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観光、経済両面での交流拡大を狙う1000名の「日インドネシア文化経済観光交流団」を11月に派遣

2016年9月16日 発表

 日本経済団体連合会(経団連)、日本商工会議所、日本貿易会、日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)、日本観光振興協会、日本貿易振興機構(JETRO)、日本政府観光局(JNTO)で組織される、日インドネシア文化経済観交流団実行委員会は9月16日、日本とインドネシアの相互交流促進を目的とした「日インドネシア文化経済観光交流団」を、11月にジャカルタへ派遣することを発表した。

 日インドネシア文化経済観光交流団は、元内閣総理大臣で日本インドネシア協会会長の福田康夫氏、自由民主党総務会長、衆議院議員で日本・インドネシア友好議員連盟会長の二階俊博氏をはじめ、国会議員、自治体や産業界、観光業界関係者の参加を募り、1000名を派遣する。

 インドネシア政府は6月12日に、観光目的でインドネシアを訪問する日本人に対するビザ(査証)免除プログラムを導入。これを機に両国の相互交流を一層促進させることが狙い。

 2015年5月には政府、観光関連団体/企業など3000名以上から成る「日中観光文化交流団」が北京を訪れているが、これと同様に二階俊博氏の発案でインドネシアへの交流団派遣が決まったという。

 交流団はインドネシアにおいて、インドネシア日本友好協会主催によるインドネシアの要人も出席するレセプションなどに参加。11月20日~22日にはジャカルタのショッピングモールにおいてJNTO主催による日本の観光情報発信や訪日旅行販売を行なう「ジャパン・トラベル・フェア」を実施するほか、11月23日には訪日旅行の商談会や観光交流拡大シンポジウムなどが開かれる。

 交流団派遣に関する記者会見には、日本・インドネシア友好議員連盟会長の二階俊博氏、日本経団連 日本・インドネシア経済委員会 委員長の大八木成男氏、JATA会長の田川博己氏、インドネシア共和国特命全権大使のユスロン・イザ・マヘンドラ氏、インドネシア日本友好協会 理事長で前インドネシア商業大臣のラフマット・ゴーベル氏が出席。

【お詫びと訂正】初出時、日中観光文化交流団の訪問先に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

日本・インドネシア友好議員連盟会長、自由民主党総務会長、衆議院議員 二階俊博氏

 会見の冒頭で挨拶した二階氏は「人のご縁というのは不思議だなぁだと思う。ここに参列のご両人(大八木氏と田川氏)は大学の同級生で、しょっちゅう意見交換をしている間柄だと伺った。私とゴーベル前大臣は大学の同窓生。そういう関係でスタートを切れる」と披露。「インドネシアと日本は長年にわたる外交経済、文化、人的交流などさまざまな部分で友好関係を築いてきた。我が国とインドネシアは一口で表わすと心と心で結ばれた友人だとお互いに考えている。自由や民主主義など基本的な価値観を有する大切なパートナーと認識して交流を続けていきたい」と交流団派遣による友好関係の強化に期待。

 交流団の派遣について「きっかけは相互ビザ免除を祝福するため。免除が成功したら旅行団の交流をやろうと話しており、まず日本は2014年12月から、インドネシアは今年2015年6月に免除となり、相互でのビザ免除が実現した。ビザ免除は簡単なようで、国と国との間に信頼がなければ成立しない。今回、これが成立したことは今後のインドネシアと日本の交流の、大きな第一歩。このことを日本の国民に周知徹底するとともに、インドネシアの人にもおそらく1000人規模で交流団が行くのは初めてのことだと思っているので成功させたい」と述べた。

 後の質疑応答では1000名という訪問団の意義に対して問われ、「我々が押しつけるのではなく、1000名近い人々がどういう意義があるかを考え、それぞれが勉強していただくことが大事。このような計画は過去に何回もやってきたが、行ってきた人は『大成功』だったと言う。(5月に)中国へ行ってきた人は『歴史の曲がり角に立ったような思いだ』と何人もの人が話している。この人達はこんな難しいことを考えながらツアーを楽しんでいたのかと思った。何人かの国会議員はちょっと旅行して帰ってきて、旅行日記のようなものをパンフレットにしているが、それはそれで結構だと思う。また、科学者は科学者、あるいは経済界の人は経済界の人でそれぞれ行く。広く多くの国民に波及効果をもたらすためには、多くの皆さんに参加していただくことが大事。1000名が訪問することで、必ずインドネシア全土にこのことが広がる。誰が行ったかよりも効果がある。今度行ったから何かが起こるというような単純なことではないが、必ず成果を得て帰ってくることができるということは過去の経験から確信している。こんなに早くからツアーの計画を始めたことはなかったし、こんな有力な両名(大八木氏、田川氏)に参加いただき、責任者となって先頭を切っていただくというようなことが光栄であると同時に、このツアーが成功する感じを受けている」とした。

日本経済団体連合会 日本・インドネシア経済委員会 委員長 大八木成男氏

 経団連の大八木氏とJATAの田川氏は、経済と観光のそれぞれの立場で共同委員長という形で実行委員会を運営するという。

 その大八木氏は「インドネシアは豊富な天然資源、2億5000万人の人的資源に恵まれており、ASEANでも中核の国として人口ではASEANの40%、経済規模でも38%という規模なので、消費市場として注目に値する。また最近では、たくさんの日本の製造業が進出しており、サプライチェーンの拠点として重要な位置付けにある。2015年末にはASEAN全体が共同体としてまとまり、その中核国となる。アジアの戦略的な枢軸国として、大変重要な国である」と経済界からの視点での印象を述べた。

