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JAL、飛行機に乗せる荷物を取り扱うグラハンの技を競う「第5回 JALグランドハンドリングコンテスト」実施
全国の空港からプロフェッショナル58名が集結
2017年10月31日 12:11
- 2017年10月26日 実施
JAL(日本航空)は10月26日、羽田空港 JALメンテナンスセンター2で「第5回 JALグランドハンドリングコンテスト」を実施した。このコンテストは、貨物の搭載や積み下ろしにかかわる車両の操作技術や規定に基づいた作業手順や安全確認、効率的なハンドリングを競い合うもので、今回で5回目となる。JALグループ便が運航する国内の29空港から精鋭58名が羽田に集結し、プロフェッショナルの熟練した技術を披露した。出場する選手はほぼ男性で占められていたが、成田空港から1名の女性スタッフがULD部門に参加した。
参加空港
羽田、成田、新千歳、中部、伊丹、関西、福岡、沖縄、女満別、釧路、帯広、旭川、函館、秋田、新潟、岡山、広島、松山、徳島、高松、高知、山口宇部、北九州、大分、宮崎、熊本、鹿児島、石垣、宮古(計29空港)
コンテストは「ULD」と「BULK」の2部門で行なわれる
コンテストはトヨタL&F(ロジスティクス&フォークリフト)の「トーイングトラクター」を使った車両操作がメインとなる。このトーイングトラクターは略して「TT」と呼ばれ、空港内で荷物の牽引などに使われており、コンテナを牽引する姿をターミナルからもよく目にする。このトーイングトラクターを使って、「ULD」と「BULK」の2部門で競技が行なわれる。
「ULD」は「Unit Load Device」の略で、貨物、手荷物、郵便物などを航空機に搭降載するために使用するコンテナやパレットのことを指す。今回の大会ではULDコンテナを搭載する大型のパレットドーリーを牽引する。「BULK」はバラ積みのことを指し、手荷物単位で取り扱う。
競技は決められたコースの走行、実際に機体を使った荷物の積み下ろし、積み込みの作業となる。指定コースの移動では、ULD部門はULDコンテナやパレットを載せるパレットドーリーを1台接続して、バックで8の字を走行する。BULK部門はコンテナドーリーを3台連結してコーンが置かれた指定コースを走行する。
この競技、一見すると難易度はそれほど高そうに見えないが、ULD部門の“バック”で走行するのはかなりのスキルが必要。また、BULK部門の3台連結した最後のコンテナには水を満たしたバケツが設置されており、こぼれ具合もしっかりチェックされるので繊細なハンドルさばきとアクセルワークができないと高得点は期待できない。
コース脇では技量審判が鋭く目を光らせており、車両・器材の取り扱い、車両運転、搭載技術、搭載品質、各種確認行為などの項目をチェック。決められた採点方法によって加点方式でスコアを算出して順位を決定する。
ULD部門の競技内容
トーイングトラクターにパレットドーリーを1台連結して、航空機前方貨物室に装着したハイリフトローダーにコンテナ(コンテナに見立てた水を満たしたバケツが固定されている)を迅速かつ丁寧に移送し、搭降載を行なったあとは指定コースを走行する。
BULK部門の競技内容
航空機の後方バラ積み貨物室から、ベルトローダーを使い貨物の取り降ろしを迅速かつ丁寧に行ない、コンテナドーリーを3台連結したトーイングトラクターで指定コースを走行する。
競技を開始するにあたり、同社執行役員でJ-AIR(ジェイエア)の代表取締役社長である大貫哲也氏が参加者を前にしてマイクを持ち、「業務が競技になり日頃の実力を見せてもらうわけですが、ディフェンディングチャンピオンの皆さんも、またチャレンジャーの皆さんも公正に競い合って、互いの実力を認め合う時間にできればと思います。一日頑張っていきましょう!」と激励した。
その後、第4回グランドハンドリングコンテスト、BULK部門で優勝した女満別空港のスタッフからトロフィーを、ULD部門で優勝した成田空港のスタッフから記念品が運営本部に返還された。選手宣誓は成田空港の山﨑風香氏が行ない、競技が開始された。
ULD部門
