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スターフライヤー、台湾線就航に備えた新機材「JA25MC」公開。シートピッチ拡大&全席にPC用AC電源装備など

機内食を温めるオーブンも装備

2018年7月9日 公開

スターフライヤーが国際線就航に備えて、機内装備を大幅に見直した新機材「JA25MC」を導入

 スターフライヤーは、7月10日から運航を開始するエアバス A320-200型機の新機材「JA25MC(登録記号)」を公開した。客室の設備が従来機から大きく変更されているのが特徴の機体となる。10月28日に予定している国際線就航に備えた設備のほか、シートまわりの装備も見直されていることから、国内線においても乗客はその使い勝手の違いを感じることができるだろう。

 今回導入される「JA25MC」は、スターフライヤーにとっては15機目の導入機。現時点で運航する機体は11機となる。6月21日にエアバスの工場がある仏トゥールーズで受領し、6月25日に日本に到着した。これまでに導入したJA05MCからJA24MCまでの14機はすべてリース機だったが、JA25MCは唯一の自社購入機でもある。

 外観はこれまでに導入されたウィングレット付きのエアバス A320-200型機と同じだが、機内は大幅な変更を加えた。先述のとおり、スターフライヤーは10月28日に国内3空港と桃園国際空港(台北)を結ぶ定期国際線就航を予定していることから、それに備えた設備を導入するなどしている。仕様は2015年から検討を進めたという。

 スターフライヤー 代表取締役 社長執行役員 松石禎己氏は「10月から国際線へ再参入を考えているが、これが成功するように」と新しい機内仕様導入の狙いを語る。さらに、今後10月に「JA26MC(予定)」、そののち「JA27MC(予定)」の導入も決まっていることを説明し、「今後、ますます国際線も充実させていただきたいと思っている」と意気込みを示した。

株式会社スターフライヤー 代表取締役 社長執行役員 松石禎己氏

スターフライヤー新機材の特徴

 ここからは「JA25MC」で導入された新たな仕様を、従来との違いを含めながら紹介していく。

 その前提として、JA25MCではエアバスの「スペースフレックス」を採用したことが大きなポイントになっている。これは機内後方の圧力隔壁とギャレーの間で使われていなかったデッドスペースを使い、ラバトリーやギャレーを効率よく配置して、機内空間を広げるものだ。この技術の導入により、ギャレーやラバトリーのレイアウト、客室仕様などに大きな変化が生まれている。

国際線でのホットミール提供のためオーブン設置。後方ギャレーとラバトリーのレイアウト変更

 国際線向けの仕様として、“ホットミール(温かい食事)を提供したいとの方針”のもと、前方に2台、後方に1台のオーブンを搭載した。食材に応じてヒーティングとスチームに対応し、1台で最大48個のミールを温められるもの。

 また、標準サイズのオーブンではなく、48個を温められる大型のオーブンを導入したとしている。これは、エアバス A320型機の限られたギャレースペースで、同時に144個(48個×3台)のミールを温められるようにする目的で、客席数が150席なので、満席に近い状態では2度の温めが必要になる可能性はあるが、平均的な搭乗率の範囲では1度に全乗客のミールを温めることができる計算となる。

 ミールを温めるのに必要な時間は食材などにもよるというが、テストでは大きな肉を使った時間がかかるものでも、10分強で温められる結果だったといい、もし2度の温めが必要になったとしても、全乗客にホットミールを出すのが無理というわけはなさそうだ。

 後方のラバトリーとギャレーは、スペースフレックスの採用によりレイアウトも大きく変わった。具体的には、これまで客室後方の壁に設置していたラバトリーを、機内最後方に2つ並べる形で配置。ここが、従来はデッドスペースになっていた部分で、スペースフレックスの採用で実現したものとなる。このレイアウト変更により、後方の客室とギャレーを隔てる壁(実際には物入れになっている)が薄くなり、客室の空間も広がることになる。

 ラバトリーの扉に乗務員用のジャンプシートが埋め込まれている点も目に留まる。CA(客室乗務員)らがここに座るのは離着陸時や揺れが大きい場合など、乗客がラバトリーを利用できないシチュエーションであることから、こうした“兼用”も実用的となる。

 一方、従来機では最後方部の一面がすべてギャレースペースとなっていたので、そのぶんスペースが減っている格好となるが、後方ギャレーの前方壁側に収納スペースを設けるほか、引き出し式のテーブルを追加することでカバー。収納スペースについては、工夫を凝らして十分なスペースを設けるようにしているという。

機内後方
機内後方のギャレー。左舷側(ポートサイド)の最後方にラバトリーを配置しているため、ギャレーは右舷側(スターボードサイド)側に集中してレイアウトされている
1度に48個のミールを温められるオーブン。機内後方には1台を設置している
引き出し式のテーブルを装備
後方向かって左側(右舷側)のラバトリー
後述のシートまわりだけでなく、ラバトリーもデザインを変更。床面と洗面台を黒を基調としたものにし、黒1色ではなく白い模様を配することで石のような雰囲気になっている。傷が目立ちにくくなる効果もあるという
後方向かって右側(左舷側)のラバトリー。車椅子の乗客が1人で便座に移動できるように折りたたみ式の椅子を設置している
機内前方のギャレー
前方ギャレーには2台のオーブンを装備
L1(左舷最前方)のドア付近に折りたたみ式テーブルを備える
前方のラバトリー。おむつ交換台を備えている

