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観光庁、2015年版の観光白書を公開
2014年の訪日外国人旅行者数は前年度比29.4%増の1341万人
(2015/6/10 17:25)
- 2015年6月9日 発表
日本国政府 国土交通省外局の観光庁は6月9日、「平成26年度観光の状況」および「平成27年度観光施策」、いわゆる「観光白書」の2015年版を発表した。
これによると、日本人の海外旅行者数は前年度3.3%減の1690万人と2年連続で減少。円安による、現地でのショッピングも含めた旅行代金の上昇などを要因に挙げている。
2014年の訪日外国人旅行者数は前年比29.4%の1341万人となり、この2年間で500万人の増加となった。最も多いのは台湾からの訪日で、構成比21.1%となる283万人。以下、韓国(276万人)、中国(241万人)、香港(93万人)、タイ(56万人)と続き、アジア全体で79.1%を占める1061万人が訪れた。このほか、北米からも100万人超、欧州主要3カ国(英仏独)も50万人を超えた。
国内の地域別に見ると、北海道/東北/北陸信越/近畿/四国/沖縄は台湾からの宿泊客が多く、中国/九州は韓国、関東/中部は中国からの宿泊客が多い。2011年から2014年にかけての外国人のべ宿泊者数の伸び率は、すべての地方で増加。なかでも沖縄は60.4%と高い増加率を示している。
訪日外国人の旅行消費額は、前年比約4割増の2兆278億円。中国が構成比27.5%の5583億円と、4分の1以上を占める。1人あたりの費目別支出額がもっとも高いのはベトナム人で、企業の研修で訪日する人数が多いことによる。買い物代はショッピング目的の旅客が多い中国人がもっとも高い12万7443円。滞在期間が長いオーストラリア人が宿泊料金や交通費の支出が高い。訪日動機としては、アジア人はショッピングの割合が高く、欧米人は日本の歴史や伝統文化の体験を挙げる割合が多くなっている。
インバウンド消費が近年急速に拡大している理由としては、白書では、GDPの増加が大きいアジア人を中心にした経済成長による個人所得の上昇、日本製品の品質に対する根強い信頼感、円安や免税対象品目拡大などによる高級品を中心とした割安感の拡大、ショッピングをテーマにした訪日プロモーションの実施、を挙げている。
宿泊の状況については、のべ宿泊者数は4億7232万人泊と、前年比1.4%の増加となった。日本人ののべ宿泊者数は前年比1.1%減の4億2750万人となる一方、外国人ののべ宿泊者数が4482万人泊と前年比で33.8%増加しており、日本人宿泊者数の減少を、外国人宿泊者数で補った。
宿泊施設の客室稼働率は、2大都市部で上昇しており、2011年には東京都で68%、大阪府で68.2%だったものが、2014年には東京都が81.5%、大阪府は81.4%といずれも80%を超える水準となった。速報値による客室稼働率は、以下、京都府が71%、千葉県が67.4%、愛知県が67.2%、福岡県が66.4%、神奈川県が65.3%、埼玉県が65.0%と続き、都市部を中心に65%を超えている。一方、47都道府県の標準偏差は2011年の7.7%から2014年は10.2%に拡大しており、地域ごとのばらつきが大きくなっている。
2015年度に行なう予定の施策としては、
・広域観光周遊ルートの形成などによる地方への誘客や、航空路線の新規就航・増便に対するインセンティブ付与などを含めた色とりどりの魅力を持つ日本の発信と地方への誘客
・体験型訪日ツアー商品充実などによる欧米からの観光客取り込み
・日本政府観光局(JNTO)が訪日プロモーション主体となっての現地における訪日プロモーション基盤の強化
・クールジャパン機構や日本貿易振興機構(JETRO)とJNTOとの連携を強化するなどオールジャパン体制による連携の強化
・2国間関係の強化や国際機関への協力などインバウンド・アウトバウンド双方向での交流促進
・ショッピングツーリズムや地方の農林水産物・食品の販売促進、滞在期間長期化を目的とした『訪日外国人による観光消費拡大・地域活性化』プログラム
・日本旅行業協会(JATA)によるインバウンドビジネスに参入しようとする事業者向けセミナーを実施する幅広い産業のインバウンドビジネスへの参入促進
・観光産業における人材育成や日本旅行業協会(JATA)によるツアーオペレーター認証制度の周知を行なう観光産業の活性化・生産性向上に向けた人材育成等
・観光地域づくりを担う主体の形成・支援、観光地域のブランド化など、道の駅を主体とした地域観光振興などを図る来訪者が地域の魅力を体感し、再び訪れたくなる観光地域づくり
・景観に配慮した道路整備を行なうなどの魅力ある空間形成や、美しい自然を活かした地域の活性化、スノーリゾート、マリンレジャービジネス創出、奄美・沖縄地域の観光産業振興など世界に通用する地域資源の磨き上げ
・日本食文化、地域食材の情報発信を軸とした豊かな農山漁村、日本食・食文化の魅力
・被災地における旅行需要喚起など観光振興による被災地の復興支援
・関空や中部国際空港における新LCCターミナルや、高速バスのフリーパス普及拡充などLCC・高速バスの持続的な成長に向けた取り組み
・全国クルーズ活性化会議と連携した情報発信や、港湾のターミナル機能強化など日本の魅力を活かした船旅の活性化
・モデルコース設定や多言語ドライブマップの作成促進によるレンタカーによるドライブ観光の活性化
・「ななつ星 in 九州」に代表されるような、地方における特色あるクルーズトレインの開発や旅行商品の造成を促進する鉄道の旅の魅力向上
・個人旅行者の需要・関心の多様化を踏まえた、新たな旅行需要掘り起こしを図るテーマ別観光に取り組む地域のネットワーク化による新たな旅行需要の掘り起こし
・首都圏を中心に実施していた「若旅★授業」の全国展開や休暇取得の促進など国民の旅行進行に向けた意識情勢・環境整備
といった項目が挙げられている。
(図出典:観光庁「平成27年版観光白書について(概要版)」