旅レポ

ジャルパックが販売する「JTAフライトシミュレーター操縦体験」で
パイロット気分を堪能

日本トランスオーシャン航空が訓練に使っている“ホンモノ”を体験できる

ジャルパックが販売している、日本トランスオーシャン航空が所有するボーイング 737-400型機のフライトシミュレータを操縦できるオプショナルツアーを体験した

 ジャルパックは現在、沖縄のツアー商品「JALパック沖縄」で、日本トランスオーシャン航空(JTA)と協同企画した2種類のオプショナルツアーを提供している。1つが「JTAフライトシミュレーター操縦体験」。もう1つが「JTA見学バス『JTA機体工場見学とフライトシミュレーター見学』」だ。

「JTAフライトシミュレーター操縦体験」は、JTAが運航しているボーイング 737-400型機のフライトシミュレータの操縦を、元機長の案内でモーション付きで楽しめるツアーだ。

 一方の「JTA見学バス『JTA機体工場見学とフライトシミュレーター見学』」は、フライトシミュレータの操縦こそできないものの、JTAの機長による航空教室のほか、同社が2月より運航を開始するボーイング 737-800型機のモックアップや機体工場、フライトシミュレータの見学を行なえるものとなる。

 今回、この2つのツアーで実際にどのようなことが行なわれるのかを体験取材したので、そのレポートをお届けする。

訓練に使用している本物のフライトシミュレータに乗れる「JTAフライトシミュレーター操縦体験」

「JTAフライトシミュレーター操縦体験」は、ジャルパックが提供している沖縄のオプショナルツアーのなかでも目玉の1つに挙げてよいであろうツアーだ。実際にパイロットが訓練に使っているフライトシミュレータに乗って体験できるのである。ジャルパックの商品案内には「航空ファンにオススメ!」と書かれているが、ファンならずとも興味を抱く人は多いのではないだろうか。

 実施日は3月2日~4日/9日~12日の7日間。各日12時~13時、13時~14時、14時~15時と3回に分けて実施され、各回は1~3名の1組限定となっている。先着21組限定と言い換えてもよいだろう。各実施日の前日から起算して21日前までに予約する必要がある。

 気になる料金は、1名での申し込みなら9万円、2名1組なら1名あたり4万5000円、3名1組なら1名あたり3万円となる。数字だけ見ると高いと思う人が多いだろうが、記者は「妥当」というのが料金を見たときの最初の感想だった。もちろん普通のサラリーマンである記者にとってこの値段は安いとは思えないが、シミュレータの稼働費用や、案内をしてくれる元機長のアテンド、各回の募集人員の少なさ(によるオーダーメイド感の強さ、これは後述する)など、それなりの料金になることに頷ける要素は多い。

 なにより、ここで試せるフライトシミュレータは、飛行機の挙動を再現するモーションも付いているフルフライトシミュレータだ。このフルフライトシミュレータに乗れる機会はそうあるものではない。航空ファンならご存じの方も多いと思うが、フルフライトシミュレータは1台ウン十億円もするうえにメンテナンスにも手間がかかるため、旅客機を運航するすべての航空会社が所有しているわけではない。所有している航空会社もパイロットの訓練による稼働率が非常に高く、一般向けに開放する時間がないのが実情と聞く。実際この日も、記者が体験を終えたのが15時30分過ぎで、16時からはパイロットによる訓練の予定が入っているというスケジュールだった。

 つまり、フルフライトシミュレータは、体験する窓口すらほとんど開かれていないのである。ごくたまに、イベントなどで“抽選で数名”という体験機会が設けられることもあるが、ジャルパックのオプショナルツアーは、そうした数少ない機会が提供されるうえに、(枠に限りがあるとはいえ)お金さえ払えば体験できる点でハードルが低い。

 そんな貴重な時間は、先述のとおり各回1時間。シミュレータの操縦は、1名での参加時で約50分、2名参加時で1名あたり約25分、3名参加時で1名あたり約15分が目安とされている。実際に操縦できる時間も料金相応といったところではあるが、例えば友人が操縦しているところを見るというのもまた違った体験となるわけで、それで料金を抑えられるのであれば、2名以上1組での参加も現実的な選択肢のように思える。

 このほか注意点として、このオプショナルツアーは、ジャルパックの沖縄旅行商品を利用し、申込日に沖縄本島に滞在している人のみが申し込める。また、運転免許証、学生証、パスポートなどの身分証明書が必要だ。実施場所は、那覇空港から約1.2kmの場所にあるJTAシミュレータ棟。現地集合/現地解散となり、来場者用の駐車場がないため、徒歩またはタクシーでの訪問となるだろう。

