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JAL、各地の空港から精鋭63名を集め「第4回 JALグランドハンドリングコンテスト」を実施
貨物を取り扱うプロフェッショナルが日頃の技を競い合う
2016年11月2日 06:00
- 2016年10月27日 実施
JAL(日本航空)は10月27日、羽田空港 JALメンテナンスセンター2で「第4回 JALグランドハンドリングコンテスト」を実施した。このコンテストは、貨物の搭載や積み下ろしにかかわる車両の操作技術や規定に基づいた作業手順、効率的なハンドリングのバランスなどを競い合うというもの。
JALグループが運航する国内空港から精鋭63名が集結し、岡山空港からは女性スタッフも参加。コンテストは10月26~27日の2日間にわたって行なわれたが、本稿では2日目の開会式から閉会式までを紹介する。
参加空港:羽田、成田、新千歳、中部、伊丹、関西、福岡、沖縄、女満別、釧路、帯広、旭川、函館、仙台、新潟、小松、岡山、広島、出雲、松山、高知、徳島、山口宇部、北九州、長崎、大分、宮崎、熊本、鹿児島、奄美、石垣、宮古(計32空港)
コンテストは「TT」と呼ばれる、トヨタL&F(ロジスティクス&フォークリフト)の「トーイングトラクター」を使って行なわれる。トーイングトラクターは空港内で荷物の牽引などに使われているので、ターミナルからもよく目にする車両だ。このトーイングトラクターを使って、「ULD」と「BULK(バルク)」の2部門で競技が行なわれる。
「ULD」は「Unit Load Device」の略で、貨物、手荷物、郵便物などを航空機に搭降載するために使用する器具のことを指し、ここではULD規格のコンテナを用いたものとなる。「BULK」はバラ積みのことを指し、手荷物単位で取り扱う。
競技を開始するにあたり、同社の代表取締役副社長である藤田直志氏が参加者を前にして「日本シリーズよりもこちらの方が熱戦が繰り広げられていると思います。“継続は力なり”という言葉がありますが、最初は凡庸であっても継続することで非凡な才能になります。皆さんが現場で培われて磨かれた技をいかんなく披露し、悔いのないように全力を尽くしてください」と激励した。
その後、第3回グランドハンドリングコンテスト、BULK部門で優勝した中部空港のスタッフからトロフィーを運営本部に返還。熊本空港のスタッフにより「日ごろからの安全作業と基本作業を順守し、グラハン魂にそって正々堂々と競技することを誓います!」と選手宣誓が行なわれ、競技が開始された。
競技は午前と午後に分かれて行なわれ、午前は決められたコースを走行、午後は実際に機体を使った荷物の積み下ろし、積み込みの作業となる。午前の部のコース走行では、ULD部門はULDコンテナやパレットを載せるパレットドーリーを1台接続して、バックで8の字を走行する。BULK部門はコンテナドーリーを3台連結して7の字コースを走行する。
こう表現すると、それほど難しそうではないように感じるが、ULD部門の“バック”でというのが難易度を跳ね上げ、BULK部門の3台連結した最後のコンテナには水を満たしたバケツが設置されており、こぼれ具合もテストするという難題となっている。コース脇にいる技量審判が鋭く目を光らせており、車両・器材の取り扱い、車両運転、搭載技術、搭載品質、各種確認行為などの項目をチェック。決められた採点方法によって加点方式でスコアを算出して順位を決定するとのことだ。
コース走行競技(午前の部)
ULD部門:トーイングトラクターにパレットドーリーを1台連結して後退で8の字コースを走行する
BULK部門:トーイングトラクターにコンテナドーリーを3台連結して7の字コースを走行する
実機ハンドリング競技(午後の部)
