ニュース

ANA、隈研吾氏をデザイン監修に迎え、新千歳空港のANA国内線ラウンジをANA SUITE LOUNGEへリニューアル

3月15日工事開始、福岡/伊丹/那覇空港も計画中

2016年2月21日 発表

ANAは建築家の隈研吾氏(左)をデザイン監修に迎え、新千歳空港のANA国内線ラウンジを9月にリニューアルオープンする

 ANA(全日本空輸)は2月21日、新千歳空港のANA国内線ラウンジを9月にリニューアルオープンすること、そのデザインを建築家の隈研吾氏が監修することを発表した。工事は3月15日から始まり、9月の初旬か遅くとも中頃にはオープンする見込みだという。

 工事期間中はANAラウンジが閉鎖されるので、その対応についてはWebサイトで告知する。

 このリニューアルオープンに合わせて、ラウンジの面積をこれまでの約2倍に拡大、国内線プレミアムメンバー向け最上級ラウンジ「ANA SUITE LOUNGE」を新設、車いすの利用客に配慮したユニバーサルデザインを導入する。

 東京・日本橋にあるANAワンダーラウンジでは隈研吾氏と、ANAの代表取締役社長である篠辺修氏が出席して、新千歳空港のANA国内線ラウンジリニューアルについて、説明会が開かれた。

隈研吾氏をデザイン監修に迎え、ANA国内線ラウンジを新千歳を皮切りに、福岡/伊丹/那覇とリニューアル

全日本空輸株式会社 代表取締役社長 篠辺修氏

 会の冒頭、篠辺修社長からは、羽田空港の国内線出発カウンターのユニバーサルデザインへのリニューアルの思想を継続しつつ、伝統的な日本の美と先進性を融合した未来のラウンジを、ラウンジでの過ごし方まで含めた提案ができないかと考えていたときに、隈研吾氏との会食の機会を得て、このマッチングが実現したと経緯を説明。

 隈研吾氏は仕事柄世界中を飛び回り、さまざまな飛行機に乗り、さまざまな空港を訪れている経験からも、デザイン監修を引き受けていただけたことはとても幸運だったと述べた。

 日本各地の空港の改修スケジュールのなかで、日付が至近で調整できたのが新千歳空港だったため、ここからスタートし、2018年度以降は福岡/伊丹/那覇空港の国内線ラウンジをリニューアルしていくと説明。将来的には国際線のラウンジ、“導入予定の新しい航空機”の客室についても監修をお願いできればと思っていると話した。

 このデザインを今後の各空港のラウンジリニューアルでも踏襲していくのかという問いに対し篠辺修氏は、その土地その土地のアレンジを加えていくのかは今後検討していきたいと答えた。

公開された新千歳空港ANA国内線ラウンジのレセプション
公開された新千歳空港ANA国内線ラウンジのアプローチ
発表会会場では、リニューアルデザインのミニチュアが展示されていた

「北海道らしい透明感のある明るい“一期、一会”を体験してほしい」と隈研吾氏

建築家の隈研吾氏

 続いて隈研吾氏からラウンジのデザインコンセプトについて説明があった。

 隈研吾氏は1954年生まれ、東京大学建築学科大学院修了。建築家として、また東京大学教授として活躍している。最近ではJR東日本(東日本旅客鉄道)の「品川新駅(仮)」や、新国立競技場の設計に携わっていることで知られる。

 本人もヘビーユーザーの旅人と言うように、非常に旅慣れた人物で、「世界中のラウンジを見てきていますが、豪華な大理石を使う、光った素材を使ったラグジュアリーな演出は本当にくつろぎにつながるのかと疑問がありました。そう考えると、日本の航空会社のラウンジにおいて最高の癒しの空間を作るには、日本の伝統的なやわらかな光、やわらかな素材感を使ったデザインしたいと考えています」と、イメージを語った。

 そしてラウンジにおいて最高のくつろぎとおもてなしを提供するために、日本文化のなかで何を中心に据えればいいだろうと考えたとき、「一期、一会」というコンセプトにたどり着いたと説明。英語で表現すれば「Long History, Sparkling Moment」となり、「Sparkling」のイメージが今回のデザインにおいて重要という。

「積み重ねた時間ときらめきの瞬間の融合」を意識してデザインしており、自然が見せてくれる瞬間の美を活かして表現したいと語った。

隈研吾氏によるデザインコンセプトの説明の際に使われたスライド
隈研吾氏によるラウンジデザインのコンセプトのスケッチ

 そして原点となったスケッチイメージを披露。これはラウンジの断面図のようなもので、上部は天井を表わしており、形状は翼を思わせるものにしたとのことで、幾重もの部材の連なりで、翼の飛翔感、浮遊感を表現。

 利用客はエスカレータを上るとまず「和紙の翼につつまれるレセプション」を訪ねることになる。カウンターは無垢の質感ある木材を使用。これが通路の素材に続き、ラウンジ入り口へと誘う流れだ。「大空の玄関」と呼ぶ「雲間を抜けるような特別なアプローチ」を抜けてラウンジで、ANAのくつろぎとおもてなしを体感するという。

 隈研吾氏は、単に日本らしいということで“和紙”を使うのではなく、和紙を新しい素材としてデザインに活かし、「北海道らしい透明感のある明るいSparkling Momentをこのラウンジで体験していただきたい」と話し、説明を終えた。