JTAのシミュレータ棟

好みの空港で離着陸を体験、モーションによる臨場感が抜群

 さて、ツアーの概要を一通り説明したところで、実際にシミュレータ体験の話に移る。那覇空港の旅客ターミナルからクルマで5分ほど北へ向かったところに、JTAのシミュレータ棟がある。そのなかに設置され、異様な存在感を放っているのがボーイング 737-400型機のシミュレータだ。

 6本のアクチュエータに支えられてドーム状の操縦室(コックピット)を備える構造。このアクチュエータの動きによるモーションを味わえるのが、フライトシミュレータゲームなどとの大きな違いだ。シミュレータのコックピットへは階段を上り、橋を渡って乗り込む。この橋は稼働中は壁側に持ち上がるようになっており、外から見ているときは、この橋が架かったら終了したことが分かるわけだ。

JTAのボーイング 737-400型機のフルフライトシミュレータ
6本のアクチュエータによってコックピットが支えられている。これにより機体の挙動を感じられるモーションを付ける
非動作中に壁から降りてくる橋を渡って乗降。シミュレータ動作中はコックピットがアクチュエータに支えられて宙に浮いたような状態となり、乗降はできない
動作中は入り口脇の「TRAINING IN PROGRESS」のランプが点灯していた

 今回は、複数メディアでの体験取材だったのだが、記者の順番は一番最後。まずは、ほかの報道関係者が体験するのを外から見ることになった。

 シミュレータが稼働すると、まずアクチュエータによってコックピットが持ち上げられる。この時、警告ランプとともに警報が鳴り響く。これから激しいモーションが起こることもあるからだ。床には、動作中の立ち入り禁止ラインが引かれていた。

 このモーションは、シミュレータで操作した際のピッチ(前後の傾き)、ロール(左右の傾き)、ヨー(水平方向の傾き)をある程度再現するものとなる。ある程度、と書いたのは一回転するほど大きな動きはしないからであるが、その動きは決して小さくない。下記に動作中のシミュレータの動きを写真と動画で紹介するが、かなり激しい動きも見られる。

 ちなみに、このモーションはオフにすることもできるそうだ。揺れるのは苦手だけど本物のシミュレータは体験したい、という人も安心だ。

稼働を始めるとアクチュエータが少し伸びてコックピットが持ち上げられる
稼働中は危険を知らせるために警告灯が点滅し続ける。可動範囲は立ち入り禁止のラインが引かれている
上昇時、下降時の様子を横から見たところ
【ボーイング 737-400型機シミュレータ動作中の様子】
動作中の様子を外から撮影したもの。動きが激しいのは10分30秒頃からで、おそらく内部では着陸を行なっているものと思われる

 続いては操縦体験である。操縦に際しては元機長の案内があり、このツアーのために5名の元機長がスタンバイしているという。コックピットでは自分が左側(機長側)に座り、1名の元機長が右側(副操縦士側)でサポート、もう1名の元機長がシミュレータの操作を行なう。

 シミュレータ体験の内容は、極論すれば「なんでもできる」とのことで、リクエストがある人は元機長に相談してみるとよいだろう。例えば、離着陸の体験に時間をかけたり、水平飛行に時間を割いたりと自由にアレンジできる。

 一方、事前に考えておくことをお勧めしたいのが離着陸に使う空港だ。空港も自由に選べるのだが、それだけに悩ましい。また複数の滑走路を持つ空港の場合は、離着陸する滑走路も選択できる。JTAのシミュレータということで沖縄近辺で考えるなら那覇空港はもちろん、定期便の運航のない下地島空港も選べる。また、選択肢としては地元空港というのもありだろう。今回記者は、なじみ深い羽田空港を選択した。

 先に軽く言及したが、こうしたフライトプランの自由度もこのツアーの大きな魅力だ。通常、決められた時間のなかでシミュレータ体験をしようと思うと、あらかじめ決められたルーチンに沿ってフライトをすることになりがちだが、実際にシミュレータを使ってさまざまな訓練を重ねてきた元機長のもとで、自分のリクエストを盛り込んだ体験ができる。例えば、1名での申し込みなら約50分と時間に余裕があるので、A空港からB空港までをフライトしてみる、といったリアルな体験も面白そうだ。

 そして、もう1つの魅力がコックピットのリアルさ。当然だが、実際のボーイング 737-400型機のコックピットを再現したもので、操縦桿から足元のラダーペダル、計器などを装備している。ボーイング 737-400型機は昨今のディスプレイを中心としたグラスコックピット化する前の機体であることからアナログメーターが多い。この辺りは好みによるが、アナログメーターが逆に気持ちを盛り上げてくれるということもあるかも知れない。

