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日本旅行業協会、訪仏観光の回復に向けてパリの安全確認を実施
定例会見より
(2016/2/1 18:57)
- 2016年1月21日 開催
JATA(日本旅行業協会)は、日本からの訪仏観光の回復に向けて、パリの現状を官民合同で視察する「パリミッション」を1月15日~16日に実施。その結果について1月21日の定例記者会見で報告を行なった。
2015年11月13日に発生したパリ同時多発テロ事件により、日本からの訪仏観光は低迷状態にある。フランスへのツアー予約は、同協会が把握しているだけでも約2万8000人のキャンセルとなっており、4月~5月にかけてのオンシーズンでも予約率は50%台と低迷している。低迷の理由は、テロ事件を受けての安全上の理由が大きい。これを回復させるために、パリの安全対策の確認と、回復のためのプロモーション施策でフランス側との協力体制の構築のために行なわれたのが今回のパリミッションである。
パリミッションの参加者は、団長として観光庁審議官 古澤ゆり氏、副団長は、JATA 副会長 菊間潤吾氏ほか、ジャルパック 執行役員 海外企画商品事業本部長 飯島伸二氏、KNT-CTホールディングス 執行役員 池畑孝治氏、ANA(全日本空輸)上席執行役員 稲田健也氏、JTBワールドバケーションズ 代表取締役社長 井上聡氏、JATA 理事・事務局長 越智良典氏、JNTO(日本政府観光局)総括理事 河田守弘氏ら13名となった。訪問先は以下のとおり。
1.同時多発テロで多くの犠牲者を出したバタクラン劇場前広場で献花
2.フランス外務・国際開発省を訪問
3.パリ警視庁を訪問
4.関係者による日仏意見交換会
5.記者会見
6.パリ市内の視察
フランス外務・国際開発省では、ピエール官房長と会談。ピエール氏は日本へのメッセージとして「警戒を厳しくし、万全の体制を敷いている点や生活や観光がすでに正常化しているのを見てほしい。安全を含めたサービスレベルの基準が高い日本の観光客に戻ってきてほしい。この機会に有名な観光地以外で安全で魅力的な地方の観光促進、自転車による観光、スローツーリズム、夏山を楽しむ、生活をじっくり見るなど新しい観光にも取り組んでほしい」とコメントしたとのこと。
パリ警視庁では、緊急オペレーションセンターを訪問。ラトロン警視総監官房長らと会談。観光客の安全対策を含めた治安維持として、警察とフランス軍を1月は4000名をパリ首都圏に配備。テロ対策として、3000万ユーロの予算を投じている。これにより、エッフェル塔やノートルダム寺院など主要な観光施設や空港、空港からの交通機関などに警備員を配置し、監視カメラも設置している。また、現在も発令されている「非常事態宣言」に関しては、リスクを示すインジケータではなく、知事に捜査権を与えるなど、テロ対策の特別な手段を可能にするものであるとのことで、“「非常事態宣言」が出されているからといって、パリが危険なのではない”と強調した。
日本を含むアジア人の安全対策として、巡回する警察官が16カ国語の会話ができる翻訳ツールを携行するほか、東洋語学院と連携して日本語を話せる学生を巡回に同行させる、犯罪に遭ってしまった場合に、このようにコミュニケーションを取れる巡回中の警官に被害届を出せるようにするなどの対策を実施しているという。また、パトロールの強化により、2015年のパリにおける暴行・窃盗やすりなどの犯罪の発生は年間1000件減少。日本人の被害も2447名から1911名に減少している。さらに、パリ警視庁では、軽犯罪防止のために日本語のパンフレット「パリ ガイド 安全な滞在のために」を制作し、Webサイトで公開している。
日仏意見交換会では、JATA 副会長 菊間潤吾氏が訪仏観光の現状について説明したほか、パリの観光施設の関係者が会し、意見が述べられた。そのなかで、パリ観光局 ルフェイブル局長は「日本は歴史的にも、観光客の人数的にも大切な存在。質の高いサービスを求める安全に敏感な顧客である」とし、訪仏観光の回復に向けて安全確保と情報提供に取り組むとコメント。また、ギャラリー・ラファイエットのアルノ日本担当は「日本人は施設にとってのベンチマーク的な存在である。洗練された日本人を引きつけるために専門スタッフを用意してチャレンジしていきたい」と述べている。ほかにも、レイルフランスやセーヌ川クルーズの「バトーパリジャン」、ルーブル美術館などの担当者が警備の強化と日本語を話せるスタッフの配置など、日本からの観光客の受け入れ体制についてコメントしたとのこと。
発表を行なった、JATA 理事・事務局長 越智良典氏は次のように述べた「今回のパリのような観光回復を目的としたミッションは、過去にもアメリカ同時多発テロ事件の後に観光が落ち込んだ際にも実施いたしました。ただ、今回は初めてJNTOの方もご参加いただいております。これは、過去にJNTOとフランスの観光開発機構が双方向でプロモーションを行なった経緯があるため、今回も同様のことができないかという、双方向援助の実施を検討するものです。このような実施は、海外観光産業に造詣が深い観光庁 田村明比古長官の指導力によるところも大きいです。訪問先の各所では、フランス側の訪問団に対する期待を感じることができました。
今回のミッションの目的は、安全の確認とプロモーションの道筋をつけるという2つです。警備体制など現状はかなり細かく話を聞くことができました。そのなかで、観光客に対する安全にはかなり気を遣っていると実感しました。パリ市内で日本の観光客が訪れるような場所はすべて警官の監視下にあるそうです。パリには非常事態宣言が出されていますが、『これは安全を担保するものであって、危険だから出されているわけではない。非常事態宣言を観光実施判断材料にしないでほしい』とフランス側より話がありました。
私もパリ市内を見てきましたが、主要な百貨店や博物館、ホテルは入口に警備ゲートができていて、手荷物検査しないと入れない状況でした。街の主要な場所には武装した警官が立っていますが、街の雰囲気に溶け込むように配慮しているようです。パリの観光名所は賑わっており、人通りは完全に戻っているようです。
フランスにとって日本人はフランスを理解して地方にも訪れる質の高いツーリストという認識があるようです。日本人は安全に対して敏感なベンチマークになる存在とのことで、日本人の観光客が戻ってくれば、世界に対して安全であるとアピールできるそうです」。
JATAでは、訪仏観光の回復に向けて、2月に旅行業界向けの「フランスリカバリーセミナー(仮称)」と4月~5月に一般向けの「フランス応援フェア」、9月に開催される「ツーリズムEXPOジャパン2016」で「大フランス展(仮称)」を開催する予定。さらに、同協会の会員向けに訪仏誘客のためのロゴを作成して展開していくとのこと。