旅レポ
長崎県の名物食材をとことん堪能してきた(その1)
長崎市内で出会ったトラフグのフルコースや長崎和牛に感動
(2016/5/27 13:21)
長崎県といえば、チャンポンや皿うどん、B級グルメとしてトルコライス、さらにはカステラと、たくさんの美味しい名物が有名です。しかし、それら以外にも、地元では有名な名物食材がたくさん存在しています。今回、そんな長崎県内各地の名物食材を巡るツアーに参加してきましたので、その様子を紹介します。第1回は、長崎市周辺で愛されている伝統的な食材や、最近注目を集めている新しい名物などを紹介していきます。
古くから地元に愛されている蒲鉾「長崎かんぼこ」
長崎県は、漁獲量が全国2位、水揚げされる魚種は全国1位と、漁業が非常に盛んです。春夏秋冬、さまざまな魚が水揚げされ、魚に関する名物もかなり多いのです。そういった中で、古くから長崎県で親しまれているのが「長崎かんぼこ」。長崎県では蒲鉾のことを「かんぼこ」と呼ぶそうですが、長崎市は都道府県庁所在地を対象とした総務省の調査で、蒲鉾の消費量が全国1位と、蒲鉾が大好きなのだそうです。
長崎かんぼこの特徴は、蒲鉾の原料としてポピュラーなスケソウダラのすり身だけではなく、長崎県で水揚げされるさまざまな種類の魚のすり身を使い、揚げて製造するなど非常にバラエティーに富んだ製品が存在するという点です。一般的な板付き蒲鉾などの蒸し蒲鉾ももちろんありますが、現在長崎かんぼことして最もポピュラーなのは「揚げかんぼこ」と呼ばれる、揚げて製造されたものだそうです。
今回のツアーでは、長崎かんぼこを製造する老舗蒲鉾メーカー「長崎一番」にお邪魔しました。長崎一番では、食品添加物「リン酸塩」を加えていない魚のすり身を使うとともに、合成添加物や化学調味料などを使用しない、こだわりの蒲鉾を主に製造しています。また、揚げかんぼこでは、野菜などを使ったものも多いそうですが、その野菜も長崎県産や国内産にこだわって使用し、100種類ほどの製品を製造しているそうです。そういった中で、サンマ、アジ、このしろ、太刀魚など、季節ごと長崎県で水揚げされる魚を使った蒲鉾には、特に自信を持っているとのことでした。
蒲鉾の味は、魚の風味やコクが比較的強く味わえて、一般的な蒲鉾とは違う印象です。紅白の蒸し蒲鉾は、甘さより魚の風味がより強く感じられました。中でも印象的だったのが、トビウオのすり身を使った「あごすぼ」という蒲鉾で、比較的淡泊な味わいの紅白蒲鉾に比べてトビウオの風味が強く感じられて、歯ごたえもあって非常に味わい深い蒲鉾でした。
揚げかんぼこは、油で揚げることでコクが加わり、また違う美味しさでした。薩摩揚げや、西日本で「天ぷら」と呼ばれるものに近いものでありますが、無添加で魚の風味が比較的ストレートに味わえる点が大きな特徴と感じました。このほか、アジのすり身に牛や豚のミンチ、玉ねぎなどを練り込んで食パンで巻いて揚げた、長崎一番のオリジナル商品「ハトシロール」もいただきました。サクサクの食パンにもっちりした蒲鉾という、異色の取り合わせながら、牛や豚の風味も加わり、蒲鉾とは思えない味わいが印象的で、子供のおやつや酒の友としてもよさそうです。
近年人気急上昇のご当地グルメ「角煮まんじゅう」
続いて食べてきたのが、近年、長崎県で人気急上昇中の「角煮まんじゅう」です。とろとろに煮込まれた豚の角煮を中華まんじゅうで包んだ、ファストフード的な食べ物です。地元では昔から食べられていたそうですが、手軽に食べられることや、テイクアウトで角煮まんじゅうを提供するお店が増えてきたことで、近年は観光客を中心に大人気となっているそうです。
長崎県には、大皿に盛られた沢山の料理を円卓で囲んでいただく「卓袱(しっぽく)料理」という伝統的な料理があります。その卓袱料理に必ずといっていいほど付いている逸品が、豚の三枚肉を使った角煮です。その角煮を、より気軽に食べられるように考えられたのが、角煮まんじゅうなのだそうです。