取材に応じた4名の元機長

 前振りが長くなったが、いよいよシミュレータ体験である。今回は、羽田空港のC滑走路(34R)から離陸し、東京近郊の上空を遊覧。その後、同じく34R滑走路への着陸を試させてもらった。

 副操縦士席に座った元機長が、パチパチといろいろな操作をし準備。詳しい航空ファンはこの作業の意味も理解できて、より楽しいのだろう。離陸も地上走行はカットして、いきなり滑走路の離陸開始位置からスタートが可能だった。「ブイアールと言ったら操縦桿を引いてくださいね」と極めて簡単なレクチャーを受け、いざ開始。“ブイアール”とは、離陸滑走を開始して機首を起こす(ローテーション)の速度になったときに副操縦士が発する言葉。離陸決定速度の「V1」、ローテーション速度の「Vr」の言葉も元機長が口にしてくれると、それだけでドキドキする。

 また、この機首上げもモーションによって、シートに押さえつけられるようなGがかかる。機長席の窓の形に映される風景、隣から聞こえる“本物”の「ブイアール」の声、体にかかる重力と、全身に飛行機を操縦している感覚を味わえる。この感覚こそフルフライトシミュレータならではの魅力だ。

 そして離陸後は水平飛行に移るわけだが、今回は短時間の手動操縦のあと、オートパイロットを試させてもらった。

 手動操縦の場合は目の前の姿勢指示器の紫のラインに合うように操縦桿を操作する。と書くと単純な操作に感じられるかも知れないが、意外に難しい。まず操縦桿が思っていたよりも重い。そして、ちょっと動かしただけで反応してしまうし、ラインに合ったから戻せばピタリと止まるようなデジタルな動きではなく惰性もあるので先読みが必要だ。力を入れつつ繊細に、そして先を予測して操作をする必要があり、なかなか思いどおりには操作できない。

 このあとオートパイロットへ移行したが、ほんの1~2分の手動操縦でも十分に神経をすり減らしただけに、余計にありがたみが分かるというものである。方向、高度、速度をつまみを回して指示するだけで思いどおりに動いてくれる。

 このオートパイロットを使って、東京と千葉の上空をグルグルしてみたのだが、CGの表現は一昔前の印象で、野原が広がっていた(笑)。かろうじて東京タワーが建っていたので昭和33年以降であることは分かる……というのは冗談だが、羽田空港のD滑走路もあるので、データはアップデートされているようだ。このあたりはグラフィックスを描画するハードウェアの性能にも依存するところで、きっと最新鋭機のシミュレータは表現力も向上しているのだろう。

シミュレータの操縦室。金属質のひんやりとした感覚がリアルだった
操縦席の正面にある姿勢指示計が飛行中の操縦の要。周囲に高度計やなにやら並んでいるが操縦している最中に見ている余裕はなかった
機長席と副操縦士席の間にあるフライトマネージメントシステムへの入力装置。このあたりはすべて元機長の入力に頼った
オートパイロットの操作パネル。オートパイロットを有効にすると速度や方向、高度など、つまみを回すだけで指示したとおりに飛行機が動く
スラストレバー。ボーイング 737-400型機はエンジンが2個なので、スラストレバーも2個。左右にはフラップやスピードブレーキのレバーがあるが、このあたりの操作も元機長に頼り切った
スラストレバーの手前にもいろんなスイッチがあるが、すべて元機長任せ(笑)。体験を終えたあとにも、パチパチと手際よく切り替えていく様子を見て感心するほかなかった
窓からの眺めを撮影してみた。この時代のコンピュータグラフィックス描画性能の限界か、東京は平面が広がっているのだが、東京タワーや、東京湾アクアラインの風の塔があるだけで東京の空を飛んでいることを感じられて楽しい

 さて、このオートパイロット。速度、方向、高度とそれぞれに自動操縦にするかを選択できる。例えば、すべてを自分で意識しながら操縦するのは難しいが、高度と速度をオートパイロットで制御し、操縦桿を使って方向を変えることだけを自分で操縦するようなこともできる。

 またILS(計器着陸装置)を使っての自動着陸も可能だ。記者のシミュレータ体験では、水平飛行を数分続けたあとに着陸の操縦を試すという流れで進められたが、まずはオートパイロットでの着陸を“お手本”として見せてもらい、そのあとに手動操縦での着陸を体験することになった。

 この着陸も、シミュレータの操作でいきなり滑走路目前からスタートすることができる。途中までオートパイロットで進入し、自分の判断でオートパイロットを解除して、手動操縦に切り替えて着陸、という流れで体験した。

