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JAL、VRによる航空機牽引訓練シミュレータを公開。ボーイング 747型機やエアバス A380型機も再現可能
2019年4月17日 17:27
- 2019年4月17日 公開
JAL(日本航空)グループで国内主要空港のグランドハンドリング業務を行なうJALグランドサービスと、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)/MR(複合現実)技術によるソリューションを提供するコミュニケーション・プランニングは、VRを使った航空機牽引訓練用シミュレータの導入を4月8日に発表した。
これを受けて4月17日、羽田空港においてVRシミュレータのデモンストレーションを行なった。
雨や雪、夜間などのシチュエーションも設定できるため、あらゆる経験を積むことができる
JALグランドサービス 安全品質部 部長の鈴木誠二氏が、VRシミュレータ導入の背景を説明した。トーイングカーを使い航空機の牽引を行なえる資格を得るには、通常3.5か月から4か月ほどの研修期間が必要で、毎年全国で20名強が資格を取得しているという。
航空旅客需要の拡大により、有資格者の育成が課題だが、牽引訓練を行なうには時間や場所、使用機材などの制約がある。そこで、実機がなくても臨場感のある環境で訓練できるVRシミュレータの導入に至った。
このVRシミュレータのメリットはコンパクトであること、VRの利点である360度の視界を再現することで、「覗き込む」「振り返る」といった動作が行なえること、雨や雪、夜間などのシチュエーションも設定できるため、あらゆる経験を積むことができることにあるそう。
また、VRゴーグル内の映像を外部ディスプレイに出力して共有する際、訓練者の視点がどこに集中しているかがポインタで明示されるため、周囲の先輩が状況に合わせて注目するべきポイントをアドバイスできることも大きいと語った。
VRシミュレータは導入したばかりのため、当面は訓練者の練習用という位置付けであり、実機を使った講習課程の内容・時間を変更する予定はなく、今後の効果を観察しつつ検討していきたいとした。
汎用機器によって30~40万円ほどの予算で1台分を導入可能
コミュニケーション・プランニング 執行役員の高見昌和氏は、VRシミュレータについて説明した。VRシミュレータの最大のポイントは、VRゲーム・シミュレーションが可能な性能を持つPC、コントローラ、VRゴーグルセットがあれば、どこでも訓練環境を構築できるコンパクトさと携帯性にあるという。
また、VRシステムは専用機を使うため高価になりがちだが、このシステムは汎用機器で成立しており、30~40万円ほどの予算で1台分を導入できる。4月現在ではノートPCタイプを3台、デスクトップPCタイプを2台、羽田と成田に導入済みとのことだ。
VRシミュレータではプッシュバックとトーイングの訓練を行なうことができ、機材はボーイング 777-300/777-300ER/777-200/787-8/767-300/737-800/747型機、エアバス A380/350/A320から、明るさは昼/夜から、天候は晴れ/雨/強風/雷から選ぶことができる。また、「羽田空港の特徴的なスポットから厳選した」とのことで、SPOT3/SPOT12/SPOT17/SPOT24の4種類が用意されており、これは今後各空港に合わせて種類を増やしていくことが可能だそう。
デモンストレーションを行なったスタッフに話を聞くと、実際には機材の大きさ・重量によって操舵感、ハンドルやアクセルの重さ感などのフィードバックがあり、そこまでは再現できていないものの、視界に見える挙動の再現度は高く、よい訓練になると思うとのことだった。