビデオに続いて、台湾観光局のプロモーションビデオを上映
機内プログラムと機内誌それぞれに、入出国書類の書き方を記したコンテンツを用意している
動画コンテンツは国内線とはかなりラインアップが異なっている。台湾と日本それぞれの入国手続き紹介コンテンツや、台湾就航記念の特別番組も
機内誌は国内線、国際線で共通
国内線と同じ商品を機内販売。国内線と同じ税込み価格での販売となっている

 そして、飛行機はいよいよ台北へ。着陸前にはアジアのクリエイティブシティガイド「HereNow」の台北版を希望者に配布。着陸後、駐機場の前では放水シャワーの歓迎も行なわれた。

 降機すると、ガラス越しに見える搭乗口で、台北発~北九州行きの初便就航セレモニー。スターフライヤーの台湾での印象について常務取締役の柴田隆氏に尋ねると、「漢字名の『星悦』航空というのがよい印象を持たれている」との調査結果があるという。一方、黒を基調としたデザインについても「派手な色合いが好きな方もいるが、若い世代を中心にシックな色合いとして好まれる方も多い」とのこと。

到着時にガラス越しに見えた台北発便のセレモニー

 台湾で開かれる旅行博などへ積極的に出展し、シートモックアップなどで実際に体験してもらう場を設けることで認知度向上を図ってきた同社。「台湾では日本以上にSNSでの広がりが重要だと考えている」とし、就航を迎え、実際に搭乗したリアルな声の拡散にも期待を寄せている。

 また、スターフライヤーの利用者層は、国内線ではビジネス客の比率が高めである一方、台北線は観光客に多く利用されることを想定。国内線以上に旅行会社からの販売比率が高くなるとの見込みも。フルサービスキャリア、LCCと競合の多い路線ではあるが、「第3の選択肢」として新たな価値を打ち出し、差別化を図っていく方針だ。

7G811便の初便に乗務した4名のCA