 先の水平飛行中は、計器を見て紫のラインを合わせるよう指示をされたが、ここではむしろ窓の外を見るように言われる。この頭の切り替えがなかなか難しい。正しい姿勢を維持するためについつい計器を見てしまうのだが、着陸中は、滑走路にまっすぐ向かっているか、そして滑走路に接地する直前で機首を軽く引き起こすことに意識を向けなければならないという。

 ちなみに、窓の外の風景は時間帯の変更も可能で、例えば薄暮や夜に切り替えて表示できる。暗くなると東京の街は夜景が表示され、むしろこちらの方が羽田空港の上空にいるような感覚を味わえるのだが、滑走路との距離感が分かりにくくなるので難しいそうだ。

 ということで、下記にシミュレータ内にカメラを設置させてもらって体験中の様子の一部を動画にまとめてみたが、正直言って、お目にかけられるようなものではないと記しておきたい。本記事のタイトルは「~パイロット気分を堪能」と大きく出てみたが、こんなパイロットが操縦する飛行機には乗りたくないと思うだろう。もちろん初めてなんだから当たり前……という気持ちもあるのだが、それだけに日々の訓練の大切さも分かる。この体験は、本職パイロットの凄さを知るためのものではなく自分が楽しむためのものなのだが、その偉大さを痛感させられた。

 着陸後の滑走も、普段からクルマを運転することもあってついついハンドルのように操縦桿を左右に振ってしまうが、足のペダルを使ってラダーを操作するのが正解。また地上走行中は、操縦席の脇にあるハンドルで前輪の操作をするのだが、この動きも非常に繊細で、ちょっと動かしただけで急ハンドルのような挙動になる。すべてが難しく、新鮮な感覚を味わえる体験だった。

 このように、いきなり正確な操縦をするのは非常に難しいというのが体験を終えた率直な感想であるが、滑走路をはみ出そうが、着地点が前後にズレようが、そこはシミュレータなので笑い話で済む。うまくいかなかったことも楽しい思い出として心に残るだろう。

【ボーイング 737-400型機シミュレータを実際に体験】
目も当てられない操縦。これを見て「ぼくがボーイング 737を一番うまく使えるんだ」と思った人はぜひチャレンジを

“5000円”とは思えない充実した内容の見学ツアー

 さて、シミュレータ体験ツアーとは別に提供している「JTA見学バス『JTA機体工場見学とフライトシミュレーター見学』」は、JTAの機体工場、フライトシミュレータの見学を行なう、所要時間約4時間20分のオプショナルツアーだ。那覇空港で集合/解散となるバスツアーなうえ、5000円という価格で参加しやすい。

 実施日は3月18日/25日/28日の3日間と、操縦体験ツアーよりも回数が少ない点に注意を要する。各回の定員は40名で、最少催行人員数は25名となっている。ジャルパックの沖縄旅行商品を利用し、申込日に沖縄本島に滞在している人のみが申し込め、運転免許証、学生証、パスポートなどの身分証明書が必要な点は操縦体験ツアーと同じだ。

 機体工場見学なんて、申し込みが多くてなかなか参加できないとはいえJALが羽田空港で無料やってるし……と思っていたのだが、はっきり言って甘かった。JTAの機体工場見学は、5000円という代金を払って余りある充実の体験ができるものだった。

 ツアーではまず、那覇空港の旅客ターミナルと滑走路を挟んで反対側にあるJTAのメンテナンスセンターへ。ここで「航空教室の受講」「モックアップ見学」「機体工場見学」を行なう。

那覇空港の滑走路の西側にあるJTAのメンテナンスセンター
メンテナンスセンター入り口には多数のモデルプレーンが展示された。この写真を見て「あれっ!?」と思った人もいると思うが、実は一番手前にある大きい模型は、ボーイング 737-200型機を現行塗装にした実際には存在しないものだ

 航空教室は現役機長による飛行機の紹介が行なわれる。ボーイング 737型機のメイキングビデオや、JTAが運航する「ジンベエジェット」「さくらジンベエジェット」の紹介とその違いなど、豆知識を紹介する。

 この航空教室に使われる部屋も面白く、普段ちょっと見ることができないものが並んでいる。例えば「ブラックボックス」。航空事故などが起きた際に、その原因を解明すべく「フライトボイスレコーダー」「フライトデータレコーダー」が搭載されていることを知っている人は多いと思うが、その実物が置かれている。しかも、国産旅客機「YS-11」で使われていたものもあるというから胸が熱くなる。