長崎県の角煮は、豚肉を煮込む前にしっかり油抜きをして、甘辛いたれでじっくり煮込むことで、さっぱりとした味わいとなっているそうです。中華料理の角煮では、八角などの香辛料を使って煮込みますが、長崎県の角煮は、卓袱料理をベースとしているので、和食の味わいとなっている点が特徴とのことです。そして、今回いただいた「角煮家こじま」の角煮まんじゅうでは、豚肉として皮付き三枚肉を使っているのをこだわりとしています。豚肉は皮下脂肪に旨みが詰まっているそうで、その旨みを活かすために、あえて皮付きで煮込んでいるそうです。
食べてみると、角煮は肉の部分は比較的しっかりとした歯ごたえを残しつつ、口の中でほろほろとほどけていく食感で、また、口の中であっという間に溶けていく脂身や、芯まで染み渡った甘辛いたれとが混ざりあって、噛むほどに美味しさが口いっぱいに広がっていきます。もちもちとした食感の中華まんじゅうとの相性も抜群で、人気を集めているのも納得の味わいでした。
また、今年から新発売となった「角煮入り軍艦島まんじゅう」もいただきました。こちらは、軍艦島で採掘されていた石炭をイメージして作られた商品です。角煮をミンチ状に砕いて野菜などと混ぜた餡を、竹炭を使って黒に着色した生地で包んだ豚饅頭とのことです。見た目の黒さにインパクトがありますが、豚の臭みがほとんどなく、甘みの強い味わいが特徴で、かなり食べやすいと感じました。一口サイズという点も、ちょっとしたおやつに最適でしょう。
角煮まんじゅうは、長崎市内の角煮家こじまの店頭でテイクアウトできますし、売店でお土産用パッケージも販売されています。また、角煮入り軍艦島まんじゅうは、お土産専用として販売されています。長崎旅行の際に街角で食べるのもいいですが、お土産としても喜ばれるはずです。
トラフグ養殖生産量日本一の長崎県で絶品トラフグを味わう
ふぐといえば、真っ先に思い浮かぶのが山口県の下関でしょう。しかし、実は長崎県もふぐと関係が深いとご存じでしたでしょうか。私は知らなかったのですが、長崎県はトラフグの養殖生産量が日本一なのだそうです。長崎県で養殖されたトラフグも、多くが下関に送られているそうで、下関のふぐとして食べていたものが、実は長崎県産だったということも、珍しくないことかもしれません。
それだけでなく、長崎県の養殖トラフグは、天然物に負けない美味しさを備えるという点も大きな特徴なのだそうです。今回訪れた長崎市戸石町付近の橘湾は、トラフグ養殖の中心地となっていて、多くの業者がトラフグ養殖に携わっています。また、トラフグ以外にも、マダイやシマアジ、牡蠣なども養殖しているそうです。この付近は水質に優れ、魚の生育に非常に適しているそうですが、それだけでなく、養殖技術を高める研究を長年続けてきたことに加えて、餌の配合や餌の与え方なども細かく管理することで、品質を高めているとのことです。養殖トラフグの出荷は、毎年10月頃から翌年3月頃を中心に行なっているそうです。
そういった中、長崎県は県産養殖トラフグの知名度を高めようと、さまざまな取り組みを行なっているそうです。まず、養殖トラフグの中から、特に優れた品質のものを選別して「長崎とらふぐ」というブランドふぐとして売り出しています。その品質の高さから、徐々に認知度も高まっていて、ふぐの消費量の多い関西方面や関東の料亭などからも引き合いが高まっているそうです。また、地元長崎でも、トラフグ養殖生産量日本一ということを知らない人が多いそうで、地元での認知度を高める取り組みも行なっているそうです。例えば戸石町では、地元で養殖されたトラフグを「戸石ふぐ」というブランドで売り込んでいますし、地元小学校で給食に養殖トラフグのから揚げを出したり、毎年地元の料理店と協力して、トラフグや牡蠣を使ったイベントも開催しているそうで、年々認知度も高まりつつあるようです。
そして、この戸石町で養殖されたトラフグを、地元の料理店「和泉苑」で食べさせていただきました。用意していただいたのは、ふぐ刺し、ふぐ鍋、ふぐのから揚げと、まさしくトラフグのフルコース。ふぐ刺しは、ふぐ独特のコリコリッとした食感に、淡泊ながら脂がのってコクのある味わいが非常に贅沢に感じました。私は、天然トラフグのふぐ刺しを食べた経験が少ないので、味の違いを聞かれてもまったくといっていいほど分からないのですが、それでも養殖物とは思えない味わいは、まさに至福でした。