ULD部門:航空機の前方貨物室に装着したハイリフトローダーに、コンテナを丁寧かつ迅速に移送し搭降載を行なう(機内へのコンテナ搭載は行なわない)
BULK部門:航空機の後方バラ積み貨物室に、ベルトローダーを使い貨物・手荷物の搭降載を丁寧かつ迅速に行なう(実際に貨物室内へのバラ積みを行なう)
競技は2人一組のペアで行なわれ、操作する人、確認・補助をする人の連携も重要なポイント。サイドミラーで確認できない部分はすかさず降りて確認、誘導する姿が見られた。今回参加したスタッフは、空港内における予選の勝ち残り、もしくは自他推薦によるもので、キャリアも1~23年と幅広い。キャリアのあるスタッフが断然有利なハズだが、そこはコンテスト。緊張のせいか、日ごろの実力を発揮できず、手間取っているチームもあった。
とくに、ULD部門の後退しながら8の字コースを通過するという課題には苦戦するチームが多く、時間切れとなった場面も見られた。一方のBULK部門も3台目のコンテナには水を張ったバケツを積んでいるということもあり、かなりの繊細な操作が要求されていた。そのなかでバケツの水をほとんどこぼさずに運び、高い技量を見せてくれたチームもあった。
午後の部は実機を使った競技で、ボーイング 767-300型機が登場。2015年の第3回までは実機は使われておらず、今回のコンテストからとのことだ。午前と同じく、ULD部門とBULK部門に分かれて競技が行なわれる。
ULD部門は前方右側のハッチから貨物室にあるコンテナを降ろし、トーイングトラクターで指定の場所まで運搬。完了したら積み込む別のコンテナを牽引して、貨物室に積み込むといった内容だ。今回はこちらのコンテナに満水にしたバケツが設置されていた。
BULK部門も荷物の積み下ろしとなっており、機体の後部貨物室に積み込まれた手荷物をコンテナに収納して所定の場所に運搬。その後、別のコンテナの手荷物を機体に積み込むといったものだ。どちらも実際の現場で行なわれる作業そのものであり、参加者全員が気合いの入った表情で競技に臨んでいた。
競技が終わると、表彰式の前に役員審査員として参加した2名が講評を述べた。JAL執行役員でジェイエア代表取締役社長の大貫哲也氏は「この2日間で学んだこと、体験したことを皆さんの空港に持ち帰って、明日からまたすばらしい仕事をしてくれることがJALの次を目指すところにつながります」とコメント。JAL執行役員 東京空港支店長である屋敷和子氏は「荷物の取り扱いに細心の注意を払っている姿に感銘を受けました。どのチームも甲乙つけがたく、審査も苦心しました。どこの空港が優勝してもおかしくありません。2日間お疲れさまでした」と話された。
続いてBULK部門の表彰式が行なわれた。1位に輝いたのは女満別空港の原勇貴氏と須藤大氏。2位は松山空港の田村謙一氏と富安真一郎氏。3位は2チームあり、石垣空港の比嘉長和氏と前盛恵助氏、宮古空港の三井義和氏と久高将直氏が選ばれた。
ULD部門は1位が成田空港の成田浩正氏と岡野翔平氏。2位がセントレア(中部空港)の後藤邦隆氏と奥野琢稀氏。3位は熊本空港の田中睦之氏と江藤剛氏となった。
このほか、BULK部門の北九州空港の梶原寛貴氏、船津大貴氏、ULD部門の伊丹空港の今井健太氏、白岩東人氏が審査員特別賞を受賞した。
閉会式では、JAL執行役員 空港本部長である阿部孝博氏が「空港で安全をしっかり守る、そして後輩たちを育てていく、そういった大切な仕事が空港現場にはあります。今回も皆さんのプロフェッショナルな技量を見て安心しましたし、敬意を表わしたいと思います。2日間お疲れさまでした」と語り、「第5回のグランドハンドリングコンテストも開催します。それまで英気を養い、研鑽を積んでおいてください」と次回も開催する旨を発表して第4回JALグランドハンドリングコンテストの幕を閉じた。