旅レポ
愛犬44匹が北海道へ。ANAがペットと機内で過ごせるチャーターツアー開催
ツアーは2日で完売
(2016/5/27 00:05)
- 2016年5月20日~22日 実施
ANA(全日本空輸)とANAセールスは5月20日、日本で初めてペット(犬)と機内で一緒に過ごせるチャーター便を利用したツアー「ANAチャーター便で行く! ワンワンフライト in 北海道」を実施した。ツアーは5月20日~5月22日の2泊3日で、成田~釧路間で往復ANAのチャーター便を利用。宿泊は、阿寒湖畔にあるホテル「阿寒湖荘」を全館貸し切り、愛犬用足湯やドッグランが用意される。
ANAは現在、ペット向けサービスの拡充に取り組んでおり、2015年12月から国内線定期便でペット受託の事前予約サービスや、スマートフォンアプリ「ANAペットパスポート」の提供を開始している。しかし、「ペットと一緒に旅行へ行きたいが、貨物室に預けたくないので飛行機は利用しない」という声も多いという。そこで、ペットを客室に持ち込み、一緒に旅をできる今回のツアーが企画された。ツアーは3月8日に発売され、2日間で完売した。
ツアーのスケジュールは、13時35分発のANA2011便で成田空港を出発、釧路空港に15時20分着。参加者はレンタカーで各自ホテルまで移動。阿寒湖荘で夕食となる。2日目は終日フリータイムで、ホテルで朝食と夕食が提供される。最終日となる3日目は、出発までフリータイム。希望者は、阿寒湖を一周する10時30分~12時00分の遊覧船ツアーに参加できる。この遊覧船も貸し切りとなり、ペットはリードだけで一緒に乗船できる。帰路は釧路空港を17時20分に出発し、19時05分成田空港着となる。
ツアーの料金は、2名+犬1匹(2名1室)が22万2000円。人数と犬の数で料金が変わり、最大5名+5匹(5名1室)111万円が設定されていたが、ほとんどの参加者が夫婦+愛犬1匹という組み合わせだった。この料金には、チャーターフライトの航空運賃、国内線旅客施設使用料、ホテルの宿泊費と食事代、レンタカー代とレンタカー返車時ガソリン代、阿寒湖遊覧船代が含まれる。また、ツアーには獣医師も同行する。
出発日となる5月20日、成田空港第1ターミナル南ウイングに特設された受付カウンターに参加者が集合し、搭乗券を受け取る。今回は、名前が記載された犬用の搭乗券も用意された。また、すべての搭乗券にシールなどのデコレーションが手作りで施されている。搭乗券や各種案内が書かれたリーフレットのほか、消臭剤も提供された。参加者は、40~50代を中心とした家族、夫婦など87名と、ペット44匹。都内から夫婦で来た参加者は、愛犬とはバスでよく旅行に行くが、飛行機での旅行は今回が初めて。ツアーを知ってすぐ申し込んだが、キャンセル待ちの状態だったという。
受け付けを終えると、バックパネルや客室のシートがセットされた記念撮影スペースに移動。そこでは、ペットをケージ(キャリーバッグ、キャリーコンテナ)から出し、シートに座ってCA(客室乗務員)とともに記念撮影となる。参加者は持参したカメラやスマートフォンなどでも撮影できるが、ツアーには専属カメラマンが同行し、このような記念撮影やツアー中の写真を撮影していた。
記念撮影を終えると、犬が搭乗するために、用意されたケージに入れ替えとなる。このツアーでは、客室内のシートにセットできるサイズのケージ(2種類)をあらかじめ用意。参加者は空港までの移動のため持参したケージから入れ替える。なかには、持参したケージとまったく同じケージに入れ替えるというケースもあった。機内用ケージは特別なものではなく、規則だという。ツアーのスタッフが入れ替えを手伝っていたが、ほとんどのペットはおとなしく準備されたケージに入っていた。参加者は旅行の手荷物とともに、持参したケージやペットカートを手荷物で預けた。手荷物カウンターのグランドスタッフは、「大きな手荷物の数が若干多いが、通常の業務とあまり変わらない」とのことだった。
このツアーはチャーター便のため、専用の保安検査場が用意される。検査に関しては、一般的な航空機への搭乗と同様の手続きとなるが、犬はいったんケージから出され、参加者が愛犬を抱えて金属探知機を通過していた。保安検査を通過したら、出発ロビーで待機となる。
ロビーでは、B、Cゲートの前にスペースを取り、出発セレモニーが開催された。まずは主催者を代表して、ANAセールス取締役副社長の菅谷とも子氏が登壇。「長らく会社に勤めていて、このロビーにワンちゃんがこんなにたくさんいる光景を見るのは初めて。私も大の犬好きで感動している」と挨拶した。また、「1便に44匹のワンちゃんが乗る日本で初のツアー。ワンちゃんがいて旅行に行けないというお客さまがたくさんいらっしゃるということを聞き、愛犬家のスタッフが集まって今回の旅行を企画した。本日乗務する運航乗務員、客室乗務員ともに犬好きを募集し、40名の応募から精鋭のCAが4名対応する。ワンちゃんとの空の旅を楽しんでほしい」と語った。