続いて、ふぐのから揚げ。こちらは、衣や油のコクや香ばしさが加わるのとともに、火の入れられたトラフグの身の食感もがらっと変わって歯ごたえがさらに強くなり、刺身とはまったく違う味わいです。ふぐの風味は、刺身よりも強まって、非常に美味しいです。先ほど、地元小学校ではトラフグのから揚げが給食で出されることがあると聞きましたが、非常に羨ましく感じます。
そして、お待ちかねのふぐ鍋。こちらも火が入ることでふぐの味わいがしっかりと引き出されて、まさしく絶品の味わい。から揚げとは異なる、プリプリッとした食感で、口の中で崩れていくふぐの身も、ふぐ鍋ならではです。そして、しめの雑炊。ふぐの風味がしっかり感じられる出汁と半熟の卵、香ばしいごまなど、さまざまな味わいが組み合わさり、こちらも絶品でした。鍋のしめの雑炊は、やはりふぐ鍋の雑炊が最強だと再確認できました。
このトラフグのコース料理ですが、和泉苑では地元で養殖されたトラフグを使うことで、かなりリーズナブルに提供されています。長崎市中心部から車で20分~30分ほどかかりますが、ぜひとも足を運んで絶品トラフグ料理をリーズナブルに楽しんでもらいたいと思いました。
日本一に輝いた長崎和牛「出島ばらいろ」に舌鼓
長崎県は、魚介が特産なのは間違いありませんが、畜産物にも優れたブランドが存在します。その1つが「長崎和牛」です。長崎和牛は、2012年に開催された和牛のオリンピック「第10回全国和牛能力共進会」で、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝きました。日本にはさまざまな有名和牛ブランドがありますが、その中で日本一に選ばれるほどですから、その品質の高さは折り紙付きと言えます。
そして、その長崎和牛の中で、長崎市内のJA長崎せいひ長崎地区肥育牛部会員8戸だけで生産されている長崎和牛「出島ばらいろ」というブランドが存在します。出島ばらいろは、薔薇の花色を連想させる鮮やかな赤色で、正肉歩留まりがよく、バラ肉が厚いという特徴から名付けられたそうです。出島ばらいろは、長崎和牛のうち9%弱という、少ない生産割合となっていますが、品質のばらつきが少なく、4~5等級という優れた質の肉が約75%にも上るという、高品質の和牛ブランドとなっています。
出島ばらいろは、生産数があまり多くないので、市場にはほとんど出回っていないそうです。そういった中、出島ばらいろが食べられるお店が長崎市内にあります。それが、今回お邪魔した「焼肉 真」です。
焼肉 真は、出島ばらいろ専門の焼き肉店です。長崎市内でも、出島ばらいろが食べられるお店はごくわずかだそうで、出島ばらいろ専門店として営業されている焼肉 真は、非常に貴重なお店です。そして、実際の出島ばらいろの味わいは、格別の美味しさでした。特に感じたのが、肉質の柔らかさです。タンは、比較的歯ごたえの強い部位ですが、それですら口に入れた瞬間に溶けるかのような柔らかさで、びっくりしたほどです。もちろん、クセは一切ありません。差しが強いこともあって、脂身の甘さと肉のコクが合わさって、非常に美味しいです。しかも、これだけ差しが強いのに、まったくしつこさを感じないのです。これが、日本一に輝いた長崎和牛の実力かと、驚きました。九州には、全国にその名が知られる和牛ブランドの宮崎牛がありますが、宮崎牛を抑えて日本一に輝いたのも十分納得できる美味しさでした。
出島ばらいろは、長崎和牛の中でも比較的若いブランドで、まだ生産量が少なく、今後ブランドの知名度を高めていくと共に、生産量も徐々に増やしていきたいとのことです。焼肉 真は、長崎市内からやや離れた住宅街の中にあります。長崎市内からはバスを使って20~30分ほどですが、出島ばらいろの美味しさを体験するために、訪れる価値は十分にあると感じました。
【お詫びと訂正】初出時、髙崎一正さんのお名前を誤って表記している箇所がありました。お詫びして訂正いたします。