 そのインドネシアとの取り組みついては、「3月にジョコ・ウィドド大統領が来日、経団連、日本商工会議所とともに歓迎昼食会を開催して意見交換したほか、4月には経団連の榊原定征会長を団長としてハイレベルの経済ミッションを実施している。その段階で、貿易促進、技術や教育など多面的テーマについて話をしている。また、大統領からも、日本にはいわゆる原料調達型ではなくて輸出志向の投資やインフラプロジェクトについて強い期待を持たれている

 今回の交流団では経済関係のプログラムとしてJETRO主催の経済連携促進セミナーが行なわれる。インドネシア内閣が改造後なので、経済関係での協力の方向性や、両国の官民が共同で進めるプロジェクトの共通認識を持っていきたい。オール経済界として参加を企業に呼びかける」と交流団をきっかけとした経済連携の強化に期待した。

日本旅行業協会 会長 田川博己氏

 続いて挨拶したJATA会長の田川氏は、5月の日中観光文化交流団においても委員長を務めたが、「中国は観光主体で団の編成を行なったが、今回は大八木委員長と連携し、経済と観光の両輪で団を編成したい」と相違点を紹介。「日本からインドネシアへは2014年に48万人が訪れているが、半分が観光客でバリ島に集中。残りの半分はビジネス目的で、主にジャカルタや各地の工場、施設を訪問している」と理由を説明した。

 観光の視点では「6月12日に観光ビザの免除プログラムが行なわれ、インドネシア政府は、現在48万人で5位となっている日本からの訪問客を100万人にすべく、日本に向けた広報宣伝活動を強化する準備を進めている。旅行業界としてもこの機会に、バリ島はもちろん、インドネシアの新しい観光地、素材を発掘して、日本のお客様に紹介したい」と意欲的。

 さらに、質疑応答においては「インドネシア中央部の観光の素材がうまく見つかっていない。交流団の訪問がそのようなものを見つけるきっかけになればと思っている。観光地を見に行くというよりも、その土地の生活や文化を見るのが重要で、今の日本人の市場にもあってると思う。そういう素材探しを行なって、将来的に48万人から100万人という数字が見えてくるのではないか。観光とは時間がかかるもの。短時間で何かするというよりも、じっくりと時間を使ってやっていきたい」とインドネシアの観光に対して長期的に取り組む姿勢も見せた。

 インバウンドの観点では、「ほかのアジア諸国同様に日本への観光客は急速に増えている。インドネシアは富裕層、中間層が拡大し、2億5000万人の人口を抱える親日の国。2014年12月に観光目的のビザ免除を始めたのを契機に日本旅行のブームが起きている。2014年は約16万人が訪れ、2015年も32%増の状態で推移している。そのような背景で、交流団では観光交流拡大シンポジウムを11月23日に行ない、双方向の交流拡大に向けた意見交換を行なう予定。また、JNTO主催で日本各地を紹介してツアーを販売する『ジャパン・トラベル・フェア』をショッピングモールを使って開催する。さらに日本側の自治体や観光関係者と、現地の旅行会社との商談会も実施する。幅広いツーリズム関係者に参加を呼びかけており、今回のイベントが日本とインドネシアの双方向の交流拡大の契機になるよう努めていきたい」と述べた。

インドネシア共和国特命全権大使 ユスロン・イザ・マヘンドラ氏

 マヘンドラ氏は「ビザ免除をしたお祝いのために1000名の日本人をインドネシアへ連れて行くという計画に対して喜んでいる。もちろん成功のためにサポートする。1000名の日本人がインドネシアを訪問することは、インパクトが大きいと思っている。旅行だけでなく、日本の国会議員とインドネシアの国会議員が会うことができて、そこからいろんなことができるのではないか。企業も同じではないかと思う」と期待を述べた。

 さらに「インドネシアの人口は2億5000万人、世界の4番目の人口。今年の終わり頃にASEAN統合も行なわれるので、インドネシア、ASEANは大きな市場になるのではないかと思っている。日本にとっては、中東から日本へ原油を運ぶのにマラッカ海峡、スンダ海峡などインドネシアを通らなければならない」と日本にとってのインドネシアの重要性も強調。

 結びには「もう1つの事実として国の長さを教えたい。インドネシアの東西の長さは6400km以上で、これは東京からジャカルタよりも遠い。よく冗談で『日本はそれほど遠くないです』と言う。国の端の方がもっと遠いから」と両国の距離について披露し、交流団の成功のためのサポートを改めて誓った。

インドネシア日本友好協会 理事長 ラフマット・ゴーベル氏

 ゴーベル氏はまず、「私の先生でもあり、大先輩である二階さんにはインドネシアの若い世代を代表して、今回の計画に感謝を申し上げたい」と謝意を表明。

 続いて、日本とインドネシアの外交関係が57年間に及んでいることに触れ、「両国の関係はダイヤモンドのように研磨されてきたので、この先、その輝きを増すように尽力していきたい。グローバル化の時代ではあるが、日本とインドネシアの関係はこの先50年、57年と研磨し続けて、より高価なダイヤモンドができるのではないかと思う。インドネシアと日本には文化の面でも似たところがある。文化の関係を強化することで、政治や経済の分野でも関係を強化できると考えている。基本には、日本とインドネシアとの心と心の関係があるからだ」と、両国間の親密さを強調した。

手を取って記念撮影する(左から)インドネシア日本友好協会 理事長 ラフマット・ゴーベル氏、インドネシア共和国特命全権大使 ユスロン・イザ・マヘンドラ氏、日本・インドネシア友好議員連盟会長 二階俊博氏、日本経済団体連合会 日本・インドネシア経済委員会 委員長 大八木成男氏、日本旅行業協会会長 田川博己氏

(編集部:多和田新也)