機内デザインの変更

 スターフライヤーではこれまで、座席やシートモニターの仕様を変更したことはあるが、JA25MCでは機内のデザインを大幅に変更した。

 全体デザインとして、これまでグレーの模様が入ったデザインの壁紙を白色とし、座席の黒とのコントラストを際立たせた。また、壁紙は和紙のような表面加工となっており、外国人利用者に日本の航空会社らしい“和”を感じてもらえるようなデザインにした。

 床面もデザインを変更。カーペットはこれまでの黒1色から、白い模様を加えたものにしたほか、通路脇にある避難経路を締めるラインは、従来の黄色からチタングレーへ変更している。このグレーの避難経路ラインは、暗い環境下では黄色く光るようになっている。

 このほか、座席を示すサインや、ラバトリーの空き状況を示すサインにアイコンを用いたユニバーサルなデザインを採用。座席番号を示すサインは、これまで例えば「1A:Windows」といったように文字で説明するものだったが、図版とともに示すことで分かりやすくしている。

機内を前方から。床面の避難経路を示すラインがグレーに変更されている
機内を後方から
和紙のような表面加工を施した白い壁紙に変更
床面は黒1色のものから、模様の入ったものに変更
座席を示すサインはイラストを用いたユニバーサルデザインに
ラバトリーの空き状況もイラストで示す

シートピッチを拡大、客室中央の非常口座席は2列から1列に

 JA25MCの座席数は従来と同じく150席となるが、先述のとおり、スペースフレックスの採用により客室後方とギャレーを隔てる壁を薄くしたことで、客室スペースが拡大している。結果、シートピッチを拡大している。

 従来機のシートピッチは34インチが基本となっており、非常口座席など一部に35インチの座席があったが、35インチをベースとする仕様へ広げた。スペースフレックスによって得られた客室の拡大は約80cmとのことで、これを25列に均等に割り振ったような格好になっているという。

 ただし、バルクヘッド席となる1列目については、従来機よりもやや狭くなっている。これは従来機では広すぎて、機内誌などが入ったポケットに手が届きにくいほどだったため、距離感を調整したという。

 さらに、従来は客室の11列目と12列目が非常口座席となっていたが、これを11列目のみへと削減。非常口は機内前方に左右1カ所ずつ、中央に左右1カ所ずつ(従来機は左右2カ所ずつ)、後方に左右1カ所ずつの計6カ所(従来機は計8カ所)となる。非常口を削減しつつ、“非常時に90秒以内に全乗客が脱出できる”というルールを遵守するため、前方と後方の脱出スライドは同時に2名ずつ脱出できる幅広のスライドを採用している。

 加えて、全席でリクライニングが可能になった。従来機は非常口へのアクセスを阻害しないよう、非常口座席の前列(10列目と11列目)はリクライニングしないようになっていたが、JA25MCは11列目の非常口座席の前列となる10列目の座席も、わずかながらリクライニングするようになっている。

シートピッチが拡大し、全席リクライニング対応。通常席のリクライニング(写真左)と、非常口座席前列のリクライニング(写真中央)、その比較(写真右)
非常口は1列(11列目)のみに
最前列はやや狭くなり、機内誌などを入れるポケットやシートモニターに手が届きやすい距離感にした
テーブルは前方にもスライドする1枚板のタイプ。写真下2枚は12.5インチ液晶のノートPCを置いた様子

3席に3個のPC用AC電源&5V/2AのUSB電源を装備

 座席まわりでの大きな変更点として、ユニバーサルAC電源の配置と数を見直した。これまでは自席の足下、ちょうど膝の後ろあたりにAC電源があり、さらに3席に2個となっていた。これを、前席の後ろ側にして利用しやすくするとともに、3席につき3個、つまり1席あたり1個のAC電源を備えるようにした。

 加えて、ユニバーサルAC電源にUSB電源を併設。従来機ではシートモニターの近くに5V/0.5A(500mA)のUSB充電ポートを備えていたが、新たに足下に設けられたUSB充電ポートは5V/2A出力となっており、より高速に充電できたり、500mAでは充電できないデバイスでも充電できたりする。

 ちなみに、シートモニターは従来の「Type II」と呼ばれるものと同一で、こちらはUSB充電ポートも含めて従来仕様を踏襲しているという。

ユニバーサルAC電源は前方席側に設置するとともに、1席につき1個に増設。USB充電ポートも併設した。USB電源は5V/2Aに対応する。AC電源は110V/60Hzの仕様
シートモニターは従来の「Type II」と同じ仕様

7月10日の羽田便で就航。国際線3路線は2機運用を予定

 今回導入されたJA25MCは、国際線就航を見据えた仕様を盛り込んだ機材となるが、国際線定期便への就航後も国内線で利用することはあるとしている。

 ちなみに、スターフライヤーは10月28日に北九州~桃園線、福岡~桃園線、セントレア(中部)~桃園線の国際線3路線への就航を計画しているが、この3路線の機材繰りについては、ダイヤが未確定のため正確な事実ではないとしたうえで、2機で運用する見込みとしている。つまり、JA25MCとJA26MC(になると見られる次の導入機)で運用する可能性が高いと見られる。ただし、両機が整備に入るなどを想定し、既存機にオーブンを追加するなどの国際線向け設備を導入する可能性は否定しなかった。

 JA25MCは、7月10日の下記の便で就航する。

JA25MCの初便運航予定

SFJ76便:北九州(09時00分)発~羽田(10時35分)着
SFJ77便:羽田(11時15分)発~北九州(12時55分)着

機体外観。カラーリングに変更はない
垂直尾翼も左右で白黒反転している従来機と同じデザイン
コックピット
ウィングレット付きの主翼
ノーズギア
メインギア