続いて記念品の贈呈となり、参加者を代表して吉野さん夫妻と、コーギーのゆずぽんちゃんが、ANAオリジナルフォトフレームを受け取った。このフォトフレームに、今回の旅の写真や、ANA係員が特別にデコレートした犬用搭乗券を飾ってもらいたいとのこと。ほかの参加者には、釧路空港で配布された。
いよいよ搭乗となり、Aゲートがオープン。参加者はケージを手にしてゲートを通過していく。搭乗するANA2011便は、エアバス A320-211型機(登録記号:JA8400)。乗降扉を入ってすぐに、CAたちが手作りしたというウェルカムボードが設置されていた。また、犬用となる窓際のシートにはすべてビニールカバーがかけられ、搭乗するペットの名前が入ったウェルカムボードが準備されていた。ケージはシートにベルトで固定するため、通路での出入りや、ケージが前のシートの背もたれに当たってリクライニングができないなどの理由で窓側限定となる。通路幅ギリギリとなるケージの機内での運搬や、ケージをシートにベルトで固定するのはスタッフが行なった。
グランドスタッフが見送るなか、ANA2011便は13時35分に成田空港を離陸。機内アナウンスもチャーター便の特別ツアーとあって、通常のアナウンスに加え、愛犬を気遣う要素が盛り込まれている。シートベルト着用ランプが消えたとしても、ペットをケージから出すことは原則できないが、通常は貨物室に預けなければならない愛犬の顔を常に見ていられるということもあり、参加者たちは安心できるとのことだった。
機内サービスは、ANAパン工場で作られた犬型茶菓(パン)とお茶、犬用ドリンク(天然水)。機内サービスの提供が一段落すると、機内での記念撮影となった。この記念撮影の間のみペットをケージから出し、参加者とともに1組ずつ専属カメラマンが記念撮影をしていく。予定より早く1時間45分ほどで釧路空港に到着した。
釧路空港は利用客も少なくチャーター便ということもあって、時間をあまり要さずに手荷物を受け取る。参加者はその場で持参のケージにペットを入れ替え、到着口へと向かった。ロビーも温かい歓迎ムードで、参加者を出迎えた。
ツアーの予定としては、このあとはホテルでの夕食の時間が決まっているのみで、それまでにチェックインなどを済ませればいい。空港からホテル「阿寒湖荘」までは約60km、1時間程度の距離で、レンタカーでの移動となる。レンタカーの利用は一般的なレンタカーと同じで、車内では犬をケージまたはキャリーケースに入れなくてはならない。夕食の時間まで比較的時間が空くため、空港ロビーでゆっくりしたり、行程中に立ち寄りしたり、早めにチェックインしたりと参加者それぞれ、自由に過ごしていた。
特別天然記念物のマリモで有名な阿寒湖の湖畔にあるホテル阿寒湖荘は、全館貸し切りとなり、阿寒湖を望む庭にドッグラン、天然温泉を用いた愛犬用足湯が設置される。それぞれ利用時間は6時~19時で、ツアー参加(ホテル宿泊)者は、時間内ならいつでも利用できる。足湯は犬がリラックスできる最適な温度と言われる37℃に設定され、タオルなども用意されている。犬用足湯はツアー参加者用だが、それとは別に人間用の足湯「弁慶の足湯」がすぐ近くにあり、こちらはツアー参加者や宿泊者でなくても利用できる。
参加者がホテルに到着したのは夕方以降ということもあり、すべての参加者がドッグランや足湯を利用していたわけではなかったが、移動中はほとんどケージに入れられていたペットたちはリードを外され、ドッグランで伸び伸びと走りまわっていた。また、阿寒湖畔を散策できる遊歩道もあり、参加者は思い思いの方法で、愛犬とツアーを楽しんでいる様子だった。
ツアーを企画したCS&プロダクト・サービス室 商品戦略部 マネジャーの今田麻衣子氏は、「お客さまの夢をかなえてあげたい」「航空会社なので、飛行機ならではの思い出を作れないか」と模索しているなか、ペットの飼育率が伸び、15才未満の子供の数よりも多いというニュースを耳にして、ワンワンフライトの企画を思いついたという。
「社内の調整は大変で時間がかかった。キックオフの会議では、参加した人たちみんなが驚いていたが、お客さまのニーズなどを話していくうちに盛り上がり、プレスリリースの反応も大きく、それ以降は色々なところから提案なども出て、社内一丸となって取り組めるようになった」とツアー実現までの苦労を語った。また、今後の展開について「まずは今回のツアーを成功させて、終わってから今後を考える。今後は別の路線、犬以外も検討していく」とした。