競技は2人1組のペアで行なわれ、操作する人、確認・補助をする人との連携も重要になってくる。牽引するパレットは315×224cmと大きなものであり、空港において走行するには細心の注意が必要になる。
ハイリフトローダーに荷物を受け渡す際はバックで接続する必要があるので、日頃からバックしながらの操作に選手は慣れているはずだが、そこは競技会。バックしながらの8の字走行はかなりの難題であり、コーンにぶつかったり、切り返しを頻繁にしたりするなど手間取る選手もいた。
BULK部門
BULK部門も2人1組で競技を行なう。まずは飛行機後方の後部貨物室に積み込まれた荷物をコンテナに収納する。貨物室に用意された荷物はちょうどコンテナ1台分にあたり、荷物の大きさの組み合わせをしっかりと考えながら積み込まないとあふれるようになっている。積み下ろしをする人、積み込む人、両方がしっかりと声をかけ、息を合わせながら作業しなければならない。
積み込みが終わると、今度はドーリーを3両連結した状態でのスラローム走行となる。連結車両が多くなると、内輪差、外輪差が大きくなるので注意深く運転することが求められる。曲がり切れるかどうか判断しにくい場合は、もう1人が確認作業をしながら用心深く進む。それでも角度が急なコーナーでは曲がり切れず、コーンを所定の位置からずらして走行するシーンもあった。
さらに一番最後尾のコンテナには水を張ったバケツが置かれており、こぼれ具合もチェックされる。審査員に聞いてみたところ、だいたい2~3cm、多いチームは5cmほどこぼれていたという。アクセルワークやハンドリングのミスで、コーンの足に少しでも乗り上げるとこぼれてしまうそうだ。
ULD部門は成田空港が二連覇、BULK部門は昨年3位の宮古空港が優勝
競技が終わると、表彰式の前に役員審査員として参加したJAL常務執行役員で整備本部長である赤坂祐二氏がマイクを持ち、「仕事柄、世界中の空港で整備状況を見る機会があるのですが、なかには機材を粗雑に扱ったり時間どおりに作業を始めない、終わらないといったシーンも目にします。それと比較すると日本のグランドハンドリングは大変優秀で世界一だと思います。そしてそれが、安心・安全につながっているのではないかと思います。これからもこの世界一の腕を磨きながら守ってもらいたいと強く感じました。お疲れさまでした」とコメントした。
続いて表彰式が行なわれた。結果は次のとおりで、ULD部門は1位が成田空港の宮内勇樹氏と山﨑風香氏。2位が羽田空港の佐藤亮介氏と梅﨑宜匡氏、鹿児島空港の天達力斗氏と藤田至正氏。3位は中部空港の浅野翔太氏と松隈恒太氏が表彰された。成田空港は昨年に続く輝かしい成績で2連覇を達成した。
BULK部門の1位に輝いたのは宮古空港の大見謝恒平氏と伊志嶺健太氏。2位は高知空港の武田哲宜氏と池田知弘氏。3位は徳島空港(TKS)の酒巻祐希氏と丸山英将氏となった。優勝した宮古空港は昨年の3位からついに優勝を果たした。
このほか、広島空港の木村吉伸氏、石原叡作氏が審査員特別賞を受賞した。
閉会にあたってはまず、常務執行役員で安全推進本部長である権藤信武喜氏が前に立ち、「質の高い競技は世界一だと思います。先日保険会社の人と話す機会があったのですが、“日本航空は本当に保険金を支払うことが少ない”と言っていました。もちろん、安全運航もありますが、皆さんの一つ一つの作業がとても丁寧なので飛行機が破損することもないのだと思います。その一つ一つの積み重ねが全体の安全につながってゆくのだと思います。これからも競い合い、楽しみながら技術を高めてもらいたいと思います」と語った。
続いてJAL執行役員で空港本部長である阿部孝博氏が、「日本航空を支えている皆さんのその底力、熱心さは世界一だと改めて確信いたしました。今年で5回目ですが、来年も開催して皆さんのさらなる新しい技量を見せていただきたいと思います。本日学んだことを各自の職場に持ち帰っていただき、グランドハンドリングをさらに高めていただきたいと思います。本日はお疲れさまでした。また来年、この場でお会いしたいと思います」と、来年度の開催も予告して第5回 JALグランドハンドリングコンテストは終了した。
【お詫びと訂正】初出時、ULD部門2位を受賞した鹿児島空港スタッフの氏名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。