「航空教室」が行なわれる部屋
動画やスライドを使って、現役機長により飛行機に関するさまざまな豆知識が披露される
この航空教室が行なわれる部屋は、新旧のモデルプレーンから、YS-11で使っていたフライトボイスレコーダー/データレコーダーなど、レアな部品が展示されている

 続いて行なわれる「モックアップ見学」とは、トラベル Watchでも11月26日付けの記事でお伝えした、JTAの最新鋭機であるボーイング 737-800型機の訓練用モックアップの見学となる。

 当該記事でも紹介されているとおり、このモックアップはCA(客室乗務員)の訓練用のもの。実物大とはいかないが、実際に使われる座席やギャレー、非常口などが忠実に再現された施設となっており、リアルな環境で訓練が行なわれていることを実感できるだろう。

JTAのボーイング 737-800型機モックアップ施設
後部の扉
機内の様子
人形が置いてあるのはリアルさを出すためだという
脱出に使う主翼上の非常扉
既存機種の訓練にも使えるよう非常扉を2種類備える。右側がボーイング 737-400型機、左ボーイング 737-800型機のもの

 続く、機体工場の見学は、まず格納庫の見学からスタート。あいにく取材時は飛行機がいなかったが、ここでは整備中の機体を見ることができる見込みだ。また、格納庫の外には那覇空港の滑走路と国内線旅客ターミナルが広がっており、那覇空港の展望デッキなどから見るのとはひと味違った眺めを楽しめる。

 さて、機体工場の見学という間近に見る整備中の飛行機に注目が集まりがちだが、このツアーでは、むしろこのあとの施設内見学が見どころといっても過言ではない。

 機体外部の修理部材を板金する作業場や、リトレッド(タイヤ表面の接地部分の張り替え)をする前後のタイヤが置かれた倉庫、修理部品の倉庫などなど、見慣れない場所やモノが続々と目の前に現われる。

 極めつけはエンジンだ。カウルを外した状態のエンジンを、手で触れられそうなほどの距離で見られるのだ。記者もこのような仕事をしていると格納庫などに入ることがあるが、カウルが外されたエンジンを遠目に見ることはあっても、これほどまでに近い距離で見たことはない。

 ついでに言うと、ここに置かれているエンジンは「CFM56」。航空ファンにはおなじみの名エンジンであり、その点でも心沸き立つ瞬間と言えよう。そうしたエンジンへの思い入れがなくとも、剥き出しになった“メカメカしさ”は芸術品のようでもあり、工業製品としての素晴らしさを感じられると思う。

 このあとは先述のシミュレータ棟へ移動し、フルフライトシミュレータを見学してツアーは終了となる。

JTAの格納庫。さまざまな工具やパーツが置かれていて興味を引かれる。向かいは那覇空港の国内線旅客ターミナルだ
機体の外装パーツを板金で製造するという作業場
整備士の工具入れも置かれていた
板金に使う素材はすべて決められたもので、きっちり管理されている
リトレッド前後のタイヤが置かれた倉庫。航空機のタイヤは、ある程度の回数は接地面(トレッド)を張り替えて利用。タイヤには何度張り替えたかを「R-1」といった記載で記されている
無造作に吊るされたシートベルト。修繕済みのものだ
さまざまな飛行機用部品が置かれた倉庫。実に2万6000点もの部品が保管されているという
メンテナンスから戻ってきたエンジンの保管庫。無理にズームインしているわけではなく実際に近い。この距離で裸のエンジンを見られることには、感動よりも驚きの方が大きかった

 このように、ジャルパックがJTAと協同企画した2つのオプショナルツアーを体験してきたが、どちらもほかでは得がたい体験ができるユニークな内容だった。まさに航空会社系ツアー会社の強みを活かした商品と言えるだろう。

 シミュレータ操縦体験は、フルフライトシミュレータをかなり自由に楽しませてもらえる点でインパクトがあり、3万円~9万円という料金に見合う体験ができると思う。航空ファンや若い頃パイロットに憧れていたという人はもちろん、多くの人にこの体験をしてほしいと思う内容だった。

 一方、見学ツアーについても、“見学”という言葉からは想像できない充実した内容に驚かされた。催行日を考えると、春休みに子供と沖縄旅行をして、この見学ツアーに参加するイメージが浮かぶが、乗り物が好きな大人の社会科見学としてもお勧めだ。

 ちなみに、両ツアーともジャルパックの沖縄ツアーを利用していることが参加できる条件になるのは文中で触れたとおりだ。そこで、ジャルパック、JAL/JTAを使った沖縄旅行についてのレポートも後日お届けする予定だ。

「JTA見学バス『JTA機体工場見学とフライトシミュレーター見学』」ではこんなお土産も

編集